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拡散接合の基礎と接合部の評価改善法および適用事例

目次
拡散接合とは何か?現場目線で基礎から理解する
拡散接合は、材料同士を高温下で押し付け、原子レベルで金属の原子が互いに拡散し合い、あたかも一体の材料であったかのように強固に接合する技術です。
この工法の特徴は、接合面において溶融が起きないことです。
これは、溶接やろう付けなどのほかの接合方法と明確に異なる点であり、ひずみや熱影響が少なく、微細な部品同士や異種金属同士でも高品質な接合が可能となります。
現場の感覚としても、繊細な精密部品や、従来の溶接では応力集中やクラックが生じてしまう材料にも安心して使えることから、1980年代から徐々に導入が進み、今では多様な生産現場でなくてはならない存在となりました。
拡散接合の仕組み
拡散接合は一般に、接合したい部材同士をきれいに仕上げ(機械仕上げなどで平滑に)、高温(材料によるが500度から1200度程度が多い)、そして適切な圧力(数MPaから数十MPa)を加えて、一定時間(数分から数時間)保持することで接合を行います。
この間に材料の原子が接合面をまたいで拡散し、境界線が消えていきます。
通常は真空中、あるいは不活性ガス雰囲気で行うため、酸化や不純物による障害が起きにくいのも拡散接合の特長です。
昭和から続く製造業現場と拡散接合技術の普及障壁
日本の製造業では、今でも「昔ながらのやり方」に強い信頼が根付いています。
そのため、設備投資が必要だったり、目に見える火花や溶融現象がない新技術には抵抗を感じやすい傾向があります。
特に、溶接・ろう付けの経験豊富な職人が多い現場では、「本当に強度が出るのか」「コストアップになるのではないか」と慎重論が出てきます。
加えて、加工面の前処理(平滑加工、洗浄)が工程に追加されることを面倒だと感じる現場担当者も少なくありません。
しかし近年、精密機器・医療機器・半導体製造装置など、より高精度・高品質を求められる工場の現場から、「伝統的なやり方」だけでは乗り越えられない課題が明確になりつつあります。
これを打開する答えのひとつが拡散接合なのです。
接合部評価の重要性と実際の評価方法
拡散接合は外見上きれいに仕上がるため、一見すると完璧にくっ付いているように見えます。
しかし、実際には接合面に微細な空隙が残っていたり、酸化膜や不純物の混入で強度不足が発生するリスクもあるため、製造現場では厳密な評価が必要不可欠です。
主な評価指標
代表的な評価指標には以下のようなものがあります。
– 接合強度(せん断強度・引張強度など)
– 接合面の金属組織観察(電子顕微鏡・金属顕微鏡による断面分析)
– 非破壊検査(X線透過検査、超音波検査など)
– 気密性試験(真空リーク試験など)
現場では、材料特性や用途(圧力容器・真空部品・熱交換器など)に応じて、適切な評価方法を使い分けるのが常識です。
上手くいかない例と改善アプローチ
昭和型の現場でよくあるのは、「見た目はきれいなのに、強度不足で製品の歩留まりが上がらない」というトラブルです。
その原因は前処理不足(表面に加工油や酸化膜が残る)、加圧や加熱条件の不適切、そして中間層(金属箔など拡散促進材)の選択ミスなどが挙げられます。
改善策としては、以下のような現場管理が有効です。
– 入念な表面処理(研磨+脱脂洗浄+直前のアニール)
– 実験計画法(DOE)による接合条件の最適化
– メーカーが推奨する中間層金属の積極活用(金、ニッケル、銅など)
– できればワンピースの治具設計で熱ムラや変形を抑える
こうした改善努力の積み重ねが、量産現場での品質安定につながります。
拡散接合の最新トレンドと適用分野の広がり
鉄・ステンレスなどの定番金属はもちろん、アルミニウムやチタンのような難接合材料にも拡散接合が使われ始めています。
また炭素繊維複合材(CFRP)や SiC をはじめとするセラミックスなど、「昭和の常識」では難しい異種材料の組み合わせも増えています。
このような広がりの背景には、製品の小型軽量化(自動車・航空宇宙)、高耐久化(医療・分析機器)、高気密化(半導体装置・エネルギー分野)などの市場ニーズがあります。
現場では、これまでは手間やコストを理由に避けてきた接合工程も、「顧客要求に応える=競争力アップ」のため積極的に再評価する動きが急速に出てきています。
バイヤー・調達担当者の視点からの拡散接合
バイヤーや調達・購買部門の目線では、拡散接合は「コスト増」と映ることも多いですが、現実には以下のような長所があります。
– 組立点数やねじ止め数が減らせる(トータルコスト低減)
– 再加工や品質トラブルによる納期遅延が減る
– 接合のばらつきが小さいため、不良件数・保証コストが低減する
導入にあたっては現場の技術担当・設計部門と密接に連携し、工程の合理化に向けた提案・投資判断が重要です。
実際の適用事例
拡散接合の日本国内活用事例をいくつか紹介します。
医療機器・手術器具業界
超音波メス、人工関節など、従来はろう付け部で衛生上の問題や材料間の変質が課題だった器具も、拡散接合で異種金属やセラミックとステンレスが高品質に一体化されています。
滅菌耐性の向上や、微細構造の実現によって海外メーカーとの競争力が強まっています。
自動車・航空宇宙産業
軽量化が進む車体部材やエンジン部品(アルミ二ウム~耐熱鋼異種接合)、熱交換器や高気密部での採用が増加。
構造の合理化とアセンブリ工数削減を同時に達成し、部品コストダウンに寄与しています。
半導体・電子機器製造装置
真空部品、ヒートシンク、流路部品での断熱・高気密・精密形状接合が不可欠。
従来のTIG溶接や銀ろう付けでは困難だった、材料選択自由度の高さと超高精度な寸法管理が実現しています。
環境・エネルギー関連装置
水素ステーション用バルブ、SOFCなど次世代エネルギー機器では、異種金属やセラミックの複雑な一体化が課題。
ここで拡散接合が大きな役目を果たし、現場では開発~量産移行期に設計変更に柔軟に対応できる点が評価されています。
今後の展望と製造現場へのメッセージ
日本の多くの中小規模メーカーでは、「アナログな職人技」と「新しい自動化・接合技術」の融合が待ったなしの課題です。
拡散接合は「難しそう」「うちには関係ない」と思われがちですが、現実には実験ベースから量産まで多くの費用対効果が見込める分野です。
また、拡散接合に適した部品設計や治具開発ノウハウを内製で蓄積することは、長期的な競争力にも直結します。
今後の製造現場や購買戦略では「なぜ従来工法ではだめなのか」「現場が困っている品質課題は何か」を一段掘り下げて考え、拡散接合を新たな選択肢として議論に上げていくことをおすすめします。
そして、設計部門・現場・購買・バイヤーが一体となって情報共有し、日本の製造業の底力を発揮できる現場づくりにつなげていきましょう。
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