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*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月9日

状態監視技術の基礎と異常検出・信頼性向上への応用

はじめに:製造現場における状態監視技術の重要性

日本の製造業は、長年にわたり「高品質・高効率」を追求してきました。
しかし、近年はグローバル競争や少子高齢化、技術革新の加速といった環境変化に直面し、新たな付加価値創出が求められています。
特に、従来の昭和型アナログ運用の枠を抜け出し、「見える化」「自動化」「先手保全」といったデジタル活用が、競争力強化のカギとなっています。
その中核をなすのが「状態監視技術」です。

状態監視技術は、“勘どころ”や“職人の経験値”に頼らず、設備・装置の情報を収集し、その運転状態や劣化進行を数値で捉えます。
これにより、異常兆候を早期に捉え、未然対策やダウンタイムの最小化を図ることができるのです。
さらにAIやIoTとの連携により、保全業務の高度化・人的リソースの最適化にも寄与しています。

本記事では、状態監視技術の基礎から、実際の異常検出・信頼性向上の具体的事例、そして今後の発展可能性や課題まで、現場のリアルな知見を交えながら解説していきます。

状態監視技術の基礎知識

状態監視とは何か?

状態監視(Condition Monitoring)とは、設備やシステムの運転状態を継続的・定量的に観測し、劣化や異常の兆候を早期に発見するための技術です。
従来は、人が現場を巡回し「音」や「振動」「温度」などを五感で確認し、異常兆候を察知するアナログ手法が主流でした。
しかし近年はセンサーやデータロガー、PLCを用いた自動データ取得が普及し、ICT/IoT技術の進歩で「点」から「線」「面」への情報化が進んでいます。

監視対象となる主なパラメータ

状態監視の主なパラメータは、以下の通りです。

– 振動:モーター・ポンプ・ファンなど回転機器の異常兆候を検知
– 温度:軸受、ギア、モーター巻線、制御盤などの過熱傾向を把握
– 電流・電圧:負荷変動や電源異常の監視
– 音響:異音発生や劣化進行の判断
– 油の性状:潤滑油や作動油の劣化検知(粒子、粘度、水分、成分分析など)
– 圧力・流量:プロセス異常や漏れ検出

これらの観測データをもとに、傾向監視・しきい値監視・AI解析(異常検知)など多彩な手法が選択されます。

異常検出技術の実際

異常検出の従来手法とその限界

古典的な異常検出は、「基準値(しきい値)」を設定し、それを超えた場合にアラートを出す方式が一般的でした。
例えば「振動加速度1.0Gを超えたら異常」「油温80℃以上で異常警報」など、点ごとに定めるやり方です。

しかし、製造現場の設備は多品種少量対応や長期稼働の影響で、個体差・経年変化がみられます。
一律の基準値では“生きた現場”の兆候を読み取れず、過剰なアラームや見逃しが頻発します。

また、人手不足や熟練技能者の高齢化が進み、“気付き”やノウハウの継承が困難になってきたのも、現場共通の課題です。

トレンド管理による異常兆候の早期発見

そこで着目されているのが「トレンド管理」です。
定点観測データを蓄積し、“標準値からどのようにズレてきたか”を、傾きや変化率で判定します。
例えば、振動データの微増や温度上昇速度の変化などから、異常の前兆を把握します。

このトレンド監視では、時系列データの積み重ねが重要です。
IoTやエッジコンピューティングで秒単位・分単位の膨大なデータも記録できるようになった今、AIや機械学習による異常予測の適用もしやすくなっています。

AI・機械学習を活用した異常検出の進化

最近では、AI(人工知能)や機械学習を活用した“自律型異常検知”が注目されています。
正常運転時の膨大なデータを教材(教師データ)として学習させ、“普段と異なるパターン”や“複数パラメータの組合せ異常”を自動で抽出します。

特に、回転機器の振動解析や画像診断、音声診断分野でAIの効果が顕著に現れています。
人の目や経験では見逃しがちな微細な変化も、AIは粘り強く検出し、最適なタイミングで保全作業を提案できるのです。

信頼性向上への実践的アプローチ

状態監視データを活かした予防保全の実現

状態監視も“決められたルーチン”だけではなく、真の価値は「設備の個体差」や「現場固有の運用履歴」に応じた柔軟な保全計画にあります。

従来は「定期交換」や「時間基準」でしか判断できなかった部品や消耗品の交換も、状態監視データで“どの設備がどれだけ劣化しているか”を見える化できます。
これにより「まだ使える部品の無駄な交換」を防ぎ、「使いすぎによる突発停止」も減らせるのです。
いわゆる「CBM(Condition Based Maintenance)」の思想です。

また、遠隔監視やリモート点検による保全工数削減、技能伝承が困難な現場での保全判断基準の平準化、サプライヤーとの共同データ利活用(アフターサービス向上など)も、すでに大手メーカーでは実用段階に入りつつあります。

品質管理/生産性向上との相乗効果

状態監視技術を駆使することで、「品質管理(QC)」や「生産管理SCM」とも強い連動が生まれます。

たとえば、ロットごとの部品仕入れロットや生産条件と合わせて監視データを蓄積すれば、設備由来の品質ばらつきや、工程異常による不良発生の“根本原因”特定精度がアップします。
また、状態監視データから生産計画を柔軟に調整したり、異常発生時の迅速な再現試験や履歴追跡も容易になります。

これは「工場全体の見える化」に直結し、IoTやスマートファクトリー構築の下地として大きな武器となります。

アナログ現場でも定着する最新トレンド

昭和型アナログ体質に根付いた文化と課題

多くの製造業現場では、“紙ベースの点検記録”や“担当者ごとの経験値”に重きを置くアナログ文化が今なお根強く残っています。
「手書き日報の山」「ベテラン担当者のカンピュータ」「伝承されにくい暗黙知」などが日常茶飯事です。

一方で、“デジタル管理=事務仕事・効率優先”という先入観から、“現場で使いこなせるか不安”という声もあります。

アナログ現場で成功する導入の工夫

アナログ現場の導入事例では、単なるシステム導入やデータ蓄積にとどまらず、“現場目線”を大切にして成功しています。

– 使いやすいUI・現場端末(タブレット/スマホ)(余計な項目は省いて本当に必要な情報だけを表示)
– 現場リーダーや技能者と一緒に監視基準(傾向/しきい値)を設定し直す
– 取得データから「何が分かり、どう役立つのか」を現場メンバーと共有する
– アラームが出た際の初動・判断フローを明確化

こうした「現場巻き込み型」のアプローチが、無理なくデジタル化を浸透させています。

今後の展開と製造現場での新しい役割

サプライヤーとバイヤーの連携強化

状態監視データは、バイヤー(調達担当者)とサプライヤー(メーカー・部品供給者)との間で、新たな価値を生み出します。
サプライヤーは「製品納入後の実際の利用データ」を元に、部品改良や故障予知サービスで差別化を図れます。
バイヤー側も「設備の実パフォーマンス」を客観視し、最適なメンテ契約・更新時期の判断が容易になります。

このような「協働型イノベーション」が、より競争力ある調達・製造体制につながっていくでしょう。

将来に求められる人材像

状態監視技術をフル活用する製造現場では、「現場の技能」と「データ利活用スキル」を兼ね備えた“ハイブリッド人材”がますます求められます。
数値を読み解くだけでなく、現象の裏側を現場感覚で理解し、ベストなアクションを判断できる力が重要です。

このスキルはバイヤー志望者にとっても有効で、サプライヤー切り替えや投資判断の際、単なる価格・納期だけでなく「信頼性」や「維持コスト」「サポート体制」を事実ベースで比較し、現場の成長に貢献できるからです。

まとめ:現場から未来へつなぐ状態監視技術の価値

状態監視技術はもはや大企業のものだけでなく、あらゆる現場で“競争力そのもの”となりつつあります。
アナログ型からの脱皮にはハードルもありますが、現場と一体となって「何のために使うのか」という本質を見失わないことが肝心です。

経験とデータの融合こそが、強い現場力を生みます。
一歩ずつでも実践し、現場の知恵・失敗・気付きを織り込みながら、製造業の未来を共に切り拓いていきましょう。

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