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投稿日:2025年7月5日

ゴム材料環境劣化メカニズムとトラブル事例対応の基礎知識

ゴム材料環境劣化メカニズムとトラブル事例対応の基礎知識

はじめに:製造現場でのゴム材料の重要性と課題

製造業の現場では、シール材やパッキン、ベルト、絶縁体など、多種多様なゴム材料が生産設備や製品に使用されています。

そのゴム材料が長期間にわたり安定して機能することは、製品品質・工程安全・生産性に直結する重要事項です。

しかし、意外にも現場ではゴムの「環境劣化」について体系的な知見や具体的なノウハウが十分に共有されておらず、「なぜこんなトラブルが起きたのか分からない…」「同じ失敗を何度も繰り返している…」という声をよく耳にします。

本記事では、ゴム材料の環境劣化メカニズムを現場目線で分かりやすく解説しつつ、実際に筆者が経験した具体的なトラブル事例と、その対応策もご紹介します。

調達購買や品質管理を担当する方はもちろん、製造現場で実務に携わる方やサプライヤーの立場の方にも役立つ内容となっています。

ゴム材料の「環境劣化」とは何か?

物性・機能低下を招く多様な環境要因

ゴム材料の「環境劣化」とは、使用中または保管中に周囲環境(温度、湿度、光、オゾン、化学物質、応力など)の影響を受け、素材本来の物性や機能が著しく低下する現象を指します。

劣化が進行すると、弾力性の低下や亀裂・ひび割れ、硬化やべたつき、変色、破断、シール性能低下などの不良・故障に表れ、製品品質や生産ラインの安定稼働に大きな悪影響を及ぼします。

なぜゴムは「特に」劣化に弱いのか

ゴムは分子構造が柔らかく、可塑性(やわらかさ・伸縮性)を持つ反面、周辺からの刺激や化学反応を受けやすい性質を持っています。

また、「架橋」という独特の化学結合でゴム弾性を発揮していますが、外部環境が変化すると架橋構造が壊れたり、逆に過剰に架橋されたりするため、耐久性の限界が他の金属・樹脂に比べてシビアです。

ゴム材料の主な環境劣化メカニズム

1. 酸化劣化(オキシダントへの暴露)

ゴム材料が酸素やオゾンに長期間晒されると、分子鎖が切断されて弾性が低下し、硬化や亀裂・ひび割れ(クラック)が生じます。

オゾン劣化は特に天然ゴムやSBRなど不飽和二重結合を持つゴムで顕著です。

屋外に設置されたゴム製品や、圧縮応力が繰り返し加わる動的シール部でトラブルが頻発します。

2. 熱劣化

ゴムは高温下で熱エネルギーを受けることで内部の架橋構造が壊れたり分子運動が促進され、柔軟性が失われていきます。

焼け焦げや変色、硬化、収縮・膨張が起こりやすく、部品のはめ合い不良やシール機能喪失などの原因となります。

特に、エンジン周囲や高温ラインの近傍での使用は注意が必要です。

3. 化学的劣化

ゴム材料は、油脂・溶剤・酸・アルカリ、その他化学薬品に暴露されることで化学反応を起こし、物性変化(膨潤、溶解、分解)や色変化を起こします。

使用環境によっては、想定以上の薬品曝露(例えば清掃時のアルカリ性薬剤の残留等)にも注意が必要です。

4. 水分・湿度による水和劣化

親水性の高いゴム材質では、水分や高湿度環境で分子間に水分子が入り込み、膨張による物性低下や、カビ・腐食などの二次被害につながります。

水回りや屋外設置品のパッキン・ガスケットでは特に警戒すべき現象です。

5. 紫外線(UV)劣化

太陽光中のUV(紫外線)は高エネルギーなため、ゴムの分子構造を直接破壊し、表面の粉化や表皮割れ、色褪せ・物性低下の直接的な要因となります。

工場の屋外配管や照明周辺など、屋外でゴム材を使用する際は、UVカット材や防護措置を過信せず、定期的な点検交換計画が不可欠です。

現場で実際にあったゴム劣化トラブル事例

事例1:パッキンの早期破損でライン停止

ある装置メーカーのラインで、ゴムパッキンが設計寿命よりはるかに早く破損するというトラブルが発生しました。

原因を調査すると、洗浄工程で使用しているアルカリ性薬液の残留があり、設計時に想定していたEPDMでは十分に耐えられないことが判明しました。

部門間コミュニケーションの盲点と材質選定の甘さが発端です。

対策として、化学耐性に優れるフッ素ゴム(FKM)に素材変更し、洗浄工程後の洗い流し・乾燥管理も強化。

現場ヒアリングと多部門連携が再発防止策の要でした。

事例2:オゾン劣化によるOリングひび割れ

屋外配管のOリング(SBR製)に微細な亀裂が発見され、調査の結果「オゾン劣化」が主因と特定されました。

近隣で高圧電線や変圧器が稼働していたため、想定外のオゾン暴露を受け続けていたことが分かりました。

対策では、オゾン耐性に優れるEPDMに材質を切替え、定期交換時期の短縮も決定。

異常発生時は現場の周辺環境もよく観察することが重要と再認識されました。

事例3:ゴムベルトの硬化と滑りによる生産トラブル

搬送ラインのゴムベルトが次第に硬化し、滑り・搬送不良が頻発していました。

これは現場環境が高温かつ乾燥状態(夏場の空調誤運転)となり、熱劣化+静電気帯電が複合的に進行したためでした。

現場スタッフによる「空調節電意識」も要因の一つで、設備側の温湿度管理体制を整備し、静電気拡散処理を追加することで現象を解決しました。

一見単純な現象でも「複合要因」に気づける視点が現場には求められます。

トラブル対策・予防保全のためのポイント

1. ゴム材質と環境の適合性確認

調達・購買段階で「どんな場所・雰囲気・薬品・温度条件で」ゴム部品が使われるのか、現場とのすり合わせが不可欠です。

汎用品のSBRやNBRひとつ取っても、化学耐性や熱・紫外線耐性は大きく異なります。

特に、昭和的な「これで回ってきたから大丈夫」といった感覚的な経験則頼みではなく、現場ヒアリングや使用環境分析によるリスク洗い出しが必須です。

2. サプライヤーとの技術対話を深める

サプライヤー=材料メーカーは、ゴム専門家の宝庫です。

「この工程はこんな洗浄剤を使っているが安全か」「夏場50℃になる現場だが大丈夫か」など、使用環境などを具体的に伝えることで、思い込みによる選定ミスを減らせます。

バイヤー側が「困ったときのなんとなく値段比較」ではなく、「技術的根拠」も重視してサプライヤーと課題を議論する姿勢が大切です。

3. 定期点検・予防交換の文化醸成

ゴム部品は「機能している間は存在を忘れられやすい」部品です。

しかし、現場の安全・安定稼働には「時間(経年劣化)」を見越したルール化と、現場で起こった劣化兆候の早期発見・共有の仕組みづくりが有効です。

QC活動や5S活動の一環としても、ゴムパーツ観察・点検を推進しましょう。

4. 劣化事例データベースの活用

劣化現象は一度起きると、同様現象が他ラインや他工場、他社でも繰り返されがちです。

過去の失敗・対処策・調査報告を「見える化」し、横展開できる仕組みを持つことが昭和的な“属人化”からの脱却につながります。

現場写真や劣化品サンプル、原因分析結果の蓄積を習慣づけましょう。

調達購買・バイヤーが知っておきたいゴム劣化トレンド

社会・環境規制が選定基準を大きく変化させている

近年ではRoHSやREACHなど化学物質規制や、脱炭素への意識の高まりから、従来の可塑剤や加硫促進剤を使いにくくなっています。

また、グリーン調達の観点からも「環境劣化に強いが環境負荷も低い」材料選定や新素材開発が進みつつあります。

今後のバイヤーは価格・物性だけでなく、環境面や法的側面も意識した調達・ディスカッションが求められます。

デジタル化による“予知保全”の時代へ

AI・IoT技術の発展により、稼働中のラインや生産設備に組み込んだセンサで「ゴム部品のひずみ・温度・振動」などを常時モニタできるようになりました。

これにより、“兆候監視→劣化予兆の早期発見→計画交換”といった新たな運用が現実のものとなっています。

昭和からの経験依存ではなく、データに基づく管理体制の導入が今後の製造現場ではますます重要になっていくでしょう。

まとめ:ゴム劣化対策は現場目線×知恵の融合で進化する

ゴム材料の劣化は一見地味なテーマに映りますが、そのメカニズムは多岐にわたり、現場ごとの経験知と科学的知見の“融合”が不可欠な分野です。

現場で起こるトラブルや失敗に正面から向き合い、「なぜそうなったのか?」を丹念に掘り下げ、バイヤー・サプライヤー・技術者が壁を越えて議論し、予防・再発防止の仕組みづくりを進めていくことこそが昭和的なアナログ現場から“新たな地平線”へ進化するためのカギとなります。

ゴム材料の劣化対策は、ものづくり現場の底力向上、全体最適の実現、製造業の次なる競争力を生み出す源泉です。

この記事が、現場の皆さまの実践力強化や、より良い製造業の未来づくりに少しでも貢献できれば幸いです。

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