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投稿日:2025年6月4日

技術者に必要な文章の基礎と技術文書作成のポイント

はじめに:製造業の現場で文章力が求められる理由

製造業の技術者と聞くと、精密機器や機械の設計、あるいは現場の作業などに特化した職能をイメージされる方が多いかもしれません。
ですが実際、現代のモノづくり現場では、文章を通じて「意志」や「技術」を的確に伝えるスキルがますます重要になっています。
なぜなら、調達購買、生産管理、品質管理、さらには SIerやサプライヤーとの調整など、書類やメール、マニュアルといった「技術文書」を介して意思決定や合意形成が進む世界だからです。

では、なぜ今までのような職人技だけでは通用しなくなってきているのでしょうか。
それは、世代交代やデジタル化の流れ、グローバル化によって、現場の「言わなくても分かる」暗黙知の文化が限界に達し、「誰が読んでも伝わる」「標準化された」文書作成が必須条件となりつつあるからです。

この記事では、20年以上現場で培った経験をもとに、技術者としての文章力と、実際に役立つ技術文書作成の具体的なポイントを解説します。
バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場からバイヤーの意図を知りたい方にもヒントとなる、実践的な内容です。

技術者に必要な「伝わる」文章力とは

なぜ技術者は論理的な文章力を磨くべきか

製造業の仕事は、多岐にわたります。
ひとつの製品を完成させるために、設計部門・生産部門・調達購買部門・品質管理部門・工場管理部門、さらに外部のサプライヤーや顧客、物流会社など、無数の関係者が関わっています。

このような錯綜する現場においては、意思伝達に曖昧さがあると、すぐに手戻りやトラブル、納期遅延につながります。
単なる「報告」「連絡」「相談」だけでは不十分です。

論理的・合理的な文章を、正しく、簡潔に、誰にでも分かる形で書く—これこそが、昭和の「背中で語る」職人気質から脱却し、次世代のグローバルサプライチェーンに通用する技術者の条件なのです。

例:バイヤーとサプライヤーの間で求められる文章力

例えば、バイヤーがサプライヤーに見積依頼を出す場面を考えてみましょう。
「いつもの感じで、あれ、頼んでおいて」といった曖昧な依頼では、数量・納期・品質規格・必要書類・検査要領などが伝わりません。
結果、「そんなはずじゃなかった」ともめ事の原因となります。

必要なのは、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どうやって)を押さえた定型的な文章です。
「2024年7月15日納期で、仕様A-123に合致した10台分の見積をお願いします。納入場所はX工場、図面添付しますのでご確認ください。」このように、論理的かつ具体的に伝える訓練が不可欠です。

技術文書の基本構成と抑えるべきフォーマット

どんな技術文書にも共通する3大要素

技術文書の書き方には「型」があります。
どの業界でも共通するのは『目的』『背景』『結論』の三つです。

1. 目的
何のための文書かを明確にします。例:「新規材料Aの採用可否について検討した結果を報告します。」
2. 背景
なぜそれが必要なのか、状況説明(経緯・現状・課題)を書きます。
「現在使用中の材料Bが入手困難になったことから、代替材料の検証が求められています。」
3. 結論(Main Message)
これを明確に一行で述べます。
「材料Aは、既存の品質基準を満たすため、採用可能と判断します。」

この順序で書くと、読み手が「何が言いたいのか?」「なぜそう言えるのか?」をスムーズに理解できます。

議事録・報告書・依頼文書—具体例でわかる違い

例えば、会議議事録であれば「日時・出席者」「議題」「決定事項・ToDo」「次回予定」を区分けして記載します。
報告書では、「目的」「測定方法(プロセス)」「観察事実」「分析」「提案」「結論」の流れが王道です。
依頼文書では、相手に伝えるべき事項が漏れなく整理されているか、箇条書きを活用して明確にします。

アナログ文化でもできる「型」の使い方

古い体質の工場や現場ほど、「うちのやり方」が強く残っています。
ですが、「目的→根拠・課題→結論」の型を意識するだけで、紙ベースの回覧や手書き文書でも印象が格段に良くなり、「読んでもらえる」文章になります。
昭和のような曖昧な経過報告や、根回し・忖度ベースの文書から一歩進化することが、「現場力の底上げ」に直結します。

技術文書作成のコツと具体的なポイント

読者の立場・知識レベルを見極める

良い技術文書=「伝えたいこと」が伝わる文書です。
そのためには、相手がどの立場・どのレベルの知識を持っているか見極めることが第一歩です。

例えば、社内エンジニア向けのマニュアルと、営業担当者や購買担当者向けの説明書では、使う用語や前提知識が異なります。
サプライヤーに出す技術仕様書でも「説明がくどい/専門的過ぎて分からない」とならないよう、バランスが重要です。

専門用語や略語の使い方

製造業現場は、略語・省略語・符号であふれています。
特に新卒や他業界からの転職組、海外サプライヤーに向けて文書を書く場合、略語の初出時は必ず正式名称を併記します。
例:「PPAP(Production Part Approval Process:量産部品承認プロセス)」と記載すれば、誤解が生じません。

箇条書きを活用し、主張を明確にする

長文の中に事実や依頼事項を詰め込みすぎると、「結局何をして欲しいのか?」が伝わりません。
要点を箇条書きにして、項目ごとに分かりやすく記載しましょう。
特に依頼文書では「納期」「数量」「担当者」「提出書類」など、抜け漏れを防止できます。

根拠や数値で裏付ける力

技術者が書く文書は、「なんとなく」「思います」でなく、客観データや根拠を示す必要があります。
製造現場で実際にあった事象(例:加工ラインの不具合、歩留まりデータ、品質検査の合格率など)を具体的な数値で記載してください。

「歩留まり率が直近1か月で92%から85%に低下した。その主原因は、材料Aのロット間バラツキ増大(測定値:最大値X、最小値Y)である。」
こういった書き方が、管理職や経営層、外部サプライヤーの信頼につながります。

適切な見出し・構成で「流し読みに強い」文書にする

全員が1から10までをじっくり読む時代は終わりました。
多忙なマネージャーや工場長、サプライヤーの責任者にもパッと趣旨が伝わるよう、見出し・目次・太字を的確に配置するのが近年の鉄則です。
要約は冒頭に、説明は簡潔に、図や表が使えるなら積極的に活用しましょう。

昭和アナログ体質の現場が意識すべき「文章のデジタル化」潮流

なぜ今、紙からデジタルへ進化するのか?

多くの製造業現場では、長年の慣習から「紙の回覧」「押印」「手書き報告」が根強く残っています。
しかし、2020年代に入りリモート会議や電子承認、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進展。

紙の文化は、属人化・情報の分断・紛失リスクという弱点を抱えています。
どんなに現場感覚で書かれた名文も、共有・再活用できなければ現代のサプライチェーンでは競争力を失うのです。

デジタル時代の「技術文書」の新たな要件

デジタル文書化の第一歩は、「誰が作っても同じ書式、同じ表現」に統一することです。
WordやExcelのテンプレートを使う/文書管理システムに載せる/PDFで保存・共有することで、「リモートでも伝わる」「世代が変わっても再利用できる」文章力が会社の財産となります。

写真・動画の埋め込み、リンク集やナレッジベースによる「まだ見ぬトラブルにも対応できる」設計も検討しましょう。
技術文書は現場の「走り書き」「メモ」から「組織知の蓄積」へと進化するべき時代です。

まとめ:文章力は現場力=付加価値の武器になる

製造業の技術者が「伝わる文章」を書くことは、自らの専門技術を活かす最大の武器です。
調達購買・品質管理・サプライヤー交渉など、あらゆる現場で文章力がトラブル未然防止・リードタイム短縮・コストダウンに直結しています。

現場で培った肌感覚、職人技、アナログの良さを活かしつつ、「型」やテンプレート、デジタル化を取り入れることで、更なる競争力・魅力的な現場作りが可能となります。

これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤー心理を知りたい方も、是非「伝わる技術文章」の習得から始めてみてください。
きっとあなた自身、そして組織全体の技術力・現場力が大きく飛躍するはずです。

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