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インバータ・コンバータの基礎と制御法およびその実践

目次
はじめに:製造現場から語るインバータ・コンバータの重要性
製造業の現場では、日々さまざまな装置や機械が稼働しています。
その中で、安定した生産ラインや高品質な製品の実現に欠かせないものの一つが、「インバータ」と「コンバータ」です。
インバータやコンバータというと、電気や制御の専門家向けの装置という印象を持つかもしれません。
しかし、実は工場のあらゆるプロセスで幅広く使われており、その知識と応用力は、現代製造業を支える土台となっています。
景気の波やサプライチェーンの変動、そして人手不足など、現場は常に変化にさらされています。
そんななか、アナログな昭和型の現場から一歩抜け出し、時代に即した制御技術と現場ノウハウを融合させることが、今や各工場の指導者やバイヤーにとっても不可欠な視点になっています。
本記事では、インバータ・コンバータの基礎から制御方法、実際の現場で役立つ具体的な活用例まで、現場目線でわかりやすく解説します。
また、サプライヤーがバイヤーの考えを理解し、より良い提案につなげるためのポイントも盛り込みました。
インバータ・コンバータとは何か
インバータの基礎
インバータ(Inverter)は、「交流電源の周波数や電圧を自在に制御する装置」です。
一般的には、交流モーターの回転数やトルクを細かくコントロールするために使われます。
工場では、ベルトコンベヤやポンプ、ファンなど、回転体を持つ多くの機械でインバータ駆動が普及しています。
かつては効率や省エネ意識が高くなかったため、モーターは「一定回転」で使うのが常識でした。
しかし最近はインバータ活用によって、「必要なときに必要な回転数」だけを出せるようになり、消費電力の削減や装置寿命の延長が実現しています。
コンバータの基礎
コンバータ(Converter)は、「電圧や電流、電力の形態を他の形に変換する装置」を指します。
交流から直流(AC/DC)に、またはその逆(DC/AC)に変換するものや、直流同士で電圧レベルを変えるもの(DC/DC)もあります。
産業用ロボットや自動化設備、各種の電源装置、さらには環境対応機器(再生可能エネルギー設備)などでも、実はコンバータが重要な役目を担っています。
昭和型現場におけるインバータ・コンバータの変遷
一昔前(昭和~平成初期)までは、産業設備の多くは「電圧直結」「スイッチ切替の単純制御」が主流でした。
これによって、装置の立ち上げショックや焼損事故、余分な消費電力が多く発生していました。
そこにインバータ・コンバータが導入されたことで、大きな省エネと省コスト、安全性の向上が現場にもたらされたのです。
制御法の基本:知識だけでなく、実践に活かす現場力
インバータ制御の基本
インバータは主に、
– 周波数制御
– 電圧/周波数比(V/f)制御
– ベクトル制御
の3つに大別されます。
最も一般的な制御法は「V/f制御」です。
これは周波数を下げるときに電圧も一緒に下げ、トルクをある程度維持したまま回転数を調節できるため、ベルトコンベヤや送風機に広く利用されています。
より高精度な制御が必要な現場(クレーン、エレベータ、精密搬送装置など)では「ベクトル制御」も使われます。
これによりモーターの回転角や磁束を論理的に計算し、出力トルクや速度設定を細かく最適化できます。
コンバータ制御の基本
コンバータは、自動車メーカー、市場流通向け自動化倉庫、食品製造ライン、大型空調など、周囲環境や用途ごとに最適制御法が異なります。
– AC→DC変換:直流電源化による省エネ・安定供給
– DC→DC変圧:高効率な配電や専用装置への搭載
– DC→AC変換:太陽光インバータやEV、非常用バックアップ
特に再生可能エネルギーやEV普及の観点から見ても、コンバータの知識は新たな収益機会を生む鍵です。
現場勘がものをいう「現物合わせ」
現代のインバータ・コンバータ活用で忘れてはいけないのが、「現場の実態に合わせたパラメータ設定」です。
単にカタログ値で設定するだけでは、装置挙動や省エネ効果が見込めません。
経験豊富なエンジニアは、ライン試運転段階でわずかなモーター音・振動・温度変化まで五感で確認し、設定値を微調整します。
これぞ日本製造ならではの現場改善力です。
現場での失敗事例とその改善策
成功事例だけでなく、現場でよくあるインバータ・コンバータ導入のトラブルや、そこから得た教訓を共有します。
例1:インバータ導入による電波障害・ノイズ問題
設計段階では気づかず、稼働開始後に機械周辺の制御信号やセンサーが誤作動。
原因はインバータから発生する高周波ノイズでした。
今でも昭和型の既設配線を使い回す現場では「アース不良」「ノイズ対策無し」になりがちです。
【改善策】
– 専用シールドケーブルへの切り替え
– 適切なアース接続
– ノイズフィルタ追加設置
をライン設計段階から徹底することが重要です。
例2:省エネ失敗=回転数落としすぎによる製品不良
省エネを意識しすぎるあまり、インバータでコンベヤ速度を大幅に減速。
結果、現場では材料のつまり・搬送タイミングずれ・製品キズ多発のトラブルに発展。
【改善策】
– 単なるカタログ上の省エネ試算ではなく、現場検証を経て速度設定を決定
– 改善提案を行うバイヤーやメンテナンス担当者と「現場での意見交換会」開催
バイヤーの視点とサプライヤーの心構え
バイヤーが重視するポイント
調達購買の現場でインバータ・コンバータの新規導入や切替を検討する際、バイヤー(購入者)は次の観点を重視します。
– 投資回収(ROI)の明確な見える化
– メンテナンスや交換部品の入手性・コスト
– 納品実績やトラブル時のサポート体制
– SDGs/省エネ/CO2削減への貢献度(ESG経営)
よって、カタログスペックではなく、「現場の課題をどう解決できるか」という説明が、購入の決め手になります。
サプライヤーが心得るべき提案力
サプライヤーは「機能・性能自慢」だけでなく、導入後に生産現場で起きるリスクや課題まで見越した提案をすることが重要です。
例えば、納入現場ごとに異なる制御系シーケンスへの「事前検証」や、他メーカー機器との「相性確認」。
現場目線での「改善事例発表会」や、「導入後1か月・3か月・1年でのレビュー体制」を整えることも信頼獲得のポイントです。
昭和から令和へ:インバータ・コンバータ進化のトレンド
デジタル化との融合・スマートファクトリー化
今やインバータやコンバータも「IoT連携」「リモートモニタリング機能」が一般的です。
ライン上の全インバータを通信ネットワーク化し、異常検知や予知保全、生産データ分析に活用する流れが強まっています。
これにより「ライン停止時間の短縮」「故障コスト低減」「生産計画自動化」などのメリットが現場に波及しています。
カーボンニュートラルと調達方針の転換
グローバル視点では、ESG・脱炭素経営へのシフトが不可逆的に進んでいます。
工場単位で「どれだけCO2を削減できるか」が調達基準の一つに加わり、インバータ・コンバータ選定も「省エネ認証」や「環境配慮型仕様」が主流となっています。
まとめ:実践こそ製造業の底力
インバータ・コンバータは単なる電子部品ではありません。
「現場の声に耳を傾け、カタログ数値と現実のギャップを埋める工夫を積み重ねてきた現場こそが、これからの日本製造の柱」です。
サプライヤー、バイヤー、製造現場、それぞれの立場で真の価値を見いだし合い、「実践知」として共有していくことが何より重要です。
本記事が、製造業に携わる全ての方の気づきと、新たな一歩を後押しする一助となれば幸いです。
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