- お役立ち記事
- LIDARレーザレーダの基礎と周辺環境認識技術への応用
月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

LIDARレーザレーダの基礎と周辺環境認識技術への応用

目次
はじめに:LIDARが製造業にもたらすインパクト
近年、自動運転やスマートファクトリーの文脈でLIDAR(Light Detection and Ranging)が脚光を浴びています。
レーザ光で対象物までの距離を計測し、3D点群データを取得できることから、周辺環境認識技術の中核を担う存在になりつつあります。
本記事では、現場目線でLIDARの基礎を整理しつつ、製造業の周辺環境認識技術へどのように応用できるのかを解説します。
LIDARの基礎
LIDARの原理
LIDARはパルス状のレーザ光を照射し、その反射光が受光素子に戻ってくるまでの往復時間(ToF: Time of Flight)を測定します。
光速は約30万km/sのため、ナノ秒単位の高精度タイムスタンプが必要です。
距離計算式は「距離 = (往復時間 × 光速) ÷ 2」で、これを数十万〜数百万点/秒のスキャンレートで連続実行し、点群(Point Cloud)を生成します。
構成要素
1. レーザ発振器(通常は905nm帯または1550nm帯)
2. 受光素子(APDやSPADなど高感度フォトダイオード)
3. スキャナ機構(機械式ミラー、MEMSミラー、フェーズドアレイ等)
4. タイミング回路(TDC:Time to Digital Converter)
5. 信号処理&データインタフェース(Ethernet、CAN、EtherCATなど)
LIDARの方式
・機械式回転型:360°を低コストでカバー。可動部が多く振動・寿命課題がある。
・ソリッドステート(面スキャン):可動部が少なく耐久性に優れるがFOVが限定的。
・Flash型:カメラのように一括撮像。計算資源を多く消費するが小型化に有利。
他センサとの比較
カメラ:色情報に優れるが光条件に弱い。
ミリ波レーダ:雨霧に強いが解像度が粗い。
超音波:近接検知に特化。
LIDARは「分解能と耐環境性のバランスが取れ、3Dデータを即時取得できる」点で独自ポジションを築いています。
周辺環境認識技術への応用
自動車・モビリティ
自動運転レベル3以降ではOEDR(Object and Event Detection and Response)要件を満たすため、高密度点群が不可欠です。
LIDARは車載カメラやミリ波レーダと融合(センサフュージョン)し、空間認識の冗長性を確保します。
国際調達ではISO 26262 ASIL-B/Dへの適合可否、AEC-Q100認証が選定ポイントとなります。
AGV・AMR(無人搬送車)
倉庫や工場内では、2Dスキャナ型LIDARが避障と自己位置推定(SLAM)に広く使われています。
特に床面の反射率が一定しない環境では、マルチエコー対応LIDARが有効です。
電源ノイズやフォークリフトとの干渉を防ぐため、EMC規格(EN 12895等)の確認が必須です。
ドローン・屋外インフラ点検
UAV搭載LIDARは軽量・低消費電力が鍵です。
点群精度は飛行高度×0.5%が目安で、橋梁や送電線のクリアランス測定に利用されます。
JIS A 6538(地上レーザスキャナ測地)準拠のキャリブレーションを行うことで、測量成果としての信頼性が向上します。
スマートファクトリー
ロボットアームの衝突防止、安全柵レス化に向けてエリア監視LIDARが導入されています。
ISO 13849-1のPLd/SIL2を満たす安全LIDARは、従来の光電センサを置換し、レイアウト自由度を大幅に向上させます。
また、高精度点群を用いたツール自動交換位置補正は、ハンドティーチ工数を80%削減した実績があります。
実装時のポイント
キャリブレーションとアライメント
LIDARはミル精度の傾き誤差でも遠距離で数cmの測定ズレが発生します。
実装時には、レーザ筐体と車体・ロボットベース座標系を厳密に合わせる必要があります。
レーザターゲットを用いた六面計測とICP(Iterative Closest Point)法で自動補正を回すと、日々のメンテが容易になります。
ノイズ・マルチパス対策
光沢金属やガラスは反射・透過が複雑で、ゴースト点が発生します。
信号強度(Intensity)フィルタリングや隣接点のクラスター密度判定で除去可能です。
屋外では太陽光による外乱光ノイズも無視できません。
受光素子にバンドパスフィルタを装着し、サンプリングゲート幅を狭めることでS/N比を改善します。
リアルタイム処理とエッジAI
点群は1フレームで数MB規模になるため、エッジ演算が必須です。
FPGAやGPUを用いたボクセル化、Ground Segmentation、Octree圧縮などをパイプライン化すると遅延を抑制できます。
近年はROS 2とDDS通信でミドルウェアの標準化が進み、マルチベンダー環境でも統合が容易です。
調達・購買の観点
コスト構造の理解
レーザ発振器と受光素子が全体コストの40〜60%を占め、量産インセンティブが大きく働く部品です。
年間1万台以上を見込める場合は、OEM供給契約により単価を30%以上抑制できるケースがあります。
一方、ソフトウェアSDKやライセンス費が隠れコストになるため、TCO(Total Cost of Ownership)を必ず試算しましょう。
サプライヤ評価軸
1. 技術ロードマップ:905nm→1550nm移行や固体化計画
2. 品質管理:IATF 16949 またはISO 9001運用状況
3. サービス体制:フィールドエンジニア派遣のSLA有無
4. 知財リスク:特許クロスライセンス範囲、輸出管理(EAR)適合性
昭和アナログ現場とのギャップ克服
いまだに「目視+紙図面」で保全している現場では、点群データの活用イメージが湧きにくいのが現実です。
小さなPoCから始め、既存工程のタクトタイムや設備稼働率を数値で示すことで、現場の納得感を高めると導入がスムーズに進みます。
また、3Dビューアを操作できる技能者育成も重要で、eラーニングとハンズオンを組み合わせた社内講習を推奨します。
将来動向と技術革新
フェーズドアレイLIDARの登場
光の位相を電気的に制御し、完全固体化を実現するフェーズドアレイ型は、車載量産を前提にした新アーキテクチャです。
可動部ゼロによりMTTFが10万時間以上に達し、車両保証と整合しやすくなります。
量子LIDARとファントム検知
量子絡み合わせ光子を用いることで、ジャミング耐性を高めた量子LIDARが研究段階にあります。
将来的にミリ波レーダと同等の全天候性能を備える可能性があり、軍需だけでなく民生用途にも波及すると期待されています。
ソフトウェア定義センサ
FPGAベースでスキャンパターンを動的変更するアプローチが広がっています。
夜間は狭FOVで遠方検知、日中は広FOVで近接監視といった「時間帯プロファイル」を切り替えることで、1台のLIDARで複数用途を兼用できます。
これは部品点数削減と予備品在庫の圧縮につながり、調達と保全の双方にメリットがあります。
まとめ
LIDARは高密度3D点群をリアルタイムに取得できる唯一無二のセンサであり、周辺環境認識のキーデバイスとして地位を確立しています。
自動車やAGVだけでなく、スマートファクトリーやインフラ点検でも導入が進み、製造業の工場長・生産技術者・購買担当が知っておくべき技術になりました。
導入成功のカギは、キャリブレーション・ノイズ対策・エッジ処理といった実装ノウハウを押さえたうえで、コスト構造やサプライヤ評価を体系的に行うことです。
昭和的アナログ現場とのギャップを埋めるには、PoCで成果を可視化し、社内スキル教育をセットで進めることが効果的です。
LIDAR技術は日進月歩で進化しており、フェーズドアレイや量子LIDARなど次世代技術をキャッチアップしつつ、ソフトウェア定義化の潮流を取り込みましょう。
本記事が、製造業に携わる皆さまの戦略立案と現場課題解決の一助となれば幸いです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)