- お役立ち記事
- 真空技術の基礎と真空ポンプ・真空計・気密シール活用のポイント
真空技術の基礎と真空ポンプ・真空計・気密シール活用のポイント

目次
はじめに:現場で問われる「真空技術」の本当の実力
製造業界において、真空技術は半導体・電子部品、自動車、食品、医薬品、化学などさまざまな分野で必要不可欠な存在となっています。
しかし、その応用範囲の広さとは裏腹に、「真空技術」がどのような原理で動き、なぜ現場で重要視されるのか、明確に理解している方は決して多くありません。
とりわけ、昭和から続く多くの製造現場は依然としてアナログな作業や慣習が根強く残り、真空技術について体系立てて現場で教育されるケースも稀です。
本記事では、現場で20年以上の経験を持つ筆者が、真空技術の基礎とともに、真空ポンプ・真空計・気密シールの選定や活用ポイント、現場でのトラブル対応、そして近年のデジタル化・革新的活用事例まで、「製造現場の目線」と「バイヤー・サプライヤー両者の視点」双方から解説します。
これから製造業に携わる方、バイヤー業務に興味がある方、サプライヤーの立場からバイヤーの要望や選定基準を知りたい方にとって、明日から活用できる実践知をお届けします。
真空技術の基礎:なぜ「真空」がモノづくりに必要なのか
「真空」とは何か?単なる空気の無い状態ではない
真空とは、一般的には「空気や気体がほぼ存在しない状態」と表現されます。
しかし、物理学的・工学的には、真空にも「程度=真空度」があり、完全な無(絶対真空)は現実には存在しません。
代表的な「真空度」のランクは以下の通りです。
– 粗真空(大気圧~133Pa 程度)
– 中真空(133Pa~0.133Pa程度)
– 高真空(0.133Pa~1.33×10^-5Pa程度)
– 超高真空(それ以下)
この真空度の違いにより、プロセス用途や機器選定が大きく異なります。
工場現場で多く使われるのは「粗真空〜中真空」領域です。
たとえば、脱泡や乾燥、食品包装では粗真空、半導体製造や電子顕微鏡では高真空・超高真空と、用途で必要なレベルは大きく違います。
真空が重要視される主な理由
– 酸化や腐食を防ぐ(大気中の酸素を除去)
– 湿気や水分除去による品質向上
– クリーンな環境保持による不純物や異物の付着防止
– ガス置換・気体反応のコントロール
– 質量分析や電子ビーム、レーザーの精度向上
これらは、最終製品の品質・歩留まり・工程安定化に直結します。
現場のこだわり(品質・納期・コスト)を満たす“陰の主役”と言っても過言ではありません。
真空ポンプの選び方と現場活用のポイント
代表的な真空ポンプの種類
工場現場でよく使われる真空ポンプには、主に次のような種類があります。
1. ロータリーポンプ(油回転・ドライ式)
2. ダイアフラムポンプ(メンブレンポンプ)
3. スクロールポンプ
4. ルーツポンプ(ブースターポンプ)
5. ターボ分子ポンプ、クライオポンプ(高真空領域向き)
それぞれの特性や長所短所を踏まえて、用途ごとに使い分ける必要があります。
バイヤーが押さえるべき選定ポイント
1. 必要な到達真空度
求める工程やワークにおける「必要十分な真空度」を明確にします。
2. 排気速度(吐出量)
対象のチャンバー(装置空間)サイズや排気時間、プロセスサイクルによって必要な能力が異なります。
3. ガス種
酸素、水蒸気、溶剤ガスなど、ポンプメーカーに伝えることで適切な構造・材質を選定可能です。
4. メンテナンス性
現場で頻発するトラブル(オイルミスト、フィルター詰まり)や保全作業の容易さを見極める必要があります。
5. ライフサイクルコスト(LCC)
本体価格だけでなく、電気代、部品交換や修理費用も念頭に置きましょう。
日本の製造業では初期コスト重視が根強い風潮ですが、トータルコスト・安定稼働を重視する視点は“昭和的思考”打破につながります。
現場でありがちなトラブルと解決事例
– ポンプの異音や排気不良の多くは「オイル管理不足」や「配管の漏れ」
– 突然の真空度ダウンは「ガスバラストの操作忘れ」や「パッキン・シールの劣化」が主因
– 年間計画保全に加え、目視点検を“名ばかり”にせず、現場班長・技能員と連携し、実効性のある運用を徹底することが大切です。
真空計の種類と正しい使い方
真空計(ゲージ)とは
真空度を測定する機器を「真空計」と呼びます。
代表的な種類は以下の通りです。
– ブルドン管圧力計(主に粗真空用)
– ピラニゲージ(中真空用)
– 熱伝導型/イオン化型真空計(高~超高真空用)
それぞれ測定原理が異なり、適切なレンジを超えた使い方をすると大きな誤差や故障原因となります。
バイヤー・現場双方が押さえたいポイント
– 現在の工程で必要な「測定範囲」に合致する真空計か
– プロセス帯域の変更(新製品導入など)を見越した拡張性
– 定期校正・トレーサビリティを含めた品質保証体制
– 抜本的な省人化・自動化推進の場合はデジタル出力付き製品+IoT連携も視野に
バイヤーは現場の要請を“伝言ゲーム”とせず、過去の不具合やクレーム事例、品質証明類のチェックリスト化を怠らないことが重要です。
気密シール:クオリティを支える“縁の下の力持ち”
気密シールの役割と代表的な種類
真空装置やチャンバーで、「大気側」と「真空側」を隔てる部材が「気密シール」です。
よく使われるものには
– Oリング(NBR、FKM、シリコン)
– ゴムパッキン・ガスケット
– メタルシール
などがあり、使用温度・ガス耐性・真空度・サイズ精度で大きく異なります。
現場で起こりやすいトラブルと改善策
– シール材の“カジリ”や“劣化”よるリーク
– 清掃不足による異物かみ込み
– チャンバー再締結時の手順ミス
定期的な交換スケジュール化、工場内の保管・管理ルール徹底、トレーサビリティの確保が不可欠です。
特に、部材の共通化・標準化を通じて部品点数削減・コストダウン検討も推進しましょう。
昭和的アナログ文化から抜け出すために
現場力のアップデート:”見える化”と”データ活用”がカギ
真空技術は一見「昔ながらの機械仕掛け」に見えますが、IoTやセンサ連携の進化により、予兆診断・稼働監視・遠隔保全が着実に現場へ入ってきています。
“装置の不調=まず現場で叩いて直す” “数値記録は紙で管理”という昭和的ルーチンから、「AIによる真空度の自動制御」「デジタルデータによる予防保全」への転換が求められます。
現場が自発的にデータ活用へと歩みを進め、定量管理・根拠ある選定ができる体制こそ、これからの製造現場で勝ち抜く鍵なのです。
バイヤー・サプライヤーの関係性と新しい調達の視点
対等なパートナーシップと“選ばれるサプライヤー”とは
旧態依然とした「調達=価格勝負・単年度契約」から、これからの製造現場は”バリュー共創”の時代です。
– サプライヤー提案の真空装置やシール材の “省コスト・省人化” アイデアを積極的に受け入れる姿勢
– バイヤーは現場の課題やロス情報も公開し、設計変更や改善提案に“耳を傾ける柔軟さ”を持つべきです
両者が実需・現状課題を共有し、新たな選定基準や品質保証、サプライチェーンの改善につなげることが大切です。
まとめ:これからの真空技術の活用と現場力強化
真空技術の基礎から応用、現場トラブル対応、サプライヤー選定、新しい調達関係の在り方まで解説しました。
現場のリアルな課題感を背景に、真空技術は「コスト」「品質」「生産性」に直結する分野です。
– 必要な真空度や周辺機器選び、そのメンテナンスの重要性
– IoTや自動化を取り入れた現場力アップデート
– バイヤー・サプライヤー双方のオープンな議論とパートナーシップ
単なる知識習得で終わらせず、現場と調達部門とが一体となった“新しい価値”を創造する気持ちで活用いただければ幸いです。
モノづくりは深化し続けています。
真空技術もまた、その深化の「起点」であり続けることでしょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)