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投稿日:2026年10月16日

平行ピン JIS B 1354・スプリングピン JIS B 2808 の規格と選び方——公差と穴、抜け・割れ

この記事のポイント(結論先出し)

ピンは規格が三つに分かれている。焼入れしない平行ピン(と JIS 独自の焼入焼戻しした平行ピン)は JIS B 1354、焼入れした平行ピン(ダウエルピン)は JIS B 1355、スプリングピンは JIS B 2808 である[1][2][3]。平行ピンの規格はピンの径の公差(m6 又は h8)を決めるが、穴の公差は決めていない[1]。穴との組合せ(すきまになるか、しめしろになるか)は設計で穴の公差を決めて初めて決まる。一方、スプリングピンの規格は取付穴を呼び径と同じ直径・寸法公差 H12 と定め、ピンを縮めて入れる前提で外径を決めている[3]。スプリングピンは同じ呼び径でも重荷重用・一般荷重用・軽荷重用でせん断強さが違い、軽荷重用の溝付きは JIS の値と ISO 13337 の値(参考)が別に載っている[3]。電気めっきやりん酸塩皮膜を施すスプリングピンとダウエルピンは、水素ぜい化を防ぐ処理が要る[2][3]。発注では規格番号・呼び径×長さ・公差域クラス又は種類の記号・材料・硬化処理を、規格の呼び方の並びで書く。

「φ6 のピン」で手配すると、何が決まっていないか

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ピンは、部品どうしの位置を決める、回り止めにする、軸と部品を連結して抜けを止める、といった用途で使われる。図面に「φ6×30 ピン」とだけ書かれていると、焼入れしない鋼の平行ピンなのか、焼入れしたダウエルピンなのか、スプリングピンなのかが決まらない。これらは規格も、径の公差の考え方も、硬さも違う。

購買の立場でいちばん困るのは、穴との組合せが分からないまま買ってしまうことである。平行ピンの規格はピンの径の公差を決めるが、相手の穴の公差は決めていない[1]。スプリングピンの規格は逆に、取付穴の寸法まで決めている[3]。どちらの考え方の部品なのかを取り違えると、ピンが穴に入らない、入っても抜ける、という不具合になる。

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三つの規格の違い

発注と受入に関わる違いを、三つの規格の本文から並べると次のとおりである。

項目 平行ピン JIS B 1354:2012 ダウエルピン JIS B 1355:2012 スプリングピン JIS B 2808:2013
基にした ISO ISO 2338(焼入れしない平行ピン)を修正 ISO 8734(焼入れした平行ピン)を修正 ISO 8748・8750・8751・8752・13337 を修正
呼び径の範囲 0.6〜50 mm 1〜20 mm 種類ごとに表 5〜表 10
径の公差 m6 又は h8(協定で他も可) m6(協定で他も可) 取付け前の外径の最大・最小を表で規定
穴の規定 なし なし 直径は呼び径と同じ・寸法公差 H12
鋼の硬さ 硬化処理なし 125〜245 HV30/焼入焼戻し(S43C〜S50C)255〜327 HV30 タイプ A 550〜650 HV30/タイプ B 表面 600〜700 HV1 炭素鋼 420〜520 HV
表面粗さ m6 は Ra≦0.8 μm、h8 は Ra≦1.6 μm Ra≦0.8 μm (規定なし。ばりなどの欠点がないこと)

表の値はいずれも各規格の本文による[1][2][3]。平行ピンの JIS B 1354 は、ISO 2338 が「硬化処理をしない平行ピン」に限っているのに対し、国内の生産と使用の実態を反映するため ISO にない「焼入焼戻しを施すピン」を加えている[1]。そのため、JIS B 1354 の呼び方の例では、硬化処理をしない鋼のピンには ISO 番号が入り、焼入焼戻しした S45C のピンには ISO 番号が入らない[1]。

規格は次のような呼び方の例を示している[1][2][3]。

平行ピン JIS B 1354-ISO 2338-6 m6×30-St
(呼び径 6 mm、公差域クラス m6、呼び長さ 30 mm、硬化処理を施さない鋼)

平行ピン JIS B 1354-6 m6×30-St-S45C-Q
(同じ寸法で、焼入焼戻しを施した S45C 鋼)

ダウエルピン JIS B 1355-ISO 8734-6×30-A-St
(呼び径 6 mm、呼び長さ 30 mm、焼入焼戻しを施したタイプ A の鋼)

JIS B 2808-6×30-GL-W-St
(炭素鋼の溝付き軽荷重用スプリングピン、呼び径 6 mm、長さ 30 mm、両面取り)

「ピン φ6」としか書いていない図面を受け取ったら、まずこの三つのどれを想定しているのかを設計者に確かめる。焼入れの有無は、硬さで 2 倍以上の違いになる。

平行ピンの穴の公差は、設計で決める

平行ピンとダウエルピンの規格は、ピンの径の公差域クラスを JIS B 0401-2 によって定めているが、取り付ける穴の公差は定めていない[1][2]。穴の公差は図面で設計者が決めるもので、ピンの公差と穴の公差の組合せで、すきまになるかしめしろ(締めしろ)になるかが決まる。

JIS B 0401-2(2016 年改正・ISO 286-2:2010 に一致)の許容差の表から、呼び径 6 mm(図示サイズ 3 mm を超え 6 mm 以下の区分)の値を引いて組み合わせると、次のようになる[4]。

組合せ(呼び径 6 mm) ピン(軸)の許容差 穴の許容差 組み合わせたとき(計算)
平行ピン m6 と 穴 H7 +0.012〜+0.004 mm +0.012〜0 mm しめしろ最大 0.012 mm〜すきま最大 0.008 mm
平行ピン h8 と 穴 H7 0〜-0.018 mm +0.012〜0 mm すきま 0〜0.030 mm
スプリングピン(溝付き一般荷重用 GS)と 穴 H12 取付け前の外径 6.2〜6.4 mm +0.12〜0 mm(6.00〜6.12 mm) 外径が穴より 0.08〜0.40 mm 大きい(縮めて入れる)

平行ピンの二行は JIS B 0401-2 の許容差を足し引きした計算値で、スプリングピンの行は JIS B 2808 の表 6 の外径と、同規格が定める穴の公差 H12 を JIS B 0401-2 の値で組み合わせた計算値である[3][4]。m6 のピンを H7 の穴に入れると、組合せによってすきまにもしめしろにもなる。h8 のピンなら、H7 の穴では必ずすきまになる。どちらを狙うのかは、位置決めの精度と、分解するかどうかで設計者が決める。購買の担当者がピンの公差域クラスだけを見て「穴は H7 だろう」と決めてはいけない。公差クラスの読み方と、測り方を仕入先と合わせる手順ははめあい(H7/g6 など)を仕入先に伝えるときで扱った。

なお、JIS B 1354 と JIS B 1355 は引用規格として JIS B 0401-2 を「寸法公差及びはめあいの方式-第 2 部」の名で挙げている[1][2]。JIS B 0401-2 は 2016 年に改正されて名称も変わっているので、許容差の表は現行版で引く[4]。

スプリングピンは、穴まで規格が決めている

JIS B 2808 は、スプリングピンの取付孔の直径は呼び径と同じとし、取付孔の寸法公差は H12 とすると定めている[3]。スプリングピンの外径は取付け前の値として表で決められていて、溝付きスプリングピンの外径の最大値は円周上の外径の最大値、最小値は円周上の 3 か所の外径の平均値とするとしている[3]。溝の形状と幅は規定しないが、取付孔に入れたとき溝部の辺が全面で接触してはならないとしている[3]。

スプリングピンは、構造で溝付きと二重巻きに分かれ、それぞれに重荷重用・一般荷重用・軽荷重用がある[3]。種類の記号は、溝付きが GH・GS・GL、二重巻きが CH・CS・CL である[3]。同じ呼び径 6 mm の溝付きで、せん断強さの最小値は重荷重用(GH)が 26.04 kN、一般荷重用(GS)が 24.83 kN である[3]。軽荷重用(GL)の表は、上段に ISO 13337 の値(参考)、下段に JIS の値を並べていて、呼び径 6 mm のせん断強さは ISO が 18 kN、JIS が 14 kN、取付け前の外径も ISO が 6.4〜6.7 mm、JIS が 6.2〜6.4 mm と違う[3]。海外の仕入先に「ISO 13337 相当」で出すのか、JIS B 2808 の GL で出すのかで、届く品物が変わる。

溝付きスプリングピンの表(表 5〜表 7)のせん断強さの値は、炭素鋼とマルテンサイト系ステンレス鋼のものに適用すると注記されている[3]。溝付きのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304 など)のスプリングピンには表のせん断強さが適用されないので、強度が要る用途で材料を替えるときは、強度の根拠を別に確かめる。二重巻きの表(表 8〜表 10)は、せん断強さを上段が炭素鋼とマルテンサイト系ステンレス鋼、下段がオーステナイト系ステンレス鋼の値として並べている[3]。呼び径 6 mm の二重巻き重荷重用(CH)なら、上段 30 kN、下段 23 kN である[3]。スプリングピンどうしがからみ合わないことを保証する「N 形」の溝の形状と幅は、受渡当事者間の協定による[3]。自動供給で使うなら、からみ防止の要否も発注で決める。

硬さと水素ぜい化:めっきするなら処理まで指定する

スプリングピンの硬さは、炭素鋼で 420〜520 HV(焼入焼戻し又はオーステンパ処理)、マルテンサイト系ステンレス鋼で 440〜560 HV(焼入焼戻し)である[3]。JIS B 2808 は、炭素鋼のスプリングピンは受渡当事者間の協定がなければ表面処理をしてはならないが、さび止め油は塗布しなければならないとし、電気亜鉛めっき又はりん酸塩皮膜処理をした場合は水素ぜい化防止処理をしなければならないとしている[3]。表面処理をする場合、全ての寸法許容差は表面処理をする前のスプリングピンに適用する[3]。

ダウエルピンの JIS B 1355 も、電気めっき又はりん酸塩皮膜を施す場合は、有害な水素ぜい化を避けるため、めっき又は皮膜処理後、直ちに水素ぜい化除去のための適切な処理をしなければならないとし、寸法公差はめっき又は皮膜処理を施す前のものに適用するとしている[2]。電気めっきは JIS B 1044 によるとしている[2]。

JIS B 1044(2024 年改正)は、適用範囲に座金、ピン、クリップ、リベットなどのねじのない締結用部品を含めている[5]。そのうえで、設計上引張応力を受けない、表面硬化を施したねじのない締結用部品(ピン、座金など)は、特定の用途について受渡当事者間で特別な合意がない限り水素ぜい化に対する特別な施策を必要としないと注記している[5]。一方、参考の附属書 B は、めっき前の前処理(酸洗いなど)について述べる中で、高い引張応力を受けるばね鋼から製造される幾つかのねじのない締結用部品(例えば、スプリングピン、皿ばね座金、止め輪)については、鋼中に水素を導入しない任意の代替工程を推奨している[5]。スプリングピンの規格自身が水素ぜい化防止処理を求めていることと合わせると、スプリングピンにめっきをするなら、処理の内容を発注書に書いておくことになる。めっきの指定全般はめっきの発注で指定することで扱った。

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平行ピンの JIS B 1354 は、表面を「生地の状態」とし、協定がない場合は保護潤滑皮膜付きの自然な仕上げで供給するとし、皮膜処理する場合は黒色酸化皮膜、りん酸塩皮膜、亜鉛めっきクロメート処理皮膜(JIS B 1044 による)、又は協定による皮膜とするとしている[1]。

抜け・割れを防ぐために、発注と図面で決めること

ピンの不具合は、ピン単体の品質よりも、穴とピンの組合せ、材料と硬さの選び方、表面処理の工程で起きることが多い。規格から読み取れる範囲で、決めておくことを並べる。

1. どの規格のピンか
平行ピン(JIS B 1354)、ダウエルピン(JIS B 1355)、スプリングピン(JIS B 2808)のどれかを決める。平行ピンなら硬化処理の有無も書く[1]。

2. 穴の公差
平行ピンとダウエルピンは、図面に穴の公差を書く。規格は穴を決めていない[1][2]。スプリングピンは H12 を前提にする[3]。

3. 種類と荷重の区分
スプリングピンは重荷重用・一般荷重用・軽荷重用のどれか、溝付きか二重巻きかを記号で書く。軽荷重用で JIS と ISO 13337 のどちらの値を使うかも決める[3]。

4. 材料と硬さ
材料の記号(St・A・M、平行ピンの S45C など)を書く。溝付きのオーステナイト系ステンレスのスプリングピンにはせん断強さの表の値が適用されず、二重巻きでは表の下段の値がオーステナイト系に適用される[3]。

5. 表面処理と水素ぜい化防止
めっきやりん酸塩皮膜を求めるなら、水素ぜい化防止の処理を含めて書く[2][3]。寸法公差は処理前に適用されることを仕入先と確認する。

6. 端面・面取り・からみ防止
平行ピンとダウエルピンの端面の形状は受渡当事者間の協定による[1][2]。溝付きスプリングピンの面取りは両面取り(W 形)と片面取り(V 形)があり、呼び径 10 mm 以上は協定で片面取りにできる[3]。からみ防止の N 形を使うなら記号で書く[3]。

ピンと一緒に使う小ねじ・ボルトの指定は、小ねじ(JIS B 1111)の種類と指定とボルトの締付けトルクの決め方で扱っている。

受入で確かめること

平行ピンとダウエルピンは、製品の表示については特に規定しないとされ、包装の外面に規格番号又は規格名称、呼び径×呼び長さ、径の公差域クラス、材料、数量、指定事項、製造業者名を表示しなければならないとしている[1][2]。ダウエルピンは、さらに鋼の硬化処理の種類も表示する[2]。スプリングピンは、荷札などの適切な方法で、規格番号、呼び径×長さ、種類の記号、面取り形状の記号、からみ防止の記号、材料名又は材料の記号、数量、製造番号、製造業者名を明瞭に表示しなければならない[3]。受入では、まず表示と発注書の呼び方を突き合わせる。

寸法は、平行ピンなら径を公差域クラスの範囲で測る。スプリングピンは外径の測り方が規格で決まっているので(最大は円周上の最大値、最小は 3 か所の平均値)、仕入先の成績書がどちらの値を示しているかを確かめる[3]。スプリングピンの検査は、寸法・硬さ・せん断強さ・外観の試験を行い、適合したものを合格とし、抜取検査方式は JIS B 1091 又は受渡当事者間の協定によるとされている[3]。せん断強さの試験は、呼び径 25 mm 未満のものについて、試験固定具の支持部の孔を呼び径寸法(寸法公差 H6)・硬さ 700 HV 以上とし、試験速度は 13 mm/min を超えてはならないなどの条件が決まっている[3]。成績書でせん断強さを見るときは、この条件で試験したものかを確かめる。

表面状態について、平行ピンとダウエルピンは、凹凸又は有害な欠陥があってはならず、ばりはピンのどの部分にもあってはならないとしている[1][2]。受入の基準は発注の時点で書面にしておき、受け取った後で厳しくしないこと(受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるか)。

よくある質問

平行ピンの m6 と h8 は、どちらを選べばよいか

規格はどちらも認めている[1]。穴の公差と組み合わせたときにしめしろを狙うのか、すきまを狙うのかで決まる。呼び径 6 mm で穴を H7 とすると、m6 のピンは組合せによってすきまにもしめしろにもなり、h8 のピンは必ずすきまになる(JIS B 0401-2 の値による計算)[4]。穴の公差とセットで設計者が決める。

スプリングピンの穴は H12 でなければならないか

JIS B 2808 は、取付孔の直径を呼び径と同じとし、寸法公差を H12 とすると定めている[3]。外径の値はこの穴に縮めて入れる前提なので、穴の公差を変えるなら、保持力やピンの割れについて設計で根拠を示す。

ステンレスのスプリングピンに替えても強度は同じか

同じとは限らない。溝付きの表のせん断強さは炭素鋼とマルテンサイト系ステンレス鋼に適用し、オーステナイト系ステンレス鋼には適用しない。二重巻きの表はオーステナイト系の値を下段に別に載せていて、上段より小さい(呼び径 6 mm の重荷重用で 30 kN に対し 23 kN)[3]。材料を替えるなら、必要な強度を満たす根拠を確かめる。

まとめ

ピンは、平行ピン(JIS B 1354)、ダウエルピン(JIS B 1355)、スプリングピン(JIS B 2808)で規格が分かれ、径の公差・穴の扱い・硬さが違う[1][2][3]。平行ピンとダウエルピンは穴の公差を設計で決め、スプリングピンは H12 の穴を前提にする。スプリングピンは種類の記号でせん断強さが決まり、軽荷重用は JIS と ISO 13337 で値が違う。めっきやりん酸塩皮膜を施すなら水素ぜい化防止の処理まで書き、寸法公差は処理前に適用されることを確かめる。

出典・参考資料

  1. JIS B 1354:2012 平行ピン(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2012 年 4 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 1355:2012 ダウエルピン(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2012 年 4 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS B 2808:2013 スプリングピン(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 1 月 21 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  4. JIS B 0401-2:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差の ISO コード方式-第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2016 年 3 月 22 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  5. JIS B 1044:2024 締結用部品-電気めっき皮膜システム(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2024 年 2 月 20 日改正)

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