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投稿日:2026年10月2日

キーとキー溝の寸法・公差の指定——JIS B 1301 の種類とはめあいの選び方

この記事のポイント(結論先出し)

キーとキー溝は JIS B 1301 が寸法と許容差を定めているが、同じ呼び寸法のキー溝でも「滑動形・普通形・締込み形」のどれを選ぶかで溝幅の公差クラスが変わる[1]。軸を A 社、ハブ(歯車・プーリなど)を B 社に出すときは、溝の寸法を規格に任せず、どの結合かと、軸側・ハブ側それぞれの公差クラスを部品図に書く。普通形と、ハブを締め込む形の締込み形には、選択はめあいが必要だと規格は注記している[1]。キー本体は呼び方・端部の形・材料を指定し、引張強さ 600 N/mm² 以上などの品質は規格の試験方法で確かめる[1][4]。溝幅は相対する平行二平面のサイズなので、測り方も決めておく[2][3]。

JIS B 1301 が決めている範囲

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JIS B 1301 は、一般の機械に用いる鋼製の平行キー、こう配キー、半月キーと、それに対応するキー溝について規定している。キーは形状によって 6 種類に分け、平行キー(ねじ用穴なし P・ねじ用穴付き PS)、こう配キー(頭なし T・頭付き TG)、半月キー(丸底 WA・平底 WB)としている[1]。

現行の規格は 1996 年版の本体に、2009 年の追補 1 が加わった形である。追補は、引用する表面粗さ測定機の規格名を改め、半月キーの表面粗さの書き方を「両側面は Ra1.6、その他は Ra6.3」のように直している[1]。本体の内容(寸法・許容差・結合の種類)は 1996 年版のままなので、古い図面に「JIS B 1301」とだけ書かれていても、寸法の読み替えは基本的に要らない。

規格が決めているのは、キー本体の形状・寸法・許容差・品質、キー溝の幅と深さとその許容差、測定方法、呼び方、包装の表示である[1]。逆に言えば、キー溝が軸の中心に対してどれだけ偏ってよいか、溝の長さや端の形をどうするかは、規格の表の外にある。こうした要求は設計が図面に書くもので、図面に無ければ仕入先の加工の都合で決まる。

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結合の三つの形式で、溝幅の公差が変わる

JIS B 1301 は、キーと軸・ハブの関係を、キー溝の寸法許容差の選び方で三つの結合に分けている[1]。

  • 滑動形: 軸とハブが相対的に軸方向に滑動できる結合(平行キー)
  • 普通形: 軸に固定されたキーにハブをはめ込む結合(平行キー、半月キー)
  • 締込み形: 軸に固定されたキーにハブを締め込む結合、または組み付けた軸とハブの間にキーを打ち込む結合(平行キー、こう配キー、半月キー)

このうち普通形と、締込み形のうち軸に固定したキーにハブを締め込む結合には「選択はめあいが必要である」と注記されている[1]。締込み形でも、組み付けた軸とハブの間にキーを打ち込む結合には、この注記は付いていない[1]。キーと溝を規格の寸法どおりに作れば必ず狙ったはめあいになる、という前提ではないということである。

平行キーの呼び寸法 8×7(適応する軸径の目安は 22 mm を超え 30 mm 以下)について、規格の表から溝の許容差を抜き出すと次のとおりである[1]。

平行キー 8×7 のキー溝(基準寸法 8 mm) 軸の溝幅 b1 ハブの溝幅 b2
滑動形 H9:+0.036/0 D10:+0.098/+0.040
普通形 N9:0/−0.036 Js9:±0.018
締込み形 P9:−0.015/−0.051 P9:−0.015/−0.051
溝の深さ(基準寸法と許容差) t1=4.0(+0.2/0) t2=3.3(+0.2/0)
キー本体(参考) 幅 b=8(h9:0/−0.036)、高さ h=7(h11:0/−0.090)

同じ「8 mm のキー溝」でも、滑動形のハブ側は大きい方に 0.040〜0.098 mm、締込み形は小さい方に 0.015〜0.051 mm と、許容区間の位置がまったく違う。図面に「キー溝 JIS B 1301 による」とだけ書いて、どの結合かを書かないと、仕入先は三つのうちどれで加工するかを自分で選ぶことになる。軸とハブを別々の仕入先に出していると、片方が普通形、もう片方が滑動形で作る、ということが起こりうる。

表の文字記号(H9、N9、Js9 など)は、はめあいの公差クラスと同じ ISO コード方式の記号である。この方式は円筒だけでなく、溝の幅やキーの厚さのような「相対する平行二平面」にも、穴・軸という言葉を簡易的に当てて使うと JIS B 0401-1 が説明している[2]。はめあいの記号の読み方と、図面への書き方ははめあいの指定と測り方で扱う。

適応する軸径は「目安」

規格の表にある「適応する軸径」は参考として示されたもので、キーの強さに対応するトルクから求めた一般用途の目安だと注記されている。キーの大きさが伝達トルクに対して適切なら、適応する軸径より太い軸に使ってもよく、その場合はキーの側面が軸とハブに均等に当たるよう溝の深さ t1・t2 を修正するのがよいとしている。適応する軸径より細い軸には用いないほうがよいとしている[1]。

発注側にとっては、図面の溝の深さが規格表の値と違っていても、それが誤記とは限らないということである。太い軸に小さめのキーを使う設計では、深さを修正していることがある。仕入先から「規格と違う」と問い合わせが来たら、設計に意図を確かめてから回答する。

キー本体を発注するときの指定

キーは市販の規格品として買うことも、部品図を出して作らせることもある。JIS B 1301 による呼び方は、規格番号、種類(または記号)、呼び寸法×長さである。例として「JIS B 1301 ねじ用穴なし平行キー 両丸形 25×14×90」、記号では「JIS B 1301 P-A 25×14×90」が示されている[1]。

押さえておく点は次のとおりである[1]。

  • 平行キーの端部は形状によって 3 種類に分かれ(呼び方の例には両丸形がある)、指定がない場合は両角形になる。丸形の端部は受渡当事者間の協定で大きい面取りにしてもよい
  • 平行キーの長さは規格の推奨値(6、8、10 … 400 mm)から選ぶのがよく、長さの許容差は h12
  • 幅の許容差は h9 が標準で、より小さい公差のキーが必要な場合は幅を h7 とする(参考)
  • 括弧を付けた呼び寸法(7×7、15×10 など)は対応国際規格に無いので、新設計には使わない
  • 包装には、種類、呼び寸法×長さ、端部の形状(平行キー)、材料記号、製造業者名を表示する

キー溝の端が丸い(エンドミルで加工した)溝に両角形のキーを入れると、角が当たって入らない。図面の溝端の形と、買うキーの端部の形が合っているかは、発注の前に確かめる。面取りの指示の読み方は図面のエッジ・バリ・面取り指示で扱っている。

キーの品質と試験

規格は、キーの外観に割れや有害なきず・まくれ・さびがあってはならず、引張強さは 600 N/mm² 以上でなければならないとしている。引張強さは JIS Z 2241 によって測定する[1]。JIS Z 2241 は金属材料の引張試験方法の規格で、本体は 2022 年に改正され、2023 年に追補 1 で一部が改正されている[4]。キーを規格品として買うなら、材料記号と、引張強さを何で確かめるか(材料の検査証明書か、製品からの試験か)を発注時に決めておく。

受入での測り方——測る場所が決まっている

JIS B 1301 は、平行キーとキー溝の寸法の測り方を具体的に決めている[1]。

  • キーの幅と高さは、長さ 20 mm 以下なら任意の 1 か所、20 mm を超え 100 mm 以下なら任意の 2 か所、100 mm を超えるものは任意の 3 か所で測る
  • キーの真直度は、長さが幅の 5 倍を超えるものについて、幅方向と高さ方向で、両端に対する中央付近の出っ張りやへこみを測る
  • 軸のキー溝の幅と深さはキーと同じ考え方の箇所で、ハブのキー溝の幅と深さは両端部付近で測る
  • こう配キーとその溝のこう配は、1/100 のこう配をもつ測定用ブロックを当てて、両端付近の高さから求める

もう一つ合わせておきたいのが、溝幅を何で測るかである。溝幅は相対する平行二平面のサイズで、現行の JIS では、指定条件のないサイズは 2 点間サイズで判定するのが標準とされている[3]。ノギスの内側の爪で 2 点を挟んで測った値と、ブロックゲージやピンゲージを差し込んで通るかどうかを見た結果は、溝の壁が傾いていたりうねっていたりすると一致しない。受入でどちらで判定するかは、発注の時点で仕入先と合わせる。複数の部品の公差がキー溝の位置で積み上がる組立なら、公差の積み上げの確かめ方も参照してほしい。

発注書と図面に書くこと

キーとキー溝まわりで、図面か購買仕様書に書いておきたい項目をまとめると次のようになる。

  1. 結合の形式(滑動形・普通形・締込み形)と、軸側・ハブ側それぞれの溝幅の公差クラス
  2. 溝の深さ(規格表と違う場合は設計の意図)
  3. 溝の長さ、端の形、軸心に対する溝の位置の要求(規格の表の外の項目)
  4. キー本体の呼び方(種類・端部・呼び寸法×長さ)と材料、幅を h7 にするかどうか
  5. 普通形、またはハブを締め込む締込み形で選択はめあいをするなら、その方法と誰が行うか
  6. 受入での測定箇所と、溝幅を判定する測定具

中小受託取引適正化法(取適法)がかかる取引では、検査基準があいまいで委託内容と違うとはっきりしないものや、発注後に恣意的に厳しくした基準で落としたものについて、受領を拒むことは認められないと、公正取引委員会と中小企業庁のテキストは説明している[5]。キー溝でいえば、結合の形式を書かずに発注し、組立で入らなかったからといって不合格にするのは、基準を後から決めることになりかねない。図面に書き切れない項目は購買仕様書の書き方を参考に、図面の一般注記の書き方は図面の一般注記に何を書くかを参考に整理するとよい。

よくある質問

海外の仕入先から「ISO のキー溝で作ってよいか」と聞かれた

JIS B 1301 は対応国際規格(ISO/R 773、ISO/R 774、ISO 3912)を挙げているが、括弧付きの呼び寸法のように国際規格に無いものも含んでいる[1]。図面が括弧付きの寸法を使っていないか、結合の形式と公差クラスが図面に書かれているかを確かめたうえで、どちらの規格で作るかを書面で決める。

ハブの溝が狭くて入らないと組立部門から言われた

まず図面の結合の形式と公差クラスを確かめ、軸とハブがそれぞれどの公差で作られたかを検査記録で照合する。普通形か、ハブを締め込む形の締込み形なら、規格は選択はめあいを前提にしているので[1]、選択をどこで行う取り決めだったかも確かめる。

半月キーの「適応する軸径」が表によって違って見える

半月キーの参考表は、軸径の目安を三つの系列で示している。系列 1 はキーでトルクを伝える結合、系列 2 は軸とハブをしまりばめにしてキーでは位置決めだけをする場合に適応し、系列 3 はキーのせん断強さ(表に示すせん断断面積)に対応する[1]。同じキーでも用途で目安が変わるので、どの系列で選んだかを設計に確かめる。

まとめ

キーとキー溝は JIS B 1301 で寸法が決まっているが、同じ呼び寸法でも結合の形式で溝幅の公差クラスが変わる。軸とハブを別々に出すときは、結合の形式と軸側・ハブ側の公差クラスを部品図に書く。普通形と、軸に固定したキーにハブを締め込む締込み形は、選択はめあいが前提である。キーは呼び方・端部の形・材料を指定し、端部を書かなければ両角形になる。受入は規格の測定箇所で測り、溝幅の判定に使う測定具を発注の時点で合わせておく。

出典・参考資料

  1. JIS B 1301 キー及びキー溝(1996 年版本体と 2009 年追補 1・JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2009 年 3 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 0401-1:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-第1部:サイズ公差,サイズ差及びはめあいの基礎(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2016 年 3 月 22 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  3. JIS B 0420-1:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2016 年 3 月 22 日制定・2025 年 6 月 20 日確認)
  4. JIS Z 2241:2022 金属材料引張試験方法(追補 1:2023)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 8 月 21 日改正)
  5. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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