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はめあい(H7/g6)を仕入先に伝えるとき——公差クラスだけでは測り方まで決まらない

この記事のポイント(結論先出し)
「φ25 H7」のような公差クラスは、許される寸法の幅は決めるが、何をもってその寸法とするか(測り方)までは決めていない。現行の JIS では、指定条件のないサイズは 2 点間サイズで判定するのが標準で、旧規格のように形状まで縛る「包絡の条件」は標準ではなくなった[1][3]。はめあいの機能に形状が効く部品では、包絡の条件の記号を付けるか、表題欄の近くで標準を変える指示を書く[3]。穴と軸を別々の仕入先に出すときは、それぞれの部品図に公差クラスを書き、受入の測定具まで決めておく。基準は発注時に書面で明示する[5]。
目次
公差クラスが決めること、決めないこと
穴と軸のはめあいの公差は、JIS B 0401-1(2016 年改正・ISO 286-1:2010 に一致)が方式を、JIS B 0401-2 が具体的な許容差の表を定めている[1][2]。公差クラスは、H7 や g6 のように、サイズ許容区間の位置を表す文字と、基本サイズ公差等級(IT7 など)の数字でできている[1]。
規格の定義で押さえておきたいのは次の二つである[1]。
- 基準穴(記号 H)は、下の許容差がゼロの穴。穴の下の許容サイズが図示サイズに一致する
- 基準軸(記号 h)は、上の許容差がゼロの軸。軸の上の許容サイズが図示サイズに一致する
つまり H7 の穴は図示サイズから大きい側に、h6 の軸は図示サイズから小さい側に許容区間がある。社内の資料や古い解説でこの向きを逆に覚えていると、許容差を手計算するときに上下が入れ替わる。発注書や見積の段階で数値に直すときは、規格の表から引く。
図示サイズ 25 mm で、規格の表から許容差を引くと次のとおりである[2]。
| 図示サイズ 25 mm(18 mm を超え 30 mm 以下の区分) | 上の許容サイズ(mm) | 下の許容サイズ(mm) |
|---|---|---|
| 穴 H7(ES +0.021/EI 0) | 25.021 | 25.000 |
| 軸 g6(es −0.007/ei −0.020) | 24.993 | 24.980 |
| 軸 h6(es 0/ei −0.013) | 25.000 | 24.987 |
| H7/g6 のすきま(計算) | 最大 0.041 | 最小 0.007 |
| H7/h6 のすきま(計算) | 最大 0.034 | 最小 0 |
ここまでは「寸法の幅」の話である。問題は、穴が楕円になっていたり、軸が曲がっていたりしたときに、それを公差の中と見るか外と見るかである。これを決めるのが、次に述べる「サイズの指定演算子」である。
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2016 年の改正で、標準の測り方が変わった
JIS B 0401-1 の序文は、旧規格(JIS B 0401-1:1998)ではサイズの標準的な当てはめ基準は包絡の条件だったが、JIS B 0420-1(ISO 14405-1)では2 点サイズを標準として採用していると説明している。そのうえで、このことは形状はもはやサイズの標準仕様によっては管理されないことを意味し、多くの場合、規格の直径公差だけでは意図したはめあいの機能を管理するには不十分で、包絡の条件が必要な場合もあるとしている[1]。
JIS B 0420-1 は、指定条件のないサイズの ISO 標準指定演算子を 2 点間サイズとすると定めている[3]。2 点間サイズは、ノギスやマイクロメータの 2 点で挟んだ寸法の考え方に近い。これで判定すると、断面が楕円や三角形の形に崩れていても、各所の 2 点間の寸法が許容区間に入っていれば合格になりうる。
包絡の条件は、形体がその最大実体寸法における完全形状の包絡面を超えてはならない条件である[3]。穴の場合、上の許容サイズには 2 点間サイズを、下の許容サイズには最大内接サイズ(穴に内接する最大の円筒の直径)を同時に当てる[3]。軸の場合は、下の許容サイズに 2 点間サイズを、上の許容サイズに最小外接サイズを当てる[3]。はめ合う相手が入るかどうかを、形の崩れまで含めて見る考え方である。
| 図面の書き方 | 穴 φ25 の判定に使うサイズ | 受入で合わせておくこと |
|---|---|---|
| φ25 H7(指定条件なし) | 上・下とも 2 点間サイズ | 測る断面の数と位置、測定具 |
| φ25 H7 に包絡の条件の記号 | 上は 2 点間サイズ、下は最大内接サイズ | 下側を何で見るか(通り側の栓ゲージ、三次元測定など) |
| 表題欄の近くで標準を包絡の条件に変更 | 図面全体のサイズが包絡の条件 | 指示が仕入先の図面のコピーにも残っているか |
JIS B 0420-1 は、図面全体の標準を変える場合は、表題欄の中またはその付近に「長さに関わるサイズ JIS B 0420-1」と、選んだ指定条件を書くとしている。例として、標準を包絡の条件に変える書き方を示している[3]。JIS B 0401-1 の附属書も、旧規格と同じ要求(テーラーの原理)を図面に書くには、公差の後に包絡の条件のような指定条件を付けなければならないとし、例として「φ30 H6」に包絡の条件の記号を付けたものを挙げている[1]。
古い図面を新しい仕入先に出すとき
ここが発注側にとって一番効く点である。2016 年より前の規格を前提に描かれた図面は、記号が無くても包絡の条件で読まれていた可能性がある。同じ図面を現行の規格で読む仕入先に出すと、2 点間サイズで判定され、形状の崩れた穴が合格になりうる。長年同じ仕入先で問題が出なかったのは、その仕入先が通り側のゲージで見ていたから、ということもある。仕入先を替えるとき、海外へ出すときは、はめあい部の判定方法を見積の段階で確かめる。図面を直すのは設計部門の仕事なので、食い違いを見つけたら設計に返す。
穴と軸を別々の仕入先に出すとき
はめあいを形成する形体にこの公差方式を使う前提は、穴と軸の図示サイズが同一であることである[1]。JIS B 0420-1 は、はめあいのサイズと公差を、誤った解釈を生じさせないようにしたうえで組立図に指示してもよいとしている[3]。社内では組立図に「H7/g6」と書いて済ませていることが多いが、穴の部品を A 社、軸の部品を B 社に出すときは、それぞれの部品図に H7 と g6 を分けて書く。組立図だけを根拠に発注すると、どちらの部品にどちらの公差が掛かるかを仕入先が読み取る必要が出る。
二つの部品が別々の会社で作られると、測り方の食い違いも二重になる。A 社は穴を 2 点間サイズで、B 社は軸をマイクロメータで、それぞれ合格にしても、組み合わせて入らないことがある。原因は、上で見た形状の扱いのほかに、測定のときの温度である。JIS B 0401-1 は、はめあいの完全な技術的定義を得るには、形状・姿勢・位置の偏差、表面性状、材料、温度、熱処理などの影響も考慮しなければならず、形状・姿勢・位置の公差がサイズ公差の補助として必要になる場合があるとしている[1]。幾何公差の測り方の合わせ方は幾何公差の測り方を仕入先と合わせるで、表面の粗さの指定と測定条件は表面粗さの指定と測定条件で扱っている。複数の部品の公差を積み上げて確かめる手順は別々の仕入先に出す前に公差の積み上げを確かめるで扱う。
穴基準か軸基準か——発注側が知っておく理由
JIS B 0401-1 は、穴基準と軸基準のどちらを選んでも部品の機能に技術的な違いはなく、はめあい方式は経済性で選ぶのがよいとし、一般的な使用には穴基準はめあい方式を選ぶのがよいとしている。その理由として、工具(例としてリーマ)とゲージの不要な重複を避けられることを挙げ、軸基準は経済的な利点が確実にある場合にだけ用いるのがよいとしている[1]。
発注側にとっての意味は、軸基準の図面(穴が F7、G7、K7 などになっている図面)は、仕入先によって工具やゲージの手持ちが無いことがあるという点である。見積の段階で、その公差クラスの穴を何で加工し何で測るかを聞いておくと、後で「ゲージを新しく作る費用」が別に出てくるのを防げる。規格は推奨するはめあいの組合せを穴基準・軸基準それぞれについて示しているので[1]、推奨の外の組合せが図面にあれば、理由を設計に確かめる価値がある。
転がり軸受のはめあいは別の規格を見る
軸受の内輪と外輪には軸受側の公差があり、相手の軸と穴の公差クラスは JIS B 1566 が一般的な基準を示している。たとえば内輪に対して荷重の作用線が回転する「内輪回転荷重」では r6・p6 などしまりばめの側を含む軸の公差クラスを、荷重の作用線が回転しない「内輪静止荷重」では g6・f6 などすきまばめまたは中間ばめの側の公差クラスを挙げている[4]。同じ軸受でも荷重の掛かり方で軸の公差が変わるので、軸受まわりの軸と穴を発注するときは、どちらの条件で選んだ公差なのかを図面か仕様書に書いておく。軸受そのものの指定は軸受を型番で買うとき・指定するときで、キー溝の公差はキー・キー溝の寸法と公差の指定で扱う。
発注書と購買仕様書に書くこと
はめあい部を持つ部品を外に出すときは、図面の公差クラスに加えて、次を書面で合わせておく。
- はめあい部のサイズを 2 点間サイズで判定するのか、包絡の条件で判定するのか(図面の記号と表題欄の指示を確かめる)
- 受入で使う測定具(栓ゲージ・リングゲージ、シリンダゲージ、三次元測定機など)と、測る断面の数と位置
- 測定の温度条件と、測るまでの置き時間
- はめあい部の形状・姿勢の公差が図面に無いとき、それで足りているか(設計への確認)
- 検査記録に何を残すか(各断面の値か、合否だけか)
中小受託取引適正化法(取適法)がかかる取引について、公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、検査基準が明確でないため委託内容と違うことが明らかでない場合や、発注後に基準を恣意的に厳しくした場合には、それを理由に受領を拒むことは認められないとしている[5]。はめあいで言えば、2 点間サイズで合格したものを、受入で包絡の条件に切り替えて不合格にするのは、後から基準を動かすことになりかねない。測り方は発注の時点で決める。図面だけで伝わらない項目の書き方は購買仕様書の書き方で、普通公差の等級指定は普通公差(JIS B 0405)の等級指定で扱っている。
よくある質問
仕入先から「H7 は栓ゲージの通り・止まりで見ている」と言われた
通り側の栓ゲージは、穴に入る最大の円筒を確かめる道具なので、包絡の条件の下側の判定に近い。止まり側の栓ゲージは上の許容サイズの側を見る。図面が 2 点間サイズ(指定条件なし)のままなら、ゲージで合格でも 2 点間で外れる、逆にゲージで止まっても 2 点間では合格、という食い違いが理屈の上では起こりうる。どちらで判定するかを図面の指示に合わせて決めておく。
三次元測定のレポートで、穴径が「最小二乗円」で出てくる
最小二乗サイズは、JIS B 0420-1 が定めるサイズの一つで、2 点間サイズとも最大内接サイズとも違う[3]。図面の指示と違う当てはめで出された値で合否を決めない。三次元測定のデータを求めるときの条件は三次元測定(CMM)のデータを仕入先に求めるときで扱う。
図面に公差クラスではなく ±0.01 のような数値が書いてある
数値で書いた許容差も、指定条件がなければ同じく 2 点間サイズが標準である[3]。書き方が数値か記号かで、測り方の扱いは変わらない。
まとめ
はめあいの公差クラスは寸法の幅を決めるが、測り方は決めない。現行の JIS では、指定条件のないサイズは 2 点間サイズで判定するのが標準で、形状まで縛るには包絡の条件の記号か、表題欄付近での標準の変更が要る。2016 年より前の規格を前提にした図面を新しい仕入先に出すときは、はめあい部の判定方法を見積の段階で確かめる。穴と軸を別々に出すときは部品図ごとに公差クラスを書き、受入の測定具・断面・温度・記録まで発注書と購買仕様書で合わせておく。
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出典・参考資料
- JIS B 0401-1:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-第1部:サイズ公差,サイズ差及びはめあいの基礎(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2016 年 3 月 22 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
- JIS B 0401-2:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会)
- JIS B 0420-1:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2016 年 3 月 22 日制定・2025 年 6 月 20 日確認)
- JIS B 1566:2015 転がり軸受-取付関係寸法及びはめあい(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 3 月 20 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
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