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投稿日:2026年10月16日

SCS13(JIS G 5121)の発注——SUS304 との違い、溶接補修・検査文書・非破壊試験の指定

この記事のポイント(結論先出し)

SCS13 は JIS G 5121(ステンレス鋼鋳鋼品)の鋼種で、成分は SUS304 に近い(炭素 0.08% 以下、ニッケル 8〜11%、クロム 18〜21%)が、機械的性質の規定値は SUS304 の棒より低い(引張強さ 440 N/mm² 以上、伸び 30% 以上)[1][3]。同じ規格には SCS13A・SCS13X など似た記号が並び、ASTM の CF 8 を類似鋼種とするのは SCS13A の方である[1]。発注で抜けやすいのは鋳物の通則(JIS G 0307)が決めていることで、検査文書は注文時に指定しなければ出てこない、溶接補修は指定がなければ注文者の事前の了解なしにできる、非破壊試験と合否判定基準は協定で決める[2]。溶接の熱は鋭敏化の原因になるので[4]、補修の扱いと補修後の熱処理を先に決めておく。

SCS13 は「SUS304 の鋳物」と読むと外れるところがある

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ポンプのケーシング、バルブの本体、食品機械の部品など、形が複雑なステンレス部品は鋳物で作ることが多い。図面の材質欄に「SCS13」とあれば、JIS G 5121(ステンレス鋼鋳鋼品)の鋼種である。この規格は遠心力鋳鋼管を含むステンレス鋼鋳鋼品について規定し、2003 年 6 月 20 日に改正され、2023 年 10 月 20 日に確認されている[1]。

SCS13 の化学成分は、炭素 0.08% 以下、けい素 2.00% 以下、マンガン 2.00% 以下、ニッケル 8.00〜11.00%、クロム 18.00〜21.00% である[1]。ステンレス鋼棒の JIS G 4303 の SUS304(炭素 0.08% 以下、ニッケル 8.00〜10.50%、クロム 18.00〜20.00%)と範囲が近いので、「SUS304 の鋳物」と呼ばれることが多い[3]。ただし、受け取るときに確かめる値は同じではない。

鋼種の取り違えも起きやすい。JIS G 5121 の表 1 には SCS13・SCS13A・SCS13X が並び、対応する ISO 鋼種と類似鋼種(参考)として、SCS13A に ASTM の CF 8、SCS13X に ISO の GX 5 CrNi 19 9 が挙げられている。SCS13 の欄は、ISO・ASTM とも「-」である[1]。海外の鋳造所で「CF8」で作ると言われたら、図面が SCS13 なのか SCS13A なのかを先に確かめる。外国規格の材料で受けるときの承認の考え方は同等材の指定と承認で扱った。

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SCS13 と SCS13A・SUS304 の規定値を並べると

項目 SCS13(JIS G 5121) SCS13A(JIS G 5121) SUS304 棒(JIS G 4303)
ニッケル 8.00〜11.00% 8.00〜11.00% 8.00〜10.50%
クロム 18.00〜21.00% 18.00〜21.00% 18.00〜20.00%
マンガン 2.00% 以下 1.50% 以下 2.00% 以下
熱処理 固溶化熱処理 1,030〜1,150℃ 急冷 固溶化熱処理 1,030〜1,150℃ 急冷 固溶化熱処理(条件は参考の例)
耐力(注文者の指定があった場合に適用) 185 N/mm² 以上 205 N/mm² 以上 205 N/mm² 以上
引張強さ 440 N/mm² 以上 480 N/mm² 以上 520 N/mm² 以上
伸び 30% 以上 33% 以上 40% 以上
硬さ 183 HB 以下 183 HB 以下 187 HBW 以下
類似鋼種(参考) 記載なし ASTM CF 8 —

SCS13・SCS13A の値は JIS G 5121 の表 1〜表 3、SUS304 は JIS G 4303 の表 3 と表 8(固溶化熱処理状態)による[1][3]。JIS G 5121 の耐力は 0.2% 耐力の値で、注文者の指定があった場合に適用するとされている[1]。シャルピー試験については受渡当事者間の協定によってもよい、としている[1]。

表のとおり、SCS13 の引張強さと伸びの下限は SUS304 の棒より低い。棒材から削り出していた部品を鋳物に切り替えるとき、図面の強度計算が SUS304 の値を前提にしていないかを設計に確かめる。強度を求めるなら、SCS13A を選ぶか、要求値を別に協定する。

鋳物の通則 JIS G 0307 が決めていること

JIS G 5121 は、納入される鋳鋼品は、引合いと注文時に指定される追加要求事項を含めて JIS G 0307(鋳鋼品の製造,試験及び検査の通則)の要求事項を満たさなければならないとしている[1]。棒や板の受渡し条件を定める JIS G 0404 は、適用範囲から鍛鋼品・鋳鋼品を除いている[5]。鋳物の発注では、G 0307 の書き方を前提に読む必要がある。

JIS G 0307 は、引合いと発注の文書に含める情報として、模型番号や図面による鋳鋼品の明確化(寸法公差と削り代は JIS B 0403 から選べる)、製品規格・納入状態・鋳鋼品の種類、適用する非破壊検査の手順と範囲・合否判定基準、供給時に提供される検査文書の形式を挙げている[2]。図面が支給されない場合、鋳鋼品は模型に基づいたものとし、製造業者は寸法に関する責務をもたない、とも書かれている[2]。

検査文書は、指定しなければ出てこない

JIS G 0307 は、検査文書は引合い時・発注時に同意しなければならないとし、注文者が指定した場合に限り、製造業者は JIS G 0415 の中から指定された検査文書を提出するとしている[2]。そのうえで、発注時に指定がない場合、製造業者は検査文書などを提出する必要はない、と明記している[2]。附属書 A も、発注時に指定がない場合、製造業者から検査証明書などを提出する必要はないとしている[2]。成分と機械試験の結果を見て受け入れるつもりなら、検査文書の種類(3.1 など)を注文時に書く。区分の違いはEN 10204 のミルシート区分にまとめた。

同じ規格は、試験結果は鋳込まれた鋳鋼品の材質を代表しているものであり、必ずしも鋳鋼品本体の特性を示すものではない、とも書いている。本体の特性は凝固状態や熱処理時の冷却速度、つまり厚さ・寸法・形状の影響を受けることがある、という理由である[2]。JIS G 5121 は、成績書に供試材の形状と寸法がどれによったかを付記するとしている[1]。成績書の機械的性質は、別に鋳込んだ供試材の値であることが多い、と読んでおく。

溶接補修は、指定がなければ事前の了解なしにできる

発注側がいちばん見落としやすいのはここである。JIS G 0307 は、溶接補修について、引合い時・発注時に指定された場合は溶接要領を受渡当事者間で協定するとし、指定がなければ、鋳鋼品は注文者の事前の了解なしに溶接することができる、としている[2]。大欠陥の補修については、別に取り決めていなければ、肉厚の 40% か 25 mm のいずれか小さい方を超える深さの欠陥を熱処理後に仕上げ補修溶接したものを大欠陥補修とみなし、製品規格で指定されないときは、大欠陥補修に注文者の事前承認を受けることを合意しておくことが望ましい、としている[2]。大欠陥補修は、溶接部の位置と範囲を図面か写真で記録し、納入時に注文者に提出するとされている[2]。

「望ましい」なので、黙っていれば事前承認の手続きは入らない。耐圧部品や、補修跡が外観・耐食性に響く部品なら、補修の可否、事前承認が要る範囲、補修後の試験を発注書に書く。

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溶接補修と耐食性:鋭敏化をどう扱うか

SCS13 の補修で気になるのは耐食性である。ステンレス協会は、粒界腐食を、溶接の熱影響部や熱処理の過程、高温での使用でおおよそ 550〜900℃ 程度に加熱された部分で、クロムと炭素が結合すること(鋭敏化)によって起こる腐食と説明している[4]。対策として、クロムの炭化物が生成しないような熱履歴にするか、できない場合にはクロム炭化物を固溶させる固溶化熱処理を行うこと、材料の面からは炭素量を減らした低炭素鋼や、チタン・ニオブを加えた安定化鋼を採用することを挙げている[4]。

JIS G 5121 は、鋳鋼品は表 3 の熱処理を行い、それ以外の熱処理は受渡当事者間の協定によるとしている[1]。SCS13 の熱処理は 1,030〜1,150℃ からの急冷の固溶化熱処理である[1]。最終の熱処理のあとで補修溶接をすると、その部分は固溶化熱処理を経ていない熱履歴になる。腐食の厳しい環境で使う部品なら、次のどれにするかを先に決める。

1. 最終熱処理のあとの補修を認めない
補修は熱処理の前に行う条件にする。

2. 補修したら固溶化熱処理をやり直す
やり直しの費用と、寸法・ひずみへの影響を見込む。

3. 炭素を下げた鋼種を選ぶ
JIS G 5121 には、炭素 0.03% 以下の SCS19A(類似鋼種 ASTM CF 3)などがある[1]。どの鋼種にするかは、使う環境で設計が判断する。

粒界腐食の試験にも鋼種の限定がある。JIS G 5121 は、SCS10・SCS16・SCS16A・SCS19・SCS19A・SCS20・SCS21・SCS22 の粒界腐食による耐食性について、注文者の指定があった場合に硫酸・硫酸銅腐食試験を行うとしており、SCS13 はこの一覧に入っていない[1]。SCS13 で粒界腐食の試験を求めたいなら、規格の外の要求として、方法と判定を協定して発注書に書くことになる。

非破壊試験と外観:方法を決めても合否は決まらない

JIS G 5121 は、健全性(使用上有害なきず、割れ、鋳巣などの欠陥がないこと)を、注文者が要求する場合に非破壊試験または適切な方法で試験するとし、合否判定基準は受渡当事者間の協定によるとしている[1]。追加要求事項の一覧では、浸透探傷試験と放射線透過試験は挙がっているが、磁粉探傷試験と超音波探傷試験には「オーステナイト鋳鋼品を除く」と書かれている[1]。SCS13 はオーステナイト系なので、試験を求めるなら、規格の追加要求事項に挙がっているのは浸透探傷と放射線透過で、方法・範囲・合否は協定で決める。

JIS G 0307 の附属書 B は、浸透探傷試験の方法は JIS Z 2343-1、放射線透過試験の方法は JIS G 0581 と JIS G 0585 によるとし、どの試験でも試験範囲と合否判定基準は受渡当事者間で協定するとしている[2]。溶接補修した部位は、補修の前後に試験を行い、特に明記しない限り同じ領域の母材と同じ合否判定基準を求める、ともしている[2]。欠陥の種類ごとの受入基準の書き方は鋳物の材質と欠陥の受入基準で扱った。

外観について、JIS G 0307 は、引合い時・発注時に記載がない場合、鋳鋼品は機械加工されない状態で納入され、押湯と湯道は取り除かれるとしている[2]。JIS G 5121 は、鋳鋼品は検査前に塗装その他、検査の妨げとなるどのような処理も行ってはならないとしている[1]。鋳肌の粗さを求めるなら、部位・粗さ・測り方または限度見本を発注前に協定する、と附属書 B にある[2]。

寸法:何も決めなければ JIS B 0403

JIS G 5121 は、形状と寸法を JIS G 0307 の規定によるとしている[1]。JIS G 0307 は、形状と寸法は図面・模型またはゲージ型板によるとし、受渡当事者間の協定がない場合、砂型鋳鋼品の長さ・肉厚・抜け勾配などの鋳放し寸法の許容差は JIS B 0403 によるとしている[2]。JIS B 0403 の附属書 A(参考)は、長期間製造する鋳放しの鋳鋼の公差等級を、砂型の手込めで CT11〜14、機械込めとシェルモールドで CT8〜12 の範囲として示している[6]。JIS B 0403:1995 には、本体の公差等級(CT)とは別に、砂型の鋳鋼品の長さと肉厚の普通公差を精級・中級・並級で定めた附属書 2 もある(廃止を予定しているとの注記付き)[6]。どの等級(附属書 2 の精級・中級・並級、又は CT)によるかを指定しないと、許容差の値は決まらない。発注前に、機械加工の基準点を示すか、機械加工図面を支給するとも定められている[2]。公差の指示の仕方は鋳造品の普通許容差と削り代の指定で扱った。

長く高温で使う部品なら

使い方によっては、時間がたってから性質が変わることもある。日本原子力研究開発機構は、原子力発電プラントのポンプや弁、管材に使われるステンレス鋼鋳鋼について、300℃ 程度の運転温度でも長期間使うことで脆くなる熱時効脆化が生じる可能性が指摘されているとし、約 25 年使われた実機材を調べて、再循環ポンプの材料で熱時効による脆化の兆候を確認したと報告している[7]。これは原子力プラントという特別な条件での研究だが、数百℃ で長期間使う鋳物の部品なら、使用温度と期間を設計と仕入先の双方に伝えておく理由になる。

発注書に書くこと

1. 規格・鋼種・図面
「JIS G 5121 SCS13」と規格番号を付けて書く。SCS13A・SCS13X と取り違えない。図面(版を含む)を支給し、寸法公差と削り代の等級を示す[2]。

2. 機械的性質の要求
耐力を要求するなら、そのことを書く(指定があった場合に適用)[1]。強度が SCS13 の規定値で足りるかを設計に確かめる。

3. 検査文書の種類
指定しなければ提出されない[2]。成分・機械試験の結果と、供試材の形状を記載してもらう[1]。

4. 溶接補修の扱い
補修の可否、事前承認が要る範囲、補修後の固溶化熱処理の要否、補修部の試験。指定しなければ事前の了解なしに補修できる[2]。

5. 非破壊試験
方法(浸透探傷・放射線透過)、範囲、合否判定基準、数。合否は協定で決まる[1][2]。

6. 使用環境と温度
腐食の厳しさと使用温度。鋼種の見直しや、規格の外の腐食試験が要るかの判断に使う。

よくある質問

SCS13 と SCS13A は、どちらを指定すればよいですか

成分の範囲はほぼ同じだが、SCS13A はマンガンの上限が 1.50% と低く、引張強さ・耐力・伸びの下限が SCS13 より高い[1]。ASTM の CF 8 を類似鋼種とするのも SCS13A である[1]。強度の要求や、海外の鋳造所で作るかどうかで選び、図面にはどちらかを書く。

成績書の引張強さが規格を満たしていれば、部品の強さも保証されますか

JIS G 0307 は、試験結果は鋳込まれた材質を代表するもので、必ずしも鋳鋼品本体の特性を示すものではないとしている[2]。厚肉の部位の強さが設計上大事なら、その部位から採った値を別に求めるかを決める。

補修溶接の跡が見つかりましたが、断られていません

発注時に溶接補修を指定していなければ、規格上は事前の了解なしに補修できる[2]。大欠陥補修に当たるなら記録の提出を求める。次の発注からは、補修の扱いを発注書に書く。

まとめ

SCS13 は成分が SUS304 に近いステンレス鋳鋼だが、引張強さ・伸びの下限は SUS304 の棒より低く、ASTM の CF 8 を類似鋼種とするのは SCS13A の方である。鋳物は JIS G 0307 の通則を前提に発注し、検査文書は指定しなければ出てこない、溶接補修は指定がなければ事前の了解なしにできる、非破壊試験の合否は協定で決める、の 3 点を発注書で埋める。補修の熱は鋭敏化を招きうるので、最終熱処理後の補修を認めるか、固溶化熱処理をやり直すか、低炭素の鋼種にするかを先に決める。非破壊試験を求めるなら、規格の追加要求事項に挙がっているのは浸透探傷と放射線透過で、方法・範囲・合否は協定で決める。

同じ束では、ステンレスの種類による違いをSUS430 と SUS304 の違いで、焼入れできるステンレスをSUS440C と SUS630で扱う。

出典・参考資料

  1. JIS G 5121:2003 ステンレス鋼鋳鋼品(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2003 年 6 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS G 0307:2014 鋳鋼品の製造,試験及び検査の通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2014 年 10 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  3. JIS G 4303:2021 ステンレス鋼棒(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 3 月 22 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  4. ステンレスの耐食性と腐食現象について(Q&A)(一般社団法人ステンレス協会)
  5. JIS G 0404:2023 鋼材の一般受渡し条件(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
  6. JIS B 0403:1995 鋳造品―寸法公差方式及び削り代方式(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  7. ステンレス鋼鋳鋼の熱時効脆化の評価―「ふげん」実機材を用いた熱時効脆化に関する研究―(原子力機構の研究開発成果 2013)(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)

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