- お役立ち記事
- インバータ・コンバータ制御の基礎と高効率化技術および高調波対策
月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

インバータ・コンバータ制御の基礎と高効率化技術および高調波対策

目次
はじめに ~製造業におけるインバータ・コンバータ制御の重要性~
製造業の現場では、より高効率かつ高品質なものづくりが求められています。
その中で電動機や電気設備の制御・省エネ化を担う「インバータ」や「コンバータ」の存在感は日に日に増しています。
昭和時代から続くアナログ主体の現場であっても、現代のデジタル技術に適応するためには、これら電力変換・制御技術の理解が欠かせません。
ここではインバータ・コンバータの基礎を押さえつつ、生産現場で求められる「高効率化技術」や、今も多くの現場で課題となっている「高調波対策」について、現場目線から解説します。
調達担当やバイヤー、サプライヤーの皆さまにも役立つ内容を盛り込みますので、ぜひ参考にしてください。
インバータ・コンバータ制御の基礎知識
インバータとコンバータとは何か
インバータは、直流(DC)電力を交流(AC)電力に変換する装置です。
モーターの回転数やトルクを自在に制御し、省エネや高精度制御を実現します。
一方、コンバータはその逆で、交流(AC)から直流(DC)への変換を主に担います。
どちらも半導体素子(スイッチング素子)を用いた電力変換回路として、工場の様々な機器やFA(ファクトリーオートメーション)設備に組み込まれています。
インバータは主にモーター駆動に使われ、搬送ライン、ポンプ、空調など幅広い応用例があります。
コンバータはメッキ工程や溶接など直流を必要とする装置、またインバータの前段(DCリンク)として組み合わされるケースが一般的です。
インバータ・コンバータ制御の基本構造と動作原理
インバータの基本構造は、整流回路(AC→DC)、平滑回路(リップル除去)、インバータ回路(DC→AC)から成ります。
コンバータは主に整流と平滑の部分が重要であり、高速スイッチングデバイスの進化が性能を左右します。
動作原理として、インバータはパルス幅変調(PWM)やパルス周波数変調(PFM)などの制御方式を用いて、AC出力の電圧・周波数を自在にコントロールすることができます。
現場では機械ラインのスピード調整やソフトスタート(起動時突入電流抑制)などの用途で、人手調整から自動・プログラム制御へと進化しています。
インバータ・コンバータの最新高効率化技術
高効率化の必要性と業界トレンド
地球環境意識とDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、インバータやコンバータでの「省エネ」「ロス低減」「最適運転」は調達・エンジニア両視点で避けて通れないテーマになりました。
最近の取引先で求められる「グリーン購買」「CO2排出削減基準」も、まさに電力消費の見える化/減少努力が競争力の源泉となっています。
モーター高効率化へのアプローチ
1. 最新パワー半導体(SiC/GaN)の採用
従来のSi(シリコン)から、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(窒化ガリウム)などの新素材を利用したパワー半導体が主流になりつつあります。
これによりスイッチング損失が大幅に減少し、小型化・軽量化・高速度運転が実現しました。
2. インバータ連携のセンサフィードバック制御
ただモーター回転数を制御するだけでなく、負荷・温度・トルクなど多点をリアルタイム監視しつつ、最適な周波数や電圧をフィードバック制御する技術が進歩しています。
工場のエネルギーマネジメントシステム(EMS)とも連動し、ムダな電力を抑えられます。
3. ベクトル制御・ダイレクトトルク制御
従来型の「V/f制御」から「ベクトル制御」や「ダイレクトトルク制御」など、モーターの回転磁界を精密に制御する方式へのシフトが進んでいます。
これにより応答性・省エネ性能・低騒音運転などに大きなメリットが生まれます。
導入現場での注意点・現実的対策
高効率インバータ・コンバータ導入時は、装置側のインピーダンスや負荷バランス、既存配線との調和など、現場実装ならではの課題も存在します。
特にアナログ系の旧ラインでは、ノイズや漏れ電流、突入電流対策として「ノイズフィルタ」や「サージ吸収デバイス」の選定・設計が肝要です。
また最新技術と言えど、一律スペックだけでなく現場の環境・協働機器の相性・組み合わせ検証が失敗リスク低減に繋がります。
製造現場で根強い課題:高調波(ハーモニック)対策
高調波問題とは何か
インバータやコンバータは必然的に電力のオン・オフを繰り返すため、本線に「高調波ノイズ」を発生させます。
高調波が多発すると、設備誤動作や誤検知、配線・変圧器の異常加熱、電力会社からのペナルティ(力率低下時など)に繋がるため、品質管理・保守の大きなテーマです。
特に古い工場、アナログ制御機器が混在する現場では、高調波トラブルからのライン全停止(ダウン)も現実的リスクです。
現場で役立つ高調波対策の具体策
1. 交流リアクトル/直流リアクトル挿入
電源ラインにインダクタ(リアクトル)を挿入することで電流変化を緩め、高調波流入を抑えます。
特に複数台インバータ同時接続ラインでは必須アイテムです。
2. 高調波フィルタ(パッシブ型・アクティブ型)
パッシブ型(コイル&コンデンサの共振回路)による特定高調波除去、あるいはアクティブ型(電力変換素子によるキャンセル信号付与)による高度なノイズ除去も進化しています。
目的や設置スペース、費用とのバランスで最適方式を選ぶことが大切です。
3. インバータ選定時の高調波抑制性能重視
最近のインバータは、高調波抑制機能が内蔵されるモデルも増えています。
必要に応じて力率改善機能やソフトスタート・低ハーモニック設計を重視してバイヤーが選定することは、全体工場最適化にも通じます。
4. 高調波監視・データロギング
高調波は日による変動や機器老朽化の影響も受けやすいので、定期的な電力品質監視、データのトレンド化・可視化が欠かせません。
現場主導の「見える化」はサプライヤー側提案力の強化にもなります。
調達バイヤー・サプライヤーに求められる役割の進化
調達観点で重視すべきポイント
・カタログスペックだけでなく、「現場の使い勝手」や「実装試験データ」「保守のしやすさ」を比較検討する。
・インバータ・コンバータ導入で「工場全体の省エネ貢献度」「高調波増加リスク管理計画」などの観点で複数機種を見極める。
・省エネ補助金やエコ認証、ESG投資で評価されやすい製品を優先的にリストアップする。
サプライヤー視点でのバイヤー理解と提案力
サプライヤーがバイヤーの立場を理解すれば、以下のような現場密着型提案が可能となります。
・購入後の現場立上げサポート、パラメータ調整アドバイスの提供
・工場現地調査や高調波測定サービスによる「未然防止型」提案
・IoT/DX技術での省エネ実証データ、見える化ソリューションのセット提案
・突発トラブル発生時の緊急対応や部品供給体制の明示
・バイヤーのKPI(CO2削減、経費削減、生産安定、納期遵守)達成に寄与する説明
まとめ ~昭和アナログ現場も変革への一歩を~
インバータ・コンバータ制御は、既に「一歩進んだ現場改善」の主役です。
その基礎知識、高効率化技術、高調波対策はいまや「現場力」「調達力」「サプライヤー提案力」のどれにとっても武器となります。
昭和のアナログ現場でも、小さな一歩(たとえばノイズフィルタ追加や小型インバータ置換)から始めて、着実に競争力強化が可能です。
つねに現場の『困りごと』を見つけては、イノベーションの種を蒔き、他社との差別化を図る。
そんな実践志向の改善活動が「日本の製造業の底力」に繋がることを、現場経験者の一人として強く願っています。
以上、インバータ・コンバータ制御の基礎から最新技術、高調波対策並びに調達現場のポイントまで、現場目線で解説しました。
明日の効率化とトラブルレスな工場運営のため、ぜひ活用してください。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)