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投稿日:2025年6月8日

熱硬化性熱可塑性CFRPの基礎と加工接合再利用技術

はじめに:CFRPの進化が製造業にもたらすインパクト

カーボンファイバー強化プラスチック、通称CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、軽量かつ高強度、高剛性という特徴から、自動車、航空宇宙、スポーツ用品、そして電子機器の筐体など、広範な分野で活用されています。

かつては航空宇宙分野のような特殊な産業のみで採用されてきたCFRPですが、今日では自動車の量産車にも搭載されるようになりました。

CFRPには「熱硬化性」と「熱可塑性」という2大区分があり、それぞれに特有の加工性や、接合・再利用技術が求められています。

本記事では、現場目線でCFRPの基礎から加工・接合・再利用技術までを解説し、時代の変化に置いていかれないための知識と、昭和的なアナログ現場にも浸透しつつある最新業界動向を紹介します。

CFRPの基礎知識:熱硬化性と熱可塑性の違い

CFRPは炭素繊維(Carbon Fiber)を樹脂マトリックスで包み込み一体化した複合材料です。

この「樹脂マトリックス」には、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂が用いられ、それぞれに物性や加工特性が異なります。

熱硬化性CFRPの特徴

熱硬化性CFRPは、エポキシ樹脂やビスマレイミド樹脂といった熱硬化性樹脂がベースです。

熱によって一度硬化(架橋反応)すると、元には戻らず、基本的に再加熱してもほぼ流動しません。

このため、高温環境での形状安定性や耐薬品性、剛性・クリープ特性に優れています。

一方で、成形サイクルは長く、加工後に再形成や溶着が難しいため、複雑形状部品や大量生産にはコストと時間が課題です。

熱可塑性CFRPの特徴

熱可塑性CFRPは、PEEKやPA(ナイロン)、PPSなどの熱可塑性樹脂が母材です。

加熱により樹脂が軟化・流動し、冷却で固化するため、加熱成形・再成形・溶接・リサイクルが容易です。

自動化による短サイクル量産や、部品の溶着、熱リベット、レーザー溶接なども可能で、近年では自動車分野の要求に応えて注目が高まっています。

一方、一般的に熱硬化性に比べると耐熱性や剛性が下がるケースがあるため、用途に応じた材料選択がポイントです。

CFRP加工技術の現状と課題

金属材料とは異なるCFRPがもたらす生産現場への「変化」と「現場目線の課題」を解説します。

熱硬化性CFRPの加工方法とポイント

プリプレグ(炭素繊維シート+樹脂)を積層し、型にいれて加熱硬化するオートクレーブ成形が基本です。

この方法は航空機の主翼、F1のモノコックなど、高精度・高性能な部品に使われます。

また、RTM(レジン・トランスファー・モールディング)も近年普及しています。

しかし、いずれも型費が高価で、成形サイクルも長いという現場負担があり、量産やコスト低減への課題です。

熱可塑性CFRPの加工手法と量産性

熱可塑性CFRPは射出成形、プレス成形、テープ積層によるホットスタンピング、3Dプリンティングなど、金属にも近いプロセスで短サイクル生産が可能です。

部品の一体成形、アセンブリレス(接合工程削減)、自動化による均質化など、昭和のアナログ工程からDX現場に移行しやすいメリットがあります。

しかし、パーツのバラツキ管理や繊維配向(anisotropy)の制御など、独特の工程管理が欠かせないのが現場課題です。

接合技術の最前線

CFRPは金属材料と決定的に違い「溶接による一体化」が難しいという接合上の特徴があります。

この特性を踏まえ、多様な業界から接合技術の開発が進みました。

熱硬化性CFRPの接合技術

機械的なボルト接合、リベット、アナログなベタ付け(接着剤)、インサートなどを組み合わせます。

航空機・自動車では、母材を傷つけず、剛性を確保するために多層接合やハイブリッド接合手法(金属+CFRP)が使われます。

接着剤の耐久性や、接合部のストレス集中、現場での再作業性(やり直し)など、工程で「いかに品質ロスを防ぐか」が現場目線の永遠の課題です。

熱可塑性CFRPの新しい接合技術

熱可塑性CFRPは再加熱で樹脂が軟化するため、摩擦熱、超音波溶着、インダクション接合、レーザー溶着など、アナログからデジタル制御へと進化した接合法が使われます。

部品同士の一体化、多点接合の自動化など「溶接に近い」速度と生産性が実現でき、昭和から続く「接着ボンド・リベット頼み」現場にも変革をもたらしています。

再利用技術とサステナビリティ対応

SDGsやCO2削減が叫ばれる中、CFRPも「現場での廃棄→再利用」への動きが急加速しています。

リサイクルの現状

熱硬化性CFRPのリサイクルは、炭素繊維の「再生繊維化」が中心です。

機械的切断や熱分解で繊維を回収する技術が進んでいます。

ただし、物性・コスト両面で新材には及びません。

それでも、自動車や家電などコスト競争が激しい現場での活用範囲は着実に広がっています。

熱可塑性CFRPは母材樹脂が熱で再溶融するため、更なるリサイクル適性があります。

粉砕後の射出成形や、フィルムとしての再利用など、大量生産分野でのサーキュラーエコノミー対応に期待が寄せられています。

現場目線で考えるリサイクル導入の壁と突破口

リサイクル技術を現場に導入する際は、設備投資、分別・回収体制、加工歩留まり、トレーサビリティなど「昭和的現場ならではの障壁」がまだまだ多いのが実情です。

一方で、カーボンクレジットや再生材比率による受注優位性、海外規制対応など、現場主導の変革につなげる潮流も出てきました。

今後の現場は、設計段階から「リサイクルを前提とするマテリアル選定」「加工・接合法の最適化」「蓄積したノウハウのナレッジ継承」が競争力の源となります。

バイヤー/サプライヤーが押さえるべき商談視点

バイヤーにとってCFRP採用案件の重要なファクターは、コスト・性能・加工性・納期・リサイクル性のトータルバランスです。

現場で「なぜCFRPなのか」その理由を、熱硬化性・熱可塑性の違いから選定根拠を説明することが交渉では求められます。

例えば熱硬化性を選べば高性能部品である必要性、熱可塑性であれば量産・リサイクル重視といった、最終用途をにらんだ判断材料の示し方が重要です。

サプライヤーは、現場目線で自社の加工・接合提案や、納入可能なリサイクル材のスペック提示、将来のアップグレード余地まで含めて「次世代の付加価値」をバイヤーに示す視点が現場受けします。

営業トークや技術資料も、単なるマテリアルのスペック比較ではなく、現場導入で何が変わるか、どんな現場課題を解決できるかをストーリーで語ると、商談の場でも一歩先を行けます。

まとめ:昭和的製造業からの脱却とCFRP活用の未来

CFRPは、単なる「高性能マテリアル」ではありません。

成形・接合・再利用――すべてにデジタル化・自動化・サーキュラーエコノミー対応が求められる現代製造業の象徴的な素材です。

昭和のやり方から一歩抜け出し、現場の知恵と最先端の技術を融合させる時代が到来しています。

バイヤー、サプライヤー、現場の技術者がそれぞれの立場でCFRPの新たな可能性に目を向け、より多くの製品・業界に活用していくことが、これからの強い製造業を築く鍵です。

明日の高性能部品、生産効率アップ、そしてリサイクルビジネスを見据えて、ぜひ目の前の現場からCFRPの真価を追求していきましょう。

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