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EMCの基礎とインバータ/パワーコンディショナにおける実践的ノイズ対策技術とそのコツ

目次
EMC(電磁両立性)の基礎
EMCとは、Electromagnetic Compatibilityの略で、電磁両立性を意味します。
簡単に言えば、電子機器やシステムがその周囲の電子環境で正常に動作するための能力です。
この能力が欠けていると、他の機器にノイズや誤作動を引き起こすだけでなく、自身も他のノイズの影響を受ける可能性があります。
現代の産業界では、デジタル化が進むと同時に、様々な形でのノイズが発生するようになっています。
そこで、EMCは、製品設計において避けることのできない重要な要素となっています。
EMC対策には複数の側面があり、大きく分けて「エミッション(放射)」と「イミュニティ(耐性)」の2つがあります。
エミッションは、装置から発生する不要な電磁波を抑えることです。
一方で、イミュニティは、外部からの電磁波に対して装置を誤作動させないことです。
インバータ/パワーコンディショナにおけるノイズの発生
インバータやパワーコンディショナは、エネルギー変換装置として、製造業や家庭用設備に広く使用されています。
これらのデバイスはスイッチング素子を用いて高周波の電流や電圧を制御しているため、ノイズの発生源となりやすい特性があります。
具体的なノイズの発生原因としては、次のようなものがあります。
スイッチング動作による高周波ノイズ
インバータやパワーコンディショナのスイッチング素子(IGBTやMOSFETなど)は、高周波でオン・オフを繰り返しています。
そのため、このスイッチングが高周波ノイズを生む大きな要因となります。
寄生成分による影響
寄生成分とは、実際の回路要素に理想状態ではない、実際に発生する成分(寄生インダクタンスや寄生キャパシタンスなど)です。
これらは、高周波でのインピーダンス変動などで影響を及ぼし、ノイズの原因となります。
電源ラインからの伝導ノイズ
インバータやパワーコンディショナが電源ライン上で動作する際に、ラインへのノイズを発生させ、他の装置に悪影響を及ぼす可能性があります。
これを防ぐために、専用のノイズフィルタが活用されますが、設計時にこれらを意識することが大切です。
インバータ/パワーコンディショナにおける実践的ノイズ対策技術とそのコツ
ノイズ対策は高度な技術が求められますが、基本的な原理を理解しておくことで、効率的な設計を行うことが可能です。
以下に、実践的なノイズ対策技術とそのコツについて説明いたします。
フィルタリング技術の活用
フィルタリングは、ノイズを除去する基本的な技術です。
インバータやパワーコンディショナでは、電源ラインに対してコイルとコンデンサを組み合わせたフィルタを設計することが有効です。
この際、フィルタの設計ポイントとしては、適切なカットオフ周波数を持つフィルタリングを行い、不要な高周波をシャットアウトすることが重要です。
また、回路基板上の配置や配線長もインダクタンスに影響を与えるため、最適化が求められます。
グラウンド設計
良好なグラウンド設計はノイズ対策において不可欠です。
誤ったグラウンド設計、例えば、電流が交差するループが存在する場合はノイズを助長することになります。
グラウンドプレーンを効果的に用いることで、ノイズや信号歪みを抑制します。
また、装置全体で統一された基準グラウンドを確保することでノイズ対策につながります。
シールドと封じ込め
電磁シールドは周囲のノイズを防ぐための物理的なバリアを提供します。
インバータやパワーコンディショナの筐体内部で重要な部分についてはメタルシールドを活用し、ノイズ伝播を防ぐことが効果的です。
また、デバイスの組み合わせにおいては、ノイズ源と影響を受けやすい部分を物理的に距離を置く設計にすることも大切です。
適切な試験と対策改善
設計段階である程度のノイズ対策が行われていても、実際の環境における性能を確認することが必須です。
試作段階でのEMI試験は計画的に行い、実際のノイズ特性を把握した上で対策の改善を図ることが重要です。
設備内での位置関係を意識した再設計や、シールドやフィルタの追加などを行い、最終的な製品レベルでのノイズ耐性を確保します。
昭和からの伝統的視点でのノイズ対策
製造業界では、時代の流れと共にデジタル化や自動化が進むと同時に、昭和から受け継がれているテクニックや考え方が今でも尊重されています。
ノイズ対策もその例外ではありません。
ノイズの問題が顕著になる以前、技術者は装置の安定稼働を確保するために勘と経験をフル活用していました。
部品配置の妙を見極め、筐体設計や配線のルート取りなどにおいて、人間的感覚を大切にすることが、今でもノイズ対策に求められています。
また、職人的手法として、実際の生産現場で熟練者が手動で行う調整や、コミュニケーションを通じてノイズリスクを感知し、その場での微調整なども未だ多く見られます。
まとめ
EMCの基礎知識を活用し、インバータやパワーコンディショナにおけるノイズ問題に対処することは、製品の信頼性を高めるために不可欠です。
実践的なノイズ対策技術と、昭和からの伝統的な手法を融合することで、より効率的かつ効果的な設計が可能となります。
製造業では、一度成功すれば、そのノウハウが組織全体に展開され、各プロジェクトのベースラインとして活用されていくことが大切です。
若手技術者や次世代バイヤーがこれらを受け継ぎ、さらに工夫や改善を加えることで、今後の製造業界全体の進化につながることを願います。
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