投稿日:2025年10月9日

見せ方を誤ったせいで経営層が納得しないコンサル事例

はじめに:コンサルが経営層を動かせない「見せ方」の落とし穴

製造業の現場では、調達購買、生産管理、品質管理、そして現場の自動化まで多岐にわたる業務が日々行われています。

新しい改善提案や、コンサルティングプロジェクトが導入されることは今や当たり前の光景ですが、社内の現場改善案や外部コンサル提案が「経営層で決裁されない」「納得が得られない」という悩みは想像以上に根強く存在します。

せっかく費用と労力をかけたコンサル提案も、経営層を動かせなければ現場に落とし込まれません。

この記事では、製造業の現場経験に基づき、なぜ優れた改善案が経営層に響かないのか、「見せ方」に焦点を絞って深掘りします。

同時に、現場が陥りがちな”昭和型アナログ思考”から抜け出し、現代の経営に通用する提案へと昇華できる実践ノウハウを共有します。

なぜ経営層は現場やコンサルの改善案に首を縦に振らないのか

現場目線でのみ構築された提案の限界

多くの現場スタッフやサプライヤーは、「とにかく困っている日常オペレーションの効率化」や「品質トラブルの削減」など、目の前の課題解決にフォーカスしがちです。

もちろん、現場改善の積み重ねが企業価値の源泉です。

しかし経営層にとっての最優先事項は、それが経営指標(利益、売上、キャッシュフロー)や企業の競争力・存続にいかにインパクトを与えるかという点です。

たとえば、「工程別の作業時間を1人1分短縮できる」ことが現場では大きな努力の成果でも、経営層からすれば「それが全社利益の何%プラスになるのか」「年間数千万円の材料費削減に転換するのか」が明確になっていないと、首を縦に振れません。

数字・インパクトの見せ方が弱い

コンサルタントや現場担当が作成する報告書やプレゼン資料は、どうしても以下のような“現場言語”にとどまりがちです。

– 工数や歩留まりの微改善
– 新ツールやシステムの導入効果(独自指標のみ)
– 「こうしたら便利になる」という曖昧なメリット

経営層は“全社的な規模”や“ROI(投資対効果)”、“企業リスクマネジメント”によって判断します。

このギャップが埋まらない限り、改善提案は「現場の自己満足」としか見なされません。

背景情報やインダストリー動向を踏まえていない

バイヤーやサプライヤー、現場管理者が陥りやすい失敗は「社内事情」で企画を固めてしまうことです。

たとえば、サプライチェーン部門の安定や品質管理の細かな指標最適化にこだわるあまり、「そもそも業界全体のコスト構造はどう変化しているか」「自動化・AI化ブームに投資競争が増している流れにそぐう提案であるか」「世界的な原材料高騰リスクに備える手立てか」という社会的トレンドを踏まえたアウトプットになっていないことも見受けられます。

昭和アナログ思考に縛られた「説得材料」の問題点

“先例主義”と“現場の肌感覚”信仰

水と油のように交わらないのが「現場経験のある部課長」と「外部コンサル」「経営企画系出身の幹部」の価値観ギャップです。

昭和以来、現場では「自分たちで考え、工夫し、汗をかくこと」が美徳とされてきました。

そのため、現場由来の改善案は「先輩からの経験則」や「実作業の肌感覚」を重視しがちです。

一方、経営層は「グローバルな競争」「法改正への対応」「財務健全性の確保」など、外部環境まで巻き込んだ多面的な視点から合理的に判断します。

古いアナログ思考では「今までこれでやれてきたから」「過去の災害時も現場でどうにかなったから大丈夫」と自前主義に固執しがちです。

しかし、この肌感覚信仰は変化の激しい現代では“説得材料”になりません。

現場視点が悪いわけではない──“翻訳力”の欠如

現場出身のプレゼンターやバイヤーがまれによく口にするのが

「現場を知らない経営層は分かっていない」
「コンサルの机上の空論では現場が動かない」

という言い訳です。

たしかに一理ありますが、現場でのロジックや成功体験を、そのまま“経営指標”に写し替え、「経営層が共感できるストーリー」に仕立て直す“翻訳力”が重要です。

経営層の意思決定プロセスに刺さる「見せ方」の原則

1.「全体最適」。部分改善をどう全社価値へ変換するか

経営層が日々考えているのは、全社の“最適解”です。

現場の微小なコストダウン、工数短縮でも「全社でそれが実現したときの利益増」はどうか。
また「競合が同様の改善施策を取った場合、どのくらい差別化できるか」が重視されます。

たとえば、「工程Aで年間1,000時間の工数削減が実現できる」場合、その金額効果を全工場・全ラインで横展開した際の“経営インパクト”を算出し、「現場の改善が全社戦略として意味を持つ」ことを数字ではっきり提示します。

2.「アウトカム志向」。活動量ではなく成果インパクトに変換

現場報告やコンサル成果報告書でNGなのは「〇時間・〇人月作業しました」「新しい手順を導入しました」という活動報告にとどまるケースです。

経営層が見ているのは「それが企業の利益やイメージ向上、リスク低減などどのような“アウトカム(価値成果)”をもたらすのか」という点です。

人的ミス削減、歩留まり向上、納期遅延リスク半減など、“定量効果”で示し、数字が困難な場合でも「顧客満足度5%改善」「外部監査指摘減少」といったアウトカム目標を見せるべきです。

3.「経営課題に直結」。現場課題と経営課題のブリッジ

調達購買やサプライヤーの立場から、バイヤーへの企画提案や現場プロジェクト報告を行う場合、「この現場課題は、なぜ今経営的に重要なのか?」という“優先順位”を明確にすべきです。

例:
・SDGs対応やESG投資に乗り遅れると主要取引の失注リスクが高まる
・カーボンニュートラル宣言に対する具体的な改善効果として外部発信できる
・顧客監査への対応力強化として新たな品質管理手法を導入できる

こうした“経営課題とのブリッジ”を明記することで、経営層も「今やるべき意義」を理解しやすくなります。

コンサル事例にみる「見せ方」の失敗パターン

【事例1】現場満足、経営おざなり──現場効率化ツール導入の失敗

某大手自動車部品メーカーで現場に導入された工程管理のITツール案件。

現場スタッフは“伝票処理”や“部品在庫の時系列管理”が効率化され大満足。
しかし経営層は「現場で便利になったのは分かったが、結局どれだけ会社の粗利益改善に貢献しているのか」「IT投資分を何年で回収できるのか」が分からず、全社展開判断が保留に。

【教訓】
現場満足型の効率化施策も、「全社売上に対する分母としていくら貢献できるのか」「IT投資のROI」まで踏み込んだ説得力ある“見せ方”が必要です。

【事例2】部分最適で“木を見て森を見ず”──工程改善提案の頓挫

調達コンサル案件で、特定の材料仕入れ価格の3%低減案を複数進めた例。

バイヤーが注目したのは1仕入れ案件ごとの“原単価低減”ですが、経営層からは「この程度単発の仕入コスト低減では、全社として年間営業利益1億円増という目標には遠い」「戦略的調達体制へつなげる横展開や、20%削減を狙える根本的な取組はないのか」と突っ込まれ頓挫。

【教訓】
調達も生産管理も「スモールパーツの最適化」だけでなく、“全体構造改革につながる可能性があるか”という経営目線の“物語”構築が大切です。

【事例3】作業現場の「便利グッズ提案」が空振り

安全衛生の現場で、作業工程における新型の手袋や防塵マスクなど「現場目線の便利グッズ」導入案を外部コンサルがまとめたが、経営層から「従来品に対する費用対効果が不明瞭」「その投資で社内災害率がどれくらい下がるのか詳細データがない」と難色を示され、導入見送り。

【教訓】
“現場の快適さ・満足度”向上には数字を伴う説得材料が必要であり、リスクマネジメントの投資対効果や行政・顧客監査の合否といった“アウトカム”記載がなければ、経営層は納得しません。

経営層を納得させる「クロスオーバー思考」で新たな地平線を拓く

現場+経営目線=“クロスオーバー思考”のすすめ

今、製造業の調達購買や生産管理、サプライヤー管理で求められるのは、「現場目線」だけでも「机上の経営論」だけでもない、“両者のクロスオーバー”です。

現場の改善案も、次の3つの問いを自らに投げかけながら“経営層に刺さる見せ方”に磨きをかけましょう。

1.それは全社経営指標(売上・利益・CSR・ESG)にどう寄与するか明示できるか
2.現場の成功体験やローカル改善を“全体最適”として横展開できる仕掛けは何か
3.「業界全体の大きな変化(デジタル化・脱炭素・グローバル人材調達)」と自社の生存戦略にどんな風にリンクするか

バイヤーやサプライヤーは「経営パートナー」になる時代

特にバイヤーを目指す方、サプライヤー側の企画・営業担当の方にとっては、「調達購買は、単なるコスト交渉屋ではなく、経営判断を支える“パートナー”」だと認識すべきです。

自分たちの提案や商品、効率化プロジェクトが「全社利益の増大」「業界の最先端トレンド推進」「企業価値向上」につながる”大局観”をもって見せ方を磨くことで、昭和型のアナログ思考から堂々と抜け出していきましょう。

まとめ:見せ方とは「翻訳」=価値を最大化して伝える技術

製造業の現場で培った技術や経験、地道な改善の積み重ね。

これを経営層、他部門、社外環境に響く“経営ストーリー”として見せるには、アナログ時代の先例主義から脱し、数字やアウトカムを織り込んだ“クロスオーバー思考”を持つことが鍵です。

「見せ方を誤ったせいで経営層が納得しない」コンサル事例は、決してレアケースではありません。

現場の成果や企画案を“誰に・何のために見せるのか”“どんな言葉・数字で伝えるのか”を深く深く考え、経営層の目線に立ち“翻訳”し磨き抜いた見せ方、それが業界の明日を変える原動力になります。

今、あなたの現場から、新たな地平線を切り拓く見せ方に再挑戦してみませんか。

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