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スマートウォッチの画面が外れない接着剤の厚みとUV硬化時間

目次
はじめに:製造現場から見たスマートウォッチ製造の難しさ
スマートウォッチは近年、私たちの日常生活に深く入り込んでいます。
その小さな筐体には先進的な電子部品が詰め込まれ、精密な組立技術が求められます。
特に、画面(ディスプレイ)と筐体をつなぎとめる接着工程は、製品の品質・耐久性・ユーザー体験に大きな影響を与えるため、製造現場でも最重要工程に数えられます。
本記事では、現場管理職として20年以上培った経験をもとに、スマートウォッチの画面が「外れない」ために求められる接着剤の厚み管理、UV硬化プロセスの最適化、そして業界動向に至るまで、実践的な観点から深掘りしていきます。
スマートウォッチ画面の接着部に求められる性能
スマートウォッチのディスプレイ接着部には、以下の4つの性能が強く求められます。
1. 高い初期接着強度
組立直後、搬送および後工程中に外力が加わっても画面がズレたり外れたりしないことが必要です。
これには接着面の前処理や、瞬間的に硬化できるUV接着剤がよく使われます。
2. 長期耐久性と環境耐性
日々装着されるスマートウォッチは、汗や水分、高低温度変化、紫外線に長期間さらされる状況下でその接着力を維持しなければなりません。
化学的な経時劣化(加水分解や紫外線劣化)への耐性も重要です。
3. 寸法精度・意匠性
極薄ガラスや樹脂部材と異種材料の接合になるため、薄く均一な接着膜を維持しつつも、気泡やはみ出しを極力避ける品質管理が不可欠です。
4. 製造工程効率と生産性
短時間で量産できる硬化方法と、ラインでの作業性向上も現場では極めて重要です。
接着剤の選定から硬化時間の最適化は生産全体の歩留まりに直結します。
接着剤選定の実際と厚み管理のポイント
UV硬化型接着剤が主流になった理由
近年のメーカーでは、曲面ディスプレイや有機ELパネル、各種カバーガラスの進化も相まって、「UV硬化型接着剤」が主流となっています。
これは紫外線を照射すると数秒で硬化し、透明性が高く、薄膜化しやすいという特徴があるためです。
また、均一な厚み(通称ボンドライン)で接着することで以下のメリットがあります。
– 光学特性の安定(光の屈折歪みが出にくい)
– スマートウォッチ本体全体の寸法精度が担保できる
– タッチパネルやスピーカー、マイク機能への悪影響が起こりにくい
適切な接着剤厚みの目安
スマートウォッチ画面の構造や筐体の設計にもよりますが、実際に大手メーカー現場で求められている接着剤厚みの目安は「50μm(0.05mm)〜200μm(0.2mm)」です。
新製品開発の現場では、厚みが±20μm以内に収まるよう管理されていることも珍しくありません。
理由は、厚すぎると:
– 接着剤の収縮で歪みや浮き上がりが生じやすい
– はみ出しや気泡混入の原因になる
– 樹脂コスト・歩留まりコストが上昇する
一方、薄すぎると:
– 接着面の粗さ・寸法差を吸収できず、強度低下
– 製造公差で「部分未接着」を誘発しやすくなる
よって、現場では「測定ピンゲージ」「画像処理測定」「重量管理(滴下量管理)」など多層防御で厚みを管理しています。
UV硬化時間の最適化こそ歩留まり向上のカギ
UV硬化の基礎知識
紫外線硬化は「UV波長」「照度(光の強さ)」と「接着剤の材質」により硬化反応スピードが大きく左右されます。
例えば、主要接着剤メーカー(ローム&ハース、日東電工、ロックタイトなど)の推奨値では
– UV強度:1000~3000mW/cm2
– 波長:365〜405nm
– 照射時間:2〜10秒
これが業界の一般的な目安です。
ただし、量産ラインでは「影の出やすい部位」や、「反射でUVが届かない箇所」、毎回微妙に異なる部材のバラツキ(表面粗さや色味)に起因する“硬化不良”が発生します。
現場で実践される硬化時間の設定方法
画面剥がれの大半は、「一見硬化したように見えても実は内部まで硬化しきっていない」ことが主因です。
理論通りの照射では、数百〜数千台の内1台でも外れた場合ブランドリスクが大きいため、現場では以下のような最終設定が行われます。
1. メーカー推奨時間でテストサンプルを作成
2. 内部まで硬化しているか断面テスト(パリっと割れるか、ベタつきが残っていないか化学/機械テスト)
3. 製造ロットごと(湿度・温度差、部材ロット差)で再試験
4. 最も厳しい条件にあわせて硬化時間を「安全側」に上乗せ
現実には、推奨3秒のところを5秒、推奨5秒のところは8秒程度と、倍近い余裕を持たせるケースが多くなります。
スマートウォッチ特有の盲点:反射・遮蔽対策と工程設計
OLEDや新型コーティングガラスでは、紫外線の反射・吸収特性が筐体や世代で大きく異なるため、「全面均一にUVが届く工夫」が特に重要です。
– 反射板や複数方向からの照射機構
– 影になりやすい縁部に専用治具やガイドライト
こうした工程設計を現場と開発部が一体となって設計しています。
昭和型の“感覚作業”から、IoT・デジタル化を活かした「照度モニタリング」「硬化ログの自動管理」への転換が進んでいる分野です。
失敗事例と業界動向:昭和からの脱却が淘汰を分ける
よくある失敗:剥がれ・浮き・白化・気泡混入
品質トラブル事例として代表的なものは
– 数日〜数ヶ月後の画面剥離
– 接着面が白く濁った(=UV不足/水分反応)
– 接着剤内に気泡・異物混入
– 酸性劣化によるスマートウォッチ内部腐食
これらはすべて、接着剤「厚み・UV硬化・部材表面処理」の3つをルーズに運用した結果です。
照射機のランプが劣化していた、部品ロットで吸収特性が違った、温湿度管理の甘さから水分が残留していた等、昭和型手法(「多分大丈夫」「今まで問題なかった」)では早晩、再発防止は困難となります。
デジタル化、自動化で変わる現場の姿
最近では、UVカメラによる「照射量自動取得」「ヒストリー管理」、ロボットによる接着剤自動ディスペンス、AIによる不良パターンの予兆検知まで、工程管理は急速にアップデートしています。
こうしたスマートファクトリー化は、ESGの流れや工場の多拠点展開、海外展開にも極めて有効です。
一方、アナログのみの工程では再発・バラツキが続き、顧客からの信頼失墜や国際競争力低下が避けられません。
「人海戦術・カンコツ」から「IoT・DX・トレーサビリティ」を組み込める現場にこそ、今後の生産性向上の地平線が広がります。
サプライヤー/バイヤーの視点で知っておきたいこと
OEM/ODM先への依頼時、あるいはバイヤー側で重要な評価ポイントは下記です。
– 接着剤メーカーと継続した共同開発体制があるか
– UV工程の自動監視、記録履歴の保管体制(リコール時の証跡)有無
– Takt Time(生産リードタイム)、歩留まり率の定量評価
– 環境負荷、作業者の安全(シックハウス・アレルゲン)への配慮
価格以外にも「中長期稼働リスク」と「品質トレーサビリティ」で差別化を推進する企業が増加しています。
量産サプライヤーやバイヤーを目指すのであれば、本記事で記載した「工程ごとの科学的な裏付け」が提案・交渉の必須ポイントとなるでしょう。
まとめ:深化する接着技術・進化する現場力
スマートウォッチの画面が外れないためには、接着剤の厚み与管理・UV硬化プロセスの最適化が不可欠です。
現場力を強みとする日本企業も、昭和の勘や経験だけに頼るのではなく、「見える化」「自動化」「エビデンス管理」の三本柱を意識することが、ブランドと競争力を守る秘訣です。
そして、バイヤーやサプライヤーとして関わる方は、自社/他社問わず、その工程の裏側に必ず「合理的な根拠」があるかを常に問い続けてください。
接着・硬化工程は目立たない裏方ですが、信頼の基盤であり、ものづくり現場の新たな地平線を切り拓く最前線です。
日本の製造業が世界で戦っていくために、現場目線の知恵と最新テクノロジーの融合を、これからも発信し続けます。
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