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投稿日:2025年6月10日

樹脂・ゴムの配合・混練技術の基礎とそのノウハウおよびトラブル対策

はじめに:樹脂・ゴムの配合・混練技術の重要性

樹脂やゴムは、私たちの生活や産業活動に欠かせない素材です。

自動車、家電、医療機器、建築材料など、多岐にわたる分野で使用されていますが、その性能や品質を大きく左右するのが「配合」と「混練」と呼ばれるプロセスです。

とくに製造現場では、単なる技術知識だけでなく、現場特有のノウハウや、過去の失敗から得たトラブル対策が、製品の付加価値向上と安定生産のカギとなります。

この記事では、現場20年以上の経験をもとに、樹脂・ゴムの配合・混練の基礎から最新動向、そして現場で直面するトラブルと対策まで、実践的かつ網羅的に解説します。

製造業に従事する方、バイヤー志望の方、サプライヤーとして顧客ニーズを読み取りたい方、それぞれの立場で「一段上の知識」が得られる内容です。

配合技術の基礎知識~なぜ配合が重要なのか~

配合設計の目的とそのプロセス

樹脂・ゴムの配合とは、基材となる高分子材料に対し、目的に応じて各種添加剤(可塑剤、充填材、補強材、難燃剤、顔料、老化防止剤など)を加え、最適な物性を実現する技術です。

例えば、耐熱性を高めるためには熱安定剤、コストダウンのためには充填剤、目的に応じては可塑剤や加硫剤の選択が求められます。

配合設計は「どの素材を、どの割合で混ぜるか」が肝となります。

多すぎても、少なすぎても物性バランスが崩れ、生産性やコスト、成形加工性に直結します。

ここで大事なのは、単に「足し算」や「割り算」ではないということです。

添加剤同士の相互作用、界面の相性、分散性、さらには加工温度や湿度など、目に見えない多くの要素が複雑に絡み合っています。

このため、マニュアルやカタログに頼るだけでは安定した品質が得られません。

長年の現場経験に蓄積されたナレッジが、生きた配合設計を可能にします。

現場でよくある配合ミスとその影響

配合ミスは現場で決して珍しいことではありません。

代表的な失敗例は次のとおりです。

– 添加剤の投入順序ミス
– 重量の量り間違い
– 粉末や液体の微量成分の偏り
– バッチ間の撹拌不均一

こうしたミスが発生すると、製品物性のバラつき、加硫(架橋)不良、成形時の離型不良、引張・伸び強度の劣化、外観不良などに直結します。

とくに昭和時代から続く現場では「ベテランの勘」に依存しており、形式的なチェックにとどまるケースも少なくありません。

コスト低減の現代においては、配合精度の重要性はいっそう増しており、IoTやAIを駆使した自動化・可視化も進んでいます。

混練技術の基礎と進化

混練の目的と装置選択

混練とは、所定の配合成分を十分に均一化(分散・分布)させる工程のことです。

主な混練装置としては、2軸押出機、バンバリーミキサー、オープンミル、ニーダーなどがあります。

製品の種類や生産量、要求特性によって最適な混練装置や運転条件を選ぶ必要があります。

混練プロセスは、単なる「撹拌」ではなく「せん断力」により高分子鎖を適度に切断・分散し、確実な分散・凝集防止を実現します。

このせん断力や滞留時間が弱いと、添加剤の塊が残り、成型後のブツ、ゲル、剥離、劣化など大きなトラブルの原因となります。

「練りすぎ」「練り不足」のリスクと対策

現場でよく見られるトラブルが、「練りすぎ」と「練り不足」です。

練り不足は分散不良の原因となり、ゲル・ブツ・外観不良・機械的強度低下を招きます。

一方、練りすぎは高分子の分子量低下(ミストカット)、吐出温度の上昇による変質、可塑剤や揮発性成分の飛散、装置内への残渣増加などの問題が発生します。

どちらも最適条件を見極める現場ノウハウと、定期的なモニタリングによるフィードバックが不可欠です。

最新動向としては、混練時のトルク・温度・圧力・消費電力などのデータをIoTでリアルタイム記録し、AIによる最適運転へのフィードバック制御を組み合わせる工場が増えています。

アナログ現場とデジタル化の狭間

昭和型アナログ現場に根付く「勘」と「経験」

製造業、とくに樹脂・ゴム業界は、保守的でアナログ的な現場文化が根強く残っています。

混練や配合も「この見た目、手触り、音、におい」で判断するベテラン作業員が多く、暗黙知の伝承が品質維持の大きな要素でした。

「朝練りは少し固め、午後は柔らかく」「配合後1日寝かせると発泡が減る」など、マニュアルには載らない生きたノウハウが満載です。

しかし、こうした情報は紙や口頭で伝えられるのみで、若手技術者やバイヤーから見れば「理由がブラックボックス」という問題が付きまといます。

AIやIoT、及び各種デジタル管理ツールも、こうしたアナログ情報をいかにデータ化し、ナレッジ共有するかが課題です。

デジタル化の導入事例と業界トレンド

大手樹脂・ゴムメーカーでは、混練工程の自動記録・データ解析が始まっています。

例えば、混練履歴と出荷後のクレームデータを機械学習させて、混練異常の予兆診断をAIに行わせる、リアルタイム異物検知を画像解析で自動化する事例もあります。

一方で、中小規模工場では「高価な投資はできない」「現場作業者が使いこなせない」といった理由で、エクセルや紙帳票による記録が主流です。

バイヤーやサプライヤーとしては、「現場のデジタル成熟度」を事前に把握し、相手の業務プロセスに合わせたやり取りや情報提供が求められます。

自社の実践的ノウハウを、誰でも参照できる「知恵袋化」することも今後の競争力の源泉となります。

現場で頻発するトラブルとその実践的対策

混練・配合現場で多発する典型的トラブル

20年以上の現場経験で私が目にした主なトラブルを具体的に挙げます。

– 分散ムラによるゲル・ブツ発生
– ロット毎の物性バラつき(加硫不足、硬度ムラ)
– 配合ミス(重量間違い、処方違いカードの取り違え)
– 異物混入(装置内の固着物、紙片、髪の毛等)
– 混練時の高温化による黄変・架橋不良・付着
– 可塑剤や揮発成分の飛散・揮発

これらのトラブルは、配合の手順・混練の条件・記録方法があいまいな現場や、「連絡ミス」「ルール順守意識の低下」で特によく発生します。

効果的なトラブルシューティングの実践戦術

トラブルが発生した場合、「誰が、どこで、何を、どんな順序で確認するか」を曖昧にしないプロセスづくりが肝心です。

1. トラブル発生時は必ず「現場症状の記録」と「発生ロットの区画分け」を徹底する
2. 装置の混練トルク、温度履歴のデータを即時確認できる体制をつくる
3. 配合記録と現品照合で、投入量誤差やロット違いを二重チェックする
4. 同様のトラブル発生履歴や改善事例をナレッジベースで共有する

また、「混練や配合は工程管理だけでなく人的作業が多いため、最後は現場の目で見る確認も欠かすべきではない」というバランス感覚も重要です。

バイヤー・サプライヤーが知っておきたい業界動向と評価ポイント

バイヤーが工場を選ぶ「配合・混練力」視点

最終製品の「安定品質」「短納期」「コスト競争力」は、現場の配合・混練技術に依存します。

バイヤーが優良サプライヤーを見抜くために、以下の点に着目すると良いでしょう。

– 配合・混練履歴のトレーサビリティは明確か
– 人手依存度と自動化レベルは適正化されているか
– 品質異常時の初動対応・改善力
– ナレッジ共有や若手育成の仕組み
– データ化・可視化の取り組み状況

これらはサプライヤー側からみても「自社技術のアピールポイント」となります。

自社の強みを第三者目線で整理し、営業活動や協力バイヤーへの訴求資料として活用しましょう。

サプライヤーがバイヤーニーズを先読みするコツ

バイヤーの購買業務には、コスト交渉、納期管理、品質クレーム対応、工場監査など、多様な視点があります。

単純な価格競争だけでなく、「混練・配合プロセスの提案型技術」「トラブル未然防止力」「短納期時のフレキシブル対応力」が重視される傾向にあります。

サプライヤーとしては、単なる納品型の存在で満足せず、自社の混練・配合ノウハウや問題解決型アプローチを積極的に提案し、差別化することが重要です。

特に自社現場で積み上げた「失敗事例」「改善事例」をまとめた資料は、バイヤーから高い信頼を得やすくなります。

まとめ:配合・混練技術が製造業の未来を拓く

樹脂・ゴムの配合・混練技術は、単なる「ものづくり」に留まらず、製造業の競争力や付加価値全体を支える要です。

昭和時代から続くアナログ現場のノウハウを、データやナレッジとして次世代へつなぐ努力こそ、産業の持続的発展に直結します。

バイヤー・サプライヤーいずれの立場でも、「現場発の知恵」を深く掘り下げ、本質を見極めることが、よりよい取引や優れたものづくりへの最短ルートといえるでしょう。

今こそ、配合・混練技術を単なる工程で終わらせるのではなく、現場・管理・経営まで巻き込んで「新たな地平線」を一緒に切り拓きましょう。

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