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*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

Rによる多変量解析の基礎と予測・要因分析・判別に活かすデータ処理の実践

目次
はじめに:製造業におけるデータ活用の重要性
現代の製造業では、日々膨大なデータが生み出されています。
生産ラインの稼働実績、材料の発注履歴、品質不良の原因分析など、従来は職人技や現場の勘に頼っていた分野も、データ活用によって大きく改革が進んでいます。
そのなかで、「多変量解析」は複数の変数(データの項目)を同時に分析し、製品の品質向上、コストダウン、リスクの低減など、ものづくり現場に欠かせない技術のひとつとなっています。
そして、無料で強力な統計解析ツールである「R」は、アナログ文化が色濃く残る製造業現場にもじわじわと受け入れられつつあります。
この記事では、Rを使った多変量解析の基礎から、実際の現場で役立つ予測・要因分析・判別への応用まで、プロが使う視点で詳しく解説します。
多変量解析とは? 製造業と相性が良い理由
単変量から多変量へのシフト
従来のデータ分析は、「一つの要因が製品にどんな影響を与えるか」=単変量解析が主流でした。
たとえば「温度」と「良品率」の相関を調べるなどです。
しかし、実際の製造現場では「温度」だけでなく、「湿度」「作業者」「原材料ロット」など無数の要因が複雑に絡み合っています。
そこで多変量解析では、たとえば「温度・湿度・作業者・ライン速度」といった複数の要因を同時に扱い、「本当の主要因はこれだった」と特定したり、「○○と△△をこう調整したら歩留まりが改善する」など、現場で価値のある示唆を抽出できるのです。
昭和のアナログ現場こそ多変量解析が効く
多くの工場では、「経験則」や「感覚」に頼る風土が根強く残っています。
「ベテラン班長のカン」や「昔からこうやってきた」など一見合理的な方法も、実は原因が曖昧なため再発防止や標準化が進まないケースが多数です。
多変量解析を使うことで、こうした“属人化”の壁を取り払い、客観的な根拠に基づく意思決定が可能になります。
Rの特徴と導入メリット
なぜRなのか?
Rはオープンソースの統計解析環境であり、無償でありながら猛烈な分析能力を持っています。
また仕様が公開されているため、製造業の現場で特殊なニーズが出た場合にも柔軟に対応できます。
エクセルの限界に悩んだことがある方、解析ツールの高額なライセンスに導入をためらっている方にとって、Rは「誰でも始められる」「現場で使える」強力な武器となります。
製造業現場でのR導入例
1.検査装置が出力するcsvファイルの一括解析
2.複数ラインの品質データからの異常検知
3.部品の調達先ごと品質傾向の分析
4.IoTセンサーの時系列データから工場稼働状況のモニタリング
このように、調達~生産~品質保証まで幅広い用途でRが活躍する場面は増加中です。
多変量解析の主な手法と現場応用
主成分分析(PCA)で全体を俯瞰する
主成分分析は、多数の変数を“まとめて”しまう手法です。
「温度」「圧力」「人数」「原材料Aの純度」…といったたくさんの要素を、影響の大きい順に「主成分」という“指標”で要約します。
現場では、“似たような製造品の中でなぜ歩留まりが違う?”“不良率の高いロットは、どの要素が共通している?”といった探索的分析に効果絶大です。
Rでは一行のコマンドで主成分分析ができ、得られた主成分をプロットして、「ここが怪しい」「この工程がボトルネック」とわかります。
回帰分析で原因・予測を行う
代表的な多変量解析手法が重回帰分析です。
例えば、
・生産コストに影響を与える要素は何か?
・製造条件から出来上がり寸法や歩留まりを事前に予測したい
など、現場の「なぜ?」や「どうなる?」を数式モデルで可視化できます。
Rではデータを読み込んで「lm」関数を叩くだけで、複数要因の影響度や予測式を得ることができ、工程設計や事前シミュレーションへの活用が簡単です。
判別分析・クラスタリングで「見えないパターン」を可視化
判別分析は、“A工場の製品とB工場の製品の違いは何か?”、“合格品と不良品の特徴的な違いは?”を明らかにする手法です。
機械学習の分類タスクにも直結しており、不良品検知やライン異常診断で特に強みを発揮します。
また、クラスタリングは“似た特徴を持つデータ群”を自動でまとめます。
現場では「サプライヤーごとに品質傾向が分かれる」「部品ロットの分布をみて購買戦略を練る」といった応用が現実的です。
Rではいずれも豊富なパッケージが用意され、現場の課題に直結した分析が可能です。
製造業の現場で実践するデータ処理手順
現場ならではのデータ前処理ノウハウ
製造業特有の「データの揺らぎ」「想定外の欠損」「アナログ転記ミス」。
実際のラインは理想的なデータではありません。
ですが、まず“現状のデータをすべて吐き出しRに取り込んでみる”ことが第一歩です。
その上で
・欠損値(NA)の扱い:現場の実情に合わせ「平均値」「中央値」補完など柔軟に選択
・外れ値の検出・除外:ベテランの勘とも付き合わせ、“分析対象”か“例外処理”か判断
・単位やフォーマット統一:現場へのフィードバックを重視
こうした前処理の質が、その後の解析結果の信頼性を大きく左右します。
現場改善に直結する「仮説立て」と「可視化」
「データを分析する」とは“問題点や現象の構造を仮説として立てる”ことです。
例:
・特定時間帯だけ不良発生率が高い
・あのサプライヤーの部品だけ破損が多い
・作業者の交代時に工程遅延が増える
Rでは仮説の検証=「可視化」から始めると、問題の論点がはっきりします。
グラフ化して現場と共有しやすい点も、実装メリットです。
現場DX時代の多変量解析:ラテラルシンキングで発展する応用
過去データ×新技術で「なぜ?」を深堀りする
多変量解析はあくまで道具です。
大切なのは“どんな課題にどんな切り口で適用するか”という「ラテラルシンキング(水平思考)」です。
例えば
・クレーム発生時、過去類似クレームの要因と現行データの主成分分布を照合する
・異常品の発生パターンにIoTセンサーデータ・生産スケジュール・購買履歴など従来リンクしなかったデータも統合して解析する
・バイヤー・サプライヤーの双方が同じデータで現状把握し、予防保全・協働改善を推進する
こうしたラテラルな発想が、単なる“分析”を「ビジネスの改革」に変えるカギとなるのです。
調達購買・生産管理・品質管理 各視点での多変量解析の活かし方
調達・購買:サプライヤー評価やコスト削減
購買部門では「どのサプライヤーが安定品質を持つか」や「価格と性能の最適バランス探索」などに多変量解析が力を発揮します。
部品ごと・ロットごとに変動する指標を一括で分析することで、バイヤーが狙う「総合的な最適化」を実現できます。
また、打ち合わせの場で「このデータから客観的にこういった傾向が見えます」と伝えることで、サプライヤーとの信頼強化や価格交渉の材料にもなります。
生産管理:工程改善・リードタイム短縮
生産計画や工程管理では、多変量解析を使って「どこの工程がボトルネックか」「どんな組合せで生産効率が左右されるか」を可視化します。
Rでの可視化や回帰分析により、「このパラメータを少し変えるだけでリードタイムが短縮できた」「現場スタッフの配置をこう組み替えたら欠品が減った」など、現場への即効的な改善案を導き出せます。
品質管理:クレーム再発防止・未然防止への応用
品質部門では不良品やクレームの原因追及に多変量解析が最強の武器になります。
異常時の全データを集約して主成分分析や判別分析をかけることで、「真の要因」を特定し、的確な対策(工程監視ポイントの変更、材料選択基準の見直し等)が可能となります。
さらに蓄積してきた解析ノウハウをテンプレート化しDX推進へつなげることが、今後の品質保証部門には求められます。
まとめ:製造業の未来を拓く多変量解析とデータリテラシー
Rによる多変量解析は、単なる統計手法ではありません。
現場の職人技や経験に加え、客観的データ分析を融合することで、“定量的な意思決定”と“再現性ある現場改善”を両立できます。
昭和型の属人経営から抜け出し、グローバル競争やコンプライアンス・SDGsといった現代の課題に立ち向かうための「新しい現場力」となります。
データ解析の素人でも取り組みやすいR、現場の実データを使った多変量手法、そして水平思考で課題を深堀りする姿勢。
この3つを武器に、製造業はさらに進化できるはずです。
ものづくり現場で変革を志す皆さまに、この記事が少しでもヒントや勇気となれば幸いです。
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