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投稿日:2025年6月11日

カム機構の基礎と応用事例および高速化への対応

はじめに:製造業におけるカム機構の重要性

製造業、特に自動車や家電、精密機器などの現場では、動力の伝達や複雑な運動の制御においてカム機構は欠かせない存在です。

私が約20年の現場経験で感じたのは、「カムが分かることは現場の本質を理解する第一歩」であるということです。

生産ラインの自動化や省力化、コストダウンといった課題解決に、昭和から続くアナログな手法と、最新のデジタル技術をかけ合わせる今、カム機構の基礎と応用を抑えることは、工場の競争力向上に直結します。

この記事では、カム機構の基礎知識から現場での活用例、そして近年求められている「高速化」「省人化」対応まで、知っておくべきポイントをバイヤー・購買担当、サプライヤーの双方の目線も交えて解説します。

カム機構とは?〜その基本構造と動作原理〜

カムとは、回転運動や直線運動を別の特定の運動パターンに変換する機械要素です。

最もシンプルな例は、回転する円板(カム)がピンやレバーを持ち上げたり押し下げたりする動作です。

この動きを繰り返したり、あるいは複雑なタイミングで制御できるのがカムの最大の特長です。

カム機構の主な構成要素

カム本体:運動パターンを定義する軌跡を持つ部品(円板カム、立体カム、スリットカムなど)。
フォロワー(従動子):カム本体の輪郭や溝に追従するパーツ。ローラー式やスライダー式、フラット式などがある。
バネ(スプリング):フォロワーを常にカムに追従させる役割を担うケースが多い。

カム機構ができること、できないこと

カム機構の本質は「設計次第でどんな動きも作れる」ことです。
波形軌跡を設計、切削すれば、ミリ秒単位、ナノ単位の微細な動作も実現可能です。

ただし、動作速度があがるほど摩耗、騒音、振動、制御の難しさが増すため、高速化には工夫が求められます。

また、一度作ったカムを変更したい場合、アナログ的な再設計・部品作成が避けられず柔軟性はあまり高くありません。

アナログの強み:現場で根強く使われる理由

今や工場の自動化にはサーボモーターやPLC(シーケンサー)が一般的になっています。

しかし、昭和から続く「アナログのカム機構」が今も廃れないのは、現場ならではの理由があります。

壊れない・長持ち・自己診断不要

カム機構は機械的なリンクのみで動作が完結するため、電装トラブルやノイズの心配がありません。

製造ラインの安定稼働を何十年も続ける必要がある現場では、電子部品よりカムのほうが「壊れにくい」ことが評価されます。

また、トラブル時も目視で摩耗や破損が分かりやすく、ベテラン整備員であれば即座に修復できます。

コストパフォーマンスに優れる(初期投資重視)

数万、数十万回の繰り返し動作が前提になるラインでは、カムはシンプルな設計・短納期低コストで製作可能です。

デジタル制御と異なり、ソフトウェアの開発や制御盤設計が不要なので、旧来型装置でもコストダウンが可能です。

カム機構の種類とその応用事例

製造現場では、カムの種類ごとに適応用途が異なります。

現役のバイヤーや技術者、サプライヤーの方が知っておくべき主要なカム機構を紹介します。

円板カム(ディスクカム)

最も基本的なカム。
特定のタイミングでフォロワーが上下する動作を得意とし、プレス機の送り装置や成型機のリリース動作で多用されます。

例:自動車用シンクロ機の自動開閉装置。カムの波形でシンクロナイザーのクラッチ動作を実現。

立体カム(シリンダカム、バレルカム)

3次元的にカム溝を設けることで、複雑な動きを多方向に伝達できます。

ロータリーインデックステーブル(回転分割台)など、列品切り出しや部品配置作業の自動化現場で欠かせません。

例:製薬業界の充填・包装ライン。バレルカムで同時多点制御を物理的に実現。

スライドカム(リニアカム)

フォロワーを直線移動させるタイプで、組立ラインの部品押し出しや多連ピッキング装置などに使われます。

例:電子部品のテーピングマシン。数百点もの部品を高速で吸着・移載する動作にカムスライドが用いられています。

特殊カム:ジーンバーカム、グルーブカムなど

特殊な動作パターン(例えば加減速度を自在に調整)をカム一つで作れるため、研究開発レベルから量産工程まで、多様な現場で工夫が見られます。

カム機構の高速化:現場が直面する課題とソリューション

近年の製造業では、高速生産ラインが当然のように要求され、その分だけカム機構への負荷も増えています。

昭和のコンベヤ速度が10m/分だったラインも、現在は60m/分を超えることは珍しくありません。

高速化による課題

摩耗・油膜切れ
カムとフォロワー間の接触部は高速になるほど発熱し、摩耗が早まります。

油膜切れや焼き付きのリスクも上昇し、定期的なグリスアップ、材質選定(耐熱・低摩擦鋼材、コーティングなど)が必須です。

衝撃・騒音・振動
フォロワーの接触が衝撃荷重になるため、騒音・振動が顕著になり、現場環境やラインの寿命に大きく影響します。

振動吸収材やダンパー内蔵、ローラーフォロワーの活用、カム輪郭の滑らかさ最適化が解決のキーポイントです。

カムプロファイル設計
高速動作を実現するには、急峻な立ち上がり/立ち下がりのない「加減速度連続」なカムプロファイル設計が求められます。

CAMソフトやCAE解析を併用し、事前に運動曲線・応力・寿命シミュレーションする設計手法が一般的です。

デジタル×アナログのハイブリッド化

最新では、カムで粗いタイミング動作を担わせ、精密動作部分をサーボモータやエアシリンダ等の電動アクチュエーターで補助する「ハイブリッド」な自動化設計が主流です。

一例として、「部品の搬送・分離動作はカム、位置決め微調整はサーボ」といった設計がトレンドです。

バイヤー・サプライヤー視点で抑えるべきポイント

調達・購買担当者やサプライヤーにとって、カム機構の基礎知識は「本質を見抜く力」につながります。

以下、押さえておくべき観点をまとめます。

1. 要求仕様と現場の実情を伝える

「どのくらいの動作サイクルか」「生産量はどれくらいか」「省人化は優先かコスト重視か」など、現場の制約条件と狙いを正確に伝えることが大切です。

曖昧な要求だと、カム波形や材料も「保守的」になり、高コスト化や納期リスクが発生します。

2. 部品サプライヤーとの連携を強化

カム機構は「出来合い品」が少なく、サプライヤーの現場力と設計力が品質を左右します。

信頼できる加工業者、CAMソフトやCAEに長けた技術者とタッグを組むことが事故・不良率低減に直結します。

3. 予防保全・交換のしやすさも評価対象

高速ラインほど、カムの定期点検・交換性を最初から意識した設計(メンテナンス性重視)が重要です。

「ユニットごとカム交換できる」「現場作業者でもカム軸脱着が容易」といった観点を持つことが、ランニングコスト全体の最適化につながります。

今後のカム技術の展望:デジタルツイン時代のものづくりへ

IoTやデジタルツイン技術の発展により、実際のカム機構の動作をセンサーで可視化、異常予兆を検知する現場も増えています。

また、AIを活用して運動プロファイルの最適化、摩耗時期の予測、メンテナンス計画を立てるなど、「古き良きカム機構」がデジタル技術と融合し進化しています。

海外工場も多くのカムユーザーがいるため、日本発の「カム+デジタル」の知見・技術は、今後さらなる競争力・新規ビジネス創出につながる可能性があります。

まとめ:現場力×設計力で進化し続けるカム機構

カム機構はあらゆる自動化機器、生産ラインで今も不可欠なコア技術です。

単なるアナログな装置だと侮らず、設計手法の進化、メンテナンス技術の向上、デジタル技術との組み合わせで、今後も大きな役割を担い続けることでしょう。

現場にいる方、調達購買に携わる方、そしてサプライヤーの皆さまには、ぜひカム機構とその運用ノウハウを深く理解し、「ものづくり現場力」を高めていただきたいです。

私は今後も現場目線・経営目線双方から、さらなる知恵や工夫、実践例を発信し、製造業全体の生産性向上と持続的な発展に貢献していきたいと考えています。

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