投稿日:2024年12月31日

永久磁石同期モータ設計の基礎と特性解析および高効率化のポイント

永久磁石同期モータ設計の基礎

永久磁石同期モータ(Permanent Magnet Synchronous Motor、以下PMSM)は、モータの中でも高効率かつコンパクトな設計が可能であり、多くの産業に採用されています。
PMSMの特徴は、ロータに永久磁石を使用することで高い効率と力率を実現する点にあります。
その設計の基礎を理解することは、特性解析や高効率化を行う上で欠かせないステップです。

まず、PMSMの基本構造を押さえておきましょう。
PMSMは、ステータとロータという2つの主要なコンポーネントから構成されています。
ステータは固定子であり、電流を流すと磁界を生成するコイルが巻かれています。
一方、ロータは回転子であり、高性能の永久磁石が取り付けられています。
電気エネルギーを機械エネルギーに変換するための基本的なメカニズムは、ステータで生成された磁界とロータの永久磁石の相互作用によるものです。

ロータの設計においては、磁石の種類と配置、さらにはロータ本体の材料特性が重要なファクターとなります。
Fe-Si合金のような高透磁率材料が使用されることが一般的で、磁束の最適化が求められます。
磁束を適切に制御することで、トルクの特性を改善し、エネルギー効率を高めることが可能です。

トポロジーと磁石配置の重要性

ロータのトポロジー、すなわち磁石の配置はPMSMの特性に大きく影響します。
表面着磁型(Surface-mounted Permanent Magnet、SPM)と埋込型(Interior Permanent Magnet、IPM)の2種類が一般的で、それぞれの方式が持つトレードオフを理解することが不可欠です。

SPMは磁石がロータ表面に取り付けられており、製造が比較的簡単です。
しかし、トルク定常性に欠け、高速運転時の機械的強度も低くなりがちです。
一方、IPMは磁石がロータ内部に埋め込まれているため、高性能化を図る上で有利です。
特に、磁束漏れの抑制や効率的な磁束ルートの確保を実現できますが、設計と製造が複雑でコストがかかる場合があります。

特性解析とその重要性

PMSMの特性解析は、適切な性能を発揮させる上で極めて重要です。
特に、トルク特性や効率に直結する電気的特性を理解することが求められます。
解析手法は多岐にわたり、有限要素法(Finite Element Method、FEM)などの数値解析が一般に利用されます。

FEMを用いることで、磁束の分布から発生するトルク、電流、空間高調波などの影響を精密に解析できます。
これにより、設計段階で発生し得る問題を予見し、適切な設計変更が可能になります。

具体的な特性解析項目としては、以下のようなものがあります。

トルクリップルの抑制

トルクリップルとは、ロータの回転に伴う非定常的なトルク変動を指します。
トルクリップルが大きくなると、機械的な振動や騒音の原因となり、PMSMの性能低下を招きます。
トルクリップルを抑制するためには、ステータとロータの形状最適化や磁石形状、コイルの配置などを工夫することが求められます。

効率マップの作成

効率マップは、負荷と速度に応じたモータの効率を表にしたもので、システム設計において非常に有用なツールです。
異なる動作条件下での効率を可視化することで、最適な運転条件を見極めることが可能となります。
このデータを用いて、ドライブシステムの制御戦略を見直すことが、高効率運転の実現に貢献します。

PMSMの高効率化のポイント

PMSMの高効率化を図るためのポイントは、多岐にわたっていますが、主に以下のような要素に集約されます。

限定電流ベクトル制御(FOC)

ベクトル制御(Field Oriented Control、FOC)は、PMSMの高効率化に寄与する制御手法の一つです。
この制御方式を用いることで、トルクと電流の関係を複雑な環境下でも最適化できます。
具体的には、d-q座標系を用いながら、電流ベクトルの大きさと位相を精密に制御することで、最大トルクパーアンペア制御を実現します。

FOCは、トルクの滑らかな出力と効率的な運転を両立させ、PMSMのパフォーマンスを最大限に引き出します。
その結果として、従来のスカラ制御に比べてエネルギー損失を大幅に削減できます。

磁束制御の最適化

磁束制御においては、効率とトルクのバランスを取ることが重要です。
これを最適化するためには、PMSMの動作環境と負荷条件に応じて、適切な磁束インジェクションを行います。
特に、軽負荷時には磁石フラックスを低減することで、ジュール損失を低下させることが重要なポイントです。

また、IPMモータにおける弱磁界制御技術も重要であり、高速領域において効率を高めながら運転域を拡張する効果があります。

熱設計の改善

PMSMの効率を高めるためには、熱管理もしっかりと考慮する必要があります。
過熱は、モータの効率を低下させるだけでなく、寿命を短くする要因にもなります。
そのため、冷却システムの効果的な設計や素材選定を行うことで、効率のロスを最小限に抑え得ることが求められます。
冷却手段として空冷、液冷、あるいは冷却フィンの使用など、多様なアプローチがあります。
設計段階でのTEM(Thermal-Electro-Magnetic)シミュレーションを活用することで、冷却パスの最適化も可能です。

まとめ

永久磁石同期モータ(PMSM)は高効率でコンパクトなモータの代表格として、多くの産業で使用されています。
その設計にあたっては、基本構造やトポロジーの理解が重要です。
さらには有限要素法を利用した特性解析を通して効率的に設計を最適化し、トルクリップルの抑制や効率マップによる運転条件の最適化が欠かせません。

これらを踏まえた上での高効率化のポイントとして、ベクトル制御や磁束制御、熱設計の改善に注力することが重要です。
これらの取り組みを通して、PMSMの性能を最大限に活用し、製造業のさらなる発展に寄与することが求められています。

以上が、永久磁石同期モータ設計の基礎と特性解析および高効率化のポイントについての解説となります。
このような知識を活かして、より効率的で先進的な製品開発に取り組んでいただくことを期待しています。

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