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MOTの基礎と技術開発への効果的な活かし方

目次
MOT(技術経営)の基礎を理解する
MOTとは何か?製造業における役割
MOTとは「Management of Technology」の略称であり、日本語では「技術経営」と呼ばれています。
製造業では最新の技術動向やR&D(研究開発)をどう生かし、事業として成功させるかが最大のテーマです。
高度成長期の日本では、現場のアイデアや職人芸、改善活動が日本の競争力を支えてきました。
しかしグローバル化、デジタル化の波により、「技術と経営の橋渡し」が大きな経営課題となっています。
MOTは、単に技術力があるだけでは生き残れない時代に、「技術の価値を見極め、事業化を加速させ、持続的な企業成長にどう結びつけていくのか」を体系的に捉えるフレームワークです。
経済産業省も注目するMOT人材
経済産業省の調査によれば、日本企業は「技術者は一流だが経営マインドが不足」との指摘を長年受けてきました。
そこで、技術と経営の両方を理解した人材、つまりMOT人材の育成や登用が重要視されています。
今や大手製造業メーカーでは、研究所長や工場長、部門長への昇進には“技術だけ”でなく“経営感覚”が求められる時代です。
MOTの基礎知識と具体的な実践法
MOTの3本柱:技術戦略・知財戦略・人材戦略
MOTを支える3つの主な要素として、「技術戦略」「知財戦略」「人材戦略」が挙げられます。
これらは現場のバイヤーやサプライヤーでも、日々の調達業務や商品開発・工程改善・設備投資判断などと密接に関わります。
- 技術戦略:どの技術にリソースを集中し、何を市場価値に変えるかの選別
- 知財戦略:特許やノウハウをどう管理しライセンスや協業に活用するか
- 人材戦略:技術継承と、革新できる現場リーダーの育成
特に現場目線に立つと「目の前の設備更新ひとつ」「取引先選定」「品質基準の見直し」も、すべてMOTから繋がった決断です。
この三本柱を意識しながら判断することで、企業としての競争優位を生み出していけます。
現場実践例:なぜ“選ばれるメーカー”になるのか
実際、私が工場長を務めた際、市場の求める品質担保と、独自技術による差別化が重要なテーマでした。
特に自動化やIoT導入については、「なぜこの設備を導入し、どんな価値をお客様やバイヤーへ提供できるのか」を徹底的に現場で議論しました。
この際、R&D部門・生産技術部・営業チーム・現場のオペレーターまでを巻き込み、「技術の言葉」と「経営の言葉」をつなげるMOT的役割が非常に重要でした。
実際に導入したロボット自動化システムについても、単なるコストダウンではなく、工程能力の可視化、トレーサビリティ確保、最終的な“信頼品質”につながりました。
このように、MOTは「社内のちょっと先を読む力」とも言えます。
現状維持が美徳とされ、アナログなやり方が根強い現場ほど、MOTの視点で一歩踏み込んだ変革が差別化につながります。
バイヤー・サプライヤーの立場からみるMOTの応用
バイヤーが求めるMOT発想とは
バイヤーの視点でMOTを捉えると大きな強みになります。
価格や納期だけに目が行きがちですが、本質的には「調達先の技術進化をどう評価し、持続的なパートナーシップを築けるか」が問われます。
バイヤー自身が製造現場の課題や先端技術を実体験し、「何が御社の技術競争力か」「設備投資や改善活動がどの成果につながるか」を自問する。
それによって、本当に今後も長期で付き合えるサプライヤーと出会え、価格交渉にも説得力が出てきます。
さらに、調達購買部門がMOT的発想で「サプライチェーン全体の技術力」を底上げできれば、結果的に自社の製品力そのものが磨かれる事例も非常に多いです。
サプライヤーの立ち位置から考える、バイヤーが期待するMOT
一方、サプライヤーがバイヤーのMOT志向を理解することで、商談力が大きく向上します。
「どんな技術が将来“売れる”のか」「どんな能力強化や設備投資をすれば選ばれ続けるか」を常に経営目線で考えることが求められます。
実際、私がバイヤー側を担当した時も、単なるお願い営業や安売り競争だけでは絶対にパートナーシップは長続きしませんでした。
技術開発や自社の強みを言語化し、「最終製品の競争力」「市場動向」「品質保証体制」など中長期の観点で提案できるサプライヤーが高く評価されます。
そのためには、日頃から現場情報を的確にキャッチし、自社の技術や生産現場の特長を市場ニーズと照らし合わせてMOT的に分析・提案できるかどうかがカギとなります。
MOTを活かした技術開発・現場改善の新潮流
昭和的“改善活動”からの進化
日本の製造現場には「カイゼン」や「QCサークル」など、現場改善文化が深く根付いています。
しかし近年は、単なるコストダウンや作業効率化では、グローバル競争や顧客要求の高まりに応えきれません。
MOTを取り入れることで、「改善→価値創造」への視点転換が求められます。
たとえば、従来の改善活動に「技術の最新動向」「現場データの可視化」「知財活用」「エコ・SDGsへの貢献」などを掛け合わせることで、社内だけでなく顧客や社会からも評価される付加価値を創出できます。
現場発のMOT事例:デジタル化とAI導入
たとえば、今話題のIoTやAIによる“スマートファクトリー化”もMOTの視点から根づかせることが大切です。
現場のムリ・ムダ・ムラ(3M)を可視化し、どの工程に投資すれば最大の効果が得られるか。
現場の声を拾いあげ、技術部・生産部門・経営陣と一体となって、将来に向かう技術選択と現場改革を進めていく。
デジタル化だけを目的にせず、「この改善がどんな顧客価値を生むか」「将来の新事業種や市場獲得にどうつながるか」の思考が欠かせません。
これがMOT型の技術開発・現場改善の本質です。
今後求められるMOT人材像とキャリアアップ戦略
MOT人材は現場・経営の“ハイブリッド”
技術者や現場管理職の多くは「現場たたき上げ」の経験を積み重ねてきました。
一方で、従来のやり方に固執しすぎるとイノベーション阻害につながるリスクもあります。
今後は、高度な技術・ものづくりスキルと経営の視点を併せ持つ“ハイブリッド人材”こそが重宝されます。
製造業でも、技術者がサプライチェーンや財務、マーケティングまで学び、経営者が現場を知り、共通言語で語れる組織づくりが求められています。
MOTを学ぶにはどうしたらよいか
最近は大学院のMOT専攻や、大手企業の社内MOT研修など学びの場が拡充しています。
また、自身の現場での実体験や異業種交流、現場の“なぜ?”を言語化し続けることがハイブリッド人材への最短ルートです。
バイヤーやサプライヤー、ライン管理者であっても「この業務は技術経営のどこに資するのか」を常に意識して行動する。
これが地道かつ着実なキャリアアップの道につながります。
まとめ:製造業の未来を導くMOT思考の力
MOTは技術者や現場職だけでなく、バイヤー・サプライヤー・経営者も含め、すべての製造業に関わる人材が“新しい地平線”を切り拓くための武器となります。
昭和から続くアナログな商慣習や現場文化も大切にしつつ、絶えず「技術の価値」と「経営の視点」をリンクさせて自らをアップデートしていく。
MOTの基礎を理解し、実践に移していくことで、“選ばれる会社”“選ばれる人材”へと変革できるのです。
ぜひ、あなたの職場やキャリアでMOTの視点を持ち、製造業の未来を共に創っていきましょう。
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