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投稿日:2026年1月19日

IPC-A-610で見る電子基板の良否判定基準

IPC-A-610とは何か ― 電子基板品質の「世界基準」

IPC-A-610は、電子基板のアセンブリおよび製造品質の国際的標準規格として、全世界のエレクトロニクス産業で広く活用されています。

電子機器の高性能化・高密度化が進む中、些細なハンダ付け不良や部品取り付けミスが、不具合や事故につながることは避けられません。

そのため、どこまでが“良品”で、どこからが“バッド”なのか、あいまいではなく明確な基準が求められます。

IPC-A-610は、そんな業界の求めから生まれており、グローバル供給網の中でも「共通言語」となっています。

本記事では、このIPC-A-610について、工場現場のリアルな視点から解説します。

また、発注側のバイヤー・受注側のサプライヤー双方が知っておくべきポイントや、昭和的アナログ現場特有の課題と今後の未来像についても掘り下げます。

IPC-A-610の役割と重要性

IPC-A-610導入のメリット

IPC-A-610が現場にもたらす最大のメリットは、「良否」を誰もが納得する形で客観的に判断できる点です。

メーカーの生産現場では、検査員ごとに基準がぶれたり、作業者の経験頼りの主観判断に依存しがちです。

しかし、IPC-A-610を導入することで、
・設計部門、製造部門、品質保証部門、そして顧客―全ての部門間で、共通言語の下で評価・改善が進められる
・新たな作業者や検査員でも、一定の品質基準を維持した製品作りができる
・外注/サプライヤー管理が容易になり、不良流出やトラブルの未然防止が実現できる
という現場レベルでの大きな効果が得られます。

なぜ「標準化」が重要なのか

IPC-A-610の真価は、世界中誰でも同じ画像や説明を見て、“合格”か“不合格”か判定できる点にあります。

例えば、日本国内メーカだけで仕事をしていても、設計や部品調達は海外グループ会社から行うケースが急増しています。

たとえちょっとした認識のズレが、量産段階で莫大なコストや納期遅延、最悪は回収騒ぎを引き起こしかねません。

標準化は『誰が見ても同じものを評価できる』という強力な安心材料であり、サプライチェーン全体の信頼につながります。

IPC-A-610が定める「良否基準」

3つのクラス分け ― どのレベルの品質を目指すのか

IPC-A-610では製品の用途や信頼性要求に応じて、以下の3つの品質クラスを設けています。
– クラス1:一般電子製品(玩具や日用家電など)。機能さえすれば良い。
– クラス2:専用電子製品(産業機器、家庭用パソコン、車載機器など)。長期間の正常動作が期待される。
– クラス3:高信頼性製品(医療、航空宇宙、防衛など)。故障が許されない。

現実のプロ現場では、「クラス2」を適用するケースが最も多いです。
しかし、近年は自動車に代表される“機能安全”要求の高まりから、「クラス3」採用の相談やプレゼンが増加傾向にあります。

具体的な検査基準 ― 何がアウトで、何がセーフか

IPC-A-610では、はんだ付け、部品実装、ランド(配線パッド)の状態、リード線の処理、クラックや汚れなど、多種多様な良否判定項目を規定しています。

たとえば、「はんだ付け」ひとつ取っても以下のような判定項目があります。
– ウェットスルーホールの確保(はんだが確実に通っているか)
– フィレットの高さや形状に過不足がないか
– ボイド(空洞)やブリッジ(はんだのつながり)は許容範囲か
– パッドからはみ出し過ぎや、ランドにクラック、はんだの盛りすぎ・足りなさはないか

また、「部品実装」では、
– チップ部品の座り、片寄り、立ち上がりや浮きは無いか
– 極性部品の逆装着や、向き間違いはないか
– コネクタやスイッチの実装端子間ショートはないか

こうした一連の項目が、現場用語の「あいまいグレーゾーン」を減らし、誰でも“同じものさし”で判定できるよう端的に記述されています。

現場が直面するアナログ課題 ― 伝統と革新のはざまで

昭和体質の現場が抱える悩み

製造業現場では、「先輩から引き継いだベテランの“目”や“勘”に頼る」文化が今なお色濃く残っています。
検査も“ベテラン女性パートさん”の長年の経験頼りだったり、「なあなあ検査」で良し悪しが決まっていた時期も実際多くありました。

しかし、年々複雑化する電子基板、高密度実装、部品小型化の流れで、人の目だけで対応するのは限界になっています。

「目視検査」とデジタル自動化の融合

IPC-A-610のガイドラインは「ヒト判定の共通言語」として機能しますが、近年はAI搭載の自動外観検査装置(AOI)が普及中です。

現場では、「AOIで初期判定→不合格箇所のみ最終目視で判断」など、効率と人的ノウハウの両立型が主流になりつつあります。

アナログ慣例が残る職場を、水面下ではデジタル対応・自動化に徐々に置き換えて良否判定の標準化を進める。
こうした二重体制こそが、日本の製造業が強みを維持できる秘訣でもあります。

バイヤーとサプライヤー、双方に求められる意識改革

バイヤー(調達側)が注目すべきポイント

バイヤーにとって、IPC-A-610は単なる技術基準でなく「安心して仕入れられる契約の根拠」となります。

見積もりや図面発注時に、IPC-A-610のどのクラス・バージョン(最新版のバージョン管理も重要)を要求仕様として明記することが、後々のトラブルや追加費用を回避します。

また、現場の工場見学や監査時には、
・製造現場でIPC-A-610の教育・判定基準が運用されているか
・不適合発生時の是正・再発防止プロセスが現実に回っているか
・作業者や検査員まで、正しく知識が浸透しているか
に着目してください。現場のポスターや帳票、作業標準書にIPCの図解が掲示されているかなどは“要チェックポイント”です。

サプライヤー(供給側)が備えるべき視点

サプライヤー側にも、IPC-A-610の理解・運用力は、商談を勝ち抜き、安定した受注を維持するための必須条件となりました。

とくに海外向け取引や大手企業向けでは、「IPC省略NG」「教育履歴や判定記録の提出義務」「IPC認証者の在籍」が求められることも珍しくありません。

実際、国内サプライヤーで“知識不足”や“運用形骸化”が災いし、重大な部品不良・納入クレームで契約解消に至るトラブルも発生しています。

自主的な社内IPC教育や、海外規格対応力を磨くことが今後ますます重要になります。

ラテラルシンキングで読み解く、今後の「良否基準」の進化

デジタル認証とAIの融合が進む未来

今後の製造現場では、AOIやAI検査による自動判定・ビデオ化記録、クラウド連携によるデジタル証跡が主流化していきます。

IPC-A-610の判定写真や判定コメント、合否記録を「ブロックチェーン」で改ざんできない形で保存し、取引先や最終顧客と瞬時共有する仕組みが本格化するでしょう。

これにより、グローバル調達の信用維持やサプライチェーンの透明化が進みます。
同時に「判定そのものが人からAIへ」変わっていき、従来の“現場の目利き”をどう活かしていくかが新たな課題となります。

「正確な基準」と「現場の知恵」のハイブリッドへ

どんなにAIやデジタル化が進もうとも、現場でしか分からない「職人の気付き」「工程異常への嗅覚」は大切な資産です。

IPC-A-610という“共通言語”の上に、日本固有の改善活動やQCサークルによる知恵を積み重ねることで、高品質な製造現場の強みを極限まで伸ばすことができます。

このハイブリッドなものづくり力こそ、世界のカーボンニュートラルやSDGs、リベンジ消費時代にも真に求められる姿だと私は考えます。

まとめ ― IPC-A-610は現場改革の起点となる

IPC-A-610は、単なる「検査基準書」ではありません。

現場の生産性向上、グローバル取引の円滑化、製品の安全・安心への信頼を土台から支える基準です。

バイヤー・サプライヤーの壁を越え、全員が「共通言語で会話」し、「常に最新の基準でモノづくり」する新時代。

昭和から続く現場文化もしっかり活かしつつ、デジタル化と標準化に挑戦する姿勢が、これからの製造業で価値を生みます。

IPC-A-610で見る電子基板の良否判定基準。
それは“現場を世界品質に引き上げる起点”なのです。

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