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防爆機器・設備の設計技術の基礎と安全設計への応用および実例

目次
防爆機器・設備の設計技術の基礎と重要性
製造業の現場において、爆発事故は人命や企業の信用を一瞬で奪う重大なリスクです。
特に化学品や可燃性ガス、粉じんなどを扱う製造ラインでは、防爆機器や防爆設備の設計と運用が厳しく求められています。
防爆とは単に「爆発を防ぐ装置や設備を設ける」といった単純な対応策ではありません。
現場の状況、工程に混ざる各種リスク、各種国際規格、経営上の制約条件など多くのファクターを考慮し、実践的かつ効果のある設計を行うことが必要です。
本記事では、20年以上の現場経験をふまえ、防爆機器・設備の設計技術の基礎、現場で求められる実践的な安全設計のポイント、最新の業界動向を交えた実例について深掘りします。
防爆機器・設備の基礎知識
防爆とは何か?現場目線での本質
防爆とは「爆発危険性のある環境で、電気・機械・設備の火花、熱、摩擦などを起点として爆発事故が起こらないよう設備や運用を設計・管理すること」です。
一度でも工場爆発事故を経験したことのある現場の方なら、その恐怖心を肌で知っているはずです。
防爆対策には〈本質安全〉〈非点火源化〉〈隔離〉〈抑制〉など複数の設計思想がありますが、「爆発を未然に防ぐ」「万が一発火源があっても爆発につながらない構造にする」という観点が最重要となります。
そのためには、単純な装置導入・カタログスペック頼みではなく、現場のプロセス全体、異種機器連携、運用ルール、作業者まで一体となった設計アプローチが欠かせません。
防爆構造の主要な種類
日本の現場でよく使われる防爆構造はいくつかあります。
– 耐圧防爆構造(d):万一内部で爆発が起きても外部へ火炎が漏れないよう、堅牢なケースで機器内部を密閉する(例:ポンプモーター)
– 本質安全防爆(i):発火危険のある部分の電気回路を極低エネルギーに制限することで発火しない構造とする(例:センサー)
– 増安全防爆(e):火花や高温部分を生じさせない構造とし、安全マージンを追加設計する(例:端子箱)
– 内圧防爆(p):機器内部を大気圧より高い無害性ガスで満たすことで、外部の危険ガスが侵入しない構造にする(例:分析機など)
.h2>防爆区域の分類とその意味
防爆対策の第一歩は、自工場(もしくは工程)の危険場所を正しく分類・特定することです。
これは消防法や高圧ガス保安法、国際規格IECなどでゾーン0(常時危険)・ゾーン1(通常時も時々危険)・ゾーン2(異常時のみ危険)に区分されます。
特に昭和から続くアナログ工場では、実は危険場所判定が曖昧なまま運用されているケースも珍しくありません。
これが爆発事故の温床となっているのです。
バイヤーや設計者の立場では、「防爆グレードの過不足」「本質安全とコストのバランス」「規格適合範囲」などに目を向けなければなりません。
安全設計への応用:設計現場で本当に役立つポイント
防爆設計とコストバランスの最適化
防爆と言えば、とかく「高価な特殊機器を導入すれば安全になる」と思われがちですが、現場のリアルには必ずコストとの葛藤があります。
万能に防爆機器を導入すれば予算オーバーとなり、経営判断で却下されたりします。
おすすめなのは
– 危険エリアの最小化(ゾーニングをピンポイント化して危険エリア縮小⇒防爆機器が減る)
– 一部設備は本質安全設計、本格的なエネルギー設備は耐圧防爆、などリスクと機器構成で使い分け
– 配線方式の工夫や盤の集中化(防爆機器の点数減によるコストダウン)
– メンテナンス性・耐用年数も考慮し、トータルコストで管理
などの現場改善案です。
また、サプライヤーの立場でバイヤーに提案する際には、単なる「防爆スペック」ではなく、「現場の安全目標・コスト目標・運用現場での維持性」をセットで提案すると採用率が上がります。
アナログ現場でも使える実践的ノウハウ
昭和の設備が多い、いわゆるレガシー工場では、最新の防爆規格機器にすぐ置き換えるのは困難な場合もあります。
そんな中、現場起点でできる工夫は以下の通りです。
– 原因工程の物理的分離(危険エリアを鉄板やシャッター、吸引フードなどで囲む)
– 防爆等級の低い部品は極力エリア外に集中設置し、防爆境界壁経由で信号/配管だけ通す
– 応急措置として誤配線・誤操作予防のための二重チェック体制づくり
こうした「ものづくりの現場力」に根差した安全策は、特に人材不足や古い設備が多い工場で大きな効果を発揮します。
防爆機器・設備の設計実例と業界動向
実例1:セルフゾーニングと投資抑制型防爆設計
ある化学品の調合工場では、暴露ガスの発生源を調査した上で「危険区域」を従来区画の1/3以下まで縮小しました。
その結果、数千万円かかるはずだった防爆モーター・電装の投資を大幅に抑え、安全性も1.5倍になった事例があります。
このとき重要なのが、現場スタッフによるガス濃度の定点測定や発生メカニズムまで踏み込んだ仮説検証。
現場の職人や班長との「すり合わせ」が成否のカギとなりました。
実例2:IoT化による防爆監視と保全への応用
近年の業界動向として、IoT機器によるガス濃度の常時監視や、防爆ペンダントターミナル・無線センサーなどの導入が進んでいます。
これにより、作業者が危険区域に入らずに遠隔監視・異常時の通知が可能となり、ヒューマンエラーや点検ミスを激減させています。
たとえば、大手食品メーカーではIoT連動型の防爆温湿度センサーを新設し、瞬時に産業用クラウドで監視。
アナログからの脱却と安全補強を同時に実現しました。
実例3:グローバル調達と各国規格の壁対応
防爆機器調達では、工場がグローバル化するにつれ「IECEx」「ATEX」「UL」など各国規格とのコンフリクトが従来以上に重要になっています。
バイヤーとしては
– 各規格の違いを見越したマルチ対応品選定
– サプライヤー側と規格証明書や適合証明(Ex証明)の取得手順まで事前に詰める
– 日本-海外拠点間で防爆コンセプトを統一するためのフィードバックループ構築
など、一歩踏み込んだ視点で調達・設計を進めることが競争力につながります。
防爆設計の今後:ラテラルシンキングが拓く未来
防爆設計は今後、安全性一辺倒から「運用最適化」や「業務効率化」と溶け合う形に進化していくでしょう。
可視化技術やAI解析・ロボット点検技術により、現場ごとのリスクプロファイルを動的に解析し、防爆投資の最適配分や省人化・システム化まで視野に入れる時代です。
また、調達やバイヤー目線では「防爆対応そのものが競争力の源泉」となる場面も増加しています。
さらに踏み込めば、アナログ現場の熟練知見をデジタルにトレースし、設計現場が新旧ミックスの知恵を生かして真に実用的な防爆対策を仕立てる。
まさに“ラテラルシンキング”=「横断的発想」が欠かせません。
まとめ:防爆設計は現場と未来をつなぐ要
防爆機器・設備の設計技術は、安全・高効率・コスト適正化・現場力の維持、すべてをバランスさせる高度なテクニックが求められます。
現場経験と規格の知見が交錯する防爆分野は、製造業プロフェッショナルやバイヤーの真価が問われる場所です。
この記事が、製造業に携わる皆様や、バイヤーを目指す方、サプライヤーの皆様が「現場と経営」「グローバルと日本」「アナログとデジタル」の最適解を一緒に探し出し、未来志向のものづくりに役立てていただければ幸いです。
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