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投稿日:2025年6月11日

機構設計・動力学解析の基礎と適切な設計技術への活かし方・事例

はじめに:機構設計・動力学解析の基本とは

製造業の現場では「機構設計」や「動力学解析」という言葉をしばしば耳にします。

特に、機械・装置を開発する際にはこの2つの基礎的な知識と応用力が、製品の性能や品質を大きく左右します。

しかし昭和の「図面は手書き、調整は現場で職人のカン」文化が色濃く残る企業においては、これらの理論を具体的な現場改善や競争力向上に結びつける取り組みが遅れがちです。

本記事では機構設計・動力学解析の基本的な概要と、時代遅れにならない設計技術への実践的な活かし方、さらには具体的な現場事例を交えつつ解説します。

購買担当者やサプライヤーにとっても、設計者目線を知ることで調達交渉や付加価値提案の幅が広がります。

機構設計の基礎:動きの本質を設計する

機構設計とは何か?

機構設計とは、機械や装置の構造部品が「どのように動いて・どのように力を伝えるか」に関わる仕組みを考える過程を指します。

たとえば、自動車のサスペンション、工場の搬送装置、ロボットのアームといった「動きをともなうもの」はすべてこの機構設計の範疇となります。

ポイントは、単にパーツを組み合わせるのではなく「なぜその動きにするのか?」「どこで力が集中するのか?」までロジカルに設計できるかどうかです。

重要となる4つの視点

1. 機構のタイプ選定(カム、リンク、クランク等)
2. 動作パターン(直線運動・回転運動・複合運動)
3. 力の伝達経路と損失
4. メンテナンス性・組立性・コスト最適化

これらを最適化することで、「故障しにくい」「低コスト」「高効率」といった現場に直結する機械が生まれます。

動力学解析の基礎:強度とダイナミズムで設計の確かさを測る

動力学解析の役割

動力学解析は、機械が実際に動く際に「各部材にどのような力が加わるのか」「どのくらいの加速度や反力が発生するのか」を理論的・数値的に分析する手法です。

機構設計とセットで考えなければ、「動きはできるが壊れる」「理論上OKでも実際には不能」という事態を防げません。

特に重要なのが以下の要素です。

・加速度と慣性力の見積もり
・摩擦、衝撃、振動の影響
・部品の強度計算と安全率確保
・アクチュエータ(モーター等)の選定

製造業現場での導入例

たとえば供給装置用のリンク機構。

図面上では滑らかに動く設計に見えても、動力学解析をしなければ実際の大量生産ラインでは摩耗や共振で故障頻発というトラブルにつながります。

現場で「動き続けているが時々止まる」という場合、多くはこの動力学解析が甘い証拠です。

設計技術の進化と昭和的アナログ現場のギャップ

3D CAD・CAE解析による現代設計の潮流

現代の設計現場では3D CAD(SolidWorksやCATIAなど)は当たり前に使われ、さらにCAE(Computer Aided Engineering)による事前シミュレーションが普及しています。

従来の2D図面+経験値だけでなく、パソコン上で以下のことまで検証できます。

・動きの確認(干渉・可動範囲)
・応力集中点の可視化
・ダイナミクス(運動解析)の自動計算

これにより、設計改善のPDCAサイクルが高速化し現場トラブルも事前に予防できるようになりました。

昭和的アナログ現場が抱える課題

一方で、古い体質の現場では

・手書き図面や2D CAD中心
・解析はせず試作オンリー
・設計と製造が分断(“それは設計者の責任”という責任転嫁)

こういった傾向が強く、結果的に品質・コスト両面で不利になります。

しかし逆に言えば、ここに伸びしろが大きく残っているのです。

実践的な設計技術への活かし方・現場導入事例

事例1:量産ライン搬送機の設計最適化

とある自動車部品工場では、30年前の設計でつくられた搬送機がしばしば故障し、生産性低下が問題となっていました。

そこで新たに動力学解析を実施。

リンク部にかかる最大加速度と衝撃荷重を正確に解析した結果、部品の形状変更&ベアリングの見直しにつながりました。

結果として「保守頻度1/3」「部品寿命2倍」「ダウンタイム半減」を実現。

これは従来の“現場の職人の経験値”だけでは到達が難しい改善事例です。

事例2:調達購買担当が設計力を持つことで得たWin-Win

ある電子機器メーカーの購買担当者が、機構設計の基礎を学び直したとします。

その結果、サプライヤーとの見積もりや仕様打ち合わせで

・不必要な過剰仕様のカット
・設計簡素化によるコスト最適化
・材料および加工法選定におけるリスクヘッジ

といった技術交渉が可能になりました。

コストダウン=値引き交渉、という昭和型の発想から、Win-Winの価値共創型取引へと進化しています。

事例3:サプライヤーが設計目線を持つメリット

部品・部材メーカーが自社設計力を持つことで、単なる“下請け”から“提案型パートナー”へと進化できます。

具体例としては

・不具合発生時「図面通り」で終わらず、設計意図まで踏み込んで改善提案する
・新規引合時、より安価かつ品質面でも優れる構造を逆提案する

これは営業・技術双方の価値を高めます。

今後の設計現場のDXと、ヒトの力の融合

設計現場でもAI解析や自動最適化技術が進化しつつあります。

ただしどんなにツール・技術が進んでも、

「現場でなぜこの動きが必要なのか?」
「使用者にとっての操作性や最終価値は何か?」

といった本質的な問い、つまりラテラルシンキング(水平思考)が必要となります。

少なくとも“ツール任せ・コピペ設計”や“前例踏襲”だけでは、設計現場の競争力は高まりません。

ベテランの経験・直観と最新ITの融合が、これからの設計現場で大いに求められます。

まとめ:機構設計・動力学解析を製造業の底力に

1. 機構設計・動力学解析は現場の信頼を裏付ける根拠となる
2. これらの技術は設計者だけでなく、購買・サプライヤーにも大きな価値をもたらす
3. アナログな昭和的現場ほど改善の伸びしろが大きい
4. ツールだけに頼らず、本質思考+現場視点のバランスが競争力を左右する

日本の製造業が今後も強みを発揮するために、DXと人の知恵を融合しながら、ラテラルな発想で設計現場を切り拓いていきましょう。

培われた現場の経験に、最新技術と思考を加えて進化を目指していきたいものです。

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