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投稿日:2025年6月6日

物流作業に使用する治工具の考案から製作までのステップ

物流作業に使用する治工具とは何か

物流作業で使用される治工具は、生産現場や物流倉庫での作業効率向上、作業ミスの低減、安全性の向上を目指して用いられる、いわば「作業現場の知恵」が凝縮された現場支援ツールです。

ここで言う治工具とは、例えば部品や資材の仕分けをスムーズにするカスタムラックや、重量物・不定形物の取り扱いを容易にする補助具、パレット積載のためのガイド、仕分け効率を高める台車や組立治具など、多岐にわたります。

繁忙期の負荷分散やヒューマンエラー抑制、省人化、自動化に貢献するため、現場からの要望や課題感が非常に反映されやすいアイテムです。特に昭和から続くアナログ主体の工場では、創意工夫で現場作業を少しでも楽に、そしてミスなく実現するための治工具が必須となっています。

治工具の必要性と現状の課題

物流工程における最大の課題は「少ない人員で多くの品質と生産性をいかに維持するか」という点です。労働人口の減少、クレームやミスの増加リスク、多品種少量生産化の流れなど、取り巻く状況は年々厳しさを増しています。

単なる作業補助だけで終わらせず、「標準作業の徹底」や「新人教育の容易化」「万一の際の事故防止」という観点も、治工具には求められます。

また、現場では導入コストや保守性・頑丈さ・安全基準への対応なども重要な検討材料になります。経営側は投資対効果をシビアに見ますし、バイヤーや調達担当者は「なるべく安く早く」を求めてしまいがちです。それに対し現場の声は「自分たちが本当に使いやすいものを」と考えがちで、このギャップをどう埋めるかが治工具考案・導入時のリアルな課題です。

治工具考案のステップ

治工具を現場で実際に使える形にするためには、大きく分けて以下のようなステップを踏みます。

1. 現場ヒアリングと課題抽出

まず取り組むべきは「現場の声に耳を傾ける」ことです。物流現場で実際に作業をしている方々に、普段困っていることや使いにくい点、事故がヒヤリとした例、もっと楽にできそうな部分などを丁寧にヒアリングします。

時には現場立会いや作業観察(Gemba Walk)、5ゲン主義(現場・現物・現実・原理・原則)の観点から問題を把握します。ここで重要なのは「すべての作業者にとって最適なものか」というバランス感覚です。大ベテラン向けの効率重視と、新人でもできるシンプルさ、その両立が理想です。

2. 改善アイデアのブレインストーミング

次は、課題解決のためのアイデア出しです。「今あるもので代用できるか」「手製で簡単に作れるものか」「安全基準的に大丈夫か」といった条件も加味しつつ、時に既存事例の調査や他社の成功例、現行プロセスの再定義も行います。

ここでラテラルシンキングが活きます。ただ単に“今の流れを効率化”するのではなく、「そもそもこの作業自体を別の手法に変えられないか」「複数工程の一部を統合する発想はないか」「従来の当たり前を疑ってみる」など、既成概念にとらわれない発想で検討します。

3. 仕様書作成・設計サンプルの具体化

アイデアがまとまったら、実際に図面や仕様書、または簡単なCADデータとして可視化します。寸法の根拠や耐荷重、取り扱い方法、安全面なども同時に検討します。

この時注意するべきは、「使う人の力量・体格差への配慮」「作業導線との整合性」「メンテナンス・洗浄性」など現場運用時の細かな使い勝手にまで目を配ることです。

4. プロトタイピング~現場テスト

手作りの簡単なもの(紙や段ボール、アルミフレームの簡易組み立て)で試作品を作り、実際に現場で使ってみます。ここで「想定していたより重かった」「かさばる」「操作が難しい」「耐久性が不安」など、リアルなフィードバックを受け取り、設計修正を加えます。

多くの現場改善事例に共通するのは、「現場の知恵」という膨大な暗黙知が宿っていることです。修正→再トライのサイクル(PDCA)が重要です。

5. 社内(もしくは協力業者)で量産・導入

最終的な仕様に落とし込みができれば、社内の設備班や近隣の金属加工業者、樹脂専門業者などに製作を依頼します。手作り治具から始めて、最終的には製品として販売可能なレベルまで昇華させることも少なくありません。

治工具そのものが他社との差別化要素になったり、現場改善事例として表彰されるケースもあります。

現場力を発揮させるポイント

治工具製作は、現場のパッションや職人芸が活きる領域でありながら、近年は「デジタルデータ活用」「3Dプリンタ」での造形、「IoTセンサー連携」といった新しい技術との掛け合わせが進んでいます。

従来の鉄工所の職人技も、短納期・低コストを求められる時代背景のなかで、CADデータのやり取りや試作の高速化など、時代と共にシフトしています。

大事なのは「現場が求めている本当の価値」を見誤らないこと。その場しのぎの治具では一時凌ぎにしかならず、根本的な工程改革や人材育成とセットで考えることで、治工具活用はより高い成果を上げることができます。

バイヤー・サプライヤー双方の視点からみた考慮点

バイヤー(調達担当)にとって、現場発信の治工具開発は「コスト低減策」や「リスクマネジメント」の一つです。しかし「現場に寄り添う」意識が足りないと、現場にとって本当に意味のある治工具が生まれにくくなります。

たとえば、安いが使い勝手の悪い既製品を無理に押し付けてしまえば、現場は結局自作したり、使わなかったりします。逆に現場の要望を100%すべて通そうとすると過剰品質となり、コストやスピードが犠牲になります。

サプライヤー側に立つ場合は、「現場の困りごとをいかに言語化し、汎用化した治工具として提案できるか」、また「自社の加工技術や得意分野を最大限活かせる設計か」といった観点も重要です。

双方の立場で共通して言えるのは、「現場主導の課題提起&共創型解決」が、これからの製造業バリューチェーンで求められるということです。

治工具製作を成功させるポイント

治工具プロジェクトは、以下を意識することでより成果につながります。

現場主導でプロジェクトを回す

現場が自ら主体性を持って進めると、実運用にフィットしたものができやすく、定着も良いです。

調達・企画チームとの連携を密にする

コスト・納期・品質保証などの制約条件があるため、それぞれの立場から率直なコミュニケーションをはかります。

失敗を恐れず、PDCAを高速で回す

プロトタイプでの細かな失敗こそが成功へのヒントです。現場でのOJT(オンザジョブトレーニング)もセットで行うと、急速に作業標準が浸透します。

まとめ:治工具の現場主導改革で生産性を最大化する

物流作業における治工具の考案から製作までの道のりは、単なる「物づくり」という枠に留まらず、現場の知恵と情熱、バイヤーやサプライヤーの論理をつなぐ懸け橋です。

昭和型の「職人芸」に頼る部分と、最新技術をシームレスに融合させることで、従来の物流や工場現場の限界を突破することが可能です。今後も「現場の声」を軸に、課題深掘りと柔軟な発想、そしてトライ&エラーを繰り返していくことで、全社の大きな変革へとつながっていくことでしょう。

バイヤー志望の方へは、現場目線を絶対に忘れず、将来のサプライチェーン全体の最適化に貢献できる「現場密着型調達」の姿勢を意識してください。

サプライヤー側からは、現場に寄り添いつつ自社の独自技術を提案できる創発型の営業・技術開発をおすすめします。

現場と調達・営業、そのすべての人が前を向き、物流治工具という「知恵と技術の集積」で日本のものづくりをさらに発展させ続けましょう。

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