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投稿日:2025年6月21日

永久磁石同期モータのベクトル制御位置センサレス制御の基礎と応用例

はじめに:製造業に広がるモータ制御の革新

現代の製造業において、設備の自動化や高効率化は避けては通れない課題です。
中でも、永久磁石同期モータ(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)は、その高効率や高出力密度、省エネルギー性能から、多くの工場設備や省力化機器に採用されています。
最近では、特にベクトル制御技術を用いた位置センサレス制御が注目を集めています。
これは製造現場にどのようなメリットをもたらし、どんな活用ができるのでしょうか。
本記事では、モータ制御分野の最新技術である「永久磁石同期モータのベクトル制御・位置センサレス制御」について、現場目線で分かりやすく解説し、実践的な応用例も交えてご紹介します。

永久磁石同期モータ(PMSM)とは何か

PMSMの基本構造・特徴

永久磁石同期モータ(PMSM)は、回転子にネオジムなどの強力な永久磁石を埋め込んだ構造を持ちます。
従来の誘導モータに比べて「高効率」「高出力密度」「高トルク制御」が可能なのが最大の特長です。

この出力密度や応答性の高さは、製造ラインでのロボットアームや搬送装置、精密な工作機械など、より高速・高精度な動作を求められるアプリケーションで重宝されます。

省エネルギー時代を牽引するPMSM

省エネ・カーボンニュートラルの流れが強まる中、効率の良いPMSMへの切り替えは避けられません。
また、海外サプライヤーでも主流となってきているので、購買・調達担当者やサプライヤーもこのトレンドを押さえておく必要があります。

ベクトル制御とは何か ~モータ制御の高度化~

ベクトル制御の基本原理

ベクトル制御とは、三相交流で動くモータを空間ベクトルとして捉え、トルクと磁束を独立に制御することで、直流モータのような滑らかな調速性能を実現する技術です。

インバータを駆使し、電流をリアルタイムで解析・演算しながら制御するため、
「負荷変動に強い」、「高効率運転が可能」、「微細なトルク調整ができる」といった現場的メリットがあります。

ベクトル制御が必要とされる理由

たとえば、コンベアやロボットのピック&プレース工程など、微妙な動きを正確に再現するためには、
従来のV/f制御(電圧/周波数一定の単純制御)ではなくベクトル制御が有利です。
ベクトル制御であれば、負荷が急変してもトルクを瞬時に補正できるため、不良品やライン停止を減らせます。

位置センサレス制御:なぜ必要か

センサ付き制御の課題

従来、PMSMで高精度な位置制御を行うには、回転子の位置を検出するためのエンコーダやレゾルバといった回転センサが必須でした。

しかし、実際の現場では
– センサ部の価格が高い
– 部品点数が増えることで故障リスクやメンテナンスが煩雑になる
– ホコリ・油・水など環境条件が厳しいと誤動作や寿命短縮が起きる
など、悩みがつきませんでした。

センサレス制御の利点

位置センサレス制御では、モータの電気的な応答(端子電圧・コイル電流)からソフトウェア的に回転子の位置や速度を推定します。
これにより、配線やハードセンサが不要になり、
– コスト削減
– 部品故障リスク低減
– メンテナンス性向上
– 高温・高湿・粉塵環境に強いシステム構築
といったメリットが実現します。

現場目線では「センサトラブルによる予想外のライン停止」「交換部品ストックの負担」といったアナログ的な課題解決にもつながります。

センサレス制御の原理(イメージだけでも押さえる)

電気信号と回転子ポジションには密接な関係があります。
主にリアクタンス(コイルの交流特性)や、インジェクション法(高周波信号を入れて応答を見る手法)などによって位置を推定します。
近年、制御ICの高性能化や信号演算技術の進歩によって実用レベルの精度が確保され、産業用機器にも適用範囲が拡大しています。

製造現場でのセンサレスPMSMベクトル制御の応用例

搬送システム・ロボットアーム

省スペース化・小型化が進むマテリアルハンドリング設備では、エンコーダ無しで高精度ポジショニングが可能なセンサレスPMSM駆動が多用されつつあります。
これにより、コストのかかるケーブル取り回しやセンサ保守作業からも解放されています。

たとえば、AGV(無人搬送車)やピッキングロボットの駆動・作業アームには「センサレス制御・ベクトル制御」が最適解となります。

巻取り/送り装置、パンタグラフ等

紙・シート、ワイヤー、フィルムの「巻取り・送り装置」や、「切り出し位置の自動補正」を行う工程では、
長期運用で生じやすいエンコーダの汚れ・摩耗やケーブル断線を気にせず、メンテナンスフリー化が進行しています。

ポンプ・ファン・コンプレッサ

大量の送風・給水などインバータ駆動が主流のポンプ・ファン・ブロワ用途でも、
回転センサレスのPMSMコントロールが急速に普及しており、年間の電力コスト削減・保守費用低減が現場の大きな成果となっています。

自動車産業

EVモータやパワーステアリング、電動ポンプにもベクトル制御+センサレス技術が応用されており、将来の社会インフラを支える基盤になっています。

課題・導入時の注意点

低速域での制御精度

特に停止〜低速回転域では電気信号が微小になり、位置推定の精度が下がりやすいです。
用途によっては、起動時や停止直前のみエンコーダ併用を検討した方が良い場合もあります。

チューニングや立ち上げ運用

センサレス制御はパラメータ設定や立ち上げ時の試運転条件によって、性能や安定性が大きく左右されます。
そのため、導入時には制御メーカーやシステムインテグレータのサポートを受けつつ、
現場オペレータとも十分な試運転、再調整のPDCAサイクルが求められます。

現場スタッフ・保守担当者への教育

センサが無くなることでI/O点数自体は減りますが、トラブル時の切り分けや異常検知ポイントが従来と一部異なります。
現場保守・生産技術・製造管理の担当者にも「新たな故障診断スキル」の教育や「トラブルマニュアルの刷新」が必要となります。

業界動向と今後の展望

従来、製造業の現場では「昭和から抜け出せない」と揶揄されるようなアナログ意識と「センサやケーブルが当然ついている」という価値観が強く根付いていました。
しかし、今や大手自動車・電機・精密機械メーカーのみならず、地方の中小工場でもセンサレスベクトル制御化が急速に広がっています。

今後、IoT化やDX推進、スマートファクトリー化が進む中で、「メンテフリーでトラブルに強い設備としての価値」や「部品点数の削減による環境負荷低減」がより一層重要となってきます。

また、海外取引先でもPMSMやセンサレス制御搭載機との取引が拡大しており、バイヤーにとっても「これからは標準仕様化する」と認識しておくことが商談・見積りの鉄則となります。
一方、サプライヤー側も「制御技術への知見」「顧客の現場事情への理解」「現物納入後の立ち上げサポート」など従来以上の深い関与が求められる時代になっています。

まとめ:今求められる製造業の現場イノベーション

本記事でご紹介したように、永久磁石同期モータのベクトル制御・位置センサレス制御は、
単なる先端技術ではなく「生産性向上」「コスト競争力」「メンテナンス工数削減」など、現場レベルで実効性の高いソリューションです。

これまでアナログ思考が根付いてきた製造業界でも、今こそ柔軟なラテラルシンキングで「標準(当たり前)を疑う」姿勢が問われています。
バイヤーを目指す方は、業界トレンドとしてのみならず、現場での導入事例や立ち上げ~保守の経験談を積極的に取り入れることで、ワンランク上の提案や交渉力を身につけることができます。

また、サプライヤーや開発・生産技術担当者も、単なるスペック提示だけでなく、顧客の現場事情や将来展望までふまえた深い提案・サポート力が選ばれる鍵となっています。

今後も、製造業に従事する全ての方々が、現場目線×新技術のラテラルな発想で新たな地平線を拓いていくことを願います。

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