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軸受部材の潤滑不足が焼付きにつながる背景

目次
軸受部材の潤滑不足が焼付きにつながる背景
はじめに:なぜ今、軸受の潤滑不足に注目するのか
製造業において、軸受部材はさまざまな回転機械や装置の心臓部分と言えます。効率よく回転運動を支えて摩擦抵抗を減らすことで、生産性や安全性を高める役割を担っています。
しかし、その中でも見過ごされがちな課題が「潤滑不足」です。
昔ながらの現場では「油切れ」や「グリース切れ」といった言葉で片付けられがちですが、実際の現象やリスクは非常に深刻です。
特に近年、生産設備の自動化や長時間運転が増えている中で、想定外の設備停止や修理コストが大きな問題となっています。
この記事では、軸受部材の潤滑不足がなぜ焼付き=致命的な故障につながるのかを、多角的に掘り下げます。昭和的なルーチン保守から一歩進んだ現代の考え方や、現場目線ならではの実用的な解決策、バイヤーやサプライヤー双方の視点も交えて紹介します。
潤滑とは何か―役割のおさらいと基礎知識
潤滑の主な目的とメカニズム
潤滑の基本的な役割は、「摩擦の低減」にあります。
摩擦による発熱や金属擦れを最小限にすることで、軸受の寿命を延ばし、異音や振動も防ぎます。
潤滑油やグリースは、単に油膜を作るだけでなく、微小な凹凸がある金属表面同士の直接接触を防ぐ「クッション」としても機能します。
また、潤滑剤は金属表面の腐食を防ぎ、ゴミや微粒子を洗い流す役割、熱を逃す冷却作用など、複数の重要な役割を担っています。
このため、潤滑が正常に機能していないと、軸受の焼付きや予期せぬトラブルにつながるのです。
焼付きが起こるメカニズム
1. 金属接触による発熱と表面損傷
潤滑が不足すると、保護油膜が徐々に薄くなり、ついにはほぼ剥がれてしまいます。
この状態で回転が継続されると、金属A(例えば軸)と金属B(例えば軸受内輪)の表面同士が直接触れ合い、激しい摩擦が発生します。
摩擦が激しくなれば、その箇所は急激な発熱を起こし、温度が瞬間的に数百度にまで跳ね上がることがあります。
この高温によって金属表面が焼け、部分的に溶けたり変質したりします。
これこそが「焼付き」と呼ばれる現象です。一度焼付きが起きると、軸受は回転できなくなり、最悪の場合には千切れるように破損します。
2.「ドライ摩擦」と「焼付き」の連鎖
焼付きの直前には、ドライ摩擦(すべり摩擦)がしばしば観察されます。
油切れのまま運転を続けることで、ごく短時間で油膜が完全消失し、金属同士の摩擦状態が完全に「乾いた」状態になります。
このドライ摩擦により摩耗粉(金属粉)が発生し、これが潤滑剤中に混ざってさらに摩擦を助長する悪循環に陥ります。
最初の焼付きが発生した後は、部分的な固着や過熱が瞬時に周囲に波及し、軸受全体が著しく損傷します。
現場目線で考える、潤滑不足の原因
作業現場のアナログ管理と「人の習慣」
製造現場では、日常点検や定期保守に人間の目や経験に頼る場面がいまだに多く残っています。
「グリースポンプを押すのを忘れた」「油面計を目視で確認するだけだった」など、ルーチンワークに埋没して潤滑管理が疎かになることは少なくありません。
グリースの選定ミスや塗布量の過不足、古い設備に特有の油路詰まり、油しみ出し箇所の放置なども潤滑不足の大きな原因です。
また、省人化や作業効率化を優先するあまり、従来よりも潤滑頻度を減らしてしまった場合、設備寿命を縮める結果につながります。
自動給油機、IoT活用で進化する管理方法
近年では、自動給油装置(オートルーブ)、センサ付き軸受や潤滑監視システムの導入が増えています。
これらの連続モニタリングを活用すれば、油切れの兆候を早期に検知し、重大事故を回避できます。
とはいえ、旧来のアナログ設備との混在現場では、管理手法にバラつきが生じやすいのも事実です。
新旧設備が混在する工場ほど、標準作業の徹底や、管理者による定期監査が重要になっています。
業界動向:デジタル化と課題のリアル
“昭和から抜け出せない”工場が抱え続ける課題
日本の中堅・中小製造業では、「いつ誰がどんな方法で潤滑管理をしたのか」が記録やデータとして残らない現場も少なくありません。
紙ベースの点検記録、ローカルルールの口伝えによる伝承など、アナログ管理からの脱却が進まない工場が多数を占めています。
この状況では、トラブル発生時に再発防止策を立てようとしても「なぜ油が切れたのか?」が特定できず、同じミスを繰り返すリスクがあります。
また、サプライヤーやメンテナンス業者に委託している場合は、その間に現場の“温度感”と対応スピードにギャップが生じがちです。
一歩進んだ潤滑管理のトレンド
近年は、点検記録や潤滑作業をデジタル化し、クラウド管理する動きが広がっています。
RFIDやQRコードで「いつ・誰が・どの設備に」「どの潤滑剤を」「どれだけ投入したか」といったデータがクラウドに自動蓄積できるサービスも登場しています。
またAIによる故障予知や、軸受温度・振動値の常時監視といったプロアクティブな管理スタイルも徐々に普及。
これにより、バイヤー側はより精緻な部品仕様のすり合わせや保全提案ができ、サプライヤーもメンテナンス付きの新しい付加価値ビジネスに挑戦できる文脈が生まれています。
バイヤー・サプライヤーも知っておきたい潤滑不良のサイン
現場で起こる「前兆」トラブル例
潤滑不足が原因で焼付きに至る前兆には、次のような現象が見られることが多いです。
– 軸受部から異音(異常なうなり音、ゴロゴロ音、キーキー音など)
– 軸受回り、軸近傍の局所的な温度上昇
– 設備の振動値が通常より上昇
– グリースの色・硬さの変化(焼け焦げ臭、黒ずみ、ドロドロ化など)
– 運転電流の上昇(モーター負荷の増加)
これらの兆候を見逃さず、現場で「なにか違和感がある」という感覚値も大切にすることが重要です。
軸受焼付き防止のために今すぐできるチェックリスト
実践的な潤滑管理の工夫
1. 適正な潤滑剤の選定:
軸受メーカーや機械メーカー指定のグリース・オイルを使用すること。時折「安いから」と代用品を選ぶ現場もありますがリスクが高いため原則NGです。
2. 潤滑スケジュールの見直し:
実際の運転負荷や稼働時間に応じて、メンテナンス間隔を最適化しましょう。自動給油機と人手によるダブルチェックも有効です。
3. 作業の可視化・記録化:
点検・給油作業の日時、担当者、投入量等をデジタル管理し、異常値があれば迅速にアラートを設定できる仕組み作りを意識しましょう。
4. 教育・啓蒙活動:
新旧混在現場ほど、若手への教育や「潤滑の重要性」に対する全社員への啓発が不可欠です。社内勉強会やeラーニングもおすすめします。
5. 設備投資の検討:
潤滑不良が継続的に発生している場合は、自動給脂装置の導入や、現場IoT化も視野にいれてください。初期投資はかかりますが、中・長期的なコストダウンにつながります。
まとめ:焼付きのない現場こそ、製造業の競争力の源泉
潤滑不足による焼付きは、「気付いた時には手遅れ」という現場の声が後を絶ちません。
しかし裏を返せば、日々の当たり前の管理の積み重ねが、大きな設備トラブルを未然に防ぎ、稼働率や安全性、生産効率という“武器”を手に入れる最短ルートです。
バイヤーであれば取引先に対し「現場で本当に必要とされる潤滑管理ノウハウ」を提供できるかが腕の見せ所です。
またサプライヤーも「軸受の焼付き現象」と向き合うことで、顧客の設備トラブルを未然に防ぐ提案型ビジネスを展開できるでしょう。
軸受部材の焼付きをゼロにすることは、昭和的現場文化から脱却し、製造業の新たな地平線を開拓する第一歩です。
現場のリアル、最先端の技術、そして「人」の勘所を織り交ぜながら、共にものづくり現場の進化を目指していきましょう。
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