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A2017(ジュラルミン)の発注での指定——JIS H 4000・H 4040 の質別、切削材としての選び方、耐食・溶接の注意

この記事のポイント(結論先出し)
ジュラルミンと呼ばれる A2017 は、板なら JIS H 4000 の A2017P、棒なら JIS H 4040 の A2017BE(押出棒)・A2017BD(引抜棒)で注文する。JIS の 2017 の欄にある質別は、板が O・T3・T351・T4・T451・T42、押出棒が O・T4・T42 で[1][2]、図面に「A2017-T6」と書かれていても、その質別は JIS の 2017 には無い。常温時効で強さを出す合金で、JIS H 4040 は切削加工性はよいが、耐食性と溶接性は劣ると書いている[2]。だから削り出し部品に向く一方、屋外や湿気の多い所で使う部品では表面処理を前提にし、溶接構造には使わない。硬質アルマイトは、アルミニウム-銅系では耐摩耗性・硬さ・耐食性のどれも劣ると解説されている[6]。試験成績書は注文者が求めたときに出るものなので[7]、注文時に求めておく。
目次
「ジュラルミン」は A2017 のこと。ただし呼び名で注文しない
この記事は、工業部品の材料としてのジュラルミンを扱う。アタッシェケースなどの製品名として使われる「ジュラルミン」とは話が別である。
軽金属学会誌の解説(1989 年)は、高力アルミニウム合金の系譜を「ジュラルミン(2017)」から書き起こしている[4]。現場でいう「ジュラルミン」は 2017 を指すことが多い。「超々ジュラルミン」の呼び名についてはA7075 の発注での指定で扱った。ただし呼び名と合金番号が一対一に決まっているわけではなく、JIS には 2017 と別に、2017 より強度の高い 2017A も載っている[1][2]。注文書には呼び名ではなく、合金番号と形状と質別をそろえた製品記号を書く。
JIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)では、2017 の板の記号は A2017P で、表 1 は特性を「熱処理合金で強度が高く,切削加工性もよい」、用途例を航空機用材と各種構造材としている(参考)[1]。JIS H 4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)では、押出棒が A2017BE、引抜棒が A2017BD、引抜線が A2017W で、寸法の許容差と形状を厳しくした特殊級はそれぞれ末尾に S が付く[2]。主な合金元素は、銅 3.5〜4.5%、マグネシウム 0.40〜0.8%、マンガン 0.40〜1.0% である[1]。
合金番号と質別記号の読み方そのものはアルミは合金番号と質別で指定するで扱った。この記事では、2017 を選ぶとき・注文するときに 2017 ならではで決めることに絞る。
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2017 の質別は T4 系。図面の「T6」は設計に確かめる
2017 は常温で時効して強さを出す合金である。JIS H 0001(質別記号)は、T4 を「溶体化処理後自然時効させたもの」、T3 を「溶体化処理後冷間加工を行い,更に自然時効させたもの」と定めている。T351・T451 の末尾の 51 は、引張矯正によって永久ひずみを与えて残留応力を除いたことを表す[3]。
JIS H 4000 の表 3 で 2017 の板に機械的性質が定められている質別は、O・T3・T351・T4・T451・T42 である。JIS H 4040 の表 3 で 2017 の押出棒に定められているのは O・T4・T42 である[1][2]。人工時効で強さを出す T6 は、2017 の欄には無い。海外の図面や古い図面を流用した部品で「A2017-T6」と書かれていたら、どの規格のどの質別を意図しているのかを設計の責任者に確かめる。仕入先に「T6 相当で」と判断させると、受入で照らし合わせる規格値が決まらなくなる。
板と棒では、同じ T4 でも規格値が違う
次の表は、JIS H 4000 と JIS H 4040 に定められた 2017 系と、比べられることの多い合金の機械的性質(下限値)を、抜き出したものである[1][2]。ほかの厚さ・径の区分と伸びの値は、それぞれの規格の表 3 で確かめる。
| 製品記号・質別 | 区分 | 引張強さ/耐力 N/mm² | JIS が書いている特性(参考) |
|---|---|---|---|
| A2017P-T4(板) | 厚さ 0.5 mm 超 6.0 mm 以下 | 355 以上/195 以上 | 熱処理合金で強度が高く,切削加工性もよい |
| A2017P-T351(板) | 厚さ 6.0 mm 以上 50.0 mm 以下 | 375 以上/215 以上 | (同上) |
| A2017BE-T4(押出棒) | 断面積 700 cm² 以下 | 345 以上/215 以上 | 切削加工性はよいが,耐食性及び溶接性は劣る |
| A2017ABE-T4(押出棒) | 径など 10 mm 以上 80 mm 以下 | 390 以上/265 以上 | 2017 より強度の高い合金 |
| A2011BE-T4(押出棒) | 径など 3 mm 以上 200 mm 以下 | 275 以上/125 以上 | 切削加工性が非常によいが,耐食性に劣る |
| A2017BE-O(押出棒) | 全て | 245 以下/125 以下(上限) | — |
表から読み取れることは二つある。一つは、同じ 2017 の T4 でも、板と押出棒で規格値が違うことである。板で確かめた値を棒にそのまま当てはめない。もう一つは、O 材の値が上限で書かれていることである。JIS H 4040 の表 3 の注は、O 材を T42(または T62)の材料の基礎となるものとしている[2]。O 材は強さを保証する材料ではなく、注文者が熱処理をする前提の材料なので、「A2017 の O 材のままで強度部品とする」という注文は成り立たない。
O 材で買って自分で熱処理するなら T42 の保証を決める
JIS H 4000 は、質別 O の材料は T42 または T62 の材料の基礎になるもので、注文者の要求があれば T42 または T62 の機械的性質を保証しなければならないとしている。T42 の機械的性質は、注文者が O 材を溶体化処理したあと十分な安定状態まで自然時効した場合に適用し、溶体化処理の前に冷間加工や熱間加工をした場合は規格値より低くなることがある、とも書いている[1]。JIS H 4040 の押出棒も同じ扱いである[2]。成形しやすい O 材で買い、成形後に熱処理する工程なら、T42 の保証を要求するかどうかと、熱処理を誰がどの条件で行うかを注文の時点で決めておく。
削り出し部品で 2017 を選ぶ理由と、2011 との違い
2017 は削り出しの機械部品によく使われる。JIS H 4040 の表 1 は 2017 の用途例に機械部品、リベット用材、航空機用材、自動車用部材を挙げている[2]。同じ表には、2017 と同じ系統で、さらに削りやすさを優先した合金も並んでいる。2011 は「2017と同等の強度であり,切削加工性が非常によいが,耐食性に劣る」とされ、用途例はボリューム軸、光学部品、ねじ類である。2030 は「切削加工性の優れた快削合金で,強度も高い」とされている[2]。
ただし規格値で見ると、2011 の押出棒の T4 は引張強さ 275 以上・耐力 125 以上で、2017 の押出棒の T4(345 以上・215 以上)より低い[2]。表 1 の「同等の強度」という参考の記述だけを見て置き換えると、耐力で 90 N/mm² の差を見落とす。仕入先から「2011 のほうが削りやすいので替えたい」と提案されたら、使う径の区分の規格値で比べ、設計の承認を取ってから受ける。
削り出しで気をつけることがもう一つある。厚い板から大きく削り込む部品では、熱処理で生じた残留応力が加工後の反りに効く。2017 の厚板には、引張矯正で残留応力を除いた T351・T451 がある[1][3]。T4 と T451 のどちらで注文するかは、加工後の平面度の要求から設計が決める。
耐食性は劣る。表面処理を前提にして、その条件を書く
JIS H 4040 は 2017 について「耐食性及び溶接性は劣る」と書いている[2]。溶接学会誌の概説(1984 年)も、一般に Al-Cu 合金は溶接割れ感受性が高く、耐食性が劣ると述べている[5]。屋外、湿気の多い所、結露する設備の内部などで使う部品に 2017 を指定するなら、素材のまま使うのではなく、表面処理を前提にする。
表面処理でよく使われるのは陽極酸化(アルマイト)である。ここで気をつけたいのは、硬質アルマイトとの組み合わせである。実務表面技術の解説(1988 年)は、硬質アルマイトの被処理材料として、A1100・A5052・A6063・A7075 などが初期から主流で、1970 年代になって浴組成や電源波形の改良によって A2017 に代表されるアルミニウム-銅系が処理できるようになったが、アルミニウム-銅系の硬質アルマイトの性能は、現状でも耐摩耗性・硬さ・耐食性のどれを取っても劣っている、と書いている[6]。
この解説から言えるのは、2017 の部品に硬質アルマイトをかけて、ほかの合金と同じ耐摩耗性を期待しないことである。摺動部の耐摩耗が目的なら、材料を替えるか、処理の条件と評価方法を処理業者と先に合意する。陽極酸化の等級や、処理業者に渡す情報(材質・質別・有効面など)は表面処理の種類と図面の記号で扱った。部品メーカーが処理を外注している場合は、2017 という材質が処理業者まで伝わっているかを確かめる。
2017 は溶接構造に使わない
先の概説は、2000 系のような熱処理性の高力合金は、溶接後に再熱処理をしないと継手効率が低く、Al-Cu 合金は溶接割れ感受性が高いとしている。同じ系統の中では、銅を多く含みマグネシウムを含まない A2219・A2014 などが比較的溶接性がよい、とも書いている[5]。JIS H 4000 の表 1 も、2219 を「強度が高く,耐熱性及び溶接性もよい」としている[1]。
図面に 2017 の溶接構造が描かれていたら、仕入先が引き受ける前に設計に戻す。溶接で組むなら溶接に向く合金に替えるか、ボルトやリベットによる接合に替えるかは設計の判断になる。溶接に向く合金の代表は 5000 系で、板ならA5052 の発注で指定することで扱う。溶接を含む部品で何を指定するかは溶接を含む部品の発注で指定することにまとめた。
A2017・A5052・A6061・A7075 の使い分けの目安
アルミ合金で部品を作るとき、候補に上がりやすいのはこの 4 つである。JIS H 4000 と JIS H 4040 の表 1(参考)の記述を並べると、選び方の軸が見えてくる[1][2]。
1. 強さを最優先する
7075 が「アルミニウム合金中高い強度をもつ合金の一つ」とされる。厚肉の部品では応力腐食割れへの配慮が要るので、A7075 の発注での指定を参照してほしい。
2. 削りやすさと強さの両立
2017 は「切削加工性もよい」熱処理合金で、耐食性と溶接性は劣る。
3. 耐食性と強さの両立
6061 は「熱処理型の耐食性合金」とされる。詳しくはA6061 の発注で指定することで扱う。
4. 曲げ・溶接・耐食性
5052 は「中程度の強度をもった代表的な合金で,耐食性,成形性及び溶接性がよい」とされる。
この並びは JIS の参考の記述を並べたもので、部品ごとの適否を決めるものではない。最終的な材料の選定は、荷重・使用環境・加工方法から設計が決める。
受け入れるときに確かめること
JIS H 4000 と JIS H 4040 は、規格に適合した製品に、規格番号と製品記号(記号と質別)、寸法、製造番号などを表示するよう定めている[1][2]。受入では現品の表示の製品記号が注文と一致しているか、特に 2017 と 2017A、2017 と 2011 の取り違えが無いかを見る。
成績書は黙っていても付いてくるものではない。JIS H 4000 と JIS H 4040 は検査の一般事項を JIS H 0321 に委ねており、JIS H 0321 の「報告」の箇条は、試験の成績や製造番号などを書いた明細書の提出を、注文者の要求があったときの義務としている[7]。だから注文の時点で求めておく。届いたら、製品記号と質別、その区分の規格値に機械的性質が入っているか、化学成分が 2017 の範囲に入っているかの順で見る。成績書の種類の指定はEN 10204 のミルシート区分を参照してほしい。
注文書の書き方の例
以下は JIS の書式ではない。発注する側の書き方の一例である。
「材質:A2017BE-T4(JIS H 4040)、丸棒 φ40。試験成績書を添付し、製品記号・質別・引張強さ・耐力・伸び・化学成分を記載すること。他合金(2011・2017A を含む)への置き換えと質別の変更は事前承認を要する。表面処理:陽極酸化(条件は別紙)。」
板なら規格番号を JIS H 4000、記号を A2017P に替え、厚板で加工後の反りを抑えたい場合は質別を T451 または T351 にするかを設計と決めて書く。
よくある質問
2017 と 2017A は同じものですか
別の合金として JIS に載っている。JIS H 4000 と JIS H 4040 は 2017A を「2017より強度の高い合金」としており[1][2]、押出棒の T4 の規格値も違う。現品の表示と成績書の記号を見て、注文どおりかを確かめる。
2017 に普通のアルマイトはかけられますか
陽極酸化をかけること自体はある。ただ、硬質アルマイトについては、アルミニウム-銅系は耐摩耗性・硬さ・耐食性が劣ると解説されているので[6]、目的が耐摩耗なら材料の選定から設計と相談する。
2017 を溶接して補修してもよいですか
Al-Cu 系の合金は溶接割れ感受性が高く、溶接後に再熱処理をしないと継手効率が低いとされている[5]。強度部品の補修溶接は、設計の判断と評価を経ずに行わない。
まとめ
ジュラルミンと呼ばれる A2017 は、板は JIS H 4000 の A2017P、棒は JIS H 4040 の A2017BE・A2017BD で注文する。2017 の質別は T4 系で、JIS の 2017 の欄に T6 は無いので、図面の「A2017-T6」は設計に確かめる。同じ T4 でも板と棒で規格値が違い、削りやすい 2011 は耐力が低い。耐食性と溶接性は劣るとされるので、使用環境に応じて表面処理を前提にし、溶接構造には使わない。硬質アルマイトは Al-Cu 系では性能が劣ると解説されているので、耐摩耗の目的なら材料から検討する。成績書は注文時に求め、製品記号・機械的性質・化学成分の順に確かめる。
同じ束では、溶接・曲げに向く A5052、導電・熱伝導に向く純アルミ A1050・A1100、穴あき板のパンチングメタルの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS H 4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 4 月 20 日改正)
- JIS H 4040:2023 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
- JIS H 0001:1998 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1998 年 11 月 20 日改正)
- 馬場義雄「超々ジュラルミン(ESD)とその後の航空機用アルミニウム合金」軽金属 39 巻 5 号(軽金属学会/1989 年 5 月)
- 内田彰「アルミニウム合金溶接技術・概説」溶接学会誌 53 巻 3 号(溶接学会/1984 年 4 月)
- 秋本政弘「硬質アルマイト」実務表面技術 35 巻 6 号(表面技術協会/1988 年 6 月)
- JIS H 0321:1973 非鉄金属材料の検査通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1973 年 3 月 1 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
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