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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

統計データ解析の基礎とExcelによる実務での活かし方

目次
はじめに:なぜ今、統計データ解析が重要なのか
日本の製造業が直面する課題の一つに、「昭和型」の現場感覚や勘に依存したオペレーションからの脱却があります。
グローバル競争や人材不足、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流が加速する現代において、客観的かつ論理的な判断を下すための「統計データ解析」の重要性が、ますます高まっています。
特に調達購買、生産管理、品質管理といった分野では、日々膨大な量のデータが現場で生み出されています。
このデータを正しく読み解き、現場や経営の意思決定に活かせる力を持つことは、今や「できる人材」の必須条件といえます。
本記事では、製造業の現場で20年以上培った経験をもとに、統計データ解析の基礎についてわかりやすく解説し、誰もが使い慣れたExcelを活用した実践的方法を紹介します。
また、アナログ体質が根強い業界特有の実情や、現場目線でのリアルな課題にも触れ、「明日から使える知識」をお届けします。
統計データ解析の基礎:現場で役立つエッセンスを理解する
統計データ解析の目的とは
製造業の現場において、統計解析を行う主な目的は「事実に基づく判断」と「変化の兆しを早期に発見する」ことです。
例えば、サプライヤーからの納入品質や生産設備の稼働データ、歩留(ぶどまり)の変化などを、数字という客観的な事実で把握することで、勘や経験だけに頼らない根拠あるアクションが可能となります。
統計データ解析の基本用語と考え方
まず押さえておきたいのは、基本中の基本ともいえる以下の用語です。
- 平均値:データ全体の「代表値」として最もよく使われます。例えば、サプライヤーから納入された部品の長さを毎回測定し、その「平均」を求めることで傾向を把握します。
- 中央値:データを小さい順から大きい順に並べたとき、真ん中にくる値です。平均値と異なり「極端な値(外れ値)」の影響を受けにくい特徴があります。
- 最頻値:データの中で最もよく出現した値です。
- 分散・標準偏差:データのばらつき具合(安定しているのか、バラバラなのか)を測定します。
これらの「基礎」をしっかり理解しておくことで、業務データの異常検知や品質管理、ベンダー評価など、さまざまな現場判断に役立ちます。
現場あるある:勘と経験に頼りすぎて失敗した事例
筆者の経験上、「なんとなくこの仕入先は問題ない」「この工程なら歩留は安定しているはず」といった「現場の勘」に頼りすぎてトラブルに発展したケースは少なくありません。
例えば、過去一年間の納入不良をきちんと集計していなかったため、大きな品質トラブルが起きるまで早期発見ができなかったなど、「データに基づく管理」の重要性が肝に銘じられる瞬間が多くありました。
Excelを使った統計解析のすすめ:なぜExcelなのか
業務現場で本格的なデータサイエンティストが使うようなRやPythonはまだまだハードルが高い。
多くの製造業現場では「Excel」がデータ管理の“共通言語”です。
特に昭和期から続く企業や中小規模の工場、サプライヤーでは、Excelの「使い倒し力」が現場力そのものともいえます。
集計から可視化まで:Excelでできること
Excelはただの「表計算ソフト」ではありません。
ピボットテーブルや関数、グラフ機能、最近では「分析ツールパック」を使った高度な解析も可能です。
例えば、
- 納入実績や不良データの集計(ピボットテーブル)
- 生産数・不良率の時系列推移のグラフ化
- 工程ごとの分布やばらつきの分析(ヒストグラム)
- 相関関係の分析(散布図と近似線)
- 基本的な回帰分析、分散分析等(分析ツールパック)
これらを組み合わせて使いこなすことで、日々の業務改善やトラブル対応に「データで語る力」が身につきます。
Excelで基本統計量を出す方法
例えば、サプライヤーから納入される部品長さのデータが100件あるとします。
そのデータ範囲を「A2:A101」として、以下の関数を使えば統計量が簡単に得られます。
- 平均値:=AVERAGE(A2:A101)
- 中央値:=MEDIAN(A2:A101)
- 最頻値:=MODE.SNGL(A2:A101)
- 標準偏差:=STDEV.P(A2:A101)
エクセル初心者の方でも、上記の関数を覚えておくだけで大きく「見える世界」が変わります。
ピボットテーブルの活用による多軸集計
大量のデータを「ただ眺める」だけでは異常は発見できません。
ピボットテーブルを活用することで、例えば「仕入先別・アイテム別・ロット別」の不良件数を一瞬で抽出して傾向をつかむことができます。
この機能により、現場でありがちな「手作業集計から解放される」経験は、決して小さくありません。
製造業現場での実務応用:統計が活きる具体例
購買担当者の場合:仕入先評価とリスク管理
購買担当者にとって、仕入先評価は信頼関係の構築だけでなく、調達リスクの事前回避にも直結します。
納入実績を定量的に記録し、「納期遵守率」「納入不良率」「リードタイムのばらつき」などのデータをExcelで定期分析することは、仕入先との交渉材料になります。
例えば、A社とB社の過去1年間の納入実績を比較し、標準偏差や月ごとの不良率のトレンドをグラフ化することで、「どちらが安定しているか」「今後の発注比率をどう割り振るか」など、根拠に基づく判断が可能です。
また、新規サプライヤー開拓時にも、既存サプライヤー各社の統計データを参考にすることで、理想的なパフォーマンス水準をあらかじめ設定できるメリットもあります。
品質管理担当者の場合:工程異常の「兆し」を早期につかむ
品質トラブルを未然防止するには、「異常が起きた後」ではなく、「普段とどこが違うか」「どこからおかしくなり始めたか」を探ることが重要です。
工程内の寸法測定値や出来高データを時系列で記録し、Excelでグラフ化・標準偏差を計算するだけでも、ばらつきやトレンド変化を可視化できます。
例えば、ヒストグラムを作成すれば、「規定範囲ギリギリのデータが増えてきた」など、小さな変化にすばやく気づくことができます。
この「データの勘どころ」を現場作業者とも共有すれば、現場全体の「品質意識」も底上げされます。
生産管理・工場長の場合:現場全体のボトルネック解析
ライン全体のボトルネック工程や部品供給遅延、歩留低下の原因分析を行うときにも、Excelと統計の知識が威力を発揮します。
例えば、生産日報や作業記録から各工程ごとの処理能力や異常停止回数を定量化し、ピボットテーブルや散布図で傾向を比較することで、どの工程で「数値的に見て明らかに遅れが出ているか」を客観的に把握できます。
アナログ体質の現場を変える「小さな一歩」から始める
データ分析や統計というと、現場では「パソコンに頼るのか」と警戒される向きもあります。
ですが、昭和から続くアナログ体質の職場こそ、Excelを使ったシンプルなデータ管理から始めるのが効果的です。
たとえば、一日一回の歩留管理も、日々の記録を表に残し、月次で平均やばらつきを確認するだけで「新たな気づき」が生まれます。
また、若手社員やパート・アルバイトのアイデアを積極的に取り入れ、Excelのテンプレート共通化やマニュアル化を進めることで、社内DXにも確実につながります。
バイヤーを目指す方・サプライヤーが知っておきたい統計の視点
バイヤー=購買担当者が重視するのは、単なる価格競争力だけでなく、納期・品質・安定供給という「数字で立証できる安心」です。
サプライヤー側も、納入実績や不良率、納期遵守データをExcelで集計・分析しておけば、バイヤーとの商談時に「データで見える説明」ができ、信頼感は大きく向上します。
反対に、データに基づく説明がないと「何となく不安」「現場任せ」という印象を与えやすく、長期的なパートナーシップにおいても不利になります。
未来のバイヤーやサプライヤーの方は、まずは「自部署の実績を自分自身で可視化」することから始めてみてください。
まとめ:統計データ解析とExcelで、現場に「新しい地平」を
統計データ解析は、決して一部の専門家だけのものではありません。
現場を知る人こそ、現実の課題をデータで見える化し、Excelという「身近な武器」で解決を図ることができます。
現場の知恵と統計解析の力を組み合わせることで、「昭和的勘任せ」から一歩進んだ、論理と数字に基づく現場改革を実現しましょう。
この記事が、製造業に携わるすべての方——購買・調達担当者、品質・生産管理、サプライヤー、そしてこれからバイヤーを目指す人の「一歩前」に役立てば幸いです。
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