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投稿日:2026年10月1日

幾何公差の測り方を仕入先と合わせる——データム・評価方法・食い違いの扱い

この記事のポイント(結論先出し)

幾何公差は図面で「何を満たすべきか」を決めるが、どう測るかまでは一つに決めていない。データムの規格自体が、検証の方法は物理的にも数学的にもさまざまな形をとりうるとして、対象外にしている[1]。実際、測定方法の指定がないと、同じ測定データからでも検査者によって照合結果が変わる[2]。食い違いが起きるのは、データムの取り方、測る点と断面、評価の計算方法、フィルタ、測定機の種類である。発注前に測定方法を書面で合わせ、公差の境目付近の値をどう判定するかも決めておく[4]。値が合わないときは、同じ部品と同じ手順で測り直して原因を一つずつ切り分ける。

幾何公差の規格は、測り方を一つに決めていない

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平面度・直角度・位置度・同軸度のような幾何公差は、寸法公差よりも設計の意図をはっきり伝えられる。その一方で、受入検査で仕入先と値が合わない、という相談が最も多いのも幾何公差である。原因の多くは、加工の精度ではなく測り方の違いにある。

データムとデータム系を定める国際規格 ISO 5459:2024 は、データムやデータム系を確立するための仕様の側の手順(仕様オペレータ)を定める一方で、検証の側の手順(検証オペレータ)は物理的にも数学的にもさまざまな形をとりうるとし、この規格の対象ではないと明記している[1]。図面に書かれたデータムが「何を意味するか」は規格で決まっていても、「どの道具で、どの点を取って、どう計算して確かめるか」は、規格を読むだけでは決まらない、ということである。

産業技術総合研究所の研究者による解説は、検査図などで照合方法に特定の指定がない場合、データ処理の内容は測定する人の裁量に任されていることが多いと書いている[2]。そのうえで、同じ部品の同じ測定データを、公設試験研究機関や民間企業でよく使われている位置合わせの手法で設計データと照合すると、手法によって結果が違って見える例を示し、同じデータを使っても検査者によって照合結果が異なると指摘している[2]。測定機を揃えても、データの扱い方が揃っていなければ値は揃わない。

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食い違いが起きる場所

発注側と仕入先で幾何公差の値が合わないとき、違いが出ている場所は次のどれかであることが多い。

違いが出る場所 何が起きるか 合わせておくこと
データムの求め方 測定点に外接する形体を使うか、最小二乗で求めた形体を使うかで結果が変わる[2] データムを求める計算方法
データムの優先順 優先順のあるデータムは、図面の順番どおりに読んで当てることが求められる[5] 図面の順に従って当てること
使う点の範囲 角の丸みや面のダレを含めると、データムの位置や姿勢が実形状と大きく違うことがある[2] 縁から除く幅、データムターゲットの扱い
測る断面と点数 振れや同軸度は、測る高さや断面の数に依存した結果になる[3] 断面の位置・数、1 周あたりの点数
評価の計算方法 真円度は基準円の求め方が 4 通りあり、同じ測定から別の値が出る[3] どの基準円で評価するか
フィルタ 1 周あたり何山までの成分を残すかで、拾う凹凸が変わる[3] フィルタの値
置き方 偏心や傾きが大きいと、計算上の誤差として値に表れる[3] 芯出し・傾き調整の許容範囲
測定機の種類 定盤とダイヤルゲージ、接触式の三次元測定機、非接触の測定機で、データムの作り方が違う[2] 使う測定機と、その場合のデータムの作り方

データムの求め方

データムは、測定のときの基準となる面・線・点である。産業技術総合研究所の講座資料は、製品の面がデータム形体であり、測定具(定盤など)が実用データムであると整理し、実用データムは理想の形状であることを求めている[5]。定盤に部品を置いてダイヤルゲージで測る昔ながらのやり方では、定盤そのものがデータムの役を担う。

三次元測定機で点を取って計算する場合は、データムを計算で作ることになる。前出の解説は、一意的でばらつきの少ないデータム系を作りたい立場では測定データから求めた最小二乗の形体をデータムとし、定盤のような実用データムとの互換性を重視する立場では測定データに外接する形体をデータムとすると説明している[2]。そして、「測定データに外接する」形体と「測定データを採取した実体に外接する」形体とは必ずしも一致しないことに注意を促している[2]。発注側は定盤で測り、仕入先は三次元測定機の最小二乗で測っていれば、値が違って当然ということになる。

同じ解説は、データムターゲットが指定されていない場合、規格上はデータムに指定された要素に含まれるすべての点を使ってデータムを求めるが、部品の縁は角の丸みや面のダレで設計データから大きくずれることが多く、そうした領域まで含めるとデータムの位置や姿勢が実形状と大きく異なる場合があるとしている[2]。そのため縁の領域を除いてデータムを求める処理を行う例を示し、除外する幅は接触式で測れない幅や、指示のない角の丸みの大きさを参考に決めたとしている[2]。この「どこを除くか」は、図面にはまず書かれていない。

評価の計算方法とフィルタ

真円度を例にとる。真円度測定機の解説によれば、真円度の求め方には基準円の取り方によって、最小領域、最小二乗、最小外接、最大内接の 4 つの方法がある[3]。規格の定義(同心の二円で挟んだときに間隔が最小となる半径差)に当たるのは最小領域の方法で、他の方法は別の用途で使い分けられ、たとえばピンとリングのはめあい部品ではピンに最小外接、リングに最大内接を使うといった例が挙げられている[3]。同じ測定データでも、どの方法で計算したかで値は変わる。

測定データには、1 周あたり何山までの成分を通すかを決めるフィルタも掛かる。解説では、たとえばカットオフ値 50 UPR(1 周あたり 50 山までの成分を通す)のように表し、フィルタの値と 1 周あたりの最小データ数、ワークの径と測定子の先端半径の比の関係が TS B 0027-2:2010 に定められているとして、次の表を示している[3]。

フィルタ値(UPR) 1 周あたりの最小データ数(点) 最小 d / rt 比
15 105 5
50 350 15
150 1,050 50
500 3,500 150
1,500 10,500 500

d は基準円または円筒形体の直径、rt は測定子の先端半径である[3]。点数の条件は、評価したい山 1 つあたり少なくとも 7 点のデータを取るためと説明されている[3]。仕入先が 1 周 100 点ほどで測っている場合、50 UPR の条件は満たせない。数字の大小より、条件をそろえているかどうかが問題になる。

測る断面と置き方

同じ解説は、真円度測定機で円周振れ・同軸度・直角度などを評価する場合も、1 つの断面の円周をなぞったデータから計算していることを理解して使う必要があり、断面の中心を使うか全データから軸を決めるかで差が出るため、結果は測定の要素(高さの位置、断面の数)に依存すると注意している[3]。また、ワークの偏心が大きい場合や、回転軸に対してワークが傾いて置かれた場合には、計算上の誤差が値に表れ、傾きによる誤差はワークの径が大きいほど大きくなるとしている[3]。

発注前に仕入先と合わせること

以下は規格の要求ではなく、受入で揉めないための実務の提案である。図面とは別に、測定の手順を書いた書類(検査図、測定指示書など)を用意し、発注の条件として渡す。

1. 測定機と、その場合のデータムの作り方
定盤と測定具で当てるのか、三次元測定機で計算するのか。計算するなら外接か最小二乗か、縁から何 mm を除くか、データムターゲットをどう扱うかを書く[2]。

2. データムを当てる順番
複数のデータムが指定されている図面では、図面の優先順に従って当てることを確認する[5]。仕入先が段取りの都合で順番を入れ替えていないかを、初回の測定で確かめる。

3. 測る断面・点数・評価方法・フィルタ
真円度・円筒度・振れなどは、断面の位置と数、1 周あたりの点数、基準円の方法、フィルタ値を書く[3]。

4. 報告の様式
成績書に、測定値だけでなく、使った測定機、データムの作り方、評価方法を書いてもらう。三次元測定機を使う場合は、測定プログラムの設定内容(点の配置、計算方法)も初回に出してもらうと、次のロットで条件が変わっていないかを確かめられる。成績書の記載項目は試作部品の試験成績書の記事で整理している。

5. 初回品で双方が同じ部品を測る
量産を始める前に、同じ部品を発注側と仕入先の両方で測り、値の差を確かめておく。初回品の検査の進め方は初回サンプル検査(FAI)に、量産前に何を出させて承認するかは同じシリーズの量産開始前の承認で仕入先に出させるものにまとめる。

データムが無い幾何公差もある

すべての幾何公差にデータムが要るわけではない。講座資料は、真直度・平面度のような形状公差は単独の形体に対する公差でデータムが不要だと整理している[5]。データムが無い公差でも、どの点を取ってどう計算するかの問題は残るので、評価の方法は同じように合わせておく。

公差の境目付近の値をどう判定するか

測定には必ず不確かさがある。公差の上限ぎりぎりの値が出たとき、それを合格とするか不合格とするかは、測定の不確かさをどう扱うかで変わる。ISO 14253-1:2017 は、ワークの特性が公差に適合しているか・適合していないかを検証するための判定の規則を、測定値が仕様の限界の近くにある場合も含めて、測定の不確かさを考慮して定める規格である[4]。

実務では、発注側と仕入先が別々の考え方で境目の値を扱っていると、一方は合格、他方は不合格という結論になる。境目付近の判定を規格の規則に従うのか、当事者間で別に決めるのかを、発注前に合意しておく。この規格は有償で、判定の規則の具体的な中身は規格本文で確かめる必要がある。

値が合わないときの進め方

受入で測った値が仕入先の成績書と合わないときは、どちらの値が正しいかを最初に争わない。次の順で原因を切り分ける。

  1. 同じ 1 個の部品を往復させ、双方で測る(ロットの別の部品で比べない)
  2. 測定機、データムの作り方、当てた順番、除外した範囲、断面と点数、評価方法、フィルタを表にして並べる
  3. 違っていた条件を、合意した方法にそろえて測り直す
  4. それでも差が残るなら、測定機の校正状態と測定の不確かさを確かめる
  5. 決めた方法を測定指示書に書き、次のロットから同じ照合を繰り返さない

前出の解説は、測定データと設計データの照合方法が定まらないと、測定データをもとに加工の工程をどう直せばよいかのフィードバックができず、測定データの処理方法の標準化が重要だと結んでいる[2]。測り方の合意は、合否の争いを避けるためだけでなく、仕入先の工程改善に測定結果を使えるようにするためにも要る。

測り方を後から変えて不合格にしない

測定方法は検査基準の一部である。取適法が適用される取引について、同法のテキストは、発注の後に検査基準を恣意的に厳しくし、それまでの基準で合格だったものを不合格とすることは、受領を拒む理由として認められないとしている[6]。委託した内容がはっきり示されておらず、納入品が委託内容と違うのかどうかが明らかでない場合も同様である[6]。値が合わなかったことをきっかけに、より厳しい測り方へ一方的に切り替えて不合格にするのは避け、変えるなら次の発注から、合意のうえで変える。受領拒否とやり直しの範囲は受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるかで扱っている。

よくある質問

仕入先に三次元測定機が無い

定盤と測定具で測る方法でも、データムの当て方と測る位置を決めておけば、判定はできる。発注側が三次元測定機で測るなら、仕入先の方法と結果がどの程度ずれるかを初回品で確かめ、どちらの方法で判定するかを合意する。

図面のデータムと、加工のときの基準面が違う

加工の都合で別の面を基準にすることはあるが、測定は図面のデータムに従う。加工と測定の基準が違う場合は、その差がどこで吸収されているかを仕入先に説明してもらう。普通公差で決まっている寸法との関係は、同じシリーズの普通公差の等級指定で扱う。

表面の粗さが幾何公差の値に効いているように見える

測定点の取り方やフィルタによっては、細かい凹凸の影響を拾う。粗さの測定条件の合わせ方は、同じシリーズの表面粗さの指定と測定条件で扱う。

まとめ

幾何公差の規格は、図面で何を要求するかを決めるが、検証の方法までは一つに決めていない。データムを外接で求めるか最小二乗で求めるか、縁をどこまで除くか、どの断面を何点で測るか、どの基準円で評価するか、どのフィルタを使うかで値は変わる。発注前に測定指示書で方法を合わせ、境目付近の判定の考え方も決めておく。値が合わないときは同じ部品で条件を一つずつそろえて測り直し、決めた方法を記録に残す。測り方を後から一方的に厳しくして不合格にしないことも、発注側が守る線である。

出典・参考資料

  1. ISO 5459:2024 Geometrical product specifications (GPS) — Geometrical tolerancing — Datums and datum systems(国際標準化機構(ISO)/2024 年 10 月発行)
  2. 佐藤理「入門:3D-CAD データと非接触 3D 測定データとの照合/検証」精密工学会誌 Vol.84, No.9(精密工学会/2018 年)
  3. 大森義幸「はじめての真円度測定」精密工学会誌 Vol.82, No.9(精密工学会/2016 年)
  4. ISO 14253-1:2017 Geometrical product specifications (GPS) — Inspection by measurement of workpieces and measuring equipment — Part 1: Decision rules for verifying conformity or nonconformity with specifications(国際標準化機構(ISO)/2017 年 10 月発行)
  5. 北條恵司「機械設計製図の幾何公差(GPS)の基礎講座」(国立研究開発法人産業技術総合研究所/2023 年 4 月)
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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