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投稿日:2026年10月16日

ボルトの締付けトルクの決め方——JIS B 1083 のトルク係数と目標軸力、トルク表の限界

この記事のポイント(結論先出し)

ボルトの締付けトルクは、それ自体が目的ではなく、ボルトに生じる締付け力(軸力)を間接的に管理するための指標である。JIS B 1083 は、締付けトルクと締付け力の関係を「トルク係数×締付け力×ねじの呼び径」で表し、トルク法では締付けトルクの 90 % 前後がねじ面と座面の摩擦で消費されると書いている[1]。だから同じトルクでも、潤滑やめっきが変われば軸力は大きく変わる。目標トルクは、設計で決めた締付け力の上限と下限、または降伏締付け軸力から、実際の部品のトルク係数とトルクレンチのばらつきを見込んで決める[1]。発注では、ボルトの強度区分だけでなく、表面処理・潤滑の状態、必要ならトルク係数の範囲とその試験方法(JIS B 1084)を指定する[2][4]。トルク表は、前提にした摩擦係数・強度区分・締付け力の取り方が自社の条件と同じときだけ使える。

「M10 は何 N·m で締める」とだけ決めると、何が決まっていないか

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締付けトルクの数値は、作業標準書や図面の注記に「M10:○○ N·m」のように書かれていることが多い。だが、その数値で締めたときにボルトにどれだけの締付け力が生じるかは、トルクの数値だけでは決まらない。JIS B 1083(ねじの締付け通則)は、トルク法について、締付け作業時に締付けトルクだけを管理するので特殊な締付け用具を必要としない簡便な方法だとしたうえで、締付けトルクの 90 % 前後はねじ面と座面の摩擦によって消費されるため、初期締付け力のばらつきは締付け作業時の摩擦特性の管理の程度によって大きく変化すると書いている[1]。

つまり、締付けトルクの指示は「ボルトにこれだけの力を与えたい」という設計の意図を、摩擦の条件を前提にして工具の設定値に翻訳したものである。前提の摩擦の条件(めっきの種類、潤滑剤の有無、座金や被締結部材の表面)が変われば、同じトルクでも締付け力は変わる。購買の立場で問題になるのは、ボルトの仕入先やめっきの仕様を変えたときに、この前提が黙って崩れることである。

しかも、ボルトの機械的性質を決める規格は、この関係を保証していない。JIS B 1051(ISO 898-1 に一致)は適用範囲の中で、トルク又は締付け力の性能について規定しないとし、試験方法は JIS B 1084 を参照するよう書いている[6]。強度区分 8.8 のボルトを買っても、「このトルクで締めればこの軸力になる」ことは強度区分からは出てこない。強度区分そのものの指定はボルトの強度区分と規格の指定で扱った。この記事は、締付けトルクの決め方と、そのために発注・受入で押さえることに絞る。

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締付けトルクと締付け力をつなぐ「トルク係数」

JIS B 1083 は、ボルトが降伏しない範囲で締め付ける弾性域締付けについて、締付けトルク T と締付け力 F の関係を、T=K×F×d(K はトルク係数、d はねじの呼び径)で表している[1]。トルク係数は、締付けトルクと締付け力との関係を表す比例定数と定義され、ねじのピッチ・有効径・ねじ面の摩擦係数・座面の摩擦係数・座面の摩擦に対する直径から計算できる[1]。締付け試験の規格である JIS B 1084(ISO 16047 に一致)も、トルク係数を K=T/(F×d) として求めるとしている[2]。

JIS B 1083 の附属書 A(参考)は、並目ねじの六角ボルト・ナットについて、ねじ面と座面の摩擦係数の組合せごとのトルク係数の計算例を表にしている[1]。ねじ面と座面の摩擦係数をどちらも同じ値とした場合を抜き出すと、0.10 のとき 0.138、0.15 のとき 0.196、0.20 のとき 0.254 である[1]。摩擦係数が 0.10 から 0.20 に変わるだけで、トルク係数は 1.8 倍以上になる。同じトルクで締めれば、締付け力はその逆数の割合で小さくなる。

締付け力のばらつきの大きさを表す指標として、JIS B 1083 は締付け係数 Q(初期締付け力の最大値と最小値の比)を使い、代表的な締付け管理方法ごとに参考値を示している[1]。

締付け管理方法 締付け指標 締付けの領域 締付け係数 Q(参考値)
トルク法 締付けトルク 弾性域 1.4〜3
回転角法 締付け回転角 弾性域/塑性域 1.5〜3/1.2
トルクこう配法 締付け回転角に対する締付けトルクのこう配 弾性限界 1.2

表は JIS B 1083 の表 2 による[1]。規格はこの値に注を付け、実際の締付け力のばらつきは各方法に関与する固有の因子で大きく変化するので、範囲を厳密に示すことはできないとしている[1]。Q が 3 なら、同じ手順で締めても締付け力の最大は最小の 3 倍になりうる、という意味である。トルク法で軸力を狭い範囲に収めたいなら、トルクの数値を細かく決めることより、摩擦のばらつきを小さくする(潤滑剤や表面処理をそろえる)ことのほうが効く。

目標トルクは、締付け力の範囲から逆算して決める

JIS B 1083 は、トルク法の目標締付けトルクを決める代表的な方法を、設計段階で何が与えられているかで分けて示している[1]。

締付け力の下限値と上限値が決まっている場合

設計で締付け力の下限値 FL と上限値 FH が示されている場合、まず対象の部品のトルク係数の最小値と最大値を見積もる。見積もり方は三通りあり、JIS B 1084 の方法で各試料のトルク係数を実測して統計的に推定する方法、表面状態と潤滑条件が実際と同じとみなせる既存のトルク係数のデータを使う方法、既存の摩擦係数のデータからトルク係数を計算する方法である[1]。次に、締付け用具や締付け停止によるトルクのばらつきを考えたうえで、トルク係数の最大と最小の比が、FH と FL の比から決まる条件を満たすかを確かめる[1]。満たさない場合について、規格は例えば潤滑剤の種類を変更するなど、トルク係数の最大と最小の比を小さくする方策を取るとしている[1]。条件を満たしたら、トルク係数の最小値と締付け力の上限値から、工具のばらつき分を差し引いて目標トルクを求める[1]。

ここで大事なのは、手順の最初が「トルクの表を引く」ではなく「締付け力の範囲を決める」ことである。締付け力の範囲は、被締結部材がずれない・開かないために必要な下限と、ボルトや部材を傷めない上限から設計が決める。購買担当者がトルクの数値だけを受け取って仕入先に渡すと、その数値の根拠になった締付け力の範囲と摩擦の前提が伝わらない。

できるだけ高い締付け力を与えたい場合

なるべく高い締付け力を与えたい場合、JIS B 1083 は、ねじ面と座面の摩擦係数の最小値を見積もり、その値を使って降伏締付け軸力 Fy(締付けによってボルトの円筒部又は遊びねじ部が降伏するときの締付け軸力)を求め、トルク係数の最小値と Fy から、工具のばらつきを見込んで目標トルクを決めるとしている[1]。降伏締付け軸力の計算にはボルトの下降伏点又は 0.2 % 耐力の最小値(規格値)を使う[1]。附属書 B(参考)は、強度区分ごとに、ねじ面の摩擦係数に対する降伏締付け軸力の計算値を表にしており、同じ強度区分でも摩擦係数が大きいほど降伏締付け軸力の値は小さい[1]。

計算例:潤滑の条件が違うと、同じボルトでもトルクがここまで変わる

規格の参考表の値だけを使って、M10・強度区分 8.8 の並目ねじの六角ボルトについて、降伏締付け軸力に達するときのトルク(降伏締付けトルク Ty=K×Fy×d)を計算すると、次のようになる。ねじ面と座面の摩擦係数を同じ値とおいた計算で、工具のばらつきは含めていない。

ねじ面・座面の摩擦係数 トルク係数 K(附属書 A) 降伏締付け軸力 Fy(附属書 B) 降伏締付けトルク Ty(計算)
0.10 0.138 33.7 kN 約 46.5 N·m
0.15 0.196 31.6 kN 約 61.9 N·m
0.20 0.254 29.4 kN 約 74.7 N·m

K と Fy は JIS B 1083 の附属書 A・附属書 B(どちらも参考)の値で、Ty は T=K×F×d に代入した計算値である[1]。この表が示すのは、ボルトの寸法と強度区分が同じでも、摩擦の条件だけで、降伏に至るトルクが 1.6 倍ほど違うということである。摩擦係数 0.20 の条件を前提に決めたトルクで、摩擦係数 0.10 の潤滑したボルトを締めれば、計算上は降伏締付け軸力を大きく超える締付け力を与えようとすることになる。逆に、潤滑した条件で決めたトルクで乾いたボルトを締めれば、締付け力は狙いより小さくなる。この表の値を、作業用のトルクとしてそのまま使うことはできない。実際の部品の摩擦係数・座面の条件・工具のばらつきで値は変わるので、目標トルクは前節の手順で決める。

締付け管理の方法を選ぶとき

JIS B 1083 は、締付け管理方法の選択は、それぞれの方法の特性を十分に理解した上で、設計で指示された初期締付け力のばらつきの許容範囲、締付け力の大きさ、締付けの領域などを基に行わなければならないとしている[1]。

トルク法は、手動式のトルクレンチなど、トルクだけを管理する工具で実施できる[1]。そのぶん、締付け力のばらつきは摩擦の管理次第になる。

回転角法は、ボルト頭部とナットの相対回転角を指標にする方法で、弾性域と塑性域の両方に使える[1]。規格は、弾性域では被締結部材とボルトの剛性が高いと回転角の設定誤差による締付け力のばらつきが大きくなって不利になるとし、塑性域ではばらつきが主にボルトの降伏締付け軸力に依存して回転角の誤差の影響を受けにくい一方、ボルトが塑性変形するので、延性が小さいボルトや再使用するボルトでは注意を要するとしている[1]。さらに、過剰な締付け力で被締結部材に不都合が生じるおそれがある場合には、使用するボルトの降伏点(又は耐力)と引張強さの上限値を規定しなければならないとしている[1]。強度区分は下限を保証する規格なので、塑性域で締めるなら、上限側も発注で指定することになる。

トルクこう配法は、回転角に対するトルクのこう配を検出し、通常はボルトの降伏締付け軸力を目標とする方法で、締付け時にトルクと回転角を同時に検出してこう配を計算する装置を内蔵した用具が必要になる[1]。規格は、この方法でもボルトの降伏点又は耐力について十分な管理が必要だとしている[1]。

なお、JIS B 1083 は炭素鋼製と合金鋼製のボルト・小ねじ・植込みボルトとナットに適用し、植込みボルトの植込み側、引張力を受けない止めねじ、おねじ自身でめねじを成形するねじ部品、付加的な回り止め機能をもつねじ部品には適用できないとしている[1]。タッピンねじやプリベリングトルク形の緩み止めナットのトルクを、この記事の考え方でそのまま決めることはできない。

トルク係数を「保証させて」買う方法がある

トルクと軸力の関係を部品の仕様として保証させている規格の代表が、鋼構造に使う摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセットを定める JIS B 1186 である[3]。この規格は、セットをトルク係数値によって A と B に分け、1 セットロットのトルク係数値の平均値を A は 0.110〜0.150、B は 0.150〜0.190、標準偏差を A は 0.010 以下、B は 0.013 以下と定めている[3]。トルク係数値の試験は使用に供される状態で行い、同一試料で反復してはならないとし、トルク試験機以外で測る場合のトルクは JIS B 4652 に規定するトルクツールで測るとしている[3]。製品の呼び方にもトルク係数値による種類(A または B)が入る[3]。

一般の締結部品では、こうした保証は標準では付いていない。ただし、発注で求めることはできる。締結用部品の電気めっきを定める JIS B 1044(2024 年改正・ISO 4042:2022 に対応)は、必要に応じて電気めっき皮膜システムを施した締結用部品のトルク-締付け力関係を求めてもよいとし、試験方法は JIS B 1084 などに従って、要求事項とともに受渡当事者間で合意しなければならないとしている[4]。同じ規格は、トルク-締付け力関係を調整又は修正するために潤滑剤を塗布してもよいとも書いている[4]。めっきの仕様そのものの書き方はめっきの発注で指定することで扱った。

JIS B 1084 は、標準の条件(規定の試験用座面板と試験用ナット又は試験用ボルトを使う)と、特定の条件(受渡当事者間で協定した試験用ボルト・ナット・座面板・締付け速度などによる)の二つの試験を用意している[2]。トルク係数は、特に指示がなければ、試験部品又は試験用部品のいずれか低いほうの保証荷重の 75 %(0.75 Fp)の締付け力に対応する点の値を求めるとしている[2]。報告書に必ず記載する事項として、ボルトとナットについては規格品の呼び方・表面処理・潤滑など、座金については呼び方・表面処理などを挙げている[2]。発注でトルク係数の範囲を求めるときは、標準と特定のどちらの条件で試験するか、何 % の締付け力で読むかまで書いておかないと、仕入先の成績書の値と自社の想定が比べられない。

トルクレンチの精度と校正

目標トルクを決める手順で見込む「締付けトルクのばらつき」には、トルクレンチの誤差が含まれる。JIS B 1083 の注記は、トルクのばらつきにはトルクレンチの目盛誤差が含まれるとし、引用している JIS B 4650 がトルクの誤差率を ±3 %(ダイヤル形の精密級では ±1 %)としていると書いている[1]。いま JIS 検索で JIS B 4650 は見当たらず、手動式トルクツールの要求事項は JIS B 4652(ISO 6789 を基に作成)が定めている。JIS B 4652 は、指示式トルクツール(タイプⅠ)の許容差を、クラス A と D は ±6 %、クラス B・C・E は最大トルク 10 N·m 以下で ±6 %、10 N·m を超えると ±4 % としている[5]。規定の測定範囲は最大トルクの 20 %〜100 % である[5]。工具の容量に対して小さすぎるトルクで使うと、この範囲から外れる。

校正の周期について、JIS B 4652 は、トルクツールは計測器と考えなければならないとし、使用環境・保管条件・要求精度・使用頻度などを基に選ぶとしたうえで、使用者が計測器の管理手順を使わない場合の再校正周期の初期設定値として、12 か月又は約 5 000 回の使用期間を挙げている[5]。過負荷を受けた場合、修理した場合、誤差に影響しうる不適切な取扱いをした場合には再校正しなければならないとしている[5]。組立を外注するときは、仕入先のトルクツールがどの種類・クラスで、どう校正されているかを確認項目に入れる。

トルク表の使い方と限界

現場では、ボルトの呼び径と強度区分ごとに締付けトルクを並べた「トルク表」が使われる。トルク表そのものは便利だが、どの表にも前提がある。表を使う前に、次の五つが自社の条件と一致しているかを確かめる。

1. 摩擦係数とトルク係数の前提
表がどの摩擦係数(またはトルク係数)で計算されているか。めっき・潤滑剤・座金の有無が表の前提と違えば、表の値は使えない。前提が書かれていない表は、その時点で根拠として弱い。

2. 締付け力の目標の取り方
表のトルクが、降伏締付け軸力の何割を狙って計算したものか。設計で必要な締付け力の下限を満たすかは、表からは分からない。

3. 強度区分と材料
同じ呼び径でも強度区分が違えば降伏締付け軸力が違う[1]。ステンレス鋼製のボルトは JIS B 1051 の対象外で、表の前提に入っていないことが多い[6]。

4. ねじの種類と座面
JIS B 1083 の附属書 A の計算例は、並目ねじの六角ボルト・ナットで、座面の摩擦に対する直径をボルト穴径の 2 級(面取りなし)などから計算している[1]。細目ねじ、フランジ付きの頭、穴径の大きい部材では値が変わる。

5. 適用できない部品
止めねじ、タッピンねじ、緩み止め機能の付いたナットなど、JIS B 1083 が適用できないとしている部品が表に紛れていないか[1]。

出典の書いていないトルク表や、メーカーのカタログの値を、自社の条件を確かめずに図面や作業標準へ写さない。カタログの値は、そのメーカーの製品・表面処理・試験条件を前提にした値である。

発注書・作業標準に書くこと

締付けを含む部品や組立を仕入先に出すとき、トルクの数値と一緒に、その数値の前提を渡す。最低限、次を書く。

  1. 締付け管理の方法(トルク法・回転角法・トルクこう配法)と、締付けの領域(弾性域か塑性域か)
  2. 目標トルク(または目標回転角)と許容範囲、その根拠にした締付け力の範囲
  3. ボルト・ナット・座金の規格、強度区分、表面処理、潤滑剤の有無と種類
  4. 塑性域で締める場合は、ボルトの降伏点(又は耐力)と引張強さの上限値[1]
  5. トルク係数の範囲を求める場合は、JIS B 1084 の標準と特定のどちらの条件で試験し、何 % の締付け力で読むか[2]
  6. 使うトルクツールの種類・クラスと校正の記録の提出の要否[5]
  7. ボルトを再使用してよいか、締め直しの扱い

座金の扱い(ばね座金を使うかどうか)は平座金とばね座金の選び方と指定で、ボルトの形状と部品等級は六角ボルト・六角ナットの規格で扱った。小ねじの締付けを指定するときの注意は小ねじ(JIS B 1111)の種類と指定に、アイボルトのねじ込みの扱いはアイボルト(JIS B 1168)の規格と使い方にまとめた。

受入・立会で確かめること

締付けの品質は、締めた後の製品を見ても分からないことが多い。受入や立会では、記録と条件を見る。

まず、使われたボルトの表面処理・潤滑の状態が仕様どおりかを確かめる。めっきの種類や潤滑剤を仕入先が自分の判断で変えていれば、トルクの数値が同じでも締付け力の前提が変わっている。次に、トルクツールの種類と校正の記録を確かめる。最後に、締付けの記録(トルクの設定値、回転角法ならスナグトルクと回転角)が作業標準どおりかを見る。JIS B 1083 は、回転角法の起点として、座面を密着させるのに必要な締付けトルク(スナグトルク)をトルクレンチで与えるのが望ましいとしている[1]。

締め終わった後にトルクで確かめる方法(増し締めして回り始めるトルクを読むなど)を使うなら、その方法と判定の値も仕入先と事前に決めておく。作業時の設定値と同じ数値で判定してよいとは限らないので、試作の段階で両方の値を取って突き合わせておく。

検査の基準は発注の時点で書面にしておく。発注後に基準を厳しくして不合格にすることは、受領拒否ややり直しの問題になりうる。取適法上の扱いは受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるかで扱っている。

よくある質問

強度区分が同じなら、仕入先を変えても同じトルクで締めてよいか

強度区分は引張強さや耐力などの機械的性質を決めるが、トルクと締付け力の関係は規定していない[6]。仕入先が変わってめっきや潤滑の条件が変われば、トルク係数が変わり、同じトルクでも締付け力が変わる。仕入先を変えるときは表面処理と潤滑の仕様をそろえ、必要ならトルク係数を JIS B 1084 で確かめてから切り替える[2]。化成皮膜やトップコートの違いでトルク係数の前提が変わる点は三価クロメート・化成処理の指定でも扱った。

トルク係数はいくつで計算すればよいか

決まった一つの値はない。JIS B 1083 の附属書 A の計算例でも、摩擦係数の組合せによってトルク係数は 0.1 台から 0.5 台まで変わる[1]。自社の部品の表面状態と潤滑条件が既存のデータと同じとみなせるときだけデータを使い、そうでなければ JIS B 1084 で測る[1][2]。

高力ボルトのセットのトルク係数値の規定は、一般のボルトにも当てはまるか

当てはまらない。JIS B 1186 は主として鋼構造に使う摩擦接合用のセットを対象にした規格である[3]。一般の締結部品でトルクと締付け力の関係を求めたいときは、JIS B 1044 が示すように、試験方法と要求事項を受渡当事者間で合意する[4]。

まとめ

締付けトルクは締付け力を間接的に管理する指標で、その関係はトルク係数で決まり、トルク係数は摩擦の条件で大きく変わる[1]。目標トルクは、設計で決めた締付け力の範囲や降伏締付け軸力から、実際の部品のトルク係数と工具のばらつきを見込んで決める。ボルトの強度区分はトルクと締付け力の関係を保証しないので、発注では表面処理と潤滑の状態をそろえ、必要ならトルク係数の範囲と試験の条件を指定する。トルク表は、前提の摩擦係数・強度区分・締付け力の取り方が自社と同じときだけ使い、トルクツールは計測器として校正する。

出典・参考資料

  1. JIS B 1083:2008 ねじの締付け通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2008 年 3 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 1084:2007 締結用部品-締付け試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2007 年 4 月 20 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
  3. JIS B 1186:2013 摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 6 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  4. JIS B 1044:2024 締結用部品-電気めっき皮膜システム(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2024 年 2 月 20 日改正)
  5. JIS B 4652:2008 手動式トルクツールの要求事項及び試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2008 年制定・2023 年 10 月 20 日確認)
  6. JIS B 1051:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 9 月 22 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)

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