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A6061 の発注で指定すること——板・棒・押出形材で違う T6 の規格値、A6063 との選び分けと溶接

この記事のポイント(結論先出し)
A6061 は形で引く JIS が変わる。板は JIS H 4000 の A6061P、棒は JIS H 4040 の A6061BE・A6061BD、押出形材は JIS H 4100 の A6061S で[1][2][3]、同じ T6 でも引張強さの下限は板 295、押出棒 260、押出形材 265 N/mm² と違う(代表的な区分で比べた場合)[1][2][3]。6063 は 6061 より強度は低いが押出性・耐食性・表面処理性がよい合金で[2]、強度部品か形材の見た目かで選び分ける。JIS は 6061 を、時効によってかなり高い耐力が得られるが溶接性が劣る合金とし[2]、板の表 1 では主にボルト・リベット接合の構造用材としている[1]。溶接する場合は、溶接部と熱影響部の強度低下を設計に織り込むことが前提になる[5]。成績書は求めたときに出るので[6]、注文時に求めておく。
目次
A6061 は「形状」で規格が分かれる
A6061 は 6000 系(アルミニウム-マグネシウム-けい素系)の熱処理型合金で、溶体化処理と時効で強さを出す。材料を注文するときにまず決めるのは、どの形で買うかである。形ごとに引く JIS が違い、記号も違う。
JIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)では、板の記号は A6061P で、表 1 は特性を「耐食性が良好で主にボルト・リベット接合の構造用材として用いられる」、用途例を船舶・車両用材及び陸上構造物などとしている(参考)[1]。JIS H 4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)では押出棒が A6061BE、引抜棒が A6061BD で、特性は「熱処理型の耐食性合金。時効によってかなり高い耐力値が得られるが,溶接性が劣る」、用途例はリベット用材、ボルト材、自動車用部品である[2]。JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)では、普通級が A6061S、特殊級が A6061SS で、表 1 の記述は棒とほぼ同じである[3]。
合金番号と質別記号の読み方そのものはアルミは合金番号と質別で指定するで扱った。押出形材の寸法の許容差(普通級と特殊級の違い)はアルミ押出形材の寸法許容差(JIS H 4100)にまとめた。この記事は、6061 の T6 の強さが形でどう変わるか、6063 とどう選び分けるか、溶接するときに何を前提にするかに絞る。
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同じ T6 でも、板・棒・形材で規格値が違う
JIS H 0001(質別記号)は、T6 を「溶体化処理後人工時効硬化処理したもの」、T5 を「高温加工から冷却後人工時効硬化処理したもの」と定めている。T5 は押出材のように高温の製造工程から冷却した後、積極的に冷間加工を行わずに人工時効硬化処理したものである[4]。末尾に 51・510・511 が付く質別は、引張矯正で残留応力を除いたものを表す[4]。
次の表は、6061 と 6063 の T6・T5 の機械的性質(下限値)を、三つの規格から抜き出したものである[1][2][3]。区分は各規格の表 3 の一部で、ほかの区分と伸びの値は規格で確かめる。
| 製品記号・質別 | 規格 | 区分 | 引張強さ/耐力 N/mm² |
|---|---|---|---|
| A6061P-T6(板) | JIS H 4000 | 厚さ 0.5 mm 超 6.5 mm 以下 | 295 以上/245 以上 |
| A6061P-T651(厚板) | JIS H 4000 | 厚さ 6.5 mm 以上 13.0 mm 以下 | 295 以上/245 以上 |
| A6061BE-T6(押出棒) | JIS H 4040 | 径など 6 mm 超 | 260 以上/240 以上 |
| A6061S-T6(押出形材) | JIS H 4100 | 肉厚 6 mm 超 | 265 以上/245 以上 |
| A6063S-T6(押出形材) | JIS H 4100 | 肉厚 3 mm 超 25 mm 以下 | 205 以上/170 以上 |
| A6063S-T5(押出形材) | JIS H 4100 | 肉厚 12 mm 以下 | 150 以上/110 以上 |
表から言えることは二つある。第一に、6061-T6 の引張強さの下限は、板では 295 N/mm² だが押出棒では 260 N/mm² で、35 N/mm² 違う。設計で「6061-T6 の引張強さ」を一つの値で使っているとき、その値がどの形の規格値なのかを確かめる。板の値で計算した部品を押出棒から削り出すと、規格値の上では前提を下回る。第二に、6063 は T6 でも 6061 の T6 より引張強さの下限が 60 N/mm² 低く、よく使われる T5 ではさらに低い。
6061 と 6063 は、強度を取るか、形材の作りやすさを取るかで選ぶ
JIS H 4040 は 6063 を「代表的な押出合金。6061より強度は低いが,押出性に優れ,耐食性及び表面処理性もよい」とし、用途例に建築用材・土木用材・家具・家電製品・車両用材を挙げている[2]。JIS H 4100 は同じく 6063 について、押出性に優れ、複雑な断面形状の形材が得られる、と書いている[3]。両規格の間には、6061 と 6063 の中間の強度をもつ 6005A のような合金も載っている[2][3]。
選び方の軸は次のとおりである。これは JIS の参考の記述から発注側が整理したもので、規格の要求ではない。
1. 強度部品・削り出し部品
耐力が要る機械部品、ボルト・リベットで組む構造部材なら 6061。板・棒・形材のどれで買うかで規格値が変わる点に注意する。
2. 複雑な断面の押出形材・外観部品
中空形材や薄肉の複雑な断面、陽極酸化で見た目を整える部品なら 6063。強度は 6061 より低い前提で設計する。
3. その中間
強度と押出性の両方が欲しいなら、6005A のような中間の合金を設計に提案する余地がある。採否は設計が決める。
陽極酸化について、実務表面技術の解説(1988 年)は、硬質アルマイトの被処理材料として展伸材では A1100・A5052・A6063・A7075 が初期から主流だったと書いている[7]。6063 は表面処理性もよいとされる合金なので[2]、外観を整える形材では選ばれやすい。処理の指定の仕方は表面処理の種類と図面の記号を参照してほしい。
6061 を溶接するときに前提にすること
JIS H 4040 と JIS H 4100 は 6061 を溶接性が劣る合金とし[2][3]、JIS H 4000 の表 1 は主にボルト・リベット接合の構造用材としている[1]。とはいえ、6061 を溶接した部品が無いわけではない。溶接学会誌の概説(1984 年)は、6000 系は熱処理合金でほとんど押出材として使用されるが、導体用や建材のごく一部に溶接が使われる A6063、外国仕様による配管などの A6061 がある、と書いている[5]。
同じ概説は、6000 系・2000 系の合金では特別な場合には溶接後に改めて熱処理を行うが、大形構造物など熱処理が困難なものでは、溶接部と熱影響部の強度低下と多少の耐食性低下をあらかじめ考慮に入れて設計しなければならない、と述べている。6000 系では溶加材の選択が一つに限らず、溶接性の点から母材と違う合金系の溶加材を使うため、溶接金属の性質を母材と同様にできず、製品に要求される性質に応じて溶加材を選ぶ必要がある、とも書いている[5]。
ここから、発注で押さえることが出てくる。6061-T6 の材料を指定しても、溶接部の強さは T6 の規格値では決まらない。溶接構造で強度の要求があるなら、図面には「材料の質別」と「溶接部を含む完成品の要求」を分けて書いてもらい、溶加材を誰がどう決めるかも決めておく。溶接の方法・資格・検査の指定は溶接を含む部品の発注で指定することで扱った。溶接構造で板を使うなら、溶接性がよいとされる 5000 系のA5052を候補にする検討もある。
O 材から熱処理するとき、T451 と T651 の関係
成形しやすい O 材で買い、成形後に注文者側で熱処理する使い方もある。6061 の O 材について JIS H 4000 の注は、注文者が求めれば、O 材を溶体化処理して人工時効した後の T62 の値まで製造業者が保証する、という扱いを定めている。ただし T62 の値が前提にしているのは、O 材をそのまま熱処理した場合である。熱処理の前に曲げや絞りなどの加工を加えていれば、規格の値を下回ることがある、と注記されている[1]。
同じ表の注には、質別 T451 の材料は質別 T651 の性能を保証しなければならない、という規定もある[1]。厚板を T451 で買って人工時効を後工程で行う場合は、この関係を前提にできるかを仕入先と確かめる。熱処理を外注に出す場合の指定は熱処理を図面でどう指定するかを参照してほしい。
受け入れるときに確かめること
三つの規格はどれも、規格に適合した製品に規格番号と製品記号(記号と質別)などを表示するよう定めている[1][2][3]。受入では、現品の表示が 6061 か 6063 か、質別が T6 か T5 か、形状の記号(P・BE・BD・S・SS)が注文どおりかを見る。6061 と 6063 は外観で区別できないので、表示と成績書が頼りになる。
三つの規格とも、検査の一般事項は JIS H 0321(非鉄金属材料の検査通則)に従う。この通則は、試験の成績などを書いた明細書について、注文者の求めがあったときに製造業者が提出する、という書き方をしている[6]。求めなければ出てこない前提で、注文時に求めておく。注文時に求めておき、届いたら次の順で見る。
1. 規格と製品記号
板・棒・形材のどの規格で、記号と質別は注文どおりか。
2. 機械的性質
その形の規格の、その厚さ・径の区分の規格値に入っているか。別の形の規格値と比べない。
3. 化学成分
6061 の範囲に入っているか。6061 と 6063 の取り違えはここで分かる。
海外の材料で受ける場合の承認の進め方は同等材の指定と承認を参照してほしい。
注文書の書き方の例
次は規格の様式ではなく、発注する側の記入例である。
「材質:A6061BE-T6(JIS H 4040)、丸棒 φ50。試験成績書を添付し、製品記号・質別・引張強さ・耐力・伸び・化学成分を記載すること。他合金(6063 を含む)への置き換え、他の形状の材料(板・形材)からの切り出し、質別の変更は事前承認を要する。」
押出形材なら規格番号を JIS H 4100、記号を A6061S(特殊級なら A6061SS)に替え、形材図面の番号を添える。
よくある質問
6061-T6 の引張強さはいくつで計算すればよいですか
形と寸法の区分で違う。板(0.5 mm 超 6.5 mm 以下)は 295 N/mm² 以上、押出棒(6 mm 超)は 260 N/mm² 以上、押出形材(6 mm 超)は 265 N/mm² 以上である[1][2][3]。使う形の規格の、その区分の値を使う。
6063-T5 の形材を 6061-T6 に替えたいと言われました
強度は上がる方向だが、6063 は押出性・表面処理性がよい合金とされているので[2]、断面の作りやすさや陽極酸化の仕上がりが変わる可能性がある。なお JIS H 4100 では 6061 と 6063 はどちらも合金グループ 1 に入っているので[3]、断面寸法の許容差の表は同じものを使う。ただし注文者が要求したときに適用される隅角の半径(表 18)は、6061 と 6082 だけ別の値で、肉厚 5 mm 以下では他の合金の 0.6 mm 以下に対して 0.8 mm 以下、5 mm を超えると 1.0 mm 以下に対して 1.5 mm 以下と、6061 のほうが大きい[3]。置き換えるなら、断面が 6061 で押し出せるかを形材図面ごと仕入先と確かめる。
6061 は溶接できないのですか
JIS は溶接性が劣る合金としているが[2][3]、配管などで溶接される例もある[5]。溶接するなら、溶接部と熱影響部の強度低下を設計で見込み、溶加材の選択を含めて決めておく[5]。
まとめ
A6061 は、板は JIS H 4000、棒は JIS H 4040、押出形材は JIS H 4100 で、同じ T6 でも引張強さの下限が板 295、押出棒 260、押出形材 265 N/mm² と違う。設計値がどの形の規格値なのかを確かめ、他の形からの切り出しは承認事項にする。6063 は 6061 より強度は低いが押出性・耐食性・表面処理性がよく、複雑な形材や外観部品で選ばれる。6061 は溶接性が劣るとされ、溶接するなら溶接部と熱影響部の強度低下を設計に織り込み、溶加材も決めておく。成績書は注文時に求め、規格・製品記号・機械的性質・成分の順に確かめる。
同じ束では、削り出しで使う A2017(ジュラルミン)、純アルミ A1050・A1100、パンチングメタルの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS H 4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 4 月 20 日改正)
- JIS H 4040:2023 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
- JIS H 4100:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 12 月 20 日改正)
- JIS H 0001:1998 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1998 年 11 月 20 日改正)
- 内田彰「アルミニウム合金溶接技術・概説」溶接学会誌 53 巻 3 号(溶接学会/1984 年 4 月)
- JIS H 0321:1973 非鉄金属材料の検査通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1973 年 3 月 1 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- 秋本政弘「硬質アルマイト」実務表面技術 35 巻 6 号(表面技術協会/1988 年 6 月)
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