- お役立ち記事
- 複合材料の損傷破壊解析と信頼性設計評価を行うための基礎手法
月間93,089名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

複合材料の損傷破壊解析と信頼性設計評価を行うための基礎手法

目次
はじめに:複合材料時代の製造現場に求められる視点
製造業の現場では、近年ますます複合材料の重要性が高まっています。
特に、自動車や航空宇宙、エレクトロニクス分野では軽量化や高強度化のニーズが拡大し、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)など、多様な複合材料が使われています。
こうした材料は、従来の金属材料とは異なるや特有の損傷、破壊挙動を示す特徴があり、その評価と信頼性設計のためには現場目線での実践的な知識と、進化し続ける技術動向への洞察が必要不可欠です。
この記事では、製造業の調達・生産管理・品質管理の現場で長年蓄積したノウハウをもとに、複合材料の損傷破壊解析と信頼性設計評価の基礎手法について詳しく解説します。
また、アナログ中心の現場でも実践しやすい観点や、バイヤー・サプライヤー間の考え方ギャップについても掘り下げています。
複合材料の特徴と損傷・破壊のメカニズム
1.複合材料の基本構造と特性
複合材料とは、2種類以上の材料(例:母材と強化材)を組み合わせることで、単一材料では得られない機能や性能(軽量、高強度、耐腐食性など)を発現させるものです。
代表的なのは以下の通りです。
・CFRP:炭素繊維+樹脂
・GFRP:ガラス繊維+樹脂
・MMC:金属マトリクス複合材
・セラミックス複合材 等
複合材料は異方性・界面の存在・層間構造などがあるため、金属材料のような単純な均一材料とは異なる損傷・破壊メカニズムを持っています。
2.複合材料における主な損傷モード
複合材料の損傷破壊挙動は、主に次のようなメカニズムで進行します。
・繊維破断・脱落
・マトリクス(樹脂)破壊(割れ、クラック)
・層間剥離(デラミネーション)
・界面剥離・ズレ
・多層構造内での局所クラック伝播
特にCFRP等の積層型複合材料では外見の損傷がわかりにくく、内部で層間に沿って大きく損傷が進行していることが多く、目視点検だけでは信頼性評価が不十分になりがちです。
損傷破壊解析の基礎的な手法
1.非破壊検査による初期損傷検知
製造現場で活用される非破壊検査手法には、以下のものがあります。
・X線CT(内部構造解析)
・超音波探傷(層間剥離や内部クラック検出)
・赤外線サーモグラフィ(熱拡散による損傷検知)
・アコースティックエミッション(AE)法
これらの手法は現場でも実践しやすいものが多く、とくに超音波探傷は既存の金属部品検査装置を一部転用できるため、導入コストも抑えやすいメリットがあります。
2.破壊力学的手法:クリティカルな設計評価
複合材料の信頼性設計では、破壊力学の視点が欠かせません。
金属材料では破壊靱性値(KIC)による評価が主ですが、複合材料では以下のような指標・手法が使われます。
・層間破壊靱性(GIC, GIIC等:層間剥離に対する靱性)
・繊維直交、直列方向それぞれの強度値
・界面破壊エネルギー
・モリスト・タンジー評価法(等価弾性性解析)
現状、複合材料個別の損傷判定基準は流動的ですが、実機試験による設計マージンの確保を基本スタンスにしつつ、FEM解析や数値シミュレーションで設計段階から不確定要素を可能な限り洗い出すアプローチが主流です。
3.疲労、クリープ、環境耐性の多軸評価
一発破壊だけではなく、繰返し荷重(疲労)や恒常荷重(クリープ)、温度・湿度・薬品環境での評価も不可欠です。
複合材料では疲労寿命のバラつきが大きく出ることや、マトリクス劣化が支配的になるケースも多いため、「長期データの蓄積」「バラツキの統計評価」「安全率の見直し」が従来以上に求められています。
信頼性設計・評価における現場的ノウハウ
1.設計段階からのフィードバックループ
従来アナログ現場の特徴として、設計検討と実製品での失敗・不具合事例が分断されていました。
しかし、複合材料分野では設計―試作―量産―現場フィードバックが有機的につながる活動(デザインレビュー、DR)を恒常的に回すことが、正しい損傷モードの理解と設計基準の磨き込みに直結します。
とくに、微細なサンプル損傷写真・断面観察・再現試験の徹底こそが、不具合未然防止のキモです。
2.バイヤーとサプライヤー間の“観点ギャップ”を知る
複合材料部品の調達に関して、バイヤー(調達側/ユーザー)とサプライヤー(製造側)で根深い“思い込み”の差があります。
バイヤーは「設計図面通りならOK」と考えがちですが、サプライヤー側は「材料ロット差・製造パラメータ変動」を熟知しており、「どんな作業条件や原料で、どこまで性能保証ができるか」を常に気にしています。
複合材料ではこの差が増幅しやすいため、下記のようなすり合わせを行うことが安全確保とコスト低減に直結します。
・“設計意図”と“現場工程”の定期的なオープン議論
・トレーサビリティ管理の徹底
・納入前サンプルの共同評価
・現場担当者同士の交流
これにより、単なる文書主義・品質規格主義では得られない本当の信頼性確保につながります。
3.昭和型アナログ現場の“良さ”を生かすコツ
最近ではIoTやAI自動監視も浸透してきましたが、昭和型の“肌感覚検査”や“勘どころマニュアル化”も、複合材料現場ではまだ大きな力を持っています。
たとえば、
・プレス時の音・においの異常感知
・成型品の表面検査での“微妙な”見抜き
・長年の加工作業者による初期不良の即時検出
など、デジタルデータだけでは補いきれない現場知見が製造業の底力です。
今こそ、データとアナログ感覚の融合が“日本品質”のさらなる進化を生むタイミングだと考えます。
今後の動向と、実務家・バイヤーが身につけるべき視座
グローバル競争下での日本型複合材料対応とは
海外メーカーは「使い捨て」「イノベーションベース」志向が強く、日本企業は「長寿命」「安全重視」型の設計思想が中心です。
バイヤー層は調達条件(コスト、納期、仕様)に加えて、
・現地現物でのリスク洗い出し
・複数形式の評価データチェック
・“サプライヤーの声”を聞いて調整
といった、現場起点の深堀り観点がグローバル競争で生き残る要となります。
サプライヤー側も「バイヤー目線」で考える
これからのサプライヤー担当者は、単に「作る・納める」だけでなく、「なぜその要求仕様が必要か」「本当の最終用途上の懸念・制約は何か」というバイヤー側戦略にも目を向ける必要があります。
具体的には、
・最終用途での負荷・環境条件ヒアリング
・イレギュラークレーム時の迅速情報開示
・担当者間での問題意識の共有化
こうした点でラテラルシンキング(水平思考)を働かせ、今までにない視点や“深い気づき”を身につけていくことが双方のメリットです。
まとめ:未来志向の損傷破壊解析・信頼性設計への提言
複合材料は今や日本の製造業になくてはならない基幹素材です。
その損傷破壊解析や信頼性設計は、単なるデータや規格だけではなく、「現場での観察眼・作り手同士の対話・フィードバックループ」「アナログとデジタルの両利き」「ユーザー/サプライヤーの相互理解」を掛け算することが、これからの業界標準となります。
本記事が、製造業の各部門・立場の方々が複合材料時代の新しい地平線を切り開くための一助となれば幸いです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)