- お役立ち記事
- AUTOSARに対応した車載ネットワークの基礎とセキュリティ対応
月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

AUTOSARに対応した車載ネットワークの基礎とセキュリティ対応

目次
AUTOSARとは何か?車載ネットワークの大きな潮流
自動車業界において、かつては個社ごとに独自開発が主流だった車載ソフトウェアですが、近年の複雑化や市場のグローバル化を背景に、共通基盤化の流れが加速しています。
その象徴とも言えるのが「AUTOSAR(オートサー/オートザー)」です。
AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)は2003年に欧州主要自動車メーカーとサプライヤーが設立した標準化団体で、車載電子制御ユニット(ECU)のソフトウェア構造や通信インターフェースの共通化を目指しています。
本記事では、
「AUTOSARに対応した車載ネットワークの基礎とセキュリティ対応」
をテーマに、現場目線の実践的知見と、アナログ業界ゆえの課題、さらに今後の方向性まで深掘りして解説します。
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーとして自社の競争優位性やバイヤーの要求を読み解きたい方にも有益な内容です。
なぜ今、車載ネットワークでAUTOSARが求められるのか
1. コネクテッド化と自動運転技術の進化
CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)が叫ばれる自動車業界では、ECU間、車両外部との大量データ通信が必須です。
今や自動車は「走るIoTデバイス」と呼んでも過言ではありません。
従来の独自CAN通信や独自ソフトウェア構成では、多様なECU同士の高効率な情報連携や拡張性、そして外部連携(OTAアップデートなど)が困難です。
共通のアーキテクチャであるAUTOSARは、多ECU間通信やソフトウェアモジュールの再利用性向上、さらなる拡張性確保の土壌となります。
2. サプライヤーとOEM間の共通言語
開発コストの上昇と「時間との戦い」は今も現場の悩みの種です。
多様化する顧客要求に的確・迅速に対応するには、開発部品・ソフト構成の共通言語が不可欠。
AUTOSAR準拠は、サプライヤーとバイヤー(OEM)双方の開発体制・保守メンテナンス体制の効率化につながります。
発注側(バイヤー)は、AUTOSAR「対応」を技術選定・サプライヤー評価の新しい指標としており、もはや「対応していない」ことは大きなディスアドバンテージです。
AUTOSARにおける車載ネットワークの基礎
1. AUTOSARのアーキテクチャ層構造
AUTOSARは「Classic Platform」と「Adaptive Platform」の2大潮流があります。
Classic Platformは従来型ECU(リアルタイム性重視)の標準化に特化し、Adaptive PlatformはAI活用や大容量データ処理を視野に入れています。
基本的な層構造は以下の通りです。
– アプリケーション層:ボディ制御、パワートレインなど機能本体
– ランタイム・環境層(RTE):各ソフト間のやり取りを調整
– ベーシックソフトウェア層(BSW):通信やデバイス管理、診断など共通機能
– マイクロコントローラ抽象化層:ハードウェア依存部分を吸収
現場として重視すべきは、同一の通信インターフェース・同一API化が実現される点。これにより、異なるECU間・異なるサプライヤーのコンポーネント同士でも高い互換性が確保されます。
2. 車載ネットワーク(ECU間通信)の標準化
車載ネットワークの主な通信規格は以下の通りです。
– CAN(Controller Area Network)
– LIN(Local Interconnect Network)
– FlexRay
– Ethernet(100 Mbps/1Gbps対応)
AUTOSARでは、各通信規格の上に「通信スタック」という共通ミドルウェアを設け、どのネットワークを採用する場合でも、アプリ層・上位通信制御層の設計や確認作業が容易となります。
今後は車載イーサネットの普及により、車両全体の高データレート・複数通信プロトコルの混在管理がますます重要となるでしょう。
現場では、既存のアナログな配線設計や独自通信手法を捨てるのではなく、状況に応じて「ラッピングして自動変換」など現実的な移行パスの模索がポイントです。
車載ネットワークのセキュリティ脅威とAUTOSARでの対応
1. 車載ネットワークの現状と課題
従来の自動車では、外部から車載ネットワークへの侵入経路が限られていました。
しかし、EV化・コネクテッド化、OTAアップデート増加、リモート診断の進展で「外部からのサイバー攻撃リスク」が一気に高まっています。
2. 主な脅威
– 外部ハッカーによる車載制御システムへの侵入
– 車両データ・運行履歴の漏洩
– 不正な制御コマンド注入(例:ブレーキ制御の乗っ取り)
– OTAアップデート経路の狙い撃ち
現実には、設計段階での「セキュリティ・バイ・デザイン」が不可欠です。
3. AUTOSARのセキュリティ対応機能
AUTOSARでは以下のようなセキュリティ機能を標準化しています。
– 暗号化通信(Secure Onboard Communication, SecOC)
– 認証・アクセスコントロール
– 侵入検知/異常検出(IDS, Intrusion Detection System)
– OTAアップデートのファームウェア妥当性検証
– セキュアブート、ECU固有ID管理
バイヤーはすでに「セキュリティ規格(ISO/SAE 21434等)」への準拠と、AUTOSARコンパチなセキュリティアーキテクチャをサプライヤー選定要件に組み入れています。
現場目線では、セキュリティ機能の導入コストやミドルウェアの実装負担、「セキュリティ検証工程の増加」といった新たな課題も無視できません。
また、部品調達面では暗号化チップや専用プロセッサ搭載ECUなどへの要求が強まっています。
アナログな業界風土とデジタル化推進のリアル
1. 未だに残る「現場個別対応」の文化
製造業の工場や設計現場では、長年の改善活動・製品ノウハウが「属人化」しやすい傾向が根強く残っています。
デジタル化=標準化の流れは、現場の勘所や柔軟対応力を弱める…といった抵抗感も実際に多く聞かれます。
ところが、バイヤーサイドの目線からは「グローバル規模での統合」「増大するメーカー間協業対応力」が強く求められています。
ローカルルール・カスタム仕様を最小化し、標準基盤に適合できるかが、これからの調達競争力の分水嶺です。
2. 現場発の付加価値を生み出すAUTOSAR活用
「ベースは共通化、差異化はアプリ部分で」が今後の勝ちパターンです。
例えば
– 単なる標準準拠ではなく、BSW層や通信ミドルウェアの「独自最適化」
– バイヤー要件を的確に咀嚼したセキュリティアドオン提案
– セキュリティ検証工程の自動化ツール導入による短納期化
こうした一歩踏み込んだ付加価値を提供できるサプライヤーが選ばれる時代です。
現場では、ソフト・ハード・ネットワーク・セキュリティの多部門連携(エンジニア、調達・品質管理、工場現場)の垣根を越えた共同体制が求められています。
これから目指すべき方向性と、現場へのアドバイス
1. バイヤー視点:何を重視して発注先を選ぶか
– AUTOSAR準拠は”入口条件”
– セキュリティ機能の強化・法規制対応力
– グローバル供給体制&標準部品化による安定調達(サプライチェーンのレジリエンス)
– モジュール交換性、アップグレード性の高さ
– 技術進化への柔軟な追従力と柔軟なサポート体制
2. サプライヤー視点:差別化と生き残り戦略
– 標準基盤対応で「バイヤーと同じ視点」を持つ
– 標準化×現場改善(コスト・納期・品質)の両立
– セキュリティ知見の現場実装(現場起点の脅威分析など)
– 工場自動化や品質マネジメントでもデジタル連携強化
これにより、「昭和の職人技術だけ」でも「海外標準化一辺倒」でもない、新たな“現場力の進化”が実現します。
まとめ – 新たな価値創出の時代へ
AUTOSAR対応は、単なる業界トレンドを越えた今や「競争の前提」です。
その基礎とセキュリティに本気で向き合うことは、バイヤー・サプライヤー双方にとって「新たな価値の源泉」です。
変化に臆することなく、
・現場の強み
・業界標準の導入力
・未来を見据えた多部門連携
を融合させることで、真の競争優位と業界発展を実現できるはずです。
製造業に関わるすべての方に、自らのフィールドから「AUTOSARの波」にどう乗りこなし、次代の価値を生み出すのか。
共に考え、実践していきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)