プレス・板金品の公差の指定——JIS B 0408・B 0405と板厚の扱い | newji
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投稿日:2026年10月1日

プレス・板金品の公差の指定——JIS B 0408・B 0405と板厚の扱い

この記事のポイント(結論先出し)

プレス品・板金品の図面では、どの普通公差の規格で読むかを番号と題名で書くことから始める。JIS には金属プレス加工品の普通寸法公差(JIS B 0408)と金属板せん断加工品の普通公差(JIS B 0410)があり、さらに JIS B 0405 に対応する国際規格は板金から成形した部品も対象に含めている[1][2]。どれを当てるかは自動では決まらない。板厚は加工品の公差ではなく材料規格の許容差で決まるので、図面に板厚の公差を書くなら材料の注文条件と食い違わないかを確かめる[3]。曲げ角度は同じ板の中の板厚のばらつきでも 1° 程度動くことが報告されており[4]、機能に効く曲げ寸法には個別の公差と測り方を書く。基準は発注の時点で明示する[5]。

プレス品・板金品の「普通公差」はどの規格で読むか

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板金部品の図面に「普通公差による」とだけ書いてあり、仕入先から「どの規格のどの等級で見ればよいか」と問い合わせを受けることは多い。機械加工品なら JIS B 0405 の等級を書けば話が済むことが多いが、プレス品・板金品では候補になる規格が複数あり、しかもどれを当てるかが図面の側で決まっていないことがある。

日本産業標準調査会の JIS 検索で、関係する規格の名称と現在の状態を確かめると次のようになる[1]。

規格番号 規格名称 制定 最新改正 最新確認
JIS B 0405 普通公差-第 1 部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差 1957 年 11 月 25 日 1991 年 2 月 1 日 2025 年 6 月 20 日
JIS B 0408 金属プレス加工品の普通寸法公差 1959 年 3 月 30 日 1991 年 2 月 1 日 2025 年 6 月 20 日
JIS B 0410 金属板せん断加工品の普通公差 1963 年 2 月 1 日 1991 年 2 月 1 日 2025 年 6 月 20 日
JIS B 0417 ガス切断加工鋼板普通許容差 1979 年 3 月 1 日 — 2024 年 6 月 20 日

表から分かるのは、題名の上でも加工方法ごとに規格が分かれていることである。日本規格協会の規格概要は、JIS B 0408 でいう金属プレス加工品を、金属板を打抜き・曲げ・絞りによってプレス加工したものとし、金属板のせん断加工は含まないと説明している[6]。シャーで切った板は JIS B 0410、ガスで切った鋼板は JIS B 0417 が題名に合う。いずれも 2024〜2025 年に確認されており、廃止された規格ではない[1]。JIS B 0408 は 1991 年の改正以降は内容を変えずに確認が続いているので[6]、1991 年以降に描かれた図面の「JIS B 0408」は、現在の規格と同じ内容を指している。それより前の図面は 1978 年の改正版を前提にしている可能性があるので、流用するときは設計部門に確かめる。

JIS B 0405(対応する ISO 2768-1)も板金成形を対象にしている

ややこしいのは、機械加工の普通公差として知られる JIS B 0405 の側も、板金部品と無縁ではないことである。JIS B 0405 の題名に対応する国際規格 ISO 2768-1 について、国際標準化機構は、金属の除去加工で作る工作物と、板金から成形する工作物の寸法に適用すると説明している[2]。同じページでは、この規格は改訂の段階に入っていると表示されている[2]。

つまり、同じ板金部品について「JIS B 0405 の等級」で読むこともでき、「JIS B 0408 の等級」で読むこともできる。どちらで読むかで、同じ寸法に許される幅が変わりうる。設計部門が機械加工品と同じ書式の注記をそのまま板金図面に流用している場合、本人は JIS B 0405 のつもりでも、板金の仕入先は慣れた JIS B 0408 で見積り、検査しているということが起こる。JIS B 0405 の等級の書き方そのものは普通公差(JIS B 0405)の等級指定で扱っているので、ここでは繰り返さない。

図面と発注書に書くこと

ここからは規格の要求ではなく、発注する側の実務の提案である。注記には次の 3 つを書く。

  1. 規格の番号と題名(番号だけだと、隣の番号との取り違えに気づけない)
  2. 等級(規格本文の表で確かめた記号をそのまま)
  3. どの寸法にその規格を当てるか(抜き寸法・曲げ寸法・切断寸法で規格を分けるなら、その区分)

タレットパンチプレスやレーザーで外形を抜き、プレスブレーキで曲げる部品は、1 つの部品の中に抜きでできた寸法と曲げでできた寸法が混ざる。規格の題名どおりに読めば当てはめる規格は 1 つで済むはずだが、量産で順送型に切り替えると、同じ寸法でも工程が変わる。工程に依存しない書き方として、「抜き寸法・曲げ寸法とも JIS B 0408 の〇級」のように寸法の種類ごとに書いておくと、試作と量産で解釈が割れにくい。

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板厚は「加工品の公差」ではなく材料規格で決まる

プレス品・板金品の寸法で、最も取り違えが多いのが板厚である。板厚はプレスや曲げでほとんど作り込めない寸法で、ばらつきの大部分は材料の段階で決まっている。材料規格の側には板厚の許容差が定められている。

冷間圧延鋼板(JIS G 3141)の 2021 年改正に向けて日本鉄鋼連盟などの鋼材規格三者委員会で審議された規格案では、厚さの許容差について、許容差は呼び厚さに適用すること、鋼板・鋼帯の縁から 15 mm 以上内側に適用すること、幅などに応じて 2 つの表のどちらかによること、鋼帯の表面きずや折れなどの欠点部分には適用しないことが定められている[3]。同じ規格案の表のうち、幅 1,000 mm 以上 1,250 mm 未満の列を抜き出すと次のとおりである。

呼び厚さ(mm) 厚さの許容差(mm) 許容差の全幅が呼び厚さの下限に占める割合(概算)
0.80 以上 1.00 未満 ±0.07 約 18%
1.00 以上 1.25 未満 ±0.08 約 16%
1.25 以上 1.60 未満 ±0.10 約 16%
1.60 以上 2.00 未満 ±0.12 約 15%
2.00 以上 2.50 未満 ±0.14 約 14%

右の列は、許容差の上下の幅(たとえば ±0.08 なら 0.16 mm)を各区分の下限の厚さで割った、この記事での概算である。規格案の数値は審議段階のものなので、実際に図面や注文書に引くときは、改正後の JIS G 3141 の本文で確かめる。ステンレスやアルミの板は別の材料規格になり、表も異なる。ステンレスの板の指定の仕方はステンレスの発注で指定することで扱っている。

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図面の板厚に公差を書くときの確かめ方

図面の板厚に「t1.2±0.05」のように公差を書くと、材料規格の許容差より狭い範囲を加工品の仕入先に求めることになる。材料メーカーから仕入れた板をそのまま使う限り、仕入先は板厚を作り込めないので、この公差は「材料を選別する」か「狭い許容差で材料を特注する」ことでしか満たせない。どちらも費用と納期に響く。

同じ規格案は、注文時の確認事項として、種類の記号・調質記号・表面仕上げ記号と並べて「寸法及び寸法の許容差」を挙げている[3]。板厚を厳しくしたいなら、加工品の図面の公差としてではなく、材料の注文条件として何を求めるのかを決め、誰が材料を手配するのかとあわせて発注書に書く。材料を発注側が支給するなら、板厚の許容差の責任は支給する側にある。仕入先に材料の手配を任せるなら、どの材料規格のどの許容差の材料を使うのかを書く。

板厚を「材料規格の許容差による」と書いた場合も、どこで測った値で判定するかは決めておく。規格案は許容差を縁から 15 mm 以上内側に適用するとしているので[3]、抜いた後の小さな部品の縁の近くを測った値は、材料の許容差の判定にそのまま使えないことがある。

曲げ寸法と曲げ角度が動く理由

プレスブレーキによる V 曲げについて、日本塑性加工学会の会報に載った解説は、曲げ角度と曲げ寸法が金型・加工・材料・機械・環境の 5 つの要因の影響を受けやすく、そのうち材料要因(主に板厚と材料定数の微小な誤差)は曲げ工程の中で取り除くことが難しいと説明している[4]。

同じ解説は、呼び厚さ 1.2 mm の冷間圧延鋼板について、実際の板厚の平均が呼び厚さより 0.027 mm(約 2%)薄く、調査した範囲では呼び厚さと実際の平均板厚の差が 0〜−4% だったと報告している[4]。さらに、同じ 1 枚の板の中でも 0.03 mm のばらつきがあり、この板厚差によって曲げ角度が 1° 程度変化するとしている[4]。圧延方向と斜め 45° の方向とで材料特性にも差があり、加工硬化指数(n 値)では 6.2% の違いが示されている[4]。

購買の立場で読み取るべきことは、曲げ角度のばらつきは仕入先の腕だけでなく、材料のばらつきでも生じるということである。材料のロットが替わったとき、あるいは仕入先が材料の購入先を替えたときに、曲げ角度が動くことは十分ありうる。

機能に効く曲げ寸法には個別の公差を書く

組み付けの位置を決めるフランジの高さ、相手部品と合わせる曲げの角度、穴と曲げ線の距離のように、外れると組み付けや機能に影響する寸法は、普通公差に任せず個別の公差を書く。逆に、外観だけに関わる曲げ寸法まで個別に厳しくすると、検査と調整の工数が増える。普通公差に任せる寸法と個別に指定する寸法の線引きは、設計部門と一緒に決める。

個別の公差を書くときは、次の点を図面か購買仕様書でそろえる。

  • 寸法を板の内側で測るのか外側で測るのか(曲げ寸法は内寸と外寸で板厚 1 枚分違う)
  • 角度を「曲げた後の開き角」で書くのか「90° からのずれ」で書くのか
  • 曲げの基準をどの面に取るのか(バリの出ている面か反対の面か)
  • 測定のときに部品を拘束するのか、自由な状態で測るのか

最後の点は、薄板の大きな部品で特に効く。台に押さえて測ると寸法内に入るが、自由な状態では反りで外れる、という食い違いは珍しくない。測定方法を合わせる手順は幾何公差の測り方を仕入先と合わせるで整理している。抜いた縁のバリやかえりの扱いは、同じシリーズのエッジ・バリ・面取りの指示で扱う。

試作と量産で工程が変わるときの注意

板金部品は、試作をレーザー加工とプレスブレーキで作り、量産で順送型や単発型に切り替えることがよくある。工程が変わると、寸法のばらつき方も変わる。試作で全寸法が図面に入っていたことは、量産でも入ることの保証にはならない。

発注側が決めておくことは 2 つある。1 つは、量産の工程に切り替えたときに、もう一度寸法を確かめる(初回品を測る)かどうか。もう 1 つは、工程の変更を仕入先が発注側に知らせる義務を、購買仕様書か品質の取り決めに書くかどうかである。後者が無いと、仕入先が工程や材料の購入先を変えたことに、不具合が出てから気づくことになる。量産前に何を出させて承認するかの考え方は量産承認で仕入先に何を出させるかにまとめている。

型を作る場合

順送型・単発型を仕入先が作る場合、型の費用・所有・保管の取り決めが別に要る。型を使う部品の発注を長く止めたまま型を無償で保管させることは、取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が適用される取引では問題になりうる。この論点は有償支給材・金型代のルールで扱っている。

受入検査の基準は発注の時点で決まっている必要がある

どの規格のどの等級で判定するかが決まらないまま納品を受け、受入検査で「この寸法は厳しい等級で見るべきだった」と不合格にすると、取引上の問題になる。取適法の対象となる取引について、同法のテキストは、受領を拒める場合を限ったうえで、委託内容が明示されていなかったり検査基準が明確でなかったりして、給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合には、それを理由に受領を拒むことは認められないとしている[5]。発注後に検査基準を恣意的に厳しくし、従来の基準で合格だったものを不合格とすることも、同じく認められない例として挙げている[5]。

プレス品・板金品では、規格の選択・等級・板厚の扱い・曲げ寸法の測り方の 4 つが、そのまま検査基準になる。どれか 1 つでも図面や購買仕様書に書かれていなければ、受入検査で揉めたときに判定のよりどころが無い。受領拒否・返品・やり直しの線引きは受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるかで詳しく扱っている。

指定する項目の一覧

ここまでの内容を、指定する項目ごとに並べる(規格の要求ではなく、発注する側の実務の整理)。

項目 何で決まるか 図面・発注書に書くこと
抜き・曲げの普通公差 注記で呼び出した規格と等級 規格番号・題名・等級、どの寸法に当てるか
板厚 材料規格の厚さの許容差 材料規格と許容差、材料の手配者、測る位置
機能に効く曲げ寸法・角度 個別の公差 内寸か外寸か、角度の表し方、基準面、拘束の有無
工程・材料の変更 取り決め 変更の事前連絡、切り替え時の初回品の測定
型 取り決め 費用・所有・保管・廃棄の扱い

よくある質問

図面に「JIS B 0408」とだけあり、等級が書いていない

規格には等級ごとの表があるので、等級が書かれていなければ判定の列が決まらない。見積の前に設計部門に問い合わせ、回答を発注書か購買仕様書に書いてから発注する。仕入先の慣れている等級で見積もってもらう場合も、その等級を発注側の条件として書面に残す。

板金の仕入先から、JIS B 0405 ではなく JIS B 0408 で見てよいかと聞かれた

どちらも板金部品に当てうるので、どちらで読むかは発注側が決める事項である。設計の意図がどちらだったかを確かめ、「JIS B 0408 の〇級で読む」のように規格と等級をそろえて回答する。どちらでもよいと答えると、判定の基準が仕入先の側に移る。

材料を支給しているのに、板厚の不良で返品を求められた

支給した材料の板厚が材料規格の許容差の中にあるなら、加工した側に板厚を直す手段はない。図面の板厚の公差が材料規格より厳しく書かれていないか、支給材の受入でどの位置の板厚を確かめたかを先に見直す。有償支給材の扱いのルールは上で挙げた記事を参照してほしい。

鍛造品や樹脂成形品の図面にも同じ書き方でよいか

加工方法が違えば、当てる規格も寸法の出方も違う。鍛造品は鍛造品の公差の指定、樹脂成形品は樹脂成形品の寸法公差で扱う。

まとめ

プレス品・板金品の普通公差は、JIS B 0408(プレス加工品)、JIS B 0410(せん断加工品)、そして対応する国際規格(ISO 2768-1)が除去加工と板金成形の部品を対象にしている JIS B 0405 のどれで読むかが、図面の注記で決まる。番号・題名・等級と、どの寸法に当てるかを書く。板厚は材料規格の許容差で決まり、規格案では縁から 15 mm 以上内側に適用するとされているので、加工品の公差として厳しく書く前に、材料の注文条件とそろえる。曲げ角度は材料のばらつきでも動くため、機能に効く曲げ寸法には個別の公差と測り方を書く。これらはそのまま受入検査の基準になるので、発注の時点で明示しておく。

出典・参考資料

  1. JIS 検索(JIS B 0408・B 0410・B 0417・B 0405 の規格名称と制定・改正・確認の年月日)(日本産業標準調査会/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  2. ISO 2768-1:1989 General tolerances — Part 1: Tolerances for linear and angular dimensions without individual tolerance indications(国際標準化機構(ISO)/1989 年 11 月発行)
  3. JIS G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯 規格案(G 3141-三者-00-200930)(日本鉄鋼連盟/鋼材規格三者委員会資料・2020 年。2021 年改正の審議資料)
  4. 金英俊・柴田隆浩・今井一成「板材の V 曲げにおける初等解析」塑性加工学会会報 ぷらすとす Vol.1, No.3(日本塑性加工学会/2018 年 3 月)
  5. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  6. JIS B 0408:1991 金属プレス加工品の普通寸法公差(規格概要と公示の履歴)(日本規格協会/2025 年 6 月 20 日確認)

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