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D2Cで海外に出るための製造証明・原産国表示・規格適合の基礎知識

目次
D2Cで海外に出るための製造証明・原産国表示・規格適合の基礎知識
はじめに
近年、D2C(Direct to Consumer)が製造業にも浸透し、海外市場へ自社製品を直接届ける動きが加速しています。
国内市場だけでなく海外に販路を拡大する上で、「製造証明」「原産国表示」「規格適合」は避けて通れません。
しかし、昭和時代から続くアナログな慣習が支配する製造現場では、この3つのトピックに対して十分なノウハウが蓄積されているとは言い難いです。
本記事では、20年以上の現場経験を踏まえ、実践的かつ現場目線でD2Cグローバル展開に必須となるこれらの基礎知識を分かりやすく解説します。
なぜ「製造証明」「原産国表示」「規格適合」が重要なのか
D2Cは中間流通を省き、顧客に直接価値を届けるビジネスモデルです。
しかし一方で、BtoBと比べて“書面で明確に説明する責任”が多くなります。
特に海外ユーザーや取引先、各国の監督官庁は「その商品が本当に信頼できるものか」「法令・規格に合致しているのか」「原材料や労働環境は明示されているか」といった観点を重視します。
古い業界慣習だけに頼った運用では、トラブルや商機損失のリスクが極めて大きいのです。
この背景を踏まえ、「証明できる体制」「的確な表示」「基準に従う文化」の構築が、D2C海外展開の生命線となります。
製造証明とは何か──現場での役割と作成のポイント
製造証明書とは
製造証明書(Certificate of Manufacture)は、その製品がどこで・いつ・どのように製造されたかを客観的に証明する書類です。
輸出や取引の際、現地の法規制や取引先からの要求で提出を求められることが多く、工場としては「製造証明」の発行体制構築が必須項目となります。
現場での体制作りの鍵
製造証明作成の実務は、単に日付やロット番号を記録するだけでは不十分です。
現場では次の3点に注意が必要です。
1. 製造履歴のトレース
受注から製造、検査、出荷まで“つなぎ目なく”履歴を残すため、現場の帳票・電子データの一元管理が重要です。
アナログ管理では「どの原材料を使ったか」「工程で誰が何をしたか」など、証明の根拠が後から追いきれません。
現場担当だけでなくIT担当や品証との連携ツール導入が肝心です。
2. 標準化フォーマットの作成
納品先・輸出先ごとに要求フォーマットが違う場合があります。
しかし、すべてに個別対応の書類を作ることは現実的ではありません。
社内でベースとなるテンプレートを用意し、最低限「製造場所・日付・ロット番号・担当責任者・製品特長」は必ず明記しましょう。
3. スピード対応の仕組み
現場で出荷直前になって証明書が「作れない」「不備がある」といった問題が起きないように、依頼~発行までのフローを標準化することが大切です。
D2Cでは「顧客へレスポンスよく発行できるか」が競争優位になります。
原産国表示の基本──正しい表示と信頼構築
原産国表示義務とグローバルスタンダード
海外で商品を直接販売する場合、商品の原産国(Country of Origin)表示が各国の法律や商慣習で義務付けられています。
適切な原産国表示がないと通関でストップしたり、消費者トラブルや輸出差し止めになる場合があります。
原産国の決まり方
製造業の現場では部品や原材料の調達先が多様化しています。
では「どこが原産国になるのか?」という疑問が出てきます。
基本ルールは以下の2種類です。
1. 完全に一国で製造された場合
最終仕上げ・検査・梱包まで行った国がそのまま原産国です。
2. 複数国での加工を経ている場合
最も「本質的な変化(サブスタンシャル・トランスフォーメーション)」を加えた国、またはHSコード(関税分類)変更があった国が原産国になります。
たとえば中国で部品を作り、日本で最終組み立てと検査をした場合、多くの場合「日本製」となります。
詳細は販売先国の法令や、WTOルールなどを参照しましょう。
表示方法の注意点
「Made in Japan」のほか、「日本製」「原産国:日本」といった明記が基本です。
ただし、誤解を招く表示(例:パッケージは日本製、中身は外国製)がないように、現場では部品ごとの原産国記録を徹底することが必須です。
たとえば複数産地ミックスの原料を用いる場合は「原産地混在」や主要な国名の表示、「Assembled in Japan」等を用いるなど、正直な開示が信頼構築につながります。
D2Cだからこそ、透明性ある原産国管理が差別化にもなります。
規格適合──グローバル展開での“最低条件”
規格適合の重要性
海外に製品を直接販売する際、CE(欧州)、UL(米国)、CCC(中国)など各種規格適合が要求される場合が多いです。
規格適合証明がない製品は、現地での販売を禁じられたり、事故発生時にメーカー責任を問われることも考えられます。
昭和的な「日本基準なら通用する」という感覚は通用しません。
規格取得に必要な体制
1. 製品設計時の規格認証チェック
最初から現地規格要求を設計に反映させておく必要があります。
あとから適合作業をするのは手間もコストも大きくなります。
2. 社内テスト・検証の整備
第三者機関での適合テストの要求が多いため、その前工程として社内独自の信頼性試験・安全審査能力が必須です。
3. 記録・証明の体制作り
規格適合証明書(Certificate of Conformity)もしくは自社宣言(Self Declaration)を、現場で正しく管理・保存しておきます。
バリエーション品ごとに漏れなく保持しておくべきです。
ラテラルシンキングで見る規格適合の差別化
従来は「規格は最低限守るもの」でしかありませんでした。
しかしD2C時代は、コンプライアンス姿勢や品質マネジメント力そのものが「ブランド価値」となります。
例えば「この製品はREACH規制等の最新トレンドにも対応」「認証マーク(CE等)を公式でわかりやすく表示」など、“守り”を“攻め”に変えることで海外ユーザーの心理的ハードルもさらなる信頼獲得につながります。
現場目線での実践ポイント──現在の日本製造業の課題と未来
アナログからの脱却が最大のテーマ
多くの日本の製造現場では、帳票の手書き・判子・紙管理といった昭和時代の名残が強く残っています。
このアナログな管理体制こそが、製造証明・原産国表示・規格適合で「証明できない/証明まで時間がかかる/トラブルの温床となる」最大の障壁となっています。
デジタル化・標準化で“証明できる現場”へ
1. デジタル管理体制の構築
帳票・仕様書・生産履歴・出荷記録のすべてをシステム化し、即座に証明書や原産国・規格適合書類を出力できる体制が基本です。
2. 教育と現場巻き込み
新しい運用が現場で形骸化しないよう、教育、ロールプレイング、過去事例の共有など、現場主導の改善活動を重ねることが大切です。
3. グローバル標準志向の浸透
「うちのやり方」ではなく、「グローバルな要求」を前提にした仕組みや意識の醸成が不可欠です。
海外サプライヤーやバイヤーからのフィードバックを経て現場改善文化を強く推進しましょう。
まとめ──製造業D2C時代の新たな「現場の底力」へ
D2Cで海外市場に打って出るには、製造証明・原産国表示・規格適合が“準備書面”として不可欠です。
これらは単なる「書類づくり」ではなく、「現場管理力」「データ証明力」「グローバル観点での信頼性」の総合力です。
昭和から続くアナログから抜け出し、デジタルと標準化、そしてラテラルシンキングによる創造力を現場に融合させることで、「選ばれる日本ブランド」が再び世界で輝く時代がやってきます。
現場力を武器に、ぜひ新しいグローバルの地平線を切り拓いてください。
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