投稿日:2025年6月10日

超音波センサの基礎と送信・受信回路設計および応用技術・例

超音波センサの基礎を理解する

超音波センサは、製造業の現場で多く活用されている計測・検出デバイスの一つです。
このセンサは、人間の聴覚では捉えられない高い周波数(通常20kHz以上)の音波を利用し、物体の位置検出や距離測定、液体・粉体レベルの計測など、さまざまな応用分野で活躍しています。

特に、近年の工場自動化(FA)やIoTの進展により、その需要と重要性がますます高まっています。
本記事では、超音波センサの原理から送信・受信回路の設計、応用技術や業界動向まで、現場目線で解説します。

超音波センサの動作原理

超音波センサは主に、発振器から超音波を発生させて空間に送り出し、その反射音を受信して対象物との距離や存在を計測します。

送信と受信のプロセス

送信側のトランスデューサから信号が発生し、空気中に超音波として伝播します。
対象物に到達した超音波は反射され、受信側のトランスデューサで検知されます。
このとき、送信から受信までの時間差(タイムラグ)を計測し、空気中の音速をもとに距離を算出します。

代表的な計測方式

– パルスエコー方式:単一のトランスデューサ(送受一体型)で、送信後に反射波の受信を行う基本的な方式です。
– トランスミット/レシーブ方式(分離型):送信用と受信用の2つのトランスデューサを使用し、より高感度な計測が可能です。

製造現場では、用途や求める精度によりこれらを使い分けています。

超音波センサの送信・受信回路設計のポイント

昭和のアナログ技術からデジタル制御へと移行が進むなか、現場では依然として自作やカスタマイズ事例が多く残っています。
そのため、回路設計の実践的なノウハウは、バイヤーやサプライヤー双方にとって重要な知識です。

送信回路の設計

超音波トランスデューサは、一般的に数十kHzの高周波パルス信号を必要とします。
この信号はマイコンのPWM出力や、NE555などのタイマーICを使って発生させることが多いです。

送信回路のポイントは、トランスデューサの駆動電圧・電流をしっかり確保し、パルス幅や繰り返し周期を用途に合わせて最適化することです。
インピーダンスマッチングや、不要輻射の抑制も忘れてはなりません。

受信回路の設計

受信側は、微弱な反射波を正確に検出する設計が求められます。
最初段に高感度なアンプ(FETオペアンプなど)を配置し、帯域を超音波の周波数帯域に絞るバンドパスフィルタを設定します。

また、ノイズに強い差動増幅や、ピーク検出回路によるパルスのタイミング抽出なども実装します。
アナログで信号増幅・整形を行ったのち、デジタル回路(例:コンパレータやマイコン)で距離データの算出や判別を行います。

現場で根強いアナログ回路の優位性と課題

最新のデジタルICやSoC(System-on-a-Chip)は超音波センサの制御にも応用が広がっていますが、現場ではアナログ回路設計が今なお根強く支持されています。
理由は「現場で簡単に調整できる」「カスタム対応が容易」「長年蓄積された技術ノウハウが生きている」などです。

一方で、回路全体のノイズ対策や、温度変化への補正、部品のバラつきや老朽化による性能変動管理など、属人的な保守・運用が課題となっています。

アナログとデジタルのハイブリッド化が進行中

現代においてはアナログ部とデジタル部を組み合わせたハイブリッド設計が増えています。
具体的には信号の最初の増幅と整形はアナログ回路で行い、以降はマイコンでデータ処理や異常判定、ネットワーク伝送までを担います。

この融合は、昭和の現場技術と令和のデジタル化の共存を体現しており、調達購買の新たな視点としても注目されています。

超音波センサの主な応用例

超音波センサはさまざまな現場で使われています。
代表的な応用例を現場目線で紹介します。

1. 製造ラインの距離検出・存在検知

搬送ラインでワーク(部品や完成品)の到着確認や、ロボットの位置決めセンサとして活用されています。
光に比べて埃や油などの汚れの影響が少ないため、現場では「故障が少なくて重宝する」と評価が高いです。

2. 液体・粉体レベル計測

タンク内の液面やサイロの粉体残量測定に多用されています。
目視やフロート式に比べてメンテナンス性が良く、誤検出も少ないため、老舗メーカーから新規参入組まで幅広く採用されています。

3. 近接スイッチや障害物回避

AGV(無人搬送車)や自律移動ロボットの障害物回避、安全柵の侵入検知でも利用されます。
工場の安全対策や品質保証の文脈でも需要が高まっています。

バイヤーが押さえるべき調達・選定ポイント

製造業バイヤーや調達担当者にとって、超音波センサを選定する際のポイントは下記です。

1. センサの周波数特性と検出距離

周波数が高いほど検出精度は高くなりますが、距離が短くなります。
用途に応じた最適なスペック設定が重要です。

2. 動作環境と耐久性

現場では温度・湿度・油分・粉塵など厳しい環境が多いため、筐体材質や保護等級(IP規格)も確認しましょう。
長寿命化やメンテナンス頻度も重要視すべきポイントです。

3. 回路設計やIoT連携の拡張性

カスタマイズや既存FAシステムとの接続(シリアル通信、フィールドバス、Ethernetなど)も、今後の自動化投資に直結します。
サプライヤー選定の際は、技術サポート力や納期柔軟性も念頭に置いてください。

サプライヤー目線で理解しておきたいバイヤーの本音

サプライヤー側は「いかに安定品質を供給するか」が最重要ですが、バイヤーは加えて「現場の困りごと」を解決できるかどうかを見ています。

たとえば「短納期対応」「コストに見合った機能保証」「今ある現場回路へのマッチング」「他社との差別化提案」など、バイヤーがどこで困り、どこで妥協しているかを先読みすることが受注のカギです。

昭和の現場に根付く雰囲気やカルチャー、実際の現場改善事例などを踏まえた提案が、信頼獲得につながります。

超音波センサ業界の現在と未来

従来は大手センサメーカーが市場をリードしてきました。
近年は中小の電子部品商社やベンチャーがIoT向けクラウド連携やソフトウェア面で参入し、競争が激化しています。

海外メーカーとのコスト競争も加速し、「安かろう悪かろう」から「試して納得したら導入」という現場文化への対応も進んでいます。
(例:POC、トライアル導入など)

これからのバイヤー・サプライヤーには、「現場の歩みを止めない」ための柔軟対応と、アナログ・デジタル両面の技術説明能力が求められます。

まとめ:超音波センサの理解と活用で現場を変える

超音波センサは、その堅実な計測力と応用範囲の広さにより、令和の製造業現場でも必要不可欠なデバイスとなっています。
送信・受信回路の基礎設計から最新の応用動向、調達や実務に根差した選定ノウハウにいたるまで、知っておくことで工場現場の改善、設備力アップ、さらには自社や顧客への付加価値提案ができるようになります。

バイヤーやサプライヤーの垣根を越え「共に良いものを作る・供給する」という現場文化を、新しい地平線へと拡大していきましょう。

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