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金属腐食の基礎と防食技術およびその事例

目次
はじめに:金属腐食とは何か
金属腐食は、製造業の現場において常に付き纏う課題の一つです。
目に見えるサビや変色だけでなく、構造物の強度低下や設備停止といった重大なリスクを内包しています。
腐食が発生するメカニズムとその対策技術を理解し、安定した品質や生産性を守ることは、現場の責任者だけでなく、調達購買やバイヤーを目指す方、サプライヤーにとっても不可欠な知識です。
この記事では、金属腐食の基礎、最新の防食技術、そして実際の現場事例まで、実践的かつ現場目線で解説します。
現場で働く技術者や調達担当者が即活用できるノウハウやヒントを盛り込みました。
金属腐食の基礎知識
腐食の定義と基本原理
金属腐食とは、周囲の環境との化学反応により、金属が劣化・消耗してしまう現象です。
代表的なのは大気中の酸素や水と反応して生じる「酸化」、すなわち鉄なら「錆(さび)」の発生です。
腐食は電気化学反応として進行し、金属が電子を失って他の元素(例:酸素)と結びつく還元反応と対になっています。
この理解があると、なぜ防食が必要なのか、最適な方法選択の基礎が掴めるでしょう。
腐食の種類
金属腐食には、様々な形態が存在します。
主なものを挙げると以下の通りです。
– 均一腐食(全面的に均等に進行)
– 局部腐食(特定部位のみ進行、ピット腐食やすきま腐食など)
– 応力腐食割れ(外力と腐食環境の相乗作用による割れ)
– 異種金属接触腐食(異なる種類の金属が触れ合って発生)
現場では、施工や設計上の問題、不十分な管理によって、これらが思わぬ形で発生・進行します。
「ラインで急に配管が穴あきした」「新設の設備が短期間で腐食した」などのトラブル対応は、多くの現場管理者や調達担当者が一度は経験しているのではないでしょうか。
腐食がもたらす影響
腐食による損失は、直接的な設備修理費にとどまりません。
生産停止による間接経費、品質クレームや納期遅延、場合によっては人的災害につながる大事故など、莫大な負の連鎖を生みかねません。
また、「サビだらけの工場」は顧客、取引先からの信頼を大きく損ないます。
特に精密部品や海外向け輸出品では、少しの錆、変色も重大な品質問題となるため、対応の厳格化が進んでいます。
主要な防食技術
1. 材料選定
腐食対策の最も根本にあるのが、「そもそも腐食しづらい材料」を選定することです。
例えばステンレスやアルミニウム、特殊鋼などは一般的な鋼材に比べて酸化しにくく、海水や薬品環境でも耐久性を示します。
ただしコスト面での制約や、加工性・入手性の問題も並行して考慮しなければなりません。
鉄鋼材料でも、合金元素(クロムやニッケルなど)を添加することで耐食性が向上します。
そのため現場の設計者や調達担当には、用途ごとに適切な材料選定をする「目利き力」が求められます。
2. 表面処理技術
腐食の進行を防ぐためには、金属表面に何らかの「バリア」を形成し、外部環境から遮断する対策が有効です。
代表的な方法は下記の通りです。
– 塗装(各種の塗料によるコーティング)
– メッキ(亜鉛メッキ、クロムメッキ、ニッケルメッキなど)
– アノード酸化被膜(例:アルミのアルマイト処理)
– 溶射(耐食性金属の粒子を高温で吹き付けて膜を形成)
– 無電解ニッケルメッキなど特殊処理(精密機器や化学設備向け)
表面処理技術は、省力化や不良低減など、現場の「ちょっとした工夫」一つで大きく性能・寿命が変わります。
一方で、前処理の不十分さや、膜厚のバラつき、現場での再塗装の手抜きなど、「人の関与」が大きく影響する繊細な工程でもあります。
3. 環境制御と管理手法
現場の湿度・温度・気流といった日常的な環境コントロールも防食の要です。
例えば:
– 除湿器の導入やエアコン設置による湿度コントロール
– 塩分や化学薬品の飛散抑制、換気強化
– 梱包・保管時に防錆紙や防錆オイルを活用
また、定期的な点検・メンテナンスが行き届いているかが、安全管理上も品質保証上も必須です。
「忙しいから」とおざなりにされたチェックリストや、シフト交代ごとに忘れられるルールが、腐食の“見逃し”や“手遅れ”を招きます。
4. 電気化学的防食技術
防食技術の中でも、近年注目が高まっているのが「カソード防食」や「アノード防食」といった電気化学的手法です。
これは構造物に微弱電流や犠牲陽極(錆びやすい亜鉛など)を設置することで、金属自体の腐食反応を抑制するものです。
特に海洋構造物や地下配管、発電所設備といった「劣悪環境」への応用が進められています。
製造業の現場で活きる防食事例
組立ライン用治工具の防錆事例
筆者が現場工場長時代、導入したのが「無電解ニッケルメッキ+高耐久ウレタン塗装」の組み合わせです。
従来、治具や搬送装置は安価な鉄材に赤サビや表面剥がれが多発し、頻繁な交換・修理コストが悩みでした。
しかし、現場作業者とも議論・検証を重ね、工程ごとに最適な表面処理を選定。
年間交換率は半減し、現場の清潔感・品質意識が大幅に向上した実体験があります。
輸出梱包品のラストマイル対応事例
海外向けの完成品を船便で梱包・輸送する場合、「現地到着時には赤サビだらけ」といったトラブルがしばしば発生します。
この課題に対し、現場では「防錆紙による全体包装」と「防錆オイル塗布」の二段階でのラップアップを徹底しました。
また港湾保管でも湿度・温度管理が行き届くストックヤードを選定するようバイヤーと連携しました。
結果的に、サプライヤー評価の向上、クレームゼロ年更新に貢献できました。
昭和型アナログ現場と最新デジタル防食管理の融合
製造業、特に老舗の現場では「塗っておけばなんとかなる」「昔からこれで大丈夫だった」という昭和スタイルの文化がまだ色濃く残っています。
一方、現代はIoTセンサーによる配管の腐食モニタリングや、AI判定による劣化予兆診断などが登場しています。
重要なのは「アナログとデジタルの両輪」をどう回すかです。
例えば、熟練作業者が現場観察で異変をキャッチし、記録をタブレットでリアルタイム共有。
センサーやIoTで集めたビッグデータを本社で分析し、的確なメンテナンス指示や仕様変更提案に結びつける。
こうした取り組みこそ、業界の進化とともに従来の現場力を最大化するカギとなります。
調達購買・バイヤー・サプライヤーから見た防食技術の重要性
バイヤーやサプライヤーは、購入価格だけでなく、耐食性やメンテナンスコスト、そしてサスティナビリティを含めた「総合的なバリュー」での目利きが求められます。
また、顧客からの要求が年々厳しくなる中で、「腐食防止の具体的な提案力」が競争力の差となっています。
実例として、金属加工部品の定期注文において「無塗装→ジンケート処理品」へ切り替えたバイヤーは、初期コスト増を懸念しつつも、10年間のメンテナンス履歴削減・クレーム減少で、結果的に大幅なコストダウンを実現しました。
サプライヤー側も「実フィールドでの現場観察」「防食技術の定期勉強会」を重ね、顧客との信頼構築に活かしていました。
まとめ:金属腐食管理で現場の競争力を高める
金属腐食対策は「余分な手数」や「余計なコスト」と捉えがちですが、実は現場の品質・生産性・安全を根幹から支える最重要テーマです。
古い常識やマニュアルにとらわれず、最新技術と現場のベテラン知見を融合させていくことで、製造業はより強く進化していけます。
調達購買担当やこれからバイヤーを目指す方、そしてサプライヤーの方も、この記事をきっかけに腐食メカニズムの理解、防食技術の再検証を進めてみてください。
“現場の快適さ”“顧客からの信頼”を同時に高める知恵と工夫が、きっと見えてきます。
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