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投稿日:2025年5月18日

自動車用接着剤の基礎と信頼性向上および法規制動向

はじめに

自動車産業は今、かつてない変革期を迎えています。
EV・ハイブリッド車の台頭、軽量化や安全性への要求の高まりなど、時代の波は車体設計や部品材料の選定に大きな影響を与えています。

そうした中で、目立たないながらも自動車の性能・安全・耐久に不可欠な「接着剤」が、かつてないほど注目されています。
ボルトやリベットだけでは得られない利点が、接着剤の役割を飛躍的に拡大させています。

本記事では、現場の調達・生産・品質管理職の目線から「自動車用接着剤」の基礎知識、信頼性を高めるためのポイント、そして激しく変化する法規制動向について、実務的かつ最新の観点で詳しく解説します。
サプライヤー側からバイヤー視点を知りたい方にも役立つ内容となります。

自動車用接着剤の基礎知識

なぜ自動車に接着剤が使われるのか

自動車の製造現場では、車体・部品の量産化、工程の自動化、軽量化、異種材料の組み合わせなど、さまざまな技術的課題があります。
従来の溶接、リベット、ボルト締結では対応が難しい部分も増えてきました。

その課題を解決するために「接着剤」は不可欠です。
接着剤を使うことで、以下のような効果を得ることができます。

・軽量化できる(接合部品の削減、材料自体の軽量化)
・異種材料でも結合可能(アルミ・樹脂・CFRPなど)
・気密性、防水性、防音性の向上
・ストレス分散による耐久性の向上
・応力集中の緩和によるクラック抑制
・外観品質の向上(溶接痕が出ない)

特にEV車や新素材車体が求められる現代では、接着剤は「日本のものづくり現場」のイノベーションに不可欠な要素となります。

自動車向け接着剤の種類

自動車に使われる接着剤は、以下のような種類に大別されます。

・エポキシ系:機械強度が高く、耐熱・耐久性に優れる。車体構造用やサスペンション部に多用。
・アクリル系:速硬化性が強み。ガラスや樹脂部品の接合、構造補強にも活用。
・ウレタン系:柔軟性と耐衝撃性に優れる。外装パネル・窓ガラス接着などバランス型。
・シリコーン系:耐熱・耐水性が高く、電装部品の絶縁・防水に最適。
・ホットメルト系:加熱で柔らかくなり、冷却で固まる。内外装部品の非構造用、仮固定向け。

それぞれに長所・短所があり、設計条件(使用部位、応力、温度、環境、サイクル寿命など)に応じて使い分けます。
バイヤー職・サプライヤー職いずれも、用途ごとの「適合性見極め」が重要です。

接着剤選定の現場的ポイント

実際の現場では「どの接着剤を選ぶか」が成果を左右します。

・耐熱・耐寒・耐薬品性
・耐水、耐湿、耐候性
・被着材(板厚、表面処理、コーティング有無)
・機械特性(引張・せん断強度、伸び)
・耐久ライフサイクル
・固化速度
・初期接着強度(工数に直結)
・外観品質(にじみ、はみ出し、変色など)

これらを十分考慮し、「商品特性表」や「加速試験データ」、そして実際の現場モックアップでの試験も繰り返しながら決定していきます。

自動車用接着剤の信頼性向上の実務的アプローチ

現場で頻発する課題とその対策

自動車用接着剤は「使ってしまえば終わり」ではありません。
接着強度不良や経年劣化、工程内での塗布不良、見た目の問題など、さまざまな課題が現場ではつきものです。

例えば以下のようなトラブルが報告されています。

・接着部の剥離や割れ(衝突、振動によるストレス)
・経年による強度低下(紫外線、温湿度、薬品暴露など)
・塗布むらによる接着不良
・硬化不良による機能不足
・過剰塗布や塗布ずれによる外観・重量問題

これらを防ぐには、現場管理職として以下のようなアプローチを徹底する必要があります。

信頼性向上のための要点

・接着剤そのものの品質・ロット安定性管理(定期的な性能検証、受入検査)
・被着体表面の前処理最適化(脱脂・粗面化・プライマー処理徹底)
・塗布工程の自動化(ロボット化、省力化、ヒューマンエラー低減)
・工程内検査の充実(自動外観検査機、塗布厚測定、硬化度測定)
・定期的な耐久テスト(加速寿命・実車環境下複合試験)
・設計段階からの「冗長設計」(多層接着・シール設計など)

また、現場運用だけでなく、サプライヤーとの連携(QC工程表の共有や製品トラブル時のフィードバック)も極めて重要です。
契約書(品質保証協定)や製品保証期間なども、サプライヤー・バイヤー間できちんとすり合わせましょう。

アナログな現場で「昭和から抜け出す」ための工夫

多くの自動車部品製造現場では、いまだに「手作業」「職人技」「ベテラン頼り」のアナログ色が強く残っています。
ですが、生産性と品質の劇的向上のため、以下のような最近のトレンドに目を向けてみてください。

・AI画像解析による塗布不良検出
・自動塗布ロボットへのデジタル設計連携
・IoTセンサーによる硬化工程・温度管理
・トレーサビリティシステムによる工程記録
・接着剤メーカーとのオンライン技術交流

大手メーカーだけでなく、中小サプライヤーでも、こうした新技術の導入が実際に進みはじめています。
昭和的な「勘と経験」からの脱却が、競争力・信頼性アップへの第一歩です。

法規制動向とその対応

RoHS・REACHなどのグローバル規制が影響

自動車用接着剤は、その成分中に含まれる化学物質が各国の法令・環境規制の対象となります。

特に押さえておきたいのは、以下のような規制です。

・RoHS指令(EU):特定有害物質の含有制限。鉛、水銀、カドミウム等。
・REACH規則(EU):化学物質の登録・評価・認可。SVHC(高懸念物質)リストの随時更新。
・ELV指令(EU):廃車時の鉛・水銀・六価クロム・カドミウムの規制。
・米国TSCA、日本化審法、PRTR法などのローカル規制
・VOC規制(大気汚染防止法):揮発性有機化合物の排出規制。
・GHS表示:国際的な化学品の分類・表示基準。

これらの法規制は毎年更新、強化される傾向にあります。
グローバルに車を売るOEM・ティア1サプライヤーにとって「法規制対応済みの接着剤を使う」ことは最重要課題です。

規制対応の実務ポイント

法規制対応で最も重要なのは「適合性の証拠をそろえる」ことです。

・自動車OEMによる「含有化学物質調査シート(IMDS等)」の提出
・接着剤メーカー発行の「化学物質含有証明書(COC)」取得
・試験報告書や検査成績書の管理
・法規制最新情報を継続して取得し、設計へフィードバック

もし規制物質が含まれている場合は、「いつまでに、どの規制値以下まで低減できるか」「代替材への変更は可能か」「コストや導入リードタイムは」など多角的に協議します。
バイヤー、サプライヤー双方が「法規制は避けては通れない共通課題」と認識し、早期にリスクアセスメントすることをお勧めします。

現場目線での最新の業界動向

EVシフトと接着剤イノベーション

2020年代に入ってから「電動化」「軽量化」「静粛性」に対し、ますます高性能な接着剤が求められています。

・バッテリーケースの結合部での高耐熱接着
・EVモーター部の絶縁、耐薬品(クーラント)要求
・車体軽量化に伴うCFRPやアルミ材接着用の高強度接着剤
・高耐久・高耐候のウレタン・シリコーン系新製品
・接着強度の「自己診断」機能付き特殊接着剤

大手接着剤メーカー・樹脂加工メーカーは「環境性能×高機能」を謳った新商品開発を競っています。
調達・品質・技術部門としては、各社最新技術を随時リサーチし「自社製品へのどんな利点があるか」現場目線で比較する視点が重要です。

まとめ:これからのバイヤー・サプライヤーに求められるもの

基礎技術をしっかり押さえつつ、「品質・信頼性・法規制適合・新技術」のトータルバランスが今の自動車製造では不可欠です。

バイヤー職の方は、現場実務・設計・法規制・企業責任…さまざまな観点から接着剤選定・管理を。
サプライヤー職の方は、単なる「材料売り」ではない技術提案型バイヤーへの進化や、積極的な情報提供・共同開発を意識してください。

現場力×先端知識で、日本のものづくり、ひいては世界の自動車産業の発展に貢献しましょう。

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