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投稿日:2026年10月2日

アルミ押出形材の寸法許容差(JIS H 4100)と、金型の扱い

この記事のポイント(結論先出し)

アルミ押出形材の寸法許容差は JIS H 4100(2022 年改正)が定めていて、普通級(記号の末尾 S)と特殊級(SS)の 2 つの等級がある[1]。断面寸法の許容差は、等級に加えて外接円の直径・その寸法が金属部か空間部か・合金グループで決まり、角度・長さ・曲がり・平らさは特に指定のない場合は普通級になる[1]。外郭形状と隅角の半径の許容差は、注文者が求めたときだけ適用される[1]。発注する側は、製品記号(例: A6063SS-T5)と形材図面の番号を書き、普通級のままでは困る寸法と、規格に任せない項目を図面に指示する。押出金型は部品ごとの専用品なので、所有と保管の取り決めも発注時に結んでおく[4]。

押出形材の「公差」は JIS H 4100 で決まる

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押出形材の図面に寸法公差が書いていないとき、機械加工の普通公差(JIS B 0405)で読むと、仕入先と話がかみ合わない。押出の断面寸法には、押出形材そのものの規格がある。JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)は 1970 年に制定され、2022 年 12 月 20 日に改正された[1]。ISO 6362-4(押出形材の形状と寸法の許容差)などの国際規格を基にし、国内の市場の実態に合わせて技術的内容を変えて作られている[1]。

この規格は、JIS H 4040(棒及び線)や JIS H 4080(継目無管)に規定する断面形状と異なる押出材のすべてに適用される。断面が四角形・長方形・六角形の場合は、角の半径が指定されている形状に適用する、とされている[1]。いわゆる「異形の押出材」は、ほぼこの規格で読むと考えてよい。普通公差の考え方そのものは普通公差(JIS B 0405)の指定で扱っているが、押出のまま使う面にそれを当てはめないことが出発点になる。

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製品記号に「等級」が入っている

JIS H 4100 は、等級を寸法の許容差によって普通級と特殊級に分け、合金番号ごとに記号を定めている。たとえば合金番号 6063 は、普通級が A6063S、特殊級が A6063SS である。この記号の後に質別の記号を付けたものが製品記号になる[1]。規格が表示の例に挙げているのは「JIS H 4100 A6063SS-T6」である[1]。

つまり、図面の材質欄に「A6063-T5」とだけ書いて押出形材を発注すると、等級が決まっていない。規格の各項目には「特に指定のない場合は、普通級とする」という書き方が多いので[1]、等級を書かなければ普通級で作られても文句は言えない。特殊級が必要なら、製品記号に SS まで書く。

質別(T5・T6 など)の意味は、JIS H 0001 が定めている。T5 は「高温加工から冷却後人工時効硬化処理したもの」で、押出材のように高温の製造工程から冷却した後に積極的な冷間加工を行わずに人工時効硬化処理したもの、T6 は「溶体化処理後人工時効硬化処理したもの」とされている[5]。同じ合金でも質別が違えば強さが違う。質別を書き落とすと何が起きるかはアルミの合金番号と質別記号の指定で詳しく扱っている。

断面寸法の許容差は、4 つの条件で決まる

断面寸法の許容差は、等級、金属部か空間部か、合金グループの別によって区分し、外接円の直径と寸法の大きさで表から読む[1]。

  • 等級: 普通級(表 9)か特殊級(表 10)か
  • 外接円の直径: 形材断面に対する最小外接円の直径。250 mm 以下と、250 mm を超え 800 mm 以下に分かれる
  • 金属部か空間部か: 75 % 以上が金属で占められている箇所(金属部)か、空間が 25 % を超える箇所(空間部)か。空間部は、指定箇所と脚の根元との距離でさらに欄が分かれる
  • 合金グループ: 純アルミニウム、3000 系、Mg 2.8 % 以下の 5052、6000 系がグループ 1。Mg 2.8 % を超える 5000 系、2000 系、7000 系がグループ 2

同じ「10 mm」の寸法でも、それが肉厚(金属部)なのか、溝の開口幅(空間部)なのか、合金が 6063 なのか 7003 なのかで、許容差が変わる。外接円の直径について、規格の注は、肉厚に偏りがある場合はその部分を補正し、中空形材の場合は中空部を中心とした外接円とするため、必要に応じてあらかじめ製造業者に外接円の直径を確認することが望ましいとしている[1]。図面を渡すときに、外接円の直径を仕入先と一致させておく。

規格の表から一部を抜き出すと、等級による差は次のとおりである(外接円の直径 250 mm 以下、金属部の値)[1]。

項目 普通級(S) 特殊級(SS)
断面寸法 3.20 mm 以下・合金グループ 1 ±0.23 mm ±0.15 mm
断面寸法 3.20 mm 以下・合金グループ 2 ±0.35 mm ±0.23 mm
断面寸法 12.50 mm を超え 20.00 mm 以下・合金グループ 1 ±0.35 mm ±0.23 mm
断面寸法 50.00 mm を超え 100.00 mm 以下・合金グループ 1 ±0.92 mm ±0.60 mm
断面形状の角度 ±2° ±1°

表から分かるのは、合金グループ 2 の普通級の値(±0.35 mm)が、グループ 1 の特殊級の値(±0.15 mm)の 2 倍を超えることである。7000 系の高強度合金を選んだ図面に、6063 の感覚で寸法を詰めると、特殊級でも収まらないことがある。規格は、許容差を+側と-側で不均等にしてよいこと、全許容範囲が同じなら+側だけ・-側だけにしてもよいこと、表の範囲外の寸法は受渡当事者間の協定によることも定めている[1]。

角度・長さ・曲がり・平らさ・ねじれ

断面寸法のほかに、形状に関する許容差がある。どれも「特に指定のない場合は普通級」が基本で、質別 O と TX510(T6510 など)の材料に適用するときは受渡当事者間の協定による、とされている項目が多い[1]。

  • 長さ: 許容差は+側だけで、-側は 0 である。外接円の直径が 75 mm 以下・長さ 5,000 mm 以下の普通級では+8 mm、-0 mm[1]。必要な長さより短い材が届くことは無いが、切りっぱなしで使う設計なら長い分の扱いを決めておく
  • 曲がり・平らさ・ねじれ: いずれも定盤などの基準平面上に置き、形材自体の質量で曲がりやねじれが最小になった状態で測った値で判定する[1]。受入で両端を押さえて測ると、規格の測り方と違う値になる
  • 任意の箇所の測定: 任意の長さ 300 mm ごとの曲がり、任意の幅 25 mm ごとの平らさ、任意の長さ 1 m ごとのねじれは、注文者からの要求がある場合だけに適用される[1]。全長での値しか保証されないので、短く切って使う部品で局所の曲がりが問題になるなら、要求として書く

注文者が求めないと適用されない項目

押出形材の規格には、注文者が求めたときだけ適用される項目がある。ここを知らずに発注すると、「図面の形と違う」と思っても、規格上は不適合にならない。

外郭形状は、曲面や曲線の形がどれだけ図面の線からずれてよいかを、許容円の直径で決めるもので、外接円の直径 30 mm 以下なら 0.30 mm 以下、600 mm を超え 800 mm 以下なら 5.0 mm 以下といった値が並ぶ。ただし「外郭形状は、注文者からの要求がある場合に適用」する[1]。測定は、最大許容円を描き入れた実寸大の投影図に断面を当てる方法や拡大投影機による方法でもよいとされている[1]。曲線の形が機能や外観に効く形材なら、外郭形状を適用すると図面に書く。

隅角の半径も同じで、指定した隅の半径に対する許容差(5 mm 以下は ±0.5 mm、5 mm を超えると ±10 %)は、注文者から要求がある場合に適用される[1]。肉厚に応じた隅角の半径の上限(肉厚 5 mm 以下では、合金グループ 1 のうち 6061・6082 を除く合金で 0.6 mm 以下、6061・6082 は 0.8 mm 以下など)も表になっているが、これも注文者から要求がある場合に適用するとされている[1]。他の部品と組み合わせる隅、板を差し込む溝の奥の隅などは、半径と許容差を図面に書き、規格の適用を求める。

押出形材の設計について日本軽金属学会の会誌に載った解説は、使用上差し支えなければ形材の出隅の角(ダイスでは入隅の角)に、ダイスの寿命上、肉厚の 1/3 程度の R を付けてほしいと書いている[2]。鋭い角を指示すると、金型の寿命と価格に跳ね返る。角の R は、機能に必要な箇所と、そうでない箇所を分けて指示するとよい。

測れない寸法、重複する寸法を図面に残さない

同じ解説は、各寸法の和の寸法に許容差がある場合(特に片側許容差のとき)は、いずれかの寸法を括弧書きにして参考寸法にする必要があると書き、測定が難しい寸法を測定できる寸法に置き換えた改善例も示している[2]。断面寸法をすべて押さえようとして寸法を重ねて書くと、許容差どうしが矛盾し、仕入先はどれを優先すべきか分からなくなる。

嵌合する形材については、設計上のすき間の目安として、合わせ嵌合で 0.5〜0.8 mm 程度、長さ方向に挿入するスライド嵌合では長さによって 0.5〜1.3 mm 程度が必要という例が挙げられ、嵌合の設計は難しいので嵌合図を示して事前に製造業者と相談した方がよい、と結ばれている[2]。1971 年の解説なので数値は当時の例として扱うべきだが、嵌合部の寸法を単品の図面だけで決めないという考え方は変わらない。

外観を重視する面は、図面で指示する

アルマイトなどで外観が重視される形材について、同じ解説は、重要な面にはできるだけ肉厚差をつけない方がよいこと、肉厚を薄くすると一般に表面の程度が下がることを挙げ、設計時に重要な面を図面で指示されると、製造業者は押出時に重要な面を上側にして押し出すよう配慮できると書いている[2]。JIS H 4100 の外観の規定は、表面仕上げが良好・均一で使用上有害な膨れ・きずなどの欠陥があってはならない、という書き方である[1]。どの面の、どの程度の欠点を許すかは、規格の文言からは決まらない。外観の合否基準は、面を指定したうえで限度見本で合意しておく。

寸法精度は、金型と押出条件の両方で決まる

同じ学会誌の講座は、押出材の形状・寸法精度と生産性に影響する要因を、ダイス関係(押出比、圧力、ダイスのたわみ、ベアリング表面、形材の厚さ、形材寸法の許容限、ダイス孔の数と配置、ダイス材料など)と押出作業関係(合金種、速度、圧力、温度、潤滑・離型剤、形材の切断長さなど)に分けて挙げている[3]。ダイスの設計の工程にも、形材寸法による収縮量の算出と、ダイスのたわみやトング部の変形を考慮した寸法許容量の決定が含まれる[3]。

発注する側にとっての意味は 2 つある。1 つは、要求する等級と許容差は、金型を作る前に決まっていなければならないこと。金型ができた後で特殊級に変えると、金型の作り直しになりうる。もう 1 つは、同じ金型でも押出条件で寸法が動くこと。初回の品で寸法が合っていても、ロットごとの寸法の記録を求めておくと、ずれが出たときに追える。断面の設計で後加工を減らす考え方は、押出材の断面設計でフライス削りを減らすコツも参考になる。

押出金型の所有と保管を決めておく

押出形材は、断面ごとに専用の金型(ダイス)を作る。金型代を発注者が払うのか、単価に含めるのか、作った金型は誰の所有で、量産が終わった後に誰が保管するのかは、発注のときに書面で決めておく。

取適法のテキストは、金型の無償保管に関する事例として、自社が所有する金型を委託先に貸与して製造を委託し、保管費用は発注金額に含まれているとの認識のもと、量産終了後の金型の保管費用を支払わずに無償で保管させていた事例や、次回以降の発注時期を示せない状態なのに保管費用の取り決めをしないまま無償で保管させていた事例を、不当な経済上の利益の提供要請として載せている[4]。押出金型も同じで、量産が終わった断面の金型を仕入先に置きっぱなしにすると、この問題になりうる。保管の期間と費用、廃棄の手続きを取り決めておく。金型代の扱いの全般は有償支給材・金型代のルールで、射出成形の金型の発注については射出成形の金型を発注するときで扱う。

発注書と図面に書くこと

項目 書かないとどうなるか 書き方の例
規格・製品記号(等級・質別) 等級は普通級、質別は不明 JIS H 4100 A6063SS-T5
形材図面の番号と版 どの断面か特定できない 形材番号又は図面番号(規格の表示項目でもある)
外接円の直径 許容差を読む欄が双方で食い違う 仕入先と確認した値を図面に記入
外郭形状・隅角の半径 規格の許容差が適用されない 「外郭形状は JIS H 4100 表 16 を適用」、隅の半径と許容差
任意の箇所の曲がり・平らさ・ねじれ 全長での値しか保証されない 「任意の長さ 300 mm につき曲がりを適用」
長さ +側だけの許容差になる 定尺か、切断長さと許容差か
外観の重要面 どの面を守るか伝わらない 重要面を図示し、限度見本で合意
金型の所有・保管 量産後の保管費用で揉める 所有者、保管期間、保管費用、廃棄の手続き

受入で確かめること

JIS H 4100 は、規格に適合した形材に、1 包装ごと・一束ごと・1 製品ごとのいずれかで、規格番号と製品記号、形材番号又は図面番号、長さ、製造番号又は製造年月、製造業者名を表示するとしている[1]。受入では、この表示の製品記号が注文と一致しているか(特に S と SS の違い、質別)を最初に見る。

引張試験や硬さ試験は、特に注文者の要求がない限り、合金番号・等級・質別・断面寸法の同じ形材について、1 m 当たりの質量に応じて 1,000〜3,000 kg を一組の検査ロットとし、各組から任意に 1 本以上を採って行う[1]。小ロットの調達では、自社が受け取る量よりずっと大きいロットの試験結果が付いてくることになる。それで足りるかどうかは、部品の重要度で判断し、足りなければ要求を書く。

押出のまま使う形材でも、後で切断・穴あけ・表面処理をして完成品にすることが多い。押出の段階の許容差と、加工後の部品の公差は別のものなので、押出材の受入基準と完成部品の受入基準を混ぜない。表面処理の指定は化成処理の指定や図面の一般注記の書き方(図面の一般注記に何を書くか)とあわせて決める。

基準は発注の時点で出しておく。取適法のテキストは、検査基準が明確でないために委託内容との違いがはっきりしない場合や、発注後に検査基準を恣意的に厳しくした場合は受領を拒めないとしている[4]。普通級で発注した形材を、届いてから特殊級の値で判定することはできない。

よくある質問

図面に「A6063-T5」とだけあります。そのまま発注してよいですか

等級が書いていないので、普通級で作られる前提になる[1]。普通級の値で機能上困らないかを設計部門に確かめ、困る寸法があれば、等級を特殊級にするか、その寸法だけ個別の許容差を図面に書く。

特殊級にすれば、すべての寸法が厳しくなりますか

表の値は小さくなるが、外郭形状や隅角の半径の許容差は、等級に関係なく注文者が求めたときだけ適用される[1]。等級を上げることと、規格の適用を求める項目を指定することは別の作業である。

届いた形材の曲がりが大きいように見えます

まず測り方を確かめる。規格の曲がりは、曲がりが最も大きい方向を上下にして定盤に置き、自重で曲がりを最小にした状態の値である[1]。そのうえで、全長での値で判定するのか、任意の 300 mm での値を要求していたのかを、発注書で確認する。

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押出の仕入先を替えるとき、金型はどうなりますか

金型の所有者が自社なら、移管の手続きと費用を取り決める。所有の取り決めが無いまま仕入先を替えると、金型の扱いで揉めやすい。新しい仕入先で金型を作り直すなら、初回の品で寸法を確かめ直す。

まとめ

アルミ押出形材の寸法は JIS H 4100 で読み、等級は製品記号の S と SS で決まる。断面寸法の許容差は、外接円の直径、金属部か空間部か、合金グループでも変わる。角度・長さ・曲がり・平らさは指定が無ければ普通級になり、外郭形状と隅角の半径は注文者が求めなければ適用されない。図面と発注書には、製品記号、形材図面の番号、外接円の直径、規格に任せない項目、外観の重要面、金型の所有と保管を書く。これらを発注の時点で決めておけば、受入の判定がそのまま成り立つ。

出典・参考資料

  1. JIS H 4100:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材(JIS 検索で閲覧)(日本産業標準調査会/2022 年 12 月 20 日改正)
  2. 田中浩・叶秀作「アルミニウム合金押出し形材の利用と設計」軽金属 Vol.21 No.8(軽金属学会/1971 年)
  3. 岡庭茂「アルミニウムの押出し」軽金属 Vol.40 No.1(軽金属学会/1990 年)
  4. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  5. JIS H 0001:1998 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(JIS 検索で閲覧)(日本産業標準調査会/1998 年 11 月 20 日改正、2023 年 10 月 20 日確認)

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