- お役立ち記事
- 各種めっき技術の基礎と複合めっき技術および応用
各種めっき技術の基礎と複合めっき技術および応用

目次
はじめに:製造業におけるめっき技術の重要性
製造業において「めっき」は、古くから用いられてきた表面処理技術の一つです。
その歴史は古代文明までさかのぼり、今日においても自動車、電子機器、機械部品、医療機器など幅広い分野で不可欠なプロセスとなっています。
特に日本の現場においては、昭和の時代から培われためっき職人の技と、近年の自動化・省人化技術が融合し、グローバル競争下でも高品質な製品供給を支えています。
調達購買やサプライヤーの立場からも、適切なめっき技術の選択は品質、コスト、納期、環境安全など多面的な価値を生み出す要素といえるでしょう。
本記事では各種めっきの基礎と、現場で注目されている複合めっき技術、そして最新の応用事例まで、実践的な知見を交えながら解説していきます。
バイヤーやサプライヤー、現場でより深く「めっき」を使いこなしたい方必見の内容です。
めっき技術の基礎——なぜ表面処理が必要か
めっきとは何か?
めっきとは、金属や非金属の基材表面に薄い他の金属皮膜を形成する表面処理技術の総称です。
防錆・美観・導電性・耐摩耗性など、基材の能力強化と機能付加の目的で幅広く使われています。
主なめっきの種類
代表的なめっきには次のようなものがあります。
・亜鉛めっき:鉄鋼部品の防錆用途に最も多い
・ニッケルめっき:耐食性・耐摩耗性向上、装飾・電子部品用途
・クロムめっき:装飾性・摩耗耐性・硬度大幅向上
・銅めっき:下地処理や電気的用途、バスバー向け
・銀・金めっき:高い導電性、接点や装飾
・すずめっき:半田付性向上、電子部品や食品機械部品
それぞれに「電気めっき」「無電解めっき」などの方式があり、プロセス条件が異なります。
要求品質・コスト・量産性・安全規制などの観点から、適するめっき方式の選定が必要になります。
なぜ現場では「めっき」が選ばれるのか?
日本の製造現場がめっき技術を重視する理由は多岐にわたります。
・母材だけでは達成できない性能や外観を、比較的小コストで実現できる
・複雑形状や微細部位への適用性が高い
・再生・補修も柔軟に対応可能
・規格化された品質管理が可能
一方で、「厚みムラ」「密着不良」「廃液問題」「環境規制」などもあり、現場目線では適切なプロセス設計・管理体制が不可欠となります。
めっきの主要方式と特徴
電気めっき
電気分解の原理を利用して、めっき液中で金属イオンを母材に堆積させる方式です。大ロット向け量産に向いており、厚み・組成制御のしやすさが特徴です。
用途例:自動車部品、建築金物、電子部品など
無電解めっき
電流を必要とせず、化学反応で金属被膜を形成します。電気めっきに比べて膜厚の均一性が高く、非導体(樹脂)にも適用できます。近年はNi-BやNi-Pなど高機能な無電解めっきが拡大傾向です。
用途例:HDD、電子基板、高級工具など
特殊めっき(多層・ディフュージョンめっき、パルスめっきなど)
従来の方式では困難な密着性・機能分布・合金組成を追求する場合に用いられる高度な技術です。
最近では「パルス電流制御」や「マイクロディフュージョン」など、先端分野の要求にも応えています。
新規参入・転注時はめっき仕様のすり合わせが生命線
調達・バイヤー担当者にとって、新規サプライヤーへの製造切り替え時に重要なのが、めっき仕様の変更点確認です。
納入規格・ロット特性・環境制約とあわせ、現場レベルでのサンプル評価と工程監査を必ず実施することが、量産の失敗リスク軽減につながります。
複合めっき技術の革新と応用
複合めっきとは?
複合めっきとは、めっき層に硬質粒子や潤滑材、ナノ材料などを同時に共析・付加することで、「二つ以上の機能」を一度の処理で付加する技術です。
昭和時代より、耐摩耗・自己潤滑・放熱性などが求められる現場で研究されてきました。
主要な複合めっきのタイプと機能性
・硬質粒子複合(Ni-P+SiC、Cr+Al2O3など):飛躍的な耐摩耗性向上。産業用ギア・シャフト等に実用
・ポリマー複合(PTFE分散Ni-P):自己潤滑やフリクション低減。ベアリング部材
・無機/有機ナノ粒子複合:耐薬品性、帯電防止、抗菌・抗ウイルスなど新規機能
めっき処理自体のプロセス安定化も大きな課題であり、設備投資や技術者養成も必要です。
しかし、省エネルギー性や新しい差別化価値として、今後ますます伸びる分野といえます。
IoT化・自動化と複合めっき——「めっき現場」もDX時代へ
近年、製造業DXの流れの中で、めっきラインの自動化、IoT化も急速に進んでいます。
無人搬送装置、ロボットアームによる投入・搬出、めっき液成分モニタリングやAI制御など、「人手作業頼み」からの脱却が進展中です。
複合めっきのような高度プロセスは、温度・pH・撹拌度・分散度・流速など多数パラメータをシビアに制御する必要があり、現場ノウハウとデジタル技術の“二刀流”活用が問われています。
アナログ業界に根付く現場力と、最先端への展望
日本めっき産業の強み——昭和の現場力
高度成長期から培われた手作業中心のバッチ生産、職人による工程微調整、「やりくり力」やムダ取り—。
アナログ的な現場力は、今もめっき業界の根底を支えています。
一方、働き方改革や高齢化、カーボンニュートラル社会へのシフトで、「目・耳・手」だけに頼ったままでは世界と戦うことが難しくなっています。
バイヤーやサプライヤーの皆様こそ、デジタル技術・異分野マテリアルとの融合を現場に持ち込み、現代版のQCD(品質・コスト・納期)最適化へ挑む必要があります。
海外調達・サプライチェーンリスクには、現場ニーズベースの技術選択を
グローバル調達の増加で、海外の低コストめっきも選択肢に加わりました。
しかし、同じ「亜鉛めっき」でも納入先や実使用状況(塩害、温度変動、外観クレームなど)で失敗談が絶えません。
現場側の声やサンプル評価を起点にめっき仕様と管理体制を確立することが、コスト削減と品質安定化の両立に直結します。
バイヤーとサプライヤー間コミュニケーションの深化
バイヤーは「安さ」と「品質」のバランスをごまかさず、仕様決定と納入後の市場状況変化にも柔軟に対応することが大切です。
サプライヤーも、現場で起こりがちなトラブル傾向を可視化・正直に説明すること、品質文書やTraceability体制を強化し、取引先バイヤーとの信頼関係を築くことが欠かせません。
今後のめっき技術——持続的発展に向けた課題と展望
環境規制対応とサステナブルめっき
六価クロム規制、RoHS2、REACHなど、世界的な環境基準が製造業の現場へ次々に押し寄せています。
日本国内でも廃液・排ガス処理能力や、脱炭素化ソリューションへのシフトが急務となっています。
ハロゲンフリー、バイオ由来のめっき薬剤、100%リサイクルプロセスなど、業界変革に投資することが、今後の強みとなるでしょう。
異分野とのコラボ、めっき技術の未来
半導体・AI・医療・エネルギーなど、めっき技術の適用範囲は拡大の一途です。
次世代車載基板、電動化機構部品、熱電変換材料、抗ウイルス設備など、「めっきの新大陸」開拓は今後も続く見通しです。
現場の課題を拾い上げながら、異分野の技術・素材との化学反応がブレイクスルーの鍵となるでしょう。
まとめ:現場目線で進化し続ける「めっき」の価値
めっき技術は、古くて新しい「現場の知恵」と、最先端技術が共存する特異な分野です。
工場長・管理職の観点から言えば、現業のノウハウと自動化・DX・サステナブル調達の融合が、これからの製造業全体の競争力を左右する時代が到来しています。
バイヤー・サプライヤー双方とも、めっきの基礎知識を押さえ、現場の声と市場要求をブレンドした技術選択・工程設計が生き残る条件となるでしょう。
自社製品と顧客の未来を変える「めっき」の力、ぜひ現場で活かしてください。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)