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投稿日:2026年10月16日

植込みボルト(スタッドボルト)JIS B 1173 の指定——bm 1〜3 種、植込み側のねじ、強度区分と表示

この記事のポイント(結論先出し)

スタッドボルトとも呼ばれる植込みボルトの JIS B 1173 は、両端にねじのある鋼製のボルトを、植込み側とナット側で別々のねじとして規定している[1]。植込み側のねじ部長さ bm には 1 種・2 種・3 種があり、どれにするかは注文者が指定すると書かれている[1]。強度区分は JIS B 1051 の 4.8・8.8・9.8・10.9 で[1]、JIS B 1051 が植込みボルトに表示を求める強度区分(呼び径 5 mm 以上の 5.6・8.8・9.8・10.9・12.9)に、4.8 は入っていない[2]。植込み側のねじは一般のおねじとは違う寸法許容差の表で決められており、めっきをするなら許容差の扱いも注文者の指定になる[1]。発注書には、規格の呼び方の並び(規格番号・呼び径×呼び長さ・植込み側とナット側のねじ・bm の種別・強度区分・表面処理)をそのまま書く。

この記事は、機械・設備の部品に使う鋼製の植込みボルト(スタッドボルト)を発注するときの指定を扱う。全長にねじを切った全ねじのスタッドは JIS B 1173 の形(中央にねじのない円筒部がある)とは違い、コンクリートとのずれ止めに使う溶接用の頭付きスタッドは JIS B 1198 という別の規格なので、ここでは扱わない[1][6]。

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植込みボルトは、片側を機械の本体やハウジングのめねじにねじ込んで植え込み、反対側にナットを掛けて部品を締め付けるためのボルトである。シリンダヘッドやケーシングのように、ボルトを何度も抜き差しすると本体側のめねじが傷む場所や、ボルトの頭を入れる空間がない場所で使われる。現場ではスタッドボルトと呼ぶことが多く、品目マスタにも「スタッドボルト M10×50」のような名前で登録されていることがある。

JIS B 1173(植込みボルト)は、一般に用いる鋼製の植込みボルトの特性を規定している[1]。この規格では、同じ M10 でも次のことが選べるようになっている[1]。

1. 植込み側のねじ部長さ bm(1 種・2 種・3 種)
規格の表 1 の注記は、bm は 1 種・2 種・3 種のうちいずれかを注文者が指定するとしている。呼び名と呼び長さだけでは、どれが届くか決まらない。

2. 植込み側とナット側のねじが並目か細目か
どちらのねじも JIS B 0205-3 のメートル並目ねじ又はメートル細目ねじとされ、組合せを呼び方の中で「並-並」「並-細」のように書く。左ねじを使う例も規格の呼び方の例に出てくる。

3. 強度区分
機械的性質は JIS B 1051 の強度区分 4.8・8.8・9.8・10.9 とされている。

4. 表面処理
規格は「ボルトには、一般に表面処理を施さない」とし、めっきなどが必要なら注文者が指定するとしている。

この 4 つを書かずに注文すると、仕入先の手持ちか、相手の慣れた組合せで納まる。とくに bm は、植え込む相手の材料と穴の深さに合わせて設計で決める寸法なので、違うものが届くと組み付けられないか、ねじ込みが浅くなる。

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植込み側のねじ部長さ bm——1 種・2 種・3 種の違い

JIS B 1173 の表 1 の注記 3 は、1 種は 1.25d、2 種は 1.5d、3 種は 2d に等しいかこれに近く(d はねじの呼び径)、1 種及び 2 種は鋼(鋳鋼品及び鍛鋼品を含む)又は鋳鉄に、3 種は軽合金に植え込むものを対象としている、と書いている[1]。アルミ合金のような軽合金にねじ込むときは、めねじのねじ山が弱いので、長くねじ込んで荷重を受ける山の数を増やす考え方である。ただしこれは注記であり、どの種別を使うかは設計者と注文者が決めることになっている。

下の表は、JIS B 1173 の表 1 から、よく使う M10 と M12 の寸法を抜き出したものである(並目ねじ、呼び長さ 125 mm 以下)[1]。1 種は M10 以上でしか規定がない。

項目(JIS B 1173 表 1) M10 M12
bm 1 種(最小〜最大) 12〜13.1 mm 15〜16.1 mm
bm 2 種(最小〜最大) 15〜16.1 mm 18〜19.1 mm
bm 3 種(最小〜最大) 20〜21.3 mm 24〜25.3 mm
ナット側のねじ部長さ b(最小〜最大・並目) 26〜29 mm 30〜33.5 mm
植込み側ねじの有効径の許容差(並目) 上 +0.08 mm/下 0 上 +0.09 mm/下 0

bm の値は、ねじを切った長さ(不完全ねじ部を含む範囲の扱いは規格の図による)であって、相手のめねじの深さそのものではない。めねじ側の加工深さ・下穴の深さは、bm と組み合わせて設計図で決める寸法である。仕入先に bm の種別を伝えても、植え込む相手の穴は自社や別の加工先の担当になるので、両方の図面で同じ種別を前提にしているかを確かめておく。

呼び長さの短いものは、ナット側のねじ部が短くなる

表 1 の注 c) は、推奨する呼び長さのうち印を付けたものは、呼び長さが短いため規定のねじ部長さを確保できないので、ナット側ねじ部長さを表 1 の b の最小値より小さくしてもよいが、表 3 の d+2P の値より小さくなってはならない、としている[1]。M10 の並目なら d+2P は 13 mm である。短い植込みボルトを指定するときは、ナットを掛けたうえで締付けに必要なねじ山が残るかを、図面の段階で確かめておく。

植込み側のねじは、一般のおねじと寸法許容差が違う

ナット側のねじは、JIS B 0209-3 に規定する公差域クラス 6g とされている[1]。一般のボルトと同じ考え方で、普通のナットが掛かる。

これに対して植込み側のねじは、JIS B 1173 の表 4 に、外径・有効径・谷の径の寸法許容差が呼びごとに直接書かれている[1]。上の表のとおり、植込み側の有効径の許容差は上がプラス、下が 0 で、基準寸法より太い側に寄せてある。一般のおねじの公差域クラス 6g は基準寸法より細い側に許容差をとるので、植込み側はめねじとのすきまが一般のおねじより小さくなる。表 4 の注記は、これとはまり合うめねじの公差域クラスは JIS B 0209-3 に規定する 5H が望ましいとしている[1]。

JIS B 0209-3(ISO 965-3 と一致)は、一般用メートルねじの有効径と山の頂の直径の寸法許容差を、公差域クラスごとに表で示した規格である[5]。めねじ側の加工を別の仕入先に出すときは、図面のめねじに「5H」と公差域クラスまで書いておかないと、汎用の 6H で加工されることがある。植込み側を検査するときの考え方も表 4 の下に書かれており、有効径の上の許容差は標準のはめあい長さをもつねじ測定器具又はねじゲージで総合有効径を、下の許容差は単独有効径を検査するとしている[1]。受入でゲージを使うなら、植込み側専用のゲージが必要になる。

めっきをするなら、植込み側の許容差は注文者が指定する

規格は、植込み側について「電気めっきを施した場合の寸法許容差及び公差が表 4 以外の寸法許容差を必要とする場合は、注文者の指定による」としている[1]。ナット側は、電気めっきを施したねじの最大許容寸法を 4h の最大許容寸法とし、検査用の通りねじリングゲージも 4h のものを用いるとしている[1]。

つまり、めっき付きの植込みボルトを頼むときは、表面処理の種類を書くだけでは足りない。植込み側のねじについて、めっき後に表 4 の許容差に入れるのか、別の許容差を指定するのかを決めて発注書に書く。決めないまま頼むと、めっき後に植込み側がきつくなってねじ込めない、あるいは逆に余裕を見て細く作られて植え込みが緩くなる、といった食い違いが起きる。

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強度区分・表示・めっきと水素ぜい化

JIS B 1173 の機械的性質は、JIS B 1051 の強度区分 4.8・8.8・9.8・10.9 である[1]。2015 年の追補 1 で、強度区分 4.8 のフルサイズおねじ部品の破断伸び Af は適用しないと追記され、機械的性質の検査は JIS B 1051 の表 9(試験シリーズ FF2-完全な負荷能力をもつ植込みボルト)によることになった[1]。

製品の表示は、追補 1 で JIS B 1051 の 10.3.3.4(植込みボルト)によるとされた[1]。JIS B 1051 の 10.3.3.4 は、植込みボルトには製造業者識別記号と強度区分の表示記号(又は代用表示記号)を施すとし、この表示はねじの呼び径が 5 mm 以上で、強度区分が 5.6・8.8・9.8・10.9・12.9/12.9 の製品に対して施さなければならない、としている[2]。表示は植込みボルトのねじのない円筒部に施し、円筒部に表示ができない場合はナット側の端面に強度区分の表示記号を表示して、製造業者識別記号を省略してもよい[2]。

このため、強度区分 4.8 の植込みボルトには表示がないのが普通で、受入で強度区分を製品から読み取ることはできない。呼び径 5 mm 以上で 8.8 以上を指定したのに表示のない品物が届いたら、それ自体が確認の対象になる。強度の考え方全般はボルトの強度区分と規格の指定で扱った。

強度区分の高いものにめっきするとき

JIS B 1173 は、電気めっきを施す場合は JIS B 1044 によるのがよいとしている[1]。JIS B 1044(2024 年改正)は、電気めっきに伴う水素ぜい化のリスクを最小化するための要件を規定しており、焼入焼戻しされた締結用部品について、規定する硬さの最大値が 360 HV 以下なら追加の工程検証もベーキングも不要、360 HV を超え 390 HV 以下なら製造業者による工程検証や製品試験が実施されていればベーキングは不要、390 HV を超えるものにはベーキングが必要(止めねじのように引張応力を受けない部品などの例外がある)、と硬さで扱いを分けている[4]。

植込みボルトの強度区分を上げてめっきも付けるときは、この区分のどこに入るかを仕入先に確かめ、ベーキングや工程検証をしたかを証明書で出してもらうかを発注時に決めておく。めっきの指定全般はめっきの発注で指定することを参照してほしい。

締付けの管理——植込み側にはトルクの規格が当てはまらない

ナット側の締付けは、普通のボルトと同じように締付けトルクで管理することが多い。ただし、ねじの締付けの考え方を定めた JIS B 1083(ねじの締付け通則)は、適用範囲の中で、植込みボルトの植込み側には適用できないと明記している[3]。植込み側をどれだけねじ込むか、どこで止めるか(ねじの終わりで止めるのか、決まった突き出し長さで止めるのか)は、トルクの表から決まるものではない。

実務では、植え込んだ状態での突き出し長さ(相手面からナット側の先端まで)を図面に書き、組立の手順書でその寸法を確かめるのが分かりやすい。ナット側の締付けトルクの決め方はボルトの締付けトルクの決め方で扱った。植込みボルトのナットに袋ナットを使う場合は、同じシリーズの袋ナット JIS B 1183 の指定で、突き出しの考え方を書いている。

発注書の書き方と受入

JIS B 1173 の製品の呼び方は JIS B 1010 によるとされ、例として次のような書き方が示されている[1]。

例 1(M4・呼び長さ 20 mm・強度区分 4.8・bm 1 種)
植込みボルト JIS B 1173-M4×20-並-並-1 種-4.8

例 2(M10・植込み側が左細目ねじ・ナット側が細目ねじ・呼び長さ 50 mm・8.8・bm 2 種)
植込みボルト JIS B 1173-M10×1.25-LH×50-細-細-2 種-8.8

例 3(M12・植込み側並目・ナット側細目・呼び長さ 60 mm・8.8・bm 2 種・JIS B 1044 による電気めっき A2K)
植込みボルト JIS B 1173-M12×60-並-細-2 種-8.8-A2K

例 3 の「A2K」は、JIS B 1173 が 2010 年当時の JIS B 1044 の附属書の記号として引いているものである[1]。いまの JIS B 1044(2024 年改正)では、こうした記号は附属書 F(参考)の旧式の呼び方とされ、本体は六価クロムを含まない皮膜システムをスラッシュで区切って表示する形になっている[4]。表面処理の書き方は、例をそのまま写さず仕入先と決める。

規格の例 1 は M4 で 1 種になっているが、表 1 の bm 1 種の欄は M10 以上にしか値がない[1]。呼び方の例をそのまま写さず、表 1 の値がある組合せかを確かめて書く。

包装の表示には、規格番号又は規格名称、ねじの呼び径×呼び長さ、植込み側のねじの呼び、bm の種別又はその数値、ナット側のねじの呼び、強度区分、数量、指定事項(表面処理の種類など)、製造業者名又はその略号が並ぶ[1]。受入では、まず包装の表示と発注書の呼び方を突き合わせる。とくに bm の種別と、並目・細目の組合せは製品を見ても分かりにくいので、包装の表示で確かめる。

受渡検査について JIS B 1173 は、購入者から特に指定がない限り JIS B 1091 によるとしている[1]。JIS B 1091(締結用部品-受入検査)は、事前の合意がない場合に購入者が実施する締結用部品の検査の手順と、合否で合意できないときの参照手順を規定した規格で、植込みボルトも対象に入っている[7]。抜取りの方法や受入で測る項目を自社で決めているなら、その旨を発注時に合意しておく。

よくある質問

図面に「スタッドボルト M12×60」とだけ書いてある

植込み側とナット側の並目・細目、bm の種別、強度区分、表面処理が決まっていない。設計者に、植え込む相手の材料(鋼・鋳鉄か軽合金か)と、相手のめねじの深さ・公差域クラスを聞き、bm の種別を決めてもらう。既存の機器の部品なら、これまで納入されていた品物の包装の表示から呼び方を拾い、品目マスタに書き写す。

全ねじの寸切りボルトで代用してよいか

寸切りボルトは全長に同じねじが切ってあり、植込み側の寸法許容差(表 4)も、bm と円筒部の区別もない。植込み側の締まり具合が変わるので、代用するかどうかは設計者の判断になる。寸切りボルトの指定は同じシリーズの寸切りボルトの規格と発注で扱った。

ステンレスの植込みボルトはこの規格で買えるか

JIS B 1173 の適用範囲は鋼製の植込みボルトである[1]。ステンレス製や非鉄金属製は、形状・寸法をこの規格に合わせたうえで、材料と機械的性質を別に指定することになる。どの規格のどの区分で指定するかを、仕入先と事前に合意しておく。

ほかの形のボルト・ナットも知りたい

同じシリーズで、蝶ボルト・蝶ナット(JIS B 1184・B 1185)の指定、皿ボルト・皿ねじの指定、配管支持用 U ボルトの発注を扱っている。頭を沈めたい場所の皿ボルト、工具なしで締め緩めする蝶ボルト・蝶ナットは、植込みボルトとは締結の考え方が違うので、使い分けの参考にしてほしい。

まとめ

植込みボルト(スタッドボルト)JIS B 1173 は、植込み側とナット側を別々のねじとして規定し、植込み側のねじ部長さ bm(1 種・2 種・3 種)は注文者が指定する。1 種・2 種は鋼・鋳鉄、3 種は軽合金に植え込むものを対象としていると注記されている。植込み側は表 4 の専用の寸法許容差で、相手のめねじは 5H が望ましいとされ、めっきをするなら植込み側の許容差も注文者が指定する。強度区分は 4.8・8.8・9.8・10.9 で、呼び径 5 mm 以上の 8.8 以上は製品に表示が施されるが、4.8 は表示の対象に入っていない。植込み側には JIS B 1083 の締付け通則が当てはまらないので、突き出し長さを図面に書いて管理する。発注書には規格の呼び方の並びで全部を書き、受入では包装の表示と突き合わせる。

出典・参考資料

  1. JIS B 1173:2010 植込みボルト(追補 1:2015 を含む)(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 12 月 21 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  2. JIS B 1051:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 9 月 22 日改正)
  3. JIS B 1083:2008 ねじの締付け通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2008 年 3 月 20 日改正)
  4. JIS B 1044:2024 締結用部品-電気めっき皮膜システム(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2024 年 2 月 20 日改正)
  5. JIS B 0209-3:2001 一般用メートルねじ-公差-第 3 部:構造体用ねじの寸法許容差(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2026 年 6 月 22 日確認)
  6. JIS B 1198:2011 頭付きスタッド(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2011 年 2 月 21 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  7. JIS B 1091:2023 締結用部品-受入検査(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2023 年 1 月 20 日改正)

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