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機械要素の基礎と最適活用による機械設計へのポイントおよび不具合事例

目次
はじめに:なぜ今、「機械要素の基礎」が重要なのか
ものづくり大国と呼ばれる日本の製造現場は、世界的に見ても高い品質と生産性を実現してきました。
しかし、現場の高齢化やデジタル化の波、コスト削減プレッシャー、ESGやSDGsといった新たな枠組みの出現など、昭和の成功体験だけで乗り越えられないパラダイムシフトの中にいます。
この変革の時代に、改めて注目されているのが「機械要素の基礎力」です。
ギア、ベアリング、ねじ、カム、軸受、ばねなど、部品一つひとつの知識と、その最適な活用こそが、不良やコスト増、トラブルの根本原因を未然に防ぎます。
IoTやAI活用の自動化ラインですら、基礎的な機械要素の選定ミスや設計段階での見落としが“致命的な不具合”を招く例は後を絶ちません。
本記事では、現場視点で「機械要素」の基本に立ち返り、現代におけるベストプラクティスと共に、現実に起こった不具合事例から得られる学びを共有します。
これから設計・調達・生産管理・品質保証を担う方、サプライヤーの立場で安心安全な部品供給に努める方が、ぜひ日々の業務に役立ててください。
機械要素とは?基礎用語の整理
機械要素:全体の仕組みを支える“見えない主役”
機械要素とは、機械や装置を構成する基本的な部品や部材のことを指します。
誤解されがちですが、「単なる部品の寄せ集め」ではありません。
それぞれの機械要素が適切な機能・役割をもって正しく組み込まれることで、大きな装置やシステムが初めて理論通りに動作します。
一般的な分類は次の3つです。
1. 固定要素(ねじ、ピン、リベットなど)
2. 動力伝達要素(ギア、ベルト、チェーン、カップリングなど)
3. 支持・回転要素(ベアリング、軸受、スライダーなど)
4. その他(ばね、パッキン、シール、カムなど)
これらの“部品の基礎知識”こそ、設計者と調達者、そして現場オペレーターの共通認識とすることで、工場全体の生産効率と品質水準を飛躍的に高めることができます。
なぜ、設計ミス・不良トラブルが起こるのか
現代のCAD/CAMを駆使したデジタル設計プロセス。
一見、ヒューマンエラーが起きないように思われます。
しかし、不良やトラブルの多くは、基本の“機械要素の基礎知識”が欠如し、現場条件とのミスマッチ、流用設計による過信、データベースの使い回しなどアナログ時代の悪習が根強く残ったままなのです。
この点については、後ほど実際の事例を引き合いに詳しく解説します。
機械設計における機械要素の選定ポイント
1. 「標準品」と「カスタム品」選定の分岐点
現場では、「規格品(カタログ品)」で可能な限り対応するのが鉄則です。
標準品はコストも安く、短納期で手配しやすく、ISOやJIS・DINなど国際標準に準拠していることが多いため、信頼性・調達性ともに安定します。
一方で、“標準品至上主義”に走ることで、以下のような問題も噴出します。
・必要な強度より過剰なスペック品を選定しコストが膨らむ
・現場スペース・レイアウトとの干渉により、使わない機能・サイズを導入する
・本来必要なカスタマイズ(表面処理、寸法など)を加味せず、設計思想と用途条件で不一致が生じる
カタログ値だけで判断せず、実際の稼働負荷、使用環境を入念に現場でヒアリング、仕様を吟味したうえで採用・調達すべきです。
この“現場の一歩踏み込んだリアリズム”こそ、ベテラン設計者に多い知恵です。
2. 負荷条件・耐久性・安全性のバランスをどうとるか
設計基準は「目的適合性(フィット・フォー・パーパス)」です。
たとえば、ギア・ベアリング一つをとっても、「最大荷重」「繰返し荷重」「瞬間衝撃荷重」や、湿度、温度、油種、粉塵環境など複数な実働条件が絡み合います。
理論値だけでなく、過去トラブルの履歴データ(故障モード、寿命分布、実稼働時間など)からフィードバックを得ながら、「どの程度の安全率を確保すべきか」を現場と相談しながら見きわめる力が重要です。
3. メンテ性・組立性・調達コストの俯瞰的判断
最近の工場現場では、働き方改革による人手不足、スキル継承の遅れもあり「保守性・組立やすさ」「メンテに必要な工具やスペース」「入手性・価格バランス」も、設計・調達段階で考慮すべき大事な観点です。
たとえば特殊形状のねじやピンは、わずかなコストダウン効果のためだけに安易に採用すると
・後工程で非効率化(作業の難易度UP)
・設備故障時に部品調達が不能=長期のダウンタイム
・オーバースペックな品質管理コスト増
に繋がります。
現場の熟練工や調達担当、品質保証担当とタッグを組んで意思決定することで、不具合の芽を未然に摘むことができるのです。
昭和モデルから抜け出せないアナログ業界の機械要素選定
昭和時代の“ものづくり神話”は、現代でも健在です。
ベテラン設計者が長年の経験で「これしかない」「昔からこれに決まっている」と言い切ること、部品サプライヤーが「定番」の名のもとに技術革新から取り残されることもしばしば見受けられます。
今こそ疑うべきは、「既存の安心感」です。
材料の進化、長寿命化・メンテナンスフリー化技術、新たな省人化ニーズ、リモート管理対応のIoTパーツも日進月歩で進化しています。
定番品を選ぶのが悪いのではありません。
しかし、「なぜそれを使うのか」「他の選択肢がなぜ適さないのか」を明確に現場で対話し、組織知として蓄積していくことが、デジタル時代の“現場力”のアップデートとなっていきます。
実践!機械要素に関するよくある不具合事例と未然防止策
ここからは、実際に現場で起こった「機械要素トラブル」と、その根本原因、再発防止のためのノウハウを紹介します。
事例1:ベアリングの“早期破損”
【発生状況】
とある搬送装置の回転軸に使われたベアリングが、試運転時から異音、1カ月足らずで焼き付き・破損が発生。
【原因分析】
・使用条件が「軽負荷」だったため、設計時に最低スペックのベアリングをカタログ通り選定
・実際は、起動・停止の瞬間に一時的な高衝撃荷重+ミスアライメントが生じていた
・現場の軸芯合わせ精度不十分、オペレーターのベアリング取り付け時の挟み込み不良も発見
【未然防止策】
– 仮説として「何が壊れるか」を現場でシミュレーションし、過酷条件での耐久試験まで計画
– ベアリングの“選定マージン確保”だけでなく、芯出し作業・初期馴染み運転の手順強化
事例2:ねじ脱落による安全トラブル
【発生状況】
工場の生産ライン、定期点検中に装置フレームの主要な締結ねじが数本脱落しているのを発見。
生産現場がパニックに。
【原因分析】
・設計段階でねじサイズ・材質(耐食・耐熱等)選定は想定条件内
・現場の組立作業で、トルク管理不十分だった(手締め+感覚合わせが常態化)
・バネ座金や緩み止め処理の徹底運用がされていなかった
【未然防止策】
– トルクレンチなどの導入による“定量管理”徹底、作業記録とトレーサビリティ強化
– 緩み止め処理(ロックタイトやばね座金)を優先順位化し、部品リストとセットで明文化
事例3:ベルトドライブ“異常摩耗”による低寿命化
【発生状況】
生産装置のコンベア駆動ベルトが、カタログ耐用年数の半分以下で切れ・摩耗が急増。
【原因分析】
・設計時に負荷トルク計算のみで、現場でのコンベア積載物の重量変動が考慮外
・ベルト材質固定、メンテ周期の見直し未実施
・清掃不備で異物噛み込み増加
【未然防止策】
– 実使用時の積載最大荷重や異物混入リスクまで洗い出し
– メーカーと共同で材質・張力調整の最適化検討
– 定期点検サイクル厳守+チェックリスト運用
これらの事例はほんの一部です。“小さなミス”が大きな工場トラブルや労災、納期遅延につながることを肝に銘じるべきです。
機械要素選定・調達の現場で活きる“3つの習慣”
最後に、あなたの工場やサプライチェーンで今すぐ実践できる「機械要素選定の習慣」を紹介します。
1. 「なぜこの部品なのか?」を現場で語り合う対話の文化
2. 定型化できる選定ルール(カタログ・安全率・認定サプライヤー)と、現場条件に合わせた“例外運用”の明確化
3. トラブル事例・クレーム事例の社内外共有会を設け、経験知をチームで蓄積する
たとえば、ベテランの暗黙知を「見える化」し、若手や異業種のメンバーとも積極的に対話する仕掛けを持つことで、昭和モデルの“属人化”から脱却できます。
また、サプライヤー側も「お客様の現場で何が起きているか」を、単なる仕様遵守ではなく“不具合未然防止のパートナー目線”で設計/調達支援するとWIN-WINの信頼関係が生まれます。
まとめ:現場力と未来志向の両立――真の競争力へ
機械要素の基礎を徹底的に理解し、“現場条件”に最適化する力。
それは、AIやDX、グローバル競争時代を迎えた今だからこそ、最も強い武器になります。
「なぜその部品メーカー?」「なぜこのスペック?」と現場全体で常に問い直し、“標準品”と“例外”を意識的に見極めていく。
不具合事例を単なる反省ではなく、組織ナレッジとして活用し続ける。
それこそが製造業の現場力であり、日本の明日を切り拓くイノベーションの土台になります。
設計、調達、生産、品質、サプライヤー全てがチームとなり、現場目線の知恵で新たな付加価値を創出していきましょう。
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