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マスクの立体形状を作る不織布の構造と超音波溶着の技術

目次
はじめに
マスクの需要は近年、飛躍的に拡大しています。
感染症対策や花粉対策、さらには産業現場での粉塵予防など、多目的に使われるマスクは、私たちの生活を支える必需品となりました。
これらのマスクが高性能かつ快適なつけ心地を実現している背景には、不織布という素材と、超音波溶着という先進的な技術があります。
本記事では、マスクの立体構造を生み出す不織布の特徴や、アナログ的な工程の残る現場でどのように超音波溶着技術が活かされているのか、現場目線・バイヤー目線の双方から実践的に解説します。
不織布がマスクにもたらす機能と構造
不織布とは何か
不織布は、織りや編みを経ることなく繊維をランダムに絡み合わせて構造化したシート状の素材です。
ポリプロピレンなどの合成繊維を主原料とし、スパンボンド法やメルトブロー法などで製造されます。
このランダムな繊維配列こそが、
高いフィルター性能と通気性、柔軟性を同時に実現しています。
マスクに使われる不織布の多層構造
多くの立体マスクは3層構造です。
外層は水分の浸透を防ぐ撥水性が重視され、中間層は極細繊維による捕集性(メルトブロー)が重要視されます。
肌に触れる内層は、やわらかな肌触りや吸湿性が求められます。
この多層不織布の組み合わせにより、細菌・ウイルス・粉塵のブロック力と快適性という相反する性能を両立しています。
立体形状がもたらす快適性
従来の平面マスクでは、装着時に顔との隙間やふくらみによる装着感の悪化が問題視されました。
立体マスクは、人間工学に基づいた曲面形状にフィットしやすい立体裁断やプリーツ(折りひだ)構造を用いることで、長時間装着しても息苦しさや耳の痛みが軽減されます。
この立体構造は、複雑な不織布の設計と裁断、それらを高精度で接合する技術によって初めて成立します。
超音波溶着技術の基礎と利点
超音波溶着とは
超音波溶着は、20~40kHz程度の高周波振動エネルギーを不織布に与えることで、素材同士の分子間に摩擦熱を発生させ、瞬間的に部分的な溶融・接合を行う技術です。
針や糸を用いることなく、薬剤や接着剤も不要で、素材の特性や表面性状を損なうことなく強固な接合が可能です。
不織布マスク製造における超音波溶着の強み
マスク製造に超音波溶着が広く採用される理由は、
– 高速かつ清潔な接合が可能
– 消耗品のコスト負担が少ない
– 微細なパターンや曲線部も精密に溶着
などの点にあります。
従来型のホッチキス止めや糸縫いでは、金属部品や糸くずが残る懸念や、衛生面の課題がありました。
一方、超音波溶着は、ごみの発生を抑え、作業工程も大幅に短縮できます。
立体マスクと超音波溶着の最先端
立体マスクでは、複数の層やパーツが様々な角度で合わさる部分が多く存在します。
このため、単純な平面溶着だけでなく、角度や曲面にも追従した三次元的な溶着加工が必要です。
最新鋭の超音波溶着機は、NC制御やロボットアームによる高精度な位置決め、複雑な波形パターンの発振制御が可能となり、安定して美しいシール・ウェルディングが実現します。
昭和的「手作業」からデジタル自動化への現場動向
未だ根強いアナログ工程とその理由
日本の製造業の現場では、依然として手作業や半自動のアナログ工程が多く残っています。
とくにマスク業界は、新型コロナ禍以前は季節需要中心の薄利多売業態で、「段取り替え」や小ロット品に熟練作業員の手が大きく依存していました。
マスクのヒモ取付や端部の仕上げ裁断、検品に経験値や勘どころが求められ、短納期・多品種対応に“職人技”が重宝されてきたのです。
自動化とデジタル化の導入促進
昨今は、
– 慢性的な人手不足
– 衛生管理の厳格化
– QCDへのプレッシャー増大
により、部品供給から溶着・一貫検査までの自動化ライン導入が全国的に加速しています。
最新の一体型自動機では、不織布シートの連続供給→超音波溶着→自動裁断→ヒモ溶着→自動包装までが一気通貫でこなせます。
これにIoTデータ連携による生産状況の見える化、トレーサビリティ管理などデジタル技術が加わり、QCDの“見える化”が進みました。
調達・バイヤー目線で押さえるべきポイント
サプライチェーン全体を「現場」で見る重要性
バイヤーがマスクの調達で成果を上げるには、単価交渉だけでなく、
– 原材料(不織布)の流通・安定供給
– 製造現場のキャパシティと生産バッファ
– 品質・衛生管理体制
– 現場自動化や生産効率化への投資状況
を深く理解しておく必要があります。
不織布は石油化学製品のグローバル需給に大きく依存するため、過去には突然の原料高騰や入手困難に悩まされる時期もありました。
新型コロナ禍を経て、国内外の供給リスク分散と多段階在庫管理のシナリオプランニングもバイヤーの必須スキルとなっています。
コストだけでなく「技術」と「現場力」で見極める
同じ不織布原材料でも、繊維の太さや密度、静電気帯電方式の違いでフィルター性能は大きく異なります。
また、超音波溶着の仕上がり精度や立体裁断の工夫は、完成マスクの品質やユーザー満足度を左右します。
単純な原価低減要求だけでなく、「各工程の技術競争力」「トレーサビリティ」「現場従業員の教育・多能工化」など、ソフト・ハード両面で見極めましょう。
サプライヤーとの共創時代へ
今後は、サプライヤーを単なる“価格交渉相手”としてみなす時代は終わりつつあります。
新しい立体形状や特殊防御機能、環境対応の新素材をいかに迅速に商品化するかが差別化になります。
サプライヤー現場を訪問し、ライン改善・計測自動化・異物混入防止策・5S活動などの地道な現場改善ノウハウも吸収し、一緒にプロセス革新や新規開発を進めるパートナーシップ戦略がカギです。
まとめ:現場の目線とイノベーションの重要性
マスクの立体形状、不織布の高性能化、そして超音波溶着技術の進化は、日常生活を支えるだけでなく、製造業の生産性や日本のものづくり競争力にも直結しています。
今後も人や知恵に依存する領域をどうテクノロジーで補完し、「現場力」と「デジタル技術」を融合させられるかが問われます。
バイヤーやサプライヤーを志す方は、ぜひ実際の生産現場で現物をみて、手で触れ、技術者や作業員の現場の苦労や改善のリアルな声に耳を傾けてください。
そこからこそ独自のイノベーションのヒントが得られるはずです。
製造業の進化の最前線で、ともに新たな価値を切り拓いていきましょう。
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