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戦略的研究開発テーママネジメントの実践ノウハウと中止・継続・判断の見極め方

目次
はじめに ― 製造業における研究開発テーママネジメントの重要性
製造業が競争力を維持・向上させるためには、研究開発(R&D)活動が不可欠です。
特にデジタル化やサステナビリティ、グローバル競争が熾烈化する現代において、「どの研究開発テーマに資源を投下し、どこで撤退・継続を判断するか」は、企業の命運を左右するほど大きな意味を持ちます。
本記事では、私が20年以上の現場経験と管理職視点から培った実践ノウハウをもとに、昭和から抜け出せないアナログ業界でも使えるテーママネジメントと判断基準、そして“真の戦略的意思決定”のヒントを幅広く共有します。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方にも有益な内容です。
日本の製造現場に蔓延する“昭和的無謬性”とR&Dテーマ停滞の壁
日本の製造業では、いまだに「新しいことはリスク」「前例がないと不安」という保守的な気質が根強く残っています。
この“昭和的無謬性”が、研究開発テーマの見直しや中止の議論をタブー視し、リソースの無駄な停滞を招いてしまう現場を多く見てきました。
– 失敗のレッテルを避けたい心理
– 過去の投資を正当化したい組織防衛本能
– 成果主義の評価が弱く、「頑張っている」こと自体が評価されやすい風土
こうした要素が絡み合い、成果につながらない研究開発テーマが“長期間温存”されてしまうのです。
現場としては「やめ時」「見極め方」が非常に難しいのが実情ですが、これをブレークスルーできれば、企業の成長余地は大きく広がります。
戦略的研究開発テーママネジメントの全体像
戦略的R&Dテーママネジメントとは、“市場”と“自社の強み”、そして“競合優位性”の三軸で、「選択と集中」を進める意思決定活動そのものです。
重要なポイントは、単なる現場の「思いつき型テーマ設定」や「毎年続けているから続ける」といった惰性的運用から脱却し、常に環境変化に合わせて見直すことです。
主な流れとしては、以下5ステップが基本となります。
1. 外部環境・市場動向の調査と把握
今どんな技術トレンドがあるのか?
自動化、省人化。データ駆動型ものづくり。GXとカーボンニュートラル需要。
これらを“肌感覚”でなく、「業界動向データ」「特許・論文動向」「顧客アンケート」などから定量的・多面的に収集します。
2. 自社の技術・事業ポジションとの対比
自社の強み・コア技術・過去の成功事例や、逆に“お荷物化している技術”の現実も直視します。
これは現場担当者の声や、実際の生産トラブル、品質苦情の分析がヒントとなります。
3. テーマの短中期ロードマップ化とKPI設定
「このテーマは3年後に何をどこまで達成するべきか?」
「事業部としていくらの売上インパクトを期待するのか?」
定性的な「頑張ります」ではなく、具体的なKPIを期初に設定しましょう。
4. 定期的な進捗レビューと見直し判断
進行中テーマは少なくとも年2回、経営層や関係部門を交えたレビューミーティングで“継続/追加投資/中止”判断を行います。
進捗報告会が“単なる発表会”にならないよう、挑戦的な質問が飛ぶ場にするのがポイントです。
5. 撤退や方向転換を決断した場合の速やかな結果共有
中止を決めた研究テーマは「なぜ」「どの時点で」「何が足りなかったか」を社内で横展開し、“同じ轍を踏まない”文化をつくることが重要です。
テーマ継続・中止・方向転換を判断する実践的なポイント
それでは、実際にどのような基準やプロセスで「続ける」「やめる」「方向転換する」判断を行えばよいのでしょうか。
現場でうまくいった実例・失敗例から、実践的なポイントをまとめます。
1. KPIと市場ニーズの“すり合わせ度”を数値化せよ
– 市場のニーズが明確(明確な顧客要望や法規制の変化、営業部署からのフィードバックが多い)
– それに対し自社技術との“ズレ”があるとき、ギャップを埋める具体施策までブレイクダウンしたか
このすり合わせが曖昧なテーマは、“研究のための研究”になり、事業貢献度が低いまま終わるリスクが高まります。
2. 中間成果物を段階的に設定してエスカレーションせよ
“2028年に完成予定”のような超長期テーマほど要注意です。
途中段階で以下のような“中間チェックポイント”をストラクチャー化しましょう。
– 12カ月後:ターゲット市場でPoC(概念検証)が成立したか?
– 18カ月後:最初の量産パイロットライン構築に成功したか?
– 24カ月後:実際の顧客に売上換算できる見込みが見えたか?
これら定量/定性的マイルストーンをあらかじめ合意しておくことで、中止判断のタイミングもぶれません。
3. コスト・ターム・競争優位性の“三すくみ構造”で評価せよ
新技術のコスト負担、開発にかかる時間、同業他社よりどれだけ優位性を持てるか。
この“三つ巴”をExcel表でも可視化してみることを強く薦めます。
たとえば…
– 自社での開発コスト:○億円
– 競合A,Bも同じ技術を狙っている(特許出願数や業界の取組事例を把握)
– 市場投入までの期間
これを横並びで評価した時、「どう考えても競合の後追いにしかならない」場合は早期撤退も選択肢に入れましょう。
4. 成果評価を“数値”と“現場の肌感・顧客再現テスト”両面で行う
現場の肌感や顧客現地テストは、数値評価と同等に重要な判断材料となります。
たとえば品質部門やサプライチェーン部門から「仕様通りの性能だが、実際の現場ではこういう問題が出ている」といったフィードバックを得ることで、机上の計画とリアルな現場運用との乖離を可視化できます。
この“現場の声”を論理的にレビューに落とし込むことで、課題がクリアされないテーマの見切りもスムーズになります。
失敗を恐れず、“撤退の基準”を明文化するメリット
日本企業では「途中でやめるのは責任問題」「中止は失敗」というイメージが根付きやすく、これが研究開発活動の健全な見直しを妨げる最大の障壁です。
しかし欧米企業や、昨今の中国新興メーカーは「撤退」や「方向転換」をシビアにドキュメント化し、組織的にノウハウ化しています。
失敗や中止したテーマも、必ず“なぜダメだったか”“当初予測とのギャップ”“次やるならこうする”という学びを明文化してナレッジ化することで、組織は確実に強くなります。
私が現場で実際に活用した方法として、以下を推奨します。
– 中止判断時、上司や経営陣への“自虐的な”報告書ではなく、「意思決定までのプロセス」「得られた知見」「次回の進め方」を整理し、社内全体に共有
– 評価は“頑張ったか”よりも、“合意されたマイルストーンに対してどうだったか”という客観的評価軸を導入
これにより、現場の担当者やグループリーダーも「堂々と中止を提案できる」風土が生まれます。
バイヤー視点・サプライヤー視点で考えるテーママネジメントのポイント
購買担当やバイヤーを目指す方、あるいはサプライヤーの立場から「どうやってバイヤー側がR&Dテーマを見ているか」を知ることも重要です。
– バイヤーの購買評価は「単価」「品質」だけでなく「イノベーション提案力」や「SDGs・環境配慮」など多様なインセンティブが重視されつつあります。
– サプライヤー側は「こういう開発テーマを推進中です。既存商品とどう違い、現状の業界課題をこう解決できます」と具体的に実証データや現場適用事例を示すことで、バイヤーから“共創パートナー”として認められやすくなります。
また、バイヤー視点では「どんな立ち上げテーマが進捗遅延/放置されやすいか」といった知見が意思決定材料になるため、「撤退や中止ラインをどう設けているか」を事前に確認し、異常時は未然に修正提案する力を持つことが信頼につながります。
まとめ ― 現場主義と戦略的意思決定を両立せよ
現場の「熱意」「創意工夫」と、マネジメント視点の「冷静な選別」「見極め力」は両輪です。
戦略的R&Dテーママネジメントの核心は、“やるところは徹底的にやり、引くと決めたらスパッと引き、失敗を糧に明日への筋書きを生みだすこと”にあります。
失敗や中止を恐れず、段階的に合意したKPIにもとづいた進捗チェック。
撤退ラインや事業貢献可能性の客観的評価。
方向転換した場合のノウハウ共有。
アナログ体質が根強い業界でも、これらの仕組みを構築し「戦略的選択と集中」を進めていく姿勢こそが、これからの日本の製造業には必要不可欠です。
現場主義と戦略的意思決定。
この両輪をしなやかに使いこなし、次代のイノベーションをけん引していきましょう。
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