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小ねじ JIS B 1111 の種類と指定——なべ・皿の頭部、十字穴 H形/Z形、強度区分とめっき

この記事のポイント(結論先出し)
十字穴付き小ねじの JIS B 1111(2017 年改正)には、ISO 7045〜ISO 7048 を基にした規格本体の小ねじ(なべ・皿タイプ 1・皿タイプ 2・丸皿・チーズの 5 種類)と、ISO によらない国内独自の附属書 JA の小ねじ(なべ・皿・丸皿・トラス・バインド・丸)が同じ番号の中に入っている[1]。両者は同じ「M4 なべ小ねじ」でも頭の径と高さが違い、十字穴も本体は H 形か Z 形、附属書は H 形である[1]。附属書の なべ・皿・丸皿 は将来廃止するので新規設計には使わないほうがよいとされている[1]。発注書は規格の呼び方の並び(種類・規格番号・ISO 番号・ねじの呼び×呼び長さ・強度区分・十字穴の形)で書き、附属書品なら「附属書」と明記する。材料は鋼なら強度区分(なべ・丸皿・チーズ・皿タイプ 1 は 4.8、皿タイプ 2 は 8.8)、ステンレスなら A2-50・A2-70 などの鋼種区分-強度区分で指定し、めっきは JIS B 1044 による[1][3][4]。
目次
「なべ小ねじ M4×10 ユニクロ」で手配するときに、決まっていないこと
小ねじは装置や電気機器のカバー、基板の固定、ブラケットの取付けなど、あらゆるところで使われる。単価が安く数が多いので、「なべ小ねじ M4×10」に表面処理の通称を添えただけで手配されることが多い。だが、JIS B 1111 の中には、頭の寸法が違う二系統の小ねじが並んでいる。規格の序文は、ISO 7045 と ISO 7047 の第 3 版、ISO 7046-1・ISO 7046-2・ISO 7048 の第 2 版を基とし、さらに国内の生産・使用の実態を反映するため、ISO 規格にない附属書 JA「ISO 7045〜ISO 7048 によらない十字穴付き小ねじ」を示すとしている[1]。
附属書 JA の注記は、附属書で規定する十字穴付きなべ小ねじ、十字穴付き皿小ねじ及び十字穴付き丸皿小ねじは ISO のものとは異なり、将来廃止するので新規設計の機器、部位などには使用しないほうがよい、と書いている[1]。それでも附属書の小ねじは流通しているので、発注書で本体と附属書のどちらを買うのかを書き分けないと、仕入先は手持ちのどちらかを納めることになる。
六角ボルト・六角ナットの JIS にも同じ「本体と附属書」の二本立てがあり、六角ボルト・六角ナットの規格で扱った。この記事では十字穴付き小ねじに絞り、種類・頭部の形・十字穴・材料と強度・表面処理の指定と、受入で確かめることを書く。
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本体の小ねじと附属書の小ねじは、どこが違うか
JIS B 1111 の本体は、十字穴付き小ねじを頭部の形状で 5 種類に分けている。十字穴付きなべ小ねじ(M1.6〜M10・ISO 7045)、十字穴付き皿小ねじ-タイプ 1(M1.6〜M10・ISO 7046-1)、十字穴付き皿小ねじ-タイプ 2(M2〜M10・ISO 7046-2)、十字穴付き丸皿小ねじ(M1.6〜M10・ISO 7047)、十字穴付きチーズ小ねじ(M2.5〜M8・ISO 7048)で、十字穴はいずれも H 形又は Z 形である[1]。附属書 JA は、十字穴付きのなべ・皿・丸皿・トラス・バインド・丸の 6 種類を、H 形の十字穴で M2〜M8 の範囲に定めている[1]。
発注と受入に関わる違いを規格本文から並べると、次のとおりである。寸法は M3 と M4 のなべ小ねじだけを引いた。
| 項目 | 規格本体(ISO 7045 など) | 附属書 JA(ISO によらない) |
|---|---|---|
| 種類 | なべ・皿タイプ 1・皿タイプ 2・丸皿・チーズ(5 種類) | なべ・皿・丸皿・トラス・バインド・丸(6 種類) |
| 十字穴 | H 形又は Z 形(JIS B 1012) | H 形(JIS B 1012) |
| なべ小ねじ M3 の頭部の径/高さ | 最大 5.6 mm/最大 2.40 mm | 基準寸法 5.5 mm/2 mm |
| なべ小ねじ M4 の頭部の径/高さ | 最大 8.00 mm/最大 3.10 mm | 基準寸法 7 mm/2.6 mm |
| めっき品のねじ | 電気めっきは JIS B 1044 による | 最大許容寸法を 4h の最大許容寸法とし、通り側ねじリングゲージは 4h 用 |
| 呼び方と包装の表示 | ISO 番号を入れる。包装に「規格本体」であることを明示 | 規格番号と種類の後に「(附属書)」を付ける。包装に「附属書」であることを明示 |
表の値はすべて JIS B 1111 の表 1・表 3・表 4、附属書 JA の表 JA.1・表 JA.3 と JA.4・JA.8・JA.9・JA.10 による[1]。M4 のなべ小ねじで比べると、本体の頭は附属書より径が 1 mm 大きく、高さも 0.5 mm 高い(本体は最大値、附属書は基準寸法の比較)。頭の下に部品を挟む用途では締める面の大きさが変わり、狭い場所に収める設計では頭の高さで干渉することがある。図面に「なべ小ねじ M4」としか書かれていないときは、どちらの寸法で設計したのかを設計者に確かめる。
なお、附属書のトラス・バインド・丸の小ねじは、附属書の注記で将来廃止とされた三種類(なべ・皿・丸皿)には入っていない[1]。トラス小ねじのように本体に対応する形がないものは、附属書品として指定するしかない。
十字穴は「H 形」か「Z 形」かを書く
十字穴の形状と測り方は JIS B 1012(ねじ用十字穴・1985 年改正)が定めている。この規格は十字穴を H 形・Z 形・S 形の 3 種類とし、H 形と Z 形は ISO 4757 に準じているとしている[2]。H 形と Z 形は形状・寸法の表が別で、それぞれ専用のゲージで「ゲージ沈み深さ q」を測る[2]。S 形はねじの呼び M2 以下のねじ部品と、M3 以下の小頭のねじ部品に使う[2]。
JIS B 1111 の本体の小ねじは H 形と Z 形のどちらでもよく、製品の呼び方の最後に十字穴の形を付ける[1]。規格が示す呼び方の例は次のとおりである[1]。
十字穴付きなべ小ねじ-JIS B 1111-ISO 7045-M5×20-4.8-Z
(ねじの呼び M5、呼び長さ 20 mm、強度区分 4.8、十字穴が Z 形)
十字穴の形を書かずに発注すると、どちらが届いても文句が言えない。工場で使っているドライバービットや自動ねじ締め機のビットがどちらの形に合わせてあるかを確かめて、発注書に H 形か Z 形かを書く。附属書 JA の小ねじは H 形と決まっている[1]。皿小ねじ-タイプ 2 の十字穴には深形(シリーズ 1)と浅形(シリーズ 2)があり、シリーズを指定するときは呼び方の最後を「Z1」のようにする[1]。
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受入では、十字穴の翼の長さ m は規格の表で参考値とされているので検査の対象にならない[1][2]。十字穴を確かめるなら、ゲージ沈み深さ q と、附属書品であれば十字穴とゲージとの食い付き(ゲージを押し込んで水平から垂直に回し、小ねじが自重で脱落しないか)を見る[1][2]。附属書は、食い付きの試験は呼び長さが呼び径の 7 倍以上のものには適用しないとしている[1]。
材料と強度は、鋼は強度区分、ステンレスは鋼種区分-強度区分で指定する
JIS B 1111 の本体は、なべ・丸皿・チーズの小ねじの製品仕様として、鋼は強度区分 4.8(JIS B 1051)、ステンレス鋼は鋼種区分-強度区分 A2-50 又は A2-70(JIS B 1054-1)、非鉄金属は受渡当事者間の協定(JIS B 1057)としている[1]。皿小ねじは、タイプ 1 が鋼の強度区分 4.8 だけ、タイプ 2 が鋼の 8.8、ステンレス鋼の A2-70、非鉄金属の CU2・CU3 と、タイプによって選べる材料が違う[1]。皿小ねじで 8.8 やステンレスが欲しいなら、タイプ 2 を指定することになる。
ステンレス鋼製ねじの表し方は JIS B 1054-1(ISO 3506-1 に一致)が定め、第 1 ブロックが材料の鋼種区分(A はオーステナイト系、C はマルテンサイト系、F はフェライト系に、化学成分の範囲を示す 1 桁の数字)、第 2 ブロックが引張強さの最小値の 1/10 を示す数字である[4]。A2-70 は、冷間加工された引張強さの最小値が 700 MPa のオーステナイト系ステンレス鋼という意味になる[4]。「SUS304 の小ねじ」と書いても、規格の上での強度は決まらない。JIS B 1054-1 は、特定の環境における耐食性又は耐酸化性については規定しないとしている[4]。ステンレスの鋼種そのものの選び方はステンレスの鋼種と仕上げ・証明書の指定で扱った。
頭の形による注意もある。JIS B 1051(ISO 898-1 に一致)は、ボルト及び小ねじの頭部の形状によっては頭部のせん断面積がねじの有効断面積より小さくなることがあり、引張り又はねじりの要求事項を満足しないことがあるとし、その例に低頭及び皿頭のボルトと小ねじを挙げている[3]。JIS B 1111 の製品仕様は、ねじり試験を行った場合、小ねじは軸部又はねじ部で破断し、頭部と軸部との移行域で破断してはならないと注記している[1]。皿小ねじで強い締付けを求める設計では、頭の強度の扱いを設計者と確かめておく。強度区分の指定全般はボルトの強度区分と規格の指定にまとめた。
附属書 JA の小ねじは、鋼小ねじを JIS B 1051 の材料と強度区分 4.8 としながら、フルサイズおねじ部品の破断伸びは適用しないとし、受渡当事者間の協定によって保証荷重応力も適用しなくてもよいとしている[1]。附属書品を買うときに、本体品と同じ機械的性質の確認がされているとは限らない。必要なら、何を試験し、どの成績を出させるかを発注で決める。
表面処理は JIS B 1044 の記号で、ねじの検査とセットで指定する
JIS B 1111 の本体は、仕上げ-皮膜を「表面処理なし」を基本とし、電気めっきの要求がある場合は JIS B 1044 による、ステンレス鋼の不動態化処理の方法は JIS B 1047 を参照、鋼の非電解処理による亜鉛フレーク皮膜は JIS B 1046 による、付加的な要求又は他の仕上げ及び皮膜は受渡当事者間の協定による、としている[1]。附属書 JA も、めっきその他の表面処理を施す場合は注文者が指定するとし、電気めっきは JIS B 1044 によるとしている[1]。
現行の JIS B 1044(2024 年改正・ISO 4042:2022 に対応)は、皮膜処理された一般用メートルねじを、おねじは公差位置 h の通りゲージで確かめなければならないとし、小ねじのねじ山を検査するときは、ねじ先端から 1 d の長さで最大ねじ込みトルク 0.001 d³(N·m)まで許容されるとしている[5]。M4 なら約 0.06 N·m である[5]。めっきの膜厚を厚くしたいときに、ねじの寸法がめっき後にどうなるかを考えずに指定すると、ゲージが通らない。附属書品については、JIS B 1111 自身がめっきを施したねじの最大許容寸法を 4h の最大許容寸法とし、通り側ねじリングゲージは 4h 用を用いるとしている[1]。
「ユニクロ」「三価クロメート」といった通称は、仕入先によって指すものが違う。表面処理は規格の記号で書き、必要な耐食性や外観があればそれも書く。三価クロメートの指定の書き方は三価クロメート・化成処理の指定で扱っている。附属書 JA の呼び方の例には JIS B 1044 の附属書の記号(A2K)が使われているが、これは JIS B 1111:2017 の時点で引用していた版の記号である[1]。2024 年の JIS B 1044 の表示の方法で指定し直す。
発注書に書くこと
JIS B 1111 は、製品の呼び方は JIS B 1010 を参照としたうえで、本体と附属書のそれぞれに例を示している[1]。発注書には、規格の呼び方の並びで次を書く。
- 種類(なべ・皿タイプ 1・皿タイプ 2・丸皿・チーズ、附属書品ならトラス・バインドなど)
- 規格番号と、本体品なら ISO 番号、附属書品なら「(附属書)」
- ねじの呼び×呼び長さ(附属書品でねじ部長さを規定外にするなら括弧で付ける)
- 強度区分(鋼)又は鋼種区分-強度区分(ステンレス鋼)、非鉄金属なら材質区分
- 十字穴の形(H 形・Z 形)と、皿小ねじタイプ 2 ならシリーズ
- 表面処理(JIS B 1044 などの記号)
- ねじ先の形状など、標準と違う指定
附属書 JA の呼び方では、ねじ部長さ b を表の値以外にした場合は、呼び長さの後に括弧を付けて b の値を付け加える[1]。附属書のなべ小ねじの表は、ねじ先の形状を指定がない限りあら先とし、面取り先・平先などを必要とする場合は注文者が指定するとしている[1]。
小ねじの締付けトルクを作業標準で決めるときの考え方はボルトの締付けトルクの決め方で扱った。締付けの通則の JIS B 1083 は、適用範囲に小ねじを含める一方で、おねじ自身でめねじのねじ山を成形するねじ部品には適用できないとしている。
受入で確かめること
JIS B 1111 は、十字穴付き小ねじの製品に対する表示は通常施さないとしている[1]。製品を見ても規格や強度は分からないので、受入では包装の表示が手がかりになる。本体品の包装には、規格名称又は規格番号(「規格本体」であることを明示)、種類、十字穴の種類、ねじの呼び×呼び長さ、機械的性質(強度区分など)、数量、指定事項、製造業者名又は略号、製造ロット番号を表示するとしている[1]。附属書品は「附属書」であることを明示する[1]。包装の表示と発注書の呼び方を突き合わせ、本体か附属書か、十字穴の形、強度区分を確かめる。
迷ったら、頭の径と高さを測る。M4 のなべ小ねじなら、本体と附属書で頭部の径に 1 mm の違いがあるので、ノギスで区別できる[1]。十字穴はゲージ沈み深さで確かめる[1][2]。めっき品はねじゲージでの通りを見る[5]。受入検査の抜取りの手順は、JIS B 1111 が引用する JIS B 1091 によるとされている[1]。
本体品の表面欠陥の限界は JIS B 1041 によるとされ、附属書品は、表面が滑らかで使用上有害な割れ、きず、かえり、ばり、さびなどの欠陥があってはならないとし、M5 以上の表面欠陥の許容限界は、特に指定がない限り JIS B 1041 によるのがよいとしている[1]。どちらの基準で見るかも、発注の時点で書いておく。基準を受け取った後で厳しくして不合格にすると、取適法の受領拒否ややり直しの問題になりうる(受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるか)。
同じ装置で使う他の小物部品の指定は、平行ピン・スプリングピンの規格と選び方とアイボルト(JIS B 1168)の規格と使い方で扱っている。
よくある質問
ISO 品と附属書品は混ぜて使ってよいか
頭の径と高さが違うので、同じ箇所に混ぜると見た目と締める面の大きさがそろわない[1]。設計で頭の寸法を前提にしている箇所では、どちらか一方に決めて発注書に書く。新規の設計では、附属書の注記に従って本体品を選ぶのがよい[1]。
ステンレスの小ねじを「SUS304」と書いて発注してよいか
材料名だけでは強度が決まらない。JIS B 1111 の本体のなべ小ねじなら A2-50 又は A2-70 のどちらかを、JIS B 1054-1 の表し方で指定する[1][4]。耐食性は JIS B 1054-1 が規定していないので、使う環境に応じて必要なら別に条件を書く[4]。
H 形と Z 形はどちらを選べばよいか
規格はどちらも認めているので、工場のドライバービットや自動ねじ締め機の工具に合わせて選ぶ[1]。選んだら発注書と図面の両方に書き、変更するときは工具もそろえる。
まとめ
十字穴付き小ねじの JIS B 1111 には、ISO による本体の 5 種類と、ISO によらない附属書 JA の 6 種類があり、同じなべ小ねじでも頭の寸法が違う[1]。附属書の なべ・皿・丸皿 は将来廃止とされている。発注書は規格の呼び方の並びで、種類・規格番号・ISO 番号(又は附属書)・ねじの呼び×呼び長さ・強度区分又は鋼種区分-強度区分・十字穴の形を書き、表面処理は JIS B 1044 の記号で指定する。受入では包装の表示で本体か附属書かを確かめ、迷ったら頭の寸法を測る。
出典・参考資料
- JIS B 1111:2017 十字穴付き小ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2017 年 3 月 21 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 1012:1985 ねじ用十字穴(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1985 年 11 月 1 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 1051:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 9 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS B 1054-1:2013 耐食ステンレス鋼製締結用部品の機械的性質-第1部:ボルト,小ねじ及び植込みボルト(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 5 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1044:2024 締結用部品-電気めっき皮膜システム(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2024 年 2 月 20 日改正)
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