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Rを用いた多変量解析の基本操作と因子分析回帰分析の実践演習

目次
はじめに:製造業におけるデータ解析の重要性とRの有効性
製造業の現場では、膨大な量のデータが日々生まれています。
調達購買から生産管理、品質管理、さらには工場の自動化まで、多岐にわたる業務プロセスの中で、「データをどう活かすか」が競争力の源泉となりつつあります。
ところが、まだ多くの現場ではエクセル頼みのアナログ管理が根強く、昭和的な職人技や勘・経験・度胸(いわゆるKKD)に頼る部分も少なくありません。
その一方で、先進的な現場では「R」というオープンソースのプログラミング言語を活用し、現場の意思決定を強力にサポートする多変量解析が着実に普及してきています。
本記事では、Rを用いた多変量解析の基本操作について、実務経験に基づく現場視点から解説します。
特に因子分析と回帰分析という2つの重要手法を演習形式で取り上げ、製造業の読者、バイヤー志望の方、サプライヤーがバイヤーの思考を共感的に理解する助けとなるよう、深く掘り下げていきます。
Rとは何か?なぜ製造業で注目されるのか
Rは、統計解析やデータマイニング、機械学習分野で広く用いられるプログラミング言語です。
無料で利用できること、豊富なパッケージ(追加機能群)があること、そして何よりコミュニティが活発で最新の解析トレンドが素早く取り込まれる点が大きな魅力です。
エクセルの関数やマクロでは限界のあった複雑な多変量解析も、Rであれば圧倒的に効率と精度を高めて実行できます。
特に製造業の現場においては、不良率低減や納期短縮、最適コスト管理など、多様な目的のために大量かつ多次元のデータを扱う必要があります。
手集計や勘頼みから一歩抜け出し、Rを活用することで「データドリブンな意思決定文化」への転換が可能となります。
Rの基本操作:現場導入ポイント
1. Rのインストールと基本的な使い方
Rは公式サイト(https://www.r-project.org/)からダウンロード可能です。
ウィンドウズユーザーであれば「R for Windows」、Macユーザーは「R for Mac OS X」をダウンロードします。
R本体だけでなく、より使いやすくするためのRStudio(無料の統合開発環境)も合わせて導入するのがおすすめです。
RStudioを立ち上げると、スクリプト編集画面・コンソール・作業ディレクトリの一覧など、分析に必要な機能が一目で分かります。
プログラムは制御構文(if文やfor文)などで柔軟に組めますが、初学者でも「コマンドを一行ずつ貼り付けて実行する」「csvファイルを読み込む」「図表やグラフを出力する」といった基本操作から始められるのが特徴です。
2. データのインポートと前処理
製造業で最も一般的なデータフォーマットはCSV形式です。
Rではread.csv()関数によって
csvファイルを簡単に取り込むことができます。
例:
data <- read.csv("data.csv", header=TRUE)
取り込んだデータには欠損値(NA)や外れ値が含まれている場合が多いため、まずはsummary(data)やis.na()、na.omit()などの関数でデータの中身を確認・整備しましょう。
データクレンジングが不十分なまま解析を進めると、まったく信頼できない結果になってしまうこともあるため、現場では「分析の8割がデータ前処理」と言われるほど重要な工程です。
多変量解析の意義と主な手法:なぜ因子分析・回帰分析を使うのか
1. 多変量解析の必要性を現場から考える
製造業の現場データは、たとえば「原材料品質」「加工温度」「作業時間」「ラインの稼働率」「製品の物性値」など、複数の要素が複雑に絡み合っています。
こうしたデータをただ眺めているだけでは、真の課題や根本原因は分かりません。
多変量解析は、これら“複数の変数”の関係や構造を読み解くための数学的手法です。
ベテラン現場管理職として感じるのは、「手触り感」と「数値根拠」の両立が組織を強くするということです。
多変量解析を使いこなすことで、例えば生産不良の真因を見抜いたり、品質を最適化するためのカギを見つけたり、現場の意思決定の精度を格段に高められます。
2. 因子分析とは?どのような場面で活かせるか
因子分析は、多数の観測変数の背後にある「潜在因子(=共通の特徴や要因)」を特定するための手法です。
現場の例で考えると、
・顧客満足度調査で“複数の設問の内容がどんな共通因子で説明できるか”を知る
・多数の品質検査項目から“複数に共通する異常パターン”の根本要因を抽出する
といった用途があります。
因子分析のメリットは、「データを単に羅列するのではなく、その背後にある意味のまとまりや因果構造まで“見える化”できる点」にあります。
3. 回帰分析とは?ものづくり現場の活用シーン
回帰分析は、「ある目的変数(例:歩留まり、不良率、コスト)」に対して「複数の説明変数(例:気温、作業時間、仕入先の違いなど)」がどれほど影響を与えているかを定量的に明らかにする手法です。
具体的には、
・原材料の違いによる品質への影響
・生産条件のパラメータが製品特性にどれほど効いているか
・購買価格が取引先要因によりどこまで変動するか
など、“現場で起きている現象の数値的因果関係”を探るために使われます。
Rによる因子分析の実践:購買・品質データを例に
1. 実データを用いた因子分析フロー
例えば、複数の仕入先評価基準(コスト、納期遵守率、品質、レスポンス、技術力など)が格付け評価されている調達データを例に考えます。
library(psych)
data <- read.csv("suppliers.csv", header=TRUE)
factanal_result <- fa(data, nfactors=2, rotate="varimax")
print(factanal_result)
2つの因子を想定し、「仕入先としてのコスト/納期重視型」と「技術力/品質重視型」といった共通因子を抽出できます。
回転(rotate="varimax")は、各因子が解釈しやすいように軸を回転させる操作で、Rでは難しい数式を意識せず直感的に分析結果を得られるのがポイントです。
2. 因子負荷量の読み解きと業務活用例
得られた「因子負荷量」を見て、例えば
「このサプライヤーは“技術力と品質”で評価が高いが“価格”は平均的」
「一方A社は“コストと納期”の項目に強み」
など、各社の強み・弱みの可視化や戦略的な仕入先配置の参考になります。
これは調達購買業務だけでなく、品質管理分野でも「どの検査項目に問題が集中しているか」「潜在的なリスク因子は何か」を解析するヒントになります。
Rによる回帰分析の実践:生産管理データを例に
1. 実データを使った回帰分析フロー
たとえば、「月別の歩留まり率」や「製品の強度」を目的変数とし、「投入原材料ロット」「加工温度」「現場作業者経験年数」「機械稼働率」などが説明変数となるデータを仮定します。
data <- read.csv("production.csv", header=TRUE)
lm_result <- lm(yield ~ material_grade + temp + operator_exp + m_runrate, data=data)
summary(lm_result)
これで各変数が歩留まり率(yield)にどれほど影響しているか、また統計的有意性を持つか(p値)を一望できます。
2. 分析結果の解釈と現場実践例
回帰分析の要諦は「どの要因が強く/弱く効いているか」だけでなく、「現状のままではどの改善策から手を付けるべきか」が明確になるところにあります。
例えば「材料等級」と「現場作業者の経験」が歩留まりに有意な影響を与えているなら、
「調達部門はより高グレード原材料の安定確保を目指す」
「製造部門はOJT教育の強化や配置転換を検討する」
といった全体最適の打ち手が見えてきます。
アナログ体質の壁を越えて:現場導入のためのヒント
1. 小さなデータから始めるR活用
昭和から連綿と続く“紙・手帳・ホワイトボード管理”が根強い現場でも、まずはエクセル表の履歴データや検査記録をCSV化してRで可視化するところから始めてみましょう。
最初は数十件~数百件程度の小規模データでも十分効果があります。
現場の合意形成を得るには、「すぐ現れる小さな成果」を積み重ねることがポイントです。
たとえば、「過去半年間で納期遅延が頻発するサプライヤーの共通特徴」を因子分析であぶり出す、歩留まり低下の真因を回帰分析で見抜く、など実務に直結するテーマで成果発表するとよいでしょう。
2. バイヤー視点・サプライヤー視点での差別化
バイヤーを志向する方は、「単なる調達価格交渉」の枠から踏み出し、Rを活用した多変量解析による“全体最適な調達ポートフォリオ”や“根拠あるKPI管理・改善提案”ができれば大きな付加価値となります。
反対にサプライヤー側でも、バイヤーがどのような評価基準・分析手法で比較しているかを理解し、それを踏まえた提案活動を行うことで差別化が可能となります。
まとめ:データ解析力が昭和的製造現場を変革する
多変量解析はもはや一部のデータサイエンティストだけが扱う特殊技能ではありません。
現場の問題意識とRによる可視化・仮説検証を組み合わせれば、アナログからデジタルへの現実的な第一歩は誰でも踏み出せます。
製造業に携わるすべての方に、Rによる多変量解析を通じた「現場力×データ力」の融合を強くおすすめしたいと思います。
今からでも遅くはありません。
ぜひ、目の前にあるデータから“次の一手”を発見し、昭和型マネジメントを次代型へとアップデートしていきましょう。
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