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高周波回路の基礎と設計への活かし方とそのポイント

目次
高周波回路の基礎とは〜製造現場から見た実践的な理解〜
高周波回路とは、一般に数MHzからGHz帯までの信号を扱う回路を指します。
この分野は無線通信や産業用機器、制御システム、自動車の電子化やIoTデバイスなど、近年の製造業において不可欠な役割を担っています。
しかし、高周波回路は直流(DC)や低周波回路とは全く異なる物理的な現象が支配するため、設計や現場運用では独自のノウハウが求められます。
現場に長く携わっている方でも、「なぜこの部品レイアウトなのか」「なぜ配線長や配置にうるさいのか」といった疑問を持つことも多いでしょう。
昭和のアナログ時代から受け継がれる“現場勘”や“職人技”も、データと理論で裏付けしながら次世代へとつなぐことが大切です。
本記事では、バイヤーや設計、品質管理、生産管理職の方にも理解しやすいよう、高周波回路の基本原理から始め、設計や量産の各段階で押さえておきたいポイント、品質トラブルを未然に防ぐ実践的なヒントを解説します。
高周波回路の特徴と他回路との本質的な違い
インダクタンス、キャパシタンス、伝送線路効果とは
高周波信号では、回路を流れる電流や電圧変化の速さによって、インダクタンス(L)やキャパシタンス(C)、さらには基板や配線そのものが“伝送線路”として振る舞います。
たとえばDCや低周波領域では、単なる“線”で済んでいたものが、高周波においては“回路の一部”として設計しなければ、意図しないノイズや信号歪みの原因となります。
現場では「この距離ならパターンはこの幅だ」「アースは太く引け」といった勘所が口伝で伝わっていますが、その背景には“インピーダンス整合”や“リターンパスの管理”といった高周波固有の現象が隠れています。
寄生容量・寄生インダクタンスの脅威
電子部品やプリント基板(PCB)は理想状態で作られているわけではありません。
部品端子やランドパターン、基板の層構成など、すべてが“寄生”要素を含み、それが共振点やノイズ増幅の温床になります。
設計・調達・生産現場が一体となり、“寄生要素”への深い理解と現場的な対策が不可欠です。
高周波回路設計の基本ステップと現場での要点
設計初期にこそインピーダンス整合を徹底する
高周波回路の肝は「インピーダンス整合」です。
これは、信号源や負荷、基板パターン、コネクタなど、あらゆる部分のインピーダンス(ACでの複雑な抵抗成分)を合わせることで、反射や損失を最小限にするという考え方です。
例えば50Ω伝送線路なら、回路全体のどこも50Ωに近付ける設計が基本です。
実際に製造現場では、パターン幅(ワイヤの太さやパターンの幅)、基板の材質や厚み、アースパターンの配置などを細かく調整する必要があります。
調達バイヤーの方も、基板メーカー選定の際には“高周波対応”の実績や、インピーダンスコントロール基板対応力、測定装置の有無を必ず確認しましょう。
電源やグランド(GND)設計の重要性
高周波回路は、正しい信号経路設計と同じくらい「GND設計」が重要です。
製造現場の感覚で「GNDはなるべく太く、広く」などの指示が飛びますが、GNDの配置次第では“信号リターン電流”が正しく流れず、EMI(電磁干渉)やノイズの温床となります。
多層基板を使う場合は、信号線の真下に連続したGNDプレーンを用意すること、パワーGNDと信号GNDの分離・繋ぎ方(一点アースやスターポイントアース)など現場で培ったノウハウが大いに役立ちます。
パターン設計と部品配置の現場的チェックポイント
・パターンはできるだけ短く、開放部分は極力避ける
・パターンの曲げはできるだけ避け、90度よりも45度を推奨
・高周波部品は互いに充分な間隔を取り、不要な結合を避ける
・バイパスコンデンサの配置は、ICの電源端にできるだけ近く
このように、一見アナログな現場作業にもすべて理論的な裏付けがあります。
バイヤーや設計担当の方も、ベテラン作業者の“言語化しづらかった勘”を理論で補強しながら現代化につなげましょう。
昭和から抜け出せない現場の“あるある課題”とその打破方法
人に頼る“職人知識“から、再現性ある設計・品質へ
日本の製造現場では、「あの人が設計したから安心」「この職人のハンダつけなら大丈夫」といった属人化が根強く残っています。
ところが、海外生産や外注先活用が進む現代では、図面や仕様書、設計意図まで標準化しないと伝わりません。
高周波回路は特に微妙なレイアウトや部品の向きなど、数値化・文章化しにくいノウハウが多く、標準化の壁が高い分野です。
現場知識の形式知化には、次のような取り組みが有効です。
・設計ルール(パターン幅、部品間隔、GNDプレーンの基準値など)を明文化
・現物サンプル・失敗事例・写真等を用いて教育ツール化
・設計〜調達〜生産管理〜品質保証が一体のQCD会議体を設け、現場フィードバックを迅速に仕様へ反映
“用途不明部品”やローカル治具の見直し
高周波回路は「なぜこの部品がここに必要なのか」がブラックボックス化しやすいです。
とくにノイズ対策で“念のため入れている”ようなコンデンサ、昔からの治具流用は、設計変更や海外工場展開時の大きな障壁になります。
本質的な目的を明確化し、冗長な部品や治具を減らしていくことが、工数削減や歩留り向上にも直結します。
サプライヤー・バイヤー目線で押さえるべき高周波回路の調達・品質管理ポイント
基板および部材選定時の確認事項
・インピーダンスコントロール基板の対応可否(仕様公差やロット変動も含め)
・高周波対応部品(セラミックコンデンサやコイルなど)は正規販路調達か
・サンプル納入時から量産立ち上げ時のギャップ抽出(試作/量産で同一ロット部材利用推奨)
・JISや国際規格対応の有無、RoHSなど環境対応基準
バイヤーの方はこうした基準への対応だけでなく、ロット管理や品質トラブル時の再現性などにも強く注意しましょう。
品質トラブル発生時の現場的対応フロー
1. 不具合品の詳細な現品(パターンレベル、はんだ付け状態、部品配置)確認
2. 高周波の測定器(ネットワークアナライザやスペクトラムアナライザ)等で調査
3. 異常ポイントの“再現”可否と、その再現条件の明文化
4. 設計〜現場〜調達まで遡って現物事例を元に再発抑止策立案
製造業では「現物現場現実(3現主義)」に則って、数字・測定・サンプル・記録を持ち寄り、再発防止の輪を社内外に広げることが重要です。
高周波回路の発展が切り拓く製造業の未来
AIやIoT、自動運転など新潮流下において、高周波回路技術はより一層重要度を増しています。
通信速度の更なる高速化、回路部品の超小型化・高密度化により、「これまでの勘や経験」だけでは追いつけない局面が日常茶飯事となるでしょう。
だからこそ、“アナログな現場勘”と“最先端技術の知見”を両立させ、現場常識を疑いながら新しい設計手法や標準化ルールにも積極的に取り組むことが、製造業の競争力強化に不可欠です。
製造業の現場、バイヤーやサプライヤー、品質保証のプロが一体となり、“理論”と“現場知”を融合させてこそ、高周波回路の本当の価値が現れると信じています。
まとめ〜実践現場で生きる、高周波回路設計シンキング〜
高周波回路は、“図面通りに作った”だけでは機能しません。
そこには電磁気学や信号理論、材料知識、現場作業の職人技と、長年の失敗から生まれたノウハウが渾然一体となっています。
現場感覚を持ちながら理論も大事にし、昭和の職人芸と令和のデジタル設計を組み合わせることで、高周波回路の設計力、そして製造業全体の競争力向上を実現していきましょう。
この記事が、製造業に携わる皆様、バイヤーを志す方、サプライヤーに身を置く方の一助となることを願っています。
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