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投稿日:2026年10月1日

同等材の指定と承認——JIS材をASTM・ENの材料に置き換えるとき

この記事のポイント(結論先出し)

図面の JIS 材を海外の仕入先で ASTM や EN の材料に置き換えるとき、「同等材」は規格が保証する関係ではない。業界団体の対照表も「読み替えや同等性を保証するものではない」と断っている[1]。比べるのは記号ではなく、化学成分を元素ごとに、機械的性質を試験方法と試験片の取り方まで含めて、単位系と検査文書までである。置き換えを決めるのは仕入先ではなく注文者で、承認した組み合わせ・品番・期間を記録し、発注書には「承認したものに限り可」と書く。承認していない置き換えを防ぐには、変更の事前承諾を契約に入れておく。

「同等材」「相当材」は、規格が定めた関係ではない

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図面に「SUS304」と書いてあり、海外の仕入先から「ASTM の 304 で供給します。同等材です」と返ってくる。現場ではよくあるやりとりだが、ここでいう「同等」は、規格同士が互いに読み替えを認めているという意味ではない。

ステンレス協会は、JIS と外国規格の対照表を公開したうえで、この表は各規格間の読み替えや同等性を保証するものではないと明記している。種類の記号(いわゆる鋼種名)が同じでも、引用規格・化学組成・機械的性質・試験方法などの規定内容が異なる場合があるので、対比・適用にあたっては当該規格の最新版を確認するよう求めている[1]。

国際規格の側も同じ立場である。ステンレス鋼の化学成分を集めた ISO 15510 は、ISO・ASTM・EN・JIS・GB(中国)の規格をもとに合意した成分を一覧にした規格だが、似た鋼種を比べるときは置き換える前に元素を一つずつ確かめる必要があると注記している[2]。アルミニウムでは、国際的な合金番号の登録を管理する米国アルミニウム協会の登録表が、登録された番号は登録と同一の成分範囲を持つ合金にだけ使うべきだとしている[3]。日本アルミニウム協会もこの登録の取り決めに加わっている[3]。

つまり、規格の世界で「同じ」と言えるのは、成分の範囲が同一に登録されている場合までである。それ以外は、どこが同じでどこが違うかを、置き換えるたびに確かめるしかない。購買仕様書に「SS400 相当」と書くと同等品を認める意味にも似たもので良い意味にも読めてしまう、という問題は購買仕様書の書き方でも取り上げた。この記事では、その「相当」を承認の手続きに置き換える方法を扱う。

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同じ記号でも、中身が一つとは限らない

対照表を見ると、一つの JIS 記号に複数の外国規格の行が対応していることがある。ステンレス協会の表では、SUS304L に対応する ISO の鋼種が 2 行以上並んでいる[1]。ISO 15510 で 2 行の中身を比べると、炭素の上限はどちらも 0.030% だが、クロムとニッケルの範囲が違う[2]。

ISO 15510 の番号には、末尾に 1 文字の記号が付く。この記号は、その成分が欧州・米国・日本・中国のいずれかの規格の成分と完全に一致するのか、複数の規格の折衷として ISO が新たに定めた成分なのかを示すもので、折衷の場合は「I」が付く[2]。対照表で隣に並んでいても、成分の範囲が一致しているとは限らないということである。

アルミニウムにも同じ構造がある。登録表では、6061 と 6061A は別々に登録された合金で、6061A には 6061 に無い鉛の上限(0.003%)が加わっている[3]。番号の後ろに付く A などの文字は、元の合金と似ているが同一ではない「変種」に付けるもので、成分の平均値のずれや不純物の上限の違いなどを指す[3]。

例 対応する規格上の記号 成分の範囲(質量%) 読み取れること
SUS304L に対応する ISO の鋼種① X2CrNi18-9(4307-304-03-I) C 0.030 以下/Cr 17.5〜19.5/Ni 8.0〜10.5 同じ「304L」でもクロム・ニッケルの範囲が違う行がある
SUS304L に対応する ISO の鋼種② X2CrNi19-11(4306-304-03-I) C 0.030 以下/Cr 18.0〜20.0/Ni 10.0〜12.0
アルミニウム合金 6061 と 6061A 主要元素の範囲は同じ。6061A には鉛 0.003 以下の上限が加わる 番号の末尾の文字は別の登録を示す

表の成分は ISO 15510 の表 1 と登録表に載っている値で、ISO 15510 の値は溶鋼分析に適用するものである[2][3]。JIS 側の数値は、JIS の各製品規格で確かめる。

比べるのは成分だけではない

成分が重なっていても、それだけで置き換えてよいとは言えない。規格は成分のほかに、何をどう試験し、どの状態の値を保証するかを決めているからである。鋼材の一般受渡し条件を定める JIS G 0404(改正原案)を例に、比べる項目を整理する[4]。

化学成分:溶鋼分析か、製品分析か

JIS G 0404 の改正原案は、化学成分の要求は、明確に製品分析と規定していない限り溶鋼分析によるとしている。製品分析は注文者の要求がある場合に行い、規格値に対する許容変動値は各規格の規定により、規定が無ければ受渡当事者間の協定で JIS G 0321 の表番号を指定する[4]。JIS G 0321 の改正原案は、製品分析の許容変動値について ASTM や ISO の規格も規定していると注記している[5]。

実務では、別規格の材料が届いて受入側で分析したとき、どの規格の許容変動値で合否を見るのかを決めていないと判定が割れる。置き換えを承認するときに、分析の種類と許容変動値の出どころまで書いておく。

機械的性質:試験片の取り方と、どの状態の値か

同じ原案は、試験片の採取方向を製品規格や注文書で指定しない場合の決まり(棒鋼は圧延方向、鋼板は圧延方向またはその直角方向)を置き、機械的性質は特に指定がなければ受渡状態での値とするとしている[4]。試験方法も製品規格の規定により、規定が無ければ注文時に合意した方法による[4]。

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規格によって試験片の形や向き、試験する状態が違えば、同じ引張強さという言葉でも別の条件の数字になる。樹脂の例だが、ASTM の引張試験の規格は、ISO 527-1 と同じ事柄を扱うが技術的な内容は異なると自ら注記している[6]。数値の大小だけを並べて「同等」と判断しない。

単位系と寸法

米国の規格では単位系にも注意がいる。ASTM のステンレス鋼板の一般要求事項は、SI 単位とインチ・ポンド単位をそれぞれ独立に扱い、両者の値を組み合わせてはならないとしている。注文で「M」の付いた SI 単位の規格を指定しない限り、インチ・ポンド単位で供給されるとも書いている[7]。板厚や寸法許容差をミリで考えていると、ここで食い違う。

比べる項目 JIS で発注したときの前提 別規格の材料を受けるときに確かめること
化学成分 指定がなければ溶鋼分析 元素ごとの範囲。製品分析をするなら許容変動値をどの規格で見るか
機械的性質 指定がなければ受渡状態の値 試験方法、試験片の形・採取方向、保証する状態(熱処理の前後など)
単位系・寸法 SI 単位 インチ・ポンド単位の規格か、SI 単位版(M 付き)を指定したか
検査文書 製品規格の規定、または注文書の指定 文書の種類、記載される規格名と版が注文と一致するか
表面・内部品質 製品規格の規定 表面仕上げの呼び方、きずの扱い

置き換えを決めるのは、仕入先ではなく注文者

JIS G 0404 の改正原案は、注文者が意図する加工方法と用途を考慮して鋼の種類・形状・寸法を選定し、その選定にあたって製造業者の助言を参考にしてもよいとしている[4]。仕入先の「同等です」は助言であって、選定の判断ではない。材料を選ぶ責任は、図面を出した側に残る。

この線引きは社内の分担にもつながる。ここから先は規格の要求ではなく、発注側の実務としての提案である。材料の置き換えは、図面の責任者(設計)が用途に照らして可否を判断し、品質保証が確かめる項目と記録を決め、購買が仕入先との条件を詰める、という分け方が考えやすい。購買だけで決めると、用途を知らないまま記号の対照だけで判断することになりやすい。

なお、ASTM の一般要求事項は、注文書の要求が製品規格より厳しい場合は注文書が優先するが、試験の要求を省いたり緩めたりする形で規格に反する場合は優先しないとしている[7]。足りない点を補うには、規格を緩める指定ではなく、追加の試験や証明を上乗せする指定で埋める。

承認の手順

置き換えの申し出を受けてから発注に反映するまでを、次の順で進めると記録が残る。

  1. 仕入先に、置き換え後の規格番号・版・記号を書面で出してもらう。「同等材」という言葉だけでは受け付けない
  2. 元の規格と置き換え後の規格の比較表を作る。成分は元素ごと、機械的性質は試験方法と試験片の取り方まで並べる
  3. 差がある項目について、用途への影響を図面の責任者が判断する。溶接・熱処理・表面処理を後工程に持つ部品は、その工程への影響も見る
  4. 足りない点は、製品分析や追加試験、検査文書の種類の指定で補う
  5. 承認の範囲(品番・仕入先・置き換え後の規格と版・有効期間)を決めて記録し、図面または購買仕様書に反映する
  6. 承認した範囲の外へ変える場合は、事前に連絡して承諾を得るよう契約に入れる

最後の手順は軽く見られやすい。製品評価技術基盤機構(NITE)の整理では、契約で決めていない仕様の変更は、それを禁じる条文が無い限り契約違反にならない[8]。承認した範囲の外へ変えるときは事前に承諾を得る、と契約に入れておく。事例はサイレントチェンジの典型事例に、仕入先の側で起きる変更の拾い方は変化点管理を DRBFM につなぐにまとめた。

図面・発注書への書き方

JIS G 0404 の改正原案は、注文書に示す情報として、鋼の種類の記号、注文者が指定する製造方法(熱処理・表面処理など)、検査文書の種類などを挙げている。日本産業規格を発効年の指定なしで引用した場合は、注文が成立した時点で有効な最新版を適用するとしている[4]。版が変わると中身が変わりうるので、承認した版がある場合は年まで書く。

書き方の例を示す(これは規格の書式ではなく、発注側の書き方の提案である)。

「材質:SUS304(JIS G 4305)。他規格材への置き換えは、承認番号〇〇に記載の規格・版・仕入先に限り可。検査文書は JIS G 0415:2024(または EN 10204:2004)の検査証明書 3.1 とし、記載する規格名と版を注文と一致させること。」

承認番号を書くのは、図面や発注書だけで承認の中身を全部表せないからである。承認書に比較表と判断の理由を残し、番号で参照する。承認を受けていない規格の材料が届いたときに、受入で止める根拠にもなる。受け入れてしまったものを例外として使う場合の扱いは、特別採用(特採)を出してよい線を参照してほしい。

受入で、証明書の何を見るか

検査文書の種類ごとの違いは、EN 10204 のミルシート区分にまとめた。置き換え材の受入で特に見るのは次の点である。

まず、証明書に書かれた規格名・版・記号が、承認した組み合わせと一致しているか。次に、成分が溶鋼分析の値か製品分析の値か、機械的性質がどの試験方法の値か。そして、単位系が注文と一致しているか。

商社や加工業者を経由する場合は、元の製造業者の文書と現品の結び付きも見る。JIS G 0404 の改正原案は、中間業者または加工業者は注文者の要求があれば製造業者の検査文書を提出し、その文書には製品と文書の関連を明らかにする識別手段を含まなければならないとしている。加工業者は、加工によって変わる特性について自ら検査し、追加の文書に記載するとも定めている[4]。経由先が増える取引では、この結び付きが切れやすい。3.1 の体制を持たない仕入先の見分け方はミルシート Type 3.1 を出せない仕入先を発注前に見抜くで扱った。

材料ごとの具体的な指定は、束の記事で扱う。ステンレスはステンレスの鋼種と仕上げの指定、アルミニウムはアルミの合金番号と質別記号の指定、樹脂は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認を見てほしい。

よくある質問

対照表に並んでいる材料なら、承認を省いてよいのですか

省かないほうがよい。対照表を作っている団体自身が、同等性を保証するものではないと断っている[1]。対照表は比較の出発点として使い、元素ごとの範囲と試験方法の違いを確かめてから承認する。

成分も機械的性質も範囲が重なっていれば十分ですか

範囲が重なっているだけでは、届く材料が元の規格の範囲に入るとは限らない。置き換え後の規格の範囲が元の規格より広い元素があれば、その元素について元の規格の範囲で受けるという条件を承認に付ける。条件を付けた場合は、証明書の値でその条件を確かめる。

試作で使った置き換え材を、量産でもそのまま使えますか

試作の承認と量産の承認は分けて考える。試作では入手のしやすさを優先して置き換えることがあるが、量産では仕入先・規格の版・ロットの管理まで決める必要がある。試作で通ったことを、量産の承認の代わりにしない。

まとめ

「同等材」は規格が保証する関係ではなく、対照表もそのことを明記している。同じ記号に複数の成分の行が対応することもあり、番号の末尾の文字一つで別の登録になる。置き換えるときは、成分を元素ごとに、機械的性質を試験方法と試験片の取り方まで、単位系と検査文書まで比べる。材料を選ぶ責任は注文者にあり、仕入先の「同等です」は助言として扱う。承認した範囲を記録して図面や発注書から番号で参照し、範囲の外へ変えるときは事前承諾を求める条文を契約に入れておく。

出典・参考資料

  1. 外国規格との比較(JIS と対応外国規格との比較表について)(一般社団法人ステンレス協会)
  2. ISO 15510:2014 Stainless steels — Chemical composition(国際標準化機構(ISO)/2014 年 5 月発行・2025 年確認)
  3. International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys(米国アルミニウム協会/2018 年 8 月改訂)
  4. 鋼材規格三者委員会 資料 2(JIS G 0404 鋼材の一般受渡し条件 改正原案)(一般社団法人日本鉄鋼連盟/2022 年度 第 2 回)
  5. 鋼材規格三者委員会 資料(JIS G 0321 鋼材の製品分析方法及びその許容変動値 改正原案)(一般社団法人日本鉄鋼連盟/2025 年度 第 1 回)
  6. ASTM D638-22 Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics(ASTM International)
  7. ASTM A480/A480M-25b General Requirements for Flat-Rolled Stainless and Heat-Resisting Steel Plate, Sheet, and Strip(ASTM International)
  8. 身近に潜むサイレントチェンジ問題について(独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センター)

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