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FC250(JIS G 5501 ねずみ鋳鉄品)の発注——別鋳込み供試材の 250 と製品の肉厚の差

この記事のポイント(結論先出し)
FC250 は JIS G 5501(ねずみ鋳鉄品)の種類の記号で、規格が合否の値として決めているのは別鋳込み供試材の引張強さ 250 N/mm² 以上と、注文者が求めた場合の硬さ 241 HB 以下である[1]。製品とは別に鋳込んだ棒の値なので、肉厚のある製品の本体は 250 N/mm² を下回ることがある。規格自身が参考として、実体から採った試験片の引張強さを肉厚 40〜80 mm で 170 N/mm² 以上と示している[1]。化学成分は特に必要がある場合だけ協定で決め、試験成績書は注文者が求めたときに出る[1]。発注書には、どの供試材で確かめるか、硬さを求めるか、成績書を出させるかを書いておく。
目次
FC250 で決まることと、決まらないこと
工作機械のベッド、ポンプやバルブの本体、ギヤケースなど、形が複雑な機械部品にはねずみ鋳鉄が使われることがある。図面の材質欄に「FC250」とあれば、JIS G 5501(ねずみ鋳鉄品)の種類の記号である。この規格は、片状黒鉛をもつ鋳鉄品について規定し、種類の記号は FC100・FC150・FC200・FC250・FC300・FC350 の 6 つである[1]。JIS 検索の登録では、最新改正は 1995 年 7 月 1 日、最新確認は 2025 年 10 月 20 日で、30 年近く本文が変わっていない[1]。
記号の数字は、別鋳込み供試材で確かめる引張強さの下限を表している。規格の表 2 は FC250 について、引張強さ 250 N/mm² 以上、硬さ 241 HB 以下とし、硬さは注文者の要求がある場合に適用する、としている[1]。硬さの値が下限ではなく上限であることに注意したい。「250 なら硬さも高いはず」という読み方は、規格の書き方と合わない。
一方で、規格が決めていないことも多い。化学成分は、特に必要がある場合に試験を行い、その値は受渡当事者間の協定による[1]。応力除去焼なましなどの熱処理も協定で行うことができる、という書き方である[1]。外観は、使用上有害なきず・鋳巣などがあってはならない、とあるだけで、何が有害かは書かれていない[1]。鋳物の内部欠陥の受入基準の決め方は鋳物の材質と内部欠陥の受入基準で扱ったので、ここでは FC250 という記号を発注書でどう補うかに絞る。
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3 種類の供試材——「250」はどこの値か
JIS G 5501 は、試験に使う供試材を 3 つに分けて定義している[1]。
1. 別鋳込み供試材
鋳鉄品とは別に、原則として鋳鉄品と同種の鋳型を用いて、1 バッチごとに鋳鉄品と同一条件で鋳造する供試材。形と寸法は規格の図 1 で決まり、型ばらし温度は 500 ℃ 以下とされる[1]。
2. 本体付き供試材
鋳鉄品本体の所定の位置に、原則として同種の鋳型を付けて鋳造する供試材。鋳鉄品の肉厚が 20 mm 以上かつ質量が 200 kg 以上の場合に、受渡当事者間の協定によって使うことができる[1]。
3. 実体強度用供試材
鋳造した鋳鉄品の所定の位置から直接に採取する供試材。形状と採取位置は協定による[1]。
合否に使う表 2 は、このうち別鋳込み供試材の値である[1]。本体付き供試材と実体強度用供試材の引張強さは、参考表 1 と参考表 2 として、肉厚ごとに示されている[1]。FC250 の行だけを抜き出すと次のとおりである。
| 鋳鉄品の肉厚 | 別鋳込み供試材(表 2・規定) | 本体付き供試材(参考表 1) | 実体強度用供試材(参考表 2) |
|---|---|---|---|
| 4.0 mm 以上 10 mm 未満 | 250 N/mm² 以上(肉厚によらない) | — | 250 N/mm² 以上(試験片は協定) |
| 10 mm 以上 20 mm 未満 | — | 225 N/mm² 以上 | |
| 20 mm 以上 40 mm 未満 | 210 N/mm² 以上 | 195 N/mm² 以上 | |
| 40 mm 以上 80 mm 未満 | 190 N/mm² 以上 | 170 N/mm² 以上 | |
| 80 mm 以上 150 mm 未満 | 170 N/mm² 以上 | 155 N/mm² 以上 | |
| 150 mm 以上 300 mm 未満 | 160 N/mm² 以上 | — |
表の値は JIS G 5501 の表 2・参考表 1・参考表 2 による[1]。参考表 2 の肉厚 4.0 mm 以上 10 mm 未満の行には、試験片の形状・寸法は受渡当事者間の協定による、という注が付いている[1]。
読み方の要点は、肉厚が増えるほど製品本体の値が下がっていくことである。ねずみ鋳鉄は冷え方で組織が変わり、厚い部分ほどゆっくり冷えるため、同じ溶湯でも部位ごとに強さが違う。別鋳込み供試材の 250 N/mm² は「その溶湯が FC250 の材質を出せる」ことを示すもので、肉厚 60 mm の本体が 250 N/mm² あることを示すものではない。
強度計算に FC250 の値を使っている部品なら、設計がどの値を前提にしているかを確かめたい。別鋳込み供試材の値で足りるのか、厚肉の部位について参考表に近い値で計算しているのか。厚肉部の強さを保証させたいなら、実体強度用供試材の採取位置・試験片・合格値を協定して発注書に書く、ということになる。これは規格の外の要求を足すことなので、見積の前に仕入先と話す。
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バッチと再試験——1 本の試験が何を代表するか
引張試験を何回するかは、バッチの決め方で決まる。JIS G 5501 は、同じとりべから注湯された 2,000 kg 以下の製品グループを 1 バッチとし、製品が 2,000 kg を超える場合は 1 個を 1 バッチとする[1]。同一炉・同一配合で連続して操業している場合は、最大 2 時間までの出湯量を 1 バッチとしてもよい[1]。さらに協定によって数バッチをまとめて 1 グループとし、その中の 1 バッチで代表させることもでき、その場合はチル試験や化学分析、熱分析などで同一種類の溶湯であることを確かめなければならない、としている[1]。引張試験片は JIS Z 2201 の 8 号試験片で、数は予備を除き 1 個である[1]。
つまり、試験成績書の 1 行は、そのバッチ(または協定したグループ)の溶湯を代表する 1 本の棒の値である。小さな部品を大量に買う場合、1 ロットの成績書に載る値が何個分の製品を代表しているのかを、仕入先に確かめておくとよい。
再試験の扱いも決まっている。試験片のきずや鋳巣が試験成績に影響したと判断したときは、その試験を無効として予備の試験片で再試験でき、それ以外の理由で一部が規定に合わない場合は、2 倍の数の試験片で再試験を行い、その成績はすべて規定に適合しなければならない[1]。成績書に再試験の結果が載っているなら、最初の試験がなぜ無効になったのかを聞いておくと、溶湯や供試材の管理の様子が見える。
JIS G 0404 は鋼材の一般受渡し条件の規格で(鍛鋼品・鋳鋼品も適用範囲から除いている)、鋳鉄品はその対象外である[5]。鋼の棒や板の発注で当たり前に使う「検査文書は 3.1 で」という指定の仕方は、鋳鉄品の規格には書かれていない。JIS G 5501 が決めているのは、製造業者は注文者の要求がある場合に製造番号を記載した試験成績書を提出する、という一文だけである[1]。成績書が欲しいなら、発注書に書かなければ出てこない。鋼材の検査文書の区分の考え方はEN 10204 のミルシート区分で整理されている。
溶湯の管理と、薄い部分のチル
ねずみ鋳鉄の強さは、溶湯の成分と冷え方で大きく動く。室蘭工業大学の清水らは、鋳鉄の炉前試験の一つとして、冷却速度の違いを故意に付けたくさび形の試験片に溶湯を鋳込み、凝固後の破面のチルの状態から溶湯の炭素当量(CE 値)を迅速に判定し、強度も推定するチル試験を紹介している[3]。溶湯の炭素当量が低ければチルは深く強度は高くなり、高ければチルは浅く強度は低くなる、という関係である[3]。
チルは、黒鉛ではなく硬い炭化物(セメンタイト)が出た白い組織のことで、急に冷えた薄い部分や角に出やすい。球状黒鉛鋳鉄の薄肉化を研究した堀川らは、鋳鉄は薄肉化により脆いセメンタイトのチル組織が生じやすくなると書いている[4]。チルは硬い組織なので、加工面にかかると削りにくさにつながりうる。図面に薄いフランジやリブがある部品では、硬さの上限(241 HB 以下)を求めるか、加工面の硬さを別に協定するかを、試作の段階で決めておくとよい。
FC250 は化学成分を原則として製造業者に任せる規格なので、溶湯をどう作り、どう確かめているかは仕入先ごとに違う。山田らは、鋳鉄品の製品仕様に織り込まれるのは、実態を反映した機械的性質や顕微鏡組織に関する境界値であるべきだと述べている[6]。同じ報告は、内部欠陥を製品の切断とカラーチェックで確かめる方法は抜取検査による確率に基づく保証で、鋳物 1 個ずつを全数保証するものではないとも書いている[6]。成績書の数値だけでなく、溶解の管理の方法を量産前に聞いておく理由はここにある。
寸法と検査の前の処理
JIS G 5501 は、鋳鉄品の形状・寸法は図面または模型で指定するものとし、寸法公差は、特に注文者の指定がない場合、JIS B 0403 のねずみ鋳鉄鋳造品の公差等級による、としている[1]。JIS B 0403 は鋳造品の寸法公差と削り代の規格で、公差等級と削り代の等級を図面に書く形を定めている[2]。等級の選び方と図面への書き方は鋳造品の普通許容差(JIS B 0403)の指定で扱った。質量は受渡当事者間の協定による[1]。
検査の項では、鋳鉄品は検査前に塗装その他、検査の妨げになるどのような処理も行ってはならない、とされている[1]。錆止めの塗装をしてから出荷する取引では、受入検査で鋳肌を見る必要があるかどうかを先に決めておく。注文者は、破断検査その他の特殊な検査を指定することができ、その場合の試験方法と合否判定基準はあらかじめ受渡当事者間で協定する[1]。表示は、製品または 1 包装ごとに、種類の記号、製造業者名またはその略号、製造番号またはその略号であり、注文者の承認を得れば一部を省略できる[1]。
FC250 で足りないとき——FCD への置き換え
FC250 の強さや伸びが足りないとき、候補になるのが球状黒鉛鋳鉄(FCD)である。JIS G 5502 は、黒鉛を球状にした鋳鉄品を規定する別の規格で、種類の記号は引張強さと伸びの組合せで「FCD 450-10」のように表し、別鋳込み試験片か、共込め・本体付き試験片か、切出し試験片かを記号の末尾で区別する[7]。供試材の考え方も、黒鉛球状化率という FC にはない要求もある。置き換えるときに見る点はFCD 450-10(JIS G 5502)の発注で扱う。アルミのダイカストに置き換えるときに確かめることはADC12(JIS H 5302)の発注の「鋳鉄の部品をダイカストに置き換えるとき」で扱う。
発注書に書くこと
1. 規格と種類の記号
「JIS G 5501 FC250」と規格番号を付けて書く。図面の版も書く。
2. 機械的性質を確かめる供試材
規格どおり別鋳込み供試材で足りるか。厚肉部の強さが必要なら、本体付き(肉厚 20 mm 以上・質量 200 kg 以上で協定可)か実体強度用の供試材と、その位置と合格値を協定する[1]。
3. 硬さ
求めるかどうか(求めた場合に 241 HB 以下が適用される)[1]。加工面の硬さの上限を別に決めるか。
4. 化学成分と熱処理
必要がある場合だけ協定する。応力除去焼なましを求めるなら書く[1]。
5. 試験成績書
製造番号の入った成績書を求める、と書く。書かなければ提出の義務はない[1]。
6. 寸法公差と外観・内部欠陥
JIS B 0403 の等級、削り代。外観と内部欠陥の受入基準、検査前の塗装の扱い[1][2]。
よくある質問
FC250 の成績書に「引張強さ 270」とあれば、製品の強さも 270 と考えてよいですか
多くの場合、その値は別鋳込み供試材のものである。規格は本体付き・実体強度用供試材の引張強さを参考として別に示し、肉厚が増すほど値が下がる形になっている[1]。製品の部位の強さが必要なら、その部位から採った試験片の値を協定する。
図面に硬さの指定がありませんが、受入で硬さを測ってもよいですか
測ること自体はできるが、規格の硬さ 241 HB 以下は注文者の要求がある場合に適用する値である[1]。発注時に求めていなければ、硬さを理由に不合格にする根拠は弱い。硬さを合否に使うなら、測る位置と方法を含めて発注時に書く。測定方法の書き方は図面の硬さと試験方法の指定で扱った。
化学成分を成績書に載せてもらうべきですか
規格は化学成分を特に必要がある場合に限って協定するとしている[1]。強さが規定を満たしていれば足りる部品も多いが、溶接補修や後工程の熱処理を予定する、溶湯の管理を見たい、といった理由があれば、分析する元素と値を協定して載せてもらう。
まとめ
FC250 が保証するのは、別に鋳込んだ供試材の引張強さ 250 N/mm² 以上と、求めた場合の硬さ 241 HB 以下である。肉厚のある製品本体の値は規格の参考表のとおり下がり、40〜80 mm の実体では 170 N/mm² 以上が目安として示されている。化学成分・熱処理・外観の合否・試験成績書の提出は、協定するか注文時に求めないと決まらない。厚肉部の強さ、硬さ、成績書、寸法公差の等級を発注書で補い、溶湯の管理の方法を量産の前に確かめておく。
同じ束では、球状黒鉛鋳鉄の発注をFCD 450-10 の発注で、アルミニウム合金ダイカストをADC12 の発注で扱う。
出典・参考資料
- JIS G 5501:1995 ねずみ鋳鉄品(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1995 年 7 月 1 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 0403:1995 鋳造品―寸法公差方式及び削り代方式(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
- 鋳鉄の品質保証と管理(清水一道・鴨田秀一・鹿毛秀彦/鋳造工学 全国講演大会講演概要集 第 161 回/2012 年)
- 鋳肌を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄の引張および疲労強度特性評価(堀川紀孝ほか/鋳造工学 87 巻 6 号/2015 年)
- JIS G 0404:2023 鋼材の一般受渡し条件(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
- 鋳鉄品の破壊試験から非破壊試験へ(山田聡・中山英明/鋳造工学 全国講演大会講演概要集 第 155 回/2009 年)
- JIS G 5502:2022 球状黒鉛鋳鉄品(追補 1:2024)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 3 月 21 日改正)
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